論文 長野県工技センター研報 No.6, p.p32p36 ( 極微小径スプリングテストプローブの 高周波特性評価技術の開発 * 工藤賢一 ** 蜜澤雅之 ** 小池博幸 *** Development of High Frequency Characterization Technology for pring Test Probe Kenichi KUDO, Masayuki MITUZAWA and Hiroyuki KOIKE φ.2 及び.25mmの極微小径スプリングテストプローブについて, 中心導体として1 個, その周囲にグランドとして4 個のプローブを配置したソケットと, 同軸コネクタ測定冶具を用いて,2GHzまでのパラメータをベクトルネットワークアナライザで測定した その際, あらかじめ三次元電磁界シミュレータにより冶具の特性を求めて, この冶具の特性を測定値全体から取り除く ( ディエンベディング ) 方法を検討した ディエンベディングした値は, ほぼ予想された特性を示し, また計算値とのもdB 以下程度で一致し, 本方法の有効性が確認できた キーワード : スプリングテストプローブ, パラメータ, ディエンベディング, ベクトルネットワー クアナライザ, 三次元電磁界シミュレータ 1 緒言 近年, 電子情報通信機器の高速化, 大容量化のニーズ に伴い, 半導体デバイスの高周波化, 高集積化, 微細化 は著しい進展を見せている こうした中, 実装技術にお いて, ウエハレベル CP(Chip ize Package) などバンプ を有するパッケージが主流となり, バンプのピッチや大 きさが極めて小さくなっている そのため, デバイス試 験においても, バンプとの電気的接続を行うスプリング テストプローブ ( 以下, プローブと呼ぶ ) は, 小型化 狭ピッチ化が要求されると同時に, その高周波特性も極 めて重要になっている このようなプローブの高周波特性の評価方法としては, 既に多くの種類が示されているが, いずれも, プローブ を平板の樹脂にマトリックス状に配置した, いわゆる ソ ケット としての高周波特性 ( パラメータ ) を評価し ている 1), 2) これらの方法は, ソケットとプリント基板や 同軸コネクタ等を用いた測定冶具を接続し, ベクトルネ ットワークアナライザ (VNA) により パラメータを得 ている しかしながら, 得られた値には測定冶具の特性 が誤として含まれているが, その影響や補正方法につ いては十分に議論されていない 本報では, 直径が異なる 2 種類の極微小径プローブ (φ.2 及び.25mm, 以下 Probe A 及び Probe B と呼ぶ ) につ * 受託研究 ** 電子部 *** ( 株 ) みくに工業 プランジャバレルプランジャ φa φb ( スプリングコイル ) L 図 1 プローブとその構成部品 表 1 Probe A 及びBの寸法 ( 単位 :mm) プローブ φa φb L ピッチ Probe A.2.9 5.7.25 Probe B.25.12 5.7.3 いて, ソケットと同軸コネクタで接続する測定冶具を用 いて,VNAにより高周波特性を評価した あらかじめ三 次元電磁界シミュレータにより測定冶具の特性を求めて, この冶具の特性を測定値全体からディエンベディングす る方法を検討した 本方法によりソケットのみのパラ メータを求め, 三次元電磁界シミュレータによる計算値 と比較しながら, 本方法の有効性について調べた 2 測定冶具の概要とディエンベディング法 2.1 プローブ及びソケット, 測定冶具 図 1に示すように, プローブは,2つのプランジャ及 びスプリングコイル, バレルにより構成される 評価し P 32
ピッチ図 2 ソケットコネクタ 中心導体用プローブ グランド用プローブ ソケットにおけるプローブの配置 約 2mm,Probe A 及びBのピッチが.25,.3mmなので, プレート及びタブ端子を介して, ソケット内に配置されたプローブと接続できるようにした プレートとタブ端子で構成される同軸構造の特性インピーダンスは, 約 5 Ωとした 2.2 ディエンベディング法ソケットと2つの測定治具を組み合わせた場合の信号フロー グラフを, 図 4に示す 校正面はVNA 側の同軸コネクタなので, 測定される全体のパラメータ ( meas ) は, ソケットのパラメータ ( DUT ) と, その両側に測定治具のパラメータ ( fixa, fixb ) を接続したものとなる ここで, 行列を直接かけ合わせる場合には, 式 (1) により パラメータをTパラメータに変換した方が, 演算を簡単にできる 3) プレート 図 3 ソケットと測定冶具の概観 æ T è T T T 12 ö ø = æ è 12 1 ö ø (1) た2 種類プローブの各部の寸法は, 表 1のとおりである プランジャはベリリウム銅, スプリングはピアノ線, バレルはリン青銅で, これらはすべて下地がニッケルの金メッキ処理が施されている 接触子となるプランジャの先端が測定対象の電極に押し当てられたときに, スプリングコイルの弾性によってプランジャを適切な接触圧力で電極に接触させることができる なお,Probe A 及びB がソケット内で収縮した場合の全長は, それぞれ5.1mm, 5.5mmとした ソケットは, 住友化学製の樹脂 ( スミカスーパー 1, 比誘電率 3.44, 誘電正接.151) を用いた 図 2に示すとおり,Probe A 及びBをそれぞれ.25mm,.3mmピッチで, 中心導体として1 個, その周囲にグランドとして 4 個を配置して, 擬似的な同軸構造の伝送線路とした 図 3に, ソケットと2つの測定冶具を接続した場合の概観を示す 測定冶具は,MA 同軸コネクタ ( ワカ製作所製 ) 及びプレート ( 厚さ :.5mm), タブ端子により構成される 同軸コネクタの中心導体とグランド間隔が 全体の測定値及びソケット,2つの測定治具のTパラメータを,T meas 及びT DUT,T fixa,t fixb とすると, 式 (2) の とおり表せる [ T ] = [ T ] [ T ] [ T ] meas fixa DUT 式 (2) の左側から [T fixa ] 1, 右側から [T fixb ] 1 をかけると, のとおり, ソケットのみのTパラメータ, すなわちパラメータが得られる なお, これら複素数要素の行列式の演算には, 高周波回路シミュレータAgilent AD 29 Update 1を用いた 3 実験方法 VNAはAgilent 851Cを用いて,3.5mm 同軸コネクタ面でOL(OpenhortLoad) 校正した ソケットと2つの測定冶具を組み合わせた状態で,.5~2.5GHzにおけるパラメータを測定した 次に, ソケットを取り除き, 2つの測定冶具のみを重ね合わせて, 同様にパラメー fixb 1 1 [ T ] [ T ] [ T ] = [ T ] fixa meas fixb DUT (2) (3) 校正面 校正面 ポート 1 測定冶具 A ソケット 測定冶具 B ポート 2 fixa DUT fixb fixa fixa DUT DUT fixb fixb fixa12 DUT fixb12 図 4 ソケットと 2 つの測定治具を組み合わせた場合の信号フロー グラフ P 33
. db(p25_eg1_nosoket..(1,1)) db((1,1)) db(p25_eg1_nosoket..(2,1)) db((2,1)).5 1. 1.5 2. 2.5 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 3. 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 (1) パラメータ パラメータ (2) 図 5 測定冶具のみを重ね合わせ場合の測定値と計算値の比較 (Probe A). db(p3_ef1_nosoket..(1,1)) db((1,1)) db(p3_ef1_nosoket..(2,1)) db((2,1)).5 1. 1.5 2. 2.5 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 3. 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 (1) パラメータ パラメータ (2) 図 6 測定冶具のみを重ね合わせ場合の測定値と計算値の比較 (Probe B) タを測定した 三次元電磁界シミュレータは,ANY HF 12.を用いた 測定冶具を重ね合わせた場合のパラメータを, 実測値と一致するように各部の寸法や物性値を調整してモデル化を行った 次に, この重ね合わせた場合のモデルを基にして, 同様に片側だけの測定冶具のパラメータを, 電磁界シミュレータを用いて算出した また, ソケットのみの場合も算出して,VNA による測定値やディエンベディング法により演算した値と比較した なお, プローブ及びソケットの高周波特性に方向性はないと考えられるので,パラメータは 及び のみに注目し議論する 4 結果及び考察 4.1 測定冶具のモデル化図 5に,Probe Aの測定冶具のみを重ね合わせ場合について,VNAによるパラメータ測定値と, 三次元電磁界シミュレータによる計算値を比較した結果を示す 測定値の は最大で6dBで, は最小で1.5dBであった ま た, 測定値と計算値とのは,17GHzまではdB 以下であり, ほぼ同様の特性を示した 図 6に,Probe Bの測定冶具の結果を示す 測定値は,Probe Aと同様の特性を示した しかし, 測定値と計算値とのは, 特に では 7GHz 以上になると,dBを超えてしまった Probe A 及びB 共に, 周波数が高くなるにつれて, 測定値と計算値とのが大きくなる傾向となった コネクタとプレート間等の接合部の僅かな隙間によるインダクタンスの発生や, これら部品の表面粗さのよる実効的な導電率の変化, 等々が要因と考えられる 4.2 ソケットと測定冶具を組み合わせた場合の パラメータ図 7(1) に,Probe Aのソケットと2つの測定冶具を組み合わせた場合について,パラメータの測定値を示す は6~8GHzで最大となり,17GHz 近傍に大きなディップが見られた Time Domain 解析の結果から, ソケット部の特性インピーダンスが約 3Ωであることが分かった よって, このディップは, ソケット部のインピーダンス不整合による共振と考えられる ただし, には, P 34
...5.5 1. 1. db((1,1)) 1.5 db((2,1)) db((1,1)) 1.5 db((2,1)) 2. 2. 2.5 2.5 db(p25_d3_soket3_sim_3ghz..(1,1)) db(sp1(1,1)) 3. 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 4 8 12 16 2 24 28 32 db(d3_soket3..(1,1)sp1(1,1)) db(p25_d3_soket3_sim_3ghz..(2,1)) db(sp1(2,1))..5 1. 1.5 2. 2.5 3. 4 8 12 16 2 24 28 32 (1) パラメータ パラメータ (2) 図 8 ソケットのみの測定値と計算値の比較 (Probe A) 3. 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 (1)Probe A Probe B (2) 図 7 ソケットと測定冶具を組み合わせた場合の測定値 db(d3_soket3..(2,1)sp1(2,1)) 測定冶具の線路長による位相回転や反射も含まれている ので, 共振周波数はソケットの線路長のみには依存しな い には, 主にソケットのインピーダンス不整合の影 響と考えられるリップルが見られた 図 7(2) に,Probe B のソケットと測定冶具を組み合 わせた場合について, パラメータの測定結果を示す Probe A とほぼ同様な特性を示したが,Probe B の方が の最大値が大きく, も大きなリップルが生じた Time Domain 解析の結果から, ソケット部の特性インピーダン スが Probe A の約 3Ω に対して,Probe B が約 26Ω となり, インピーダンスがより低いためである また,14~16GHz の間に小さなディップが見られた シミュレータによる 解析の結果, この周波数において, ソケット部の中心導 体とグランドとの電界の結合に特異な偏りが見られ, 高 次モードの発生と思われる 4.3 ディエンベディング法によるソケットの パラ メータ 図 8 及び 9 に,Probe A 及び B のソケットについて, デ ィエンベディング法による パラメータ測定値と, シミ ュレータによる計算値を比較した結果を示す ただし, 計算値については,~3GHzまでのデータを示す Probe Aのソケットは, 図 7(1) に示した測定冶具と組み合わせた場合とは異なり, は16GHz 近傍に大きなディップは見られなかった これは, ディエンベディングによって測定冶具の線路長の位相回転がなくなったため, ソケット部のインピーダンス不整合による共振が, 高周波側へ移動したためである また, シミュレータによる計算値の共振周波数は25GHz 近傍であるが, 半波長の共振としてソケットの長さ (5.1mm) とその比誘電率 (3.44) から計算された16GHzよりも, 高い周波数となった ソケットとプローブとの間に約.15mm 程度の隙間があり, 実効的な比誘電率が低下したためである また, 共振が高周波数側へ移動したため, もリップルの間隔が広くなった 測定値と計算値とのは,2GHzまでほぼdB 以下であった 一方,Probe Bのソケットも,Probe Aと同様に, ソケット部のインピーダンス不整合による共振が, 高周波側へ移動した Probe Aとほぼ同様な特性を示したが,Probe P 35
db(p3_d4_soket3_sim_3ghz..(1,1)) db(sp1(1,1)) 4 8 12 16 2 24 28 32 db(p3_d4_soket3_sim_3ghz..(2,1)) db(sp1(2,1)) 1 2 3 4 5 6 4 8 12 16 2 24 28 32 (1) パラメータ パラメータ (2) 図 9 ソケットのみの測定値と計算値の比較 (Probe B) db(d4_soket3..(2,1)sp1(2,1)) Bの方が の最大値が大きく, も大きなリップルが生じた これは, 前述のとおり,Probe Bの方がソケット部の特性インピーダンスがより低いためである また, Probe Bの測定値と計算値とのは,14GHzまでは,Probe Aと同様に,dB 以下で一致した しかし,14GHzを超えるとdBまでが大きくなった これは, 測定冶具とソケットとの隙間のよるインダクタンスの発生や, ソケット樹脂の比誘電率 誘電正接の周波数依存性の要因に加えて,4.1で述べたとおり,Probe Bの方が測定冶具のモデル化の誤が大きいため, より大きなになったと考えられる 5 結論 φ.2 及び.25mmの2 種類の極微小径プローブについて, ソケットと同軸コネクタで接続する測定冶具を用いて,2GHzまでの高周波特性を評価した あらかじめ三次元電磁界シミュレータにより測定治具の特性を求め, この冶具の特性を測定値全体からディエンベディングする方法を検討した 本方法によりソケットのみのパラメータを求め, 三次元電磁界シミュレータによる計算値と比較しながら, 本方法の有効性について調べた結果を以下に示す (1) 測定冶具の高周波特性について,VNA による測定値とシミュレータによる計算値はdB 以下で一致し, 測定冶具をモデル化することができた (2) ディエンベディングした値は,2 種類のプローブ共 に, ソケット部の伝送線路における低い特性インピーダンスによって生じる反射やリップルが見られた 特性向上を図るには,1プローブのピッチを拡げる,2 樹脂の比誘電率を下げる, 等々を考慮して, 特性インピーダンスを5Ωにすべきである (3) ディエンベディングした値とシミュレータによる計算値は, ほぼ予想された特性を示し, そのはdB 以下で一致し, 本方法の有効性が確認できた ただし, 本方法で得られた値は, 測定冶具のモデル化の正確さに依存する 誤要因となる測定冶具の特性をし引くことができるディエンベディング法は, 標準器の作製が困難な場合や, 標準器が無い場合などに, 高精度に測定できる有効な方法と考えられる 参考文献 1) Tim wettlen, Orlando Bell, Gary Otonari, Eric Bogatin, A Method for Contactor Characterization to 25 GHz, BurnIn & Test ocket Workshop, 24 2) J Lee, Test report for Leeno pin DB913CARTK, LEENO Industrial Inc., 26. 3) ベクトル ネットワーク アナライザを使用した パラメータ ネットワークのディエンベディングおよびエンベディング,Agilent Application Note 13641, 24. P 36