2016 宅建スーパー合格講座 権利関係 A 第 1 回 出る順宅建合格テキスト ウォーク問過去問題集 確認テスト 抜粋
1 せ い り つ 第 章 け い や く 契約の成立 1 意思表示 口約束の場合 契約と言えるのか Aさんは 自分の持っている家をBさんに売ってお金を手に入 れたいと考えました Aさんは 僕の家を売ります とBさんに 言ったところBさんは いいよ と言いました しかし契約書は取 り交わしていません 契約は成立したといえるでしょうか ばいばい ケース スタディ 1-1 解答は14頁 ちんたい しゃく 宅建士試験では 売買契約 や 賃貸借契約 を結んだ場 合のルールが毎年出題されています そこで まず 契約と はどのようなものなのか考えてみましょう やく そく 契約とは 一言で言えば 約束のことです 一度契約を 結ぶと 原則として その契約で決めた内容を守る必要があ ります では そもそも契約はどのようにして結ばれるのでしょう か ケーススタディのような場合 AさんはBさんとの間で 売 買契約 を結ぶ必要があります 契約の成立 A 売主 売買契約 ① 売ります 申込み ② 買います 承諾 ③契約書作成 ④代金支払い, 登記, 引渡し B 買主 2016年版出る順宅建士 合格テキスト ①権利関係 13
もうし こ しょう ここで AさんとBさんとの売買契約は 申込み と 承 だく 諾 の2つの意思表示が合致することによって成立します 民 だく せい 通常 契約書を 法555条 これを 諾成契約 といいます 作成しますが 法律上 売買契約が成立するためには契約 書の作成は必要ありません 申込み と 承諾 の2つの意思 表示さえ合致すれば AさんとBさんとの間で約束を結んだ こうとう と言えるからです 契約書の作成は 口頭で成立した契約の しょう こ 内容を 証拠 として残しておくために行っているにすぎませ ん ひ よう わり なお 売買契約に関する費用は 当事者双方が等しい割 あい 合で負担します 民法558条 ケーススタディ1ー1の答え 契約は成立したといえます 合格ステップ 1 反復 チェック ランク 契約の成立 C 契約は 原則として 意思表示の合致によって成立し 契約の成立には 書面の 作成は必要ではない 14 2016年版出る順宅建士 合格テキスト ①権利関係
2 ぎ 第 章 さ 詐欺 1 意思表示 さ ぎ 1 詐欺による意思表示の取消し だまされて転売された土地を取り戻すためには Aさんは Bにだまされて自己所有の土地をBに売却し さら にBは 何も事情を知らないCさんにその土地を売却しました その後に Aさんが 詐欺を理由にBとの契約を取り消した場 ケース スタディ 1-2 合 Cさんは この土地をAさんに返さなければならないのでしょうか 解答 は17頁 さ ぎ 人をだますことを詐欺といいます 詐欺によって契約を結んだ場合でも 必ずその内容を守ら なければならないというのでは あまりにもかわいそうです そこで 民法は 詐欺による意思表示は 取り消すことが できることとしています 民法96条1項 ついにん この取消権は 追認をすることができる時から5年 行為 の時から20年を経過すると消滅します 民法126条 そして 契約が取り消されると その契約は初めからなかっ たが げん たことと扱われ 契約当事者は 互いに相手方を契約前の原 じょう かいふく ぎ む 状に回復する義務を負うことになります 民法121条 703条 どう じ り こう この場合の当事者の原状回復義務は 同時履行の関係にな るい すい なぜなら そのように考え ります 判例 民法533条類推 ることが当事者にとって公平といえるからです したがって Bにだまされて契約を結んだAさんは 売買 契約を取り消して Bに売った土地を返せと主張することが プラス アルファ 詐欺に気付いたに もかかわらず 異議 を留めずに契約の 全部もしくは一部の 履行をした場合や 相手方に履行の請 求をした場合 追認 したものとみなさ れ 詐欺による取消 しはできなくなりま す 法定追認 民法 125条 できます 2016年版出る順宅建士 合格テキスト ①権利関係 15
第 章 ケーススタディ1ー2の答え 1 意思表示 Cさんは 土地をAさんに返さなくても構いません 2 第三者の詐欺 ちゅうかいぎょうしゃ 仲介業者にだまされて売った土地は取り戻せるのか しょう Aさんは 仲介業者であるCに その土地のそばに近々ゴミ焼 きゃく じょう 却場が建設されるからその土地の値が下がりますよ とだまさ れて Bさんに安く売ってしまった場合 Bさんとの契約を取り 消すことができるでしょうか ケース スタディ 1-3 解答は18頁 第三者の詐欺 A 売主 ②売買契約 B 買主 ③取消し C ①詐欺 第三者 通常の詐欺の場合 契約の相手方が人をだましているの もん く で 一度結ばれた契約を取り消されても 文句は言えません それに対して 第三者の詐欺の場合 契約の相手方が人 をだましているわけではありませんので 相手方の立場も考 えてあげる必要があります そこで 民法は 第三者の詐欺の場合 相手方が詐欺の 事情を知っているかどうかで 契約の取消しを認めるかどう かを決めることとしています 民法96条2項 2016年版出る順宅建士 合格テキスト ①権利関係 17
まず 相手方が詐欺の事情を知っていた場合には 契約 を取り消すことができます 詐欺の事情を知っていた以上 し かた 契約を取り消されても 仕方がないからです これに対して 相手方が詐欺の事情を知らなかった場合 には 契約を取り消すことができません 相手方は詐欺の事 情を知らずに契約を結んだのに たまたま詐欺があったから といって契約がくつがえされるのではあまりにもかわいそう だからです ケーススタディ1ー3の答え CがAさんをだましたことをBさんが知っていた場合は Aさんは取り消す ことができます これに対し Bさんが知らなかった場合には Aさんは取り消 すことができません 重要条文 民法 第96条 詐欺又は強迫 1 詐欺又は強迫による意思表示は 取り消すことができる 2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場 合においては 相手方がその事実を知っていたときに限り その意思表示を取り消すことができる 3 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは 善意 の第三者に対抗することができない 合格ステップ 反復 チェック 2 ランク 詐欺による意思表示 A 1 詐欺による意思表示は 取り消すことができる 2 第三者が詐欺を行った場合 相手方がその事実を知っていたときに限り その意思表示を取り消すことができる 3 詐欺による意思表示の取消しは 善意の第三者には対抗することができな い 18 2016年版出る順宅建士 合格テキスト ①権利関係
ひつようせい なぜなら おどされて契約を結んだ者を保護する必要性が ひ じょう 非常に高いからです 第三者の強迫 ②売買契約 A B 売主 買主 ③取消し ①強迫 C 第三者 3 強迫による意思表示の取消しと第三者 おどされて手放し 転売された土地を取り戻すためには ふ とう AさんがBにおどされて 自分の持っている土地を不当に安く ケース スタディ 1-4 Bに売却する契約を結びました そして Aさんが契約を取り消 す前に BがCさんにこの土地を売却していた場合 AさんはC さんに対して土地を返せと主張できるでしょうか 解答は21頁 強迫による取消しと第三者 ①強迫 土地 A 売主 ②売買契約 B ③売却 買主 C 第三者 ④取消しを主張できるか この場合 Cさんが強迫の事情を知っていたか否かにかか わらず AさんはCさんに対して土地を返せと主張すること ができます なぜなら おどされて契約を結んだAさんを保 20 2016年版出る順宅建士 合格テキスト ①権利関係
護する必要性が非常に高いからです 第 章 つまり 強迫による意思表示の取消しは 悪意の第三者 1 意思表示 にも 善意の第三者にも対抗することができるのです ケーススタディ1ー4の答え Aさんは土地を返せと主張できます 合格ステップ 反復 チェック 3 ランク 強 迫による意思表示 A 1 強迫による意思表示は 取り消すことができる 2 第三者が強迫を行った場合 相手方がその事実を知っていたか否かを問わず その意思表示を取り消すことができる 3 強迫による意思表示の取消しは 第三者の善意 悪意を問わず 対抗するこ とができる 宅建試験に 出る! 問題 1 Aが第三者Cの強迫によりBとの間で売買契約を締結した場合 Bがその強迫 の事実を知っていたか否かにかかわらず AはAB間の売買契約に関する意思 表示を取り消すことができる 2007-1-3 解答 〇 上記合格ステップ(2)参照 2 A所有の甲土地につき AとBとの間で売買契約が締結され BがEに甲土地 を転売した後に AがBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合に は EがBによる強迫につき知らなかったときであっても AはEから甲土地 を取り戻すことができる 2011-1-4 解答 〇 上記合格ステップ(3)参照 ウォーク問 問1 4 問5 3 問64 2 問66 4 2016年版出る順宅建士 合格テキスト ①権利関係 21
き ょ 4 ぎ ひょう じ 虚偽表示 きょ ぎ ひょう じ 1 虚偽表示による無効 さしおさ のが くちうら 差押えを逃れるために 友人と口裏を合わせて 自分が持っ か くう ている土地を友人に売却したように見せかける架空契約を結 んだ場合のように 相手方と通じて虚偽の意思表示をするこ きょ ぎ ひょう じ とを 虚偽表示といいます この場合 両当事者ともに契約をする意思はありませんの で 虚偽表示による契約はそもそも無効となります 民法94 条1項 2 虚偽表示と第三者 虚偽の売買契約の売主は 転売された土地を取り戻せるのか へんさい き じつ Aは 返済期日の過ぎた多額の借金を負っています そして ケース スタディ 1-5 ゆいいつ その返済のために自己の唯一の財産である土地を差し押さえら れそうになってしまいました そこで 土地を手放したくないA は 友人Bに頼んでAがBに土地を売却したことにして登記をBに移しました そ の後 Bは自己に登記があるのをいいことにこの土地をCに売り渡しました Aは A B間の売買の無効をCに主張できるでしょうか 解答は23頁 虚偽表示と善意の第三者 A 虚偽表示 B 当事者 無効 当事者 売却 C 善意の 第三者 虚偽表示による契約は 当事者間では無効ですが この無 22 2016年版出る順宅建士 合格テキスト ①権利関係
効を当事者以外の第三者にも主張することができるでしょうか 第 章 この問題は 虚偽表示により契約を結んだ者と第三者を比 1 意思表示 べてどちらをより保護すべきかということにかかっています つまり 第三者が虚偽表示の事実を知っていたのであれば 原則どおり この第三者に契約の無効を対抗できるとすれば よく 第三者を保護する必要はありません これに対し 第三者が善意である場合にこの第三者に契 約の無効を対抗できるとするのはバランスを欠くことになり ますので 虚偽表示の無効は 善意の第三者に対抗するこ とができないことになっています 民法94条2項 善意であ いな その時に善意であれば るか否かは契約の時を基準に判断し その後に悪意となっても保護されます 判例 なお この場 合における第三者とは 当事者および相続人などの一般承 ぜん てい り がい 継人以外の者で 虚偽の法律関係を前提として新たな利害 かん けい か そう ゆず 関係に入った者 例 仮装で譲り受けた不動産を差し押さえ た債権者 仮装債権を譲り受けた者 のことです さらに 虚偽表示における第三者は 善意でありさえすれ ば保護されます つまり 善意の第三者は たとえ知らない か しつ ことに過失 落ち度 があっても また 登記を備えていなく ても保護されるのです 判例 逆に 第三者が虚偽表示であるという事情を知りつつ 土 地を買った場合は 土地を取得できなくても仕方ありません したがって 虚偽表示の無効は 悪意の第三者には対抗す ることができることになっています ケーススタディ1ー5の答え Aは CがA B間の売買が虚偽であることについて悪意ならCに無効主張で きますが 善意ならできません 2016年版出る順宅建士 合格テキスト ①権利関係 23
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LEC 東京リーガルマインド 複製 頒布を禁じます 権利関係 A1 詐欺 強迫 虚偽表示 確認テスト 問題 1 不動産を売買する契約を成立させるためには 契約書等の書面を作成する必要がある 2 A の B に対する A 所有の土地の売却の意思表示が B の詐欺によって行われた場合 売却の意思表示は無効である 3 A の B に対する A 所有の土地の売却の意思表示が B の詐欺によって行われた場合 A は 売却の意思表示を取り消すことができるが その取消しをもって B からその取消し前に当該土地を買い受けた善意の C には対抗できない 4 A 所有の土地が A から B へと売り渡され B が C に当該土地を転売した後 A が B の強迫を理由に AB 間の売買契約を取り消した C が B による強迫につき知らなかったときでも A は C に対し 取消しを対抗できる 5 A が 第三者 C の詐欺により A 所有の土地を B に売り渡した場合 A は B が詐欺の事実につき悪意の場合に限って 売買契約を取り消すことができる 6 A の B に対する A 所有の土地の売却の意思表示が C の強迫によって行われた場合 A は B が強迫の事実について知らなければ 当該意思表示を取り消すことができない 2
LEC 東京リーガルマインド 複製 頒布を禁じます 7 A が 債権者の差押えを免れるため A 所有の土地について B と通じて虚偽の売買契約を締結した A は B に対し虚偽表示を理由に当該契約を取り消すことができる 8 A が B と通じて A の所有地を B に仮装譲渡する契約をし B に登記を移転した場合において C が AB 間の契約の事情につき善意で B からこの土地の譲渡を受けたときは B から所有権移転登記を受けていなくても C は A に対して その所有権を主張することができる 9 A が B と通じて A の所有地を B に仮装譲渡する契約をしたところ B が C へ C が D にこの土地を売却した場合 C が悪意であっても D が善意であれば D は A に対して土地の所有権を主張することができる 10 A が B と通じて A の所有地を B に仮装譲渡する契約をしたところ B が C に C が D にこの土地を売却した場合 C が善意であったとしても D が悪意であれば A は D に対して土地の所有権を主張することができる 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 3
LEC 東京リーガルマインド 複製 頒布を禁じます A1 詐欺 強迫 虚偽表示 解答 解説 1 売買契約は 申込み と 承諾 の 2 つの意思表示が合致することによって成立する ( 民法 555 条 ) 書面によることを要しない 2 詐欺による意思表示は 取り消すことができるのであって ( 民法 96 条 1 項 ) 無効ではない 3 詐欺による取消しは 善意の第三者に対抗することができない ( 民法 96 条 3 項 ) 4 強迫による取消しは 善意の第三者にも対抗することができる ( 民法 96 条 3 項参照 ) 5 第三者による詐欺は 相手方が悪意のときに限り 取り消すことができる ( 民法 96 条 2 項 ) 6 第三者による強迫は 相手方の善意 悪意を問わず取り消すことができる ( 民法 96 条 2 項反対解釈 ) 7 虚偽表示は無効である ( 民法 94 条 1 項 ) 取消しではない 8 虚偽表示の無効は 善意の第三者に対抗することができない ( 民法 94 条 2 項 ) この場合 第三者は 登記を備える必要はない ( 判例 ) 9 悪意の第三者からの転得者が善意であれば 転得者は善意の第三者に当たるので 転得者は所有権を主張することができる ( 民法 94 条 2 項 判例 ) 10 第三者が善意であれば その後の転得者が悪意であっても 当初の売主は その転得者に対して所有権を主張 ( 対抗 ) することができない ( 民法 94 条 2 項 判例 ) 32
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