参考資料 2. 十勝川流域の特徴

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平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震

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2.2 既存文献調査に基づく流木災害の特性 調査方法流木災害の被災地に関する現地調査報告や 流木災害の発生事象に関する研究成果を収集し 発生源の自然条件 ( 地質 地況 林況等 ) 崩壊面積等を整理するとともに それらと流木災害の被害状況との関係を分析した 事例数 :1965 年 ~20

溶結凝灰岩を含む火砕流堆積物からなっている 特にカルデラ内壁の西側では 地震による強い震動により 大規模な斜面崩壊 ( 阿蘇大橋地区 ) や中 ~ 小規模の斜面崩壊 ( 南阿蘇村立野地区 阿蘇市三久保地区など ) が多数発生している これらの崩壊土砂は崩壊地内および下部に堆積しており 一部は地震時に

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

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避難開始基準の把握 1 水害時の避難開始基準 釧路川では 水位観測所を設けて リアルタイム水位を公表しています 水位観測所では 災害発生の危険度に応じた基準水位が設定されています ( 基準となる水位観測所 : 標茶水位観測所 ) レベル水位 水位の意味 5 4 ( 危険 ) 3 ( 警戒 ) 2 (

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資料 -5 第 5 回岩木川魚がすみやすい川づくり検討委員会現地説明資料 平成 28 年 12 月 2 日 東北地方整備局青森河川国道事務所

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中


平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 137 今回の九州北部における豪雨は 線状降水帯 と呼ばれる積乱雲の集合体が長時間にわたって狭い範囲に停滞したことによるものである この線状降水帯による記録的な大雨によって 図 1 に示す筑後川の支流河川の山間部の各所で斜面崩壊や土石流が発生し 大

利水補給

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図-2 土砂移動発生箇所 国土地理院の判読結果 4による 図-3 傾斜区分と土砂移動発生箇所 国土地理院の判読結果 4に よる の関係 根谷川 AMeDAS三入観測点 太田川 可部東地区 広島市安佐北区 八木地区 緑井地区 広島市安佐南区 地質区分 産業技術総合研究所シームレス地質図より関 図-4

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洪水リスクの共有

平成 29 年 7 月 20 日滝川タイムライン検討会気象台資料 気象庁札幌管区気象台 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 大雨警報 ( 浸水害 ) 洪水警報の基準改正 表面雨量指数の活用による大雨警報 ( 浸水害 )

(6) 災害原因荒廃渓流の源頭部にある0 次谷の崩壊は 尾根付近から発生している 尾根部は山腹斜面に比べ傾斜が緩やかであるが 記録的な集中豪雨 (24 時間雨量 312.5mm( 平成 30 年 7 月 6 日 6 時 ~ 平成 30 年 7 月 7 日 6 時まで ) 累積雨量 519.5mm(

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目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

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第 7 章砂防 第 1 節 砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ヶ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県

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2 6.29災害と8.20災害 空中写真による災害規模の比較 5 土石流流出位置 災害時の空中写真 3 3 平成26年8月豪雨による広島土砂災害 三入の雨量グラフ 災害時の空中写真 可部地区 山本地区 八木 緑井地区 三 入 では雨量 強度 8

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第 7 章砂防第 1 節砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ケ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県の地

 

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水防法改正の概要 (H 公布 H 一部施行 ) 国土交通省 HP 1


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4. 堆砂

Q3 現在の川幅で 源泉に影響を与えないように河床を掘削し さらに堤防を幅の小さいパラペット ( 胸壁 ) で嵩上げするなどの河道改修を行えないのですか? A3 河床掘削やパラペット ( 胸壁 ) による堤防嵩上げは技術的 制度的に困難です [ 河床掘削について ] 県では 温泉旅館の廃業補償を行っ

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新都市社会技術融合創造研究会研究プロジェクト 事前道路通行規制区間の解除のあり方に関する研究

~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

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H19年度

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重ねるハザードマップ 大雨が降ったときに危険な場所を知る 浸水のおそれがある場所 土砂災害の危険がある場所 通行止めになるおそれがある道路 が 1 つの地図上で 分かります 土石流による道路寸断のイメージ 事前通行規制区間のイメージ 道路冠水想定箇所のイメージ 浸水のイメージ 洪水時に浸水のおそれが

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西日本豪雨 市民への緊急メッセージ 記者発表会 防災学術連携体幹事会 趣旨 防災に関わる56の学会ネットワークである防災学術連携体は 平成 30 年 7 月豪雨による西日本を中心とした豪雨災害に関して緊急集会を行い 地球環境の変化は自然災害として身近に迫っており 今後 夏後半から秋にかけては大雨が降

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【参考資料】中小河川に関する河道計画の技術基準について

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【集約版】国土地理院の最近の取組

平成 30 年度 札内川懇談会 活動経過報告 平成 31 年 3 月 6 日 ( 水 ) 18:30~ 帯広第 2 地方合同庁舎 3 階共用会議室 1 2 1

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図 6 地質と崩壊発生地点との重ね合わせ図 地質区分集計上の分類非アルカリ珪長質火山岩類後期白亜紀 火山岩 珪長質火山岩 ( 非アルカリ貫入岩 ) 後期白亜紀 花崗岩 後期白亜紀 深成岩 ( 花崗岩類 ) 花崗閃緑岩 後期白亜紀 チャートブロック ( 付加コンプレックス ) 石炭紀 - 後期三畳紀

クイズの答え 富良野川2号透過型えん堤 ダム 長さ 917m 答え② 東京タワーを3つ寝かせたほどの長さを持って おり このような形式のえん堤 ダム として は世界一です しかし 大正泥流はこのえん堤 の長さ 幅 いっぱいに氾濫して流下しました えん堤部の高さ 14. 5m 答え② 砂防えん堤の高さ

6. 現況堤防の安全性に関する検討方法および条件 6.1 浸透問題に関する検討方法および条件 検討方法 現況堤防の安全性に関する検討は 河川堤防の構造検討の手引き( 平成 14 年 7 月 ): 財団法人国土技術研究センター に準拠して実施する 安全性の照査 1) 堤防のモデル化 (1)

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平成 30 年 7 月 2 日からの大雨による出水概要 ( 上流 ) 速報版第 3 報 国土交通省北海道開発局旭川開発建設部平成 30 年 7 月 6 日 Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

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スライド 1

構成 1. 平成 28 年 8 月北海道大雨激甚災害の概要 2. 近年の北海道の気象の変化 3. 気候変動の影響 4. 今後の水防災対策のあり方 1

資料4 検討対象水域の水質予測結果について

土砂災害対策の強化に向けて 提言 平成 26 年 7 月 土砂災害対策の強化に向けた検討会

図 -3.1 試験湛水実績図 平成 28 年度に既設堤体と新設堤体が接合された抱土ゾーンにおいて調査ボーリングを実施し 接合面の調査を行った 図 -2.2に示すように 調査ボーリングのコア観察結果からは 新旧堤体接合面における 材料の分離 は認められなかった また 境界面を含む透水試験結果により得ら

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5-2 居住誘導区域の設定 居住誘導の基本方針を踏まえ 以下の居住誘導区域の設定の考え方に基づき 居住誘導区域を設 定します 居住誘導区域の設定の考え方 (1) 居住誘導区域に含めるエリア 居住誘導区域に含めないエリア 居住誘導区域に含めるエリア 1 都市機能誘導区域 居住誘導区域に含めないエリア

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(a) (b) 写真 -3 流下状況 ( ケース 1) 写真 -2 (a) 家屋模型,(b) 橋梁模型表 -1 実験ケース 実験パターン 流下条件 流量 (L / min) ケース1 家屋実験 泥流 25 ケース2 家屋実験 土石流 25 ケース3 橋桁実験 泥流 25 ケース4 橋桁実験 土石流

防事業が着手された 模型実験等による慎重な検討の結果 温泉街直上流に基幹施設として3つの副ダムを持つ黒岳沢川第 1 号ダム ( 堤高 22 m) を設置し 温泉街を蛇行流下していた黒岳沢川は断面を拡大した上で スムーズな線形で石狩川までつなげることとなった 流路付け替えに伴い 橋梁の掛け替えや温泉街

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リサーチ ダイジェスト KR-051 自然斜面崩壊に及ぼす樹木根系の抑止効果と降雨時の危険度評価に関する研究 京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻特定教授杉山友康 1. はじめに 鉄道や道路などの交通インフラ設備の土工施設は これまでの防災対策工事の進捗で降雨に対する耐性が向上しつつある一方で

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農地等斜面災害緊急調査表 ( 案 ) 巻末 -1

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避難を促す緊急行動 被災した場合に大きな被害が想定される国管理河川において 以下を実施 1. 首長を支援する緊急行動 ~ 市町村長が避難の時期 区域を適切に判断するための支援 ~ できるだけ早期に実施 トップセミナー等の開催 水害対応チェックリストの作成 周知 洪水に対しリスクが高い区間の共同点検

( 熊本県防災情報メールサービスに関すること ) 熊本県危機管理防災課電話

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資料 -4 十勝川流域における今後の土砂災害対策のあり方 ( 案 ) 参考資料

参考資料 2. 十勝川流域の特徴

2-1 十勝川流域の気象 河川の特徴 上流域の新得では年平均降水量が約 1,130mm, 中流域の帯広では年平均降水量が約 920mm, 下流域の大津では年平均降水量が約 1,080mm となっており, 流域内では, 上流域の山地での降水量が多く, 中流域の十勝平野では比較的降水量が少ない 図表は十勝川水系河川整備計画 [ 変更 ],p5, 平成 25 年 6 月, 北海道開発局 2

2-1 十勝川流域の気象 河川の特徴 幹川流路延長 156km, 流域面積 9,010km 2 の一級河川 大雪山系の十勝岳 ( 標高 2,077m) に源を発し, 山間峡谷を流れて十勝平野に入り, 佐幌川, 芽室川, 美生川, 然別川等の多くの支川を合わせて帯広市街地に入り, 音更川, 札内川, 利別川等を合わせ, 豊頃町において太平洋に注ぐ 十勝岳 十勝川 芽室川 国土数値情報 を用いて作成 3

2-2 地形的な特徴 2-3 地質的な特徴 流域の地形は, 帯広市を中心とする盆地状を呈している十勝平野と, それを囲む日高山脈, 大雪山系, 白糠丘陵及び豊頃丘陵等からなる また, 十勝平野では, 十勝川本支川に沿って, 幾つもの扇状地や段丘, 台地が広がっている 日高造山運動の影響を受け脆弱で土砂が生産されやすく, 地形的にも平野から 2 000m 前後の山脈頂部に至るまで急峻で生産された土砂が流出しやすい要因を備えている Gr: 花崗岩 sl: 粘板岩 Tr: 凝灰岩 Ab: 安山岩 Pm: 軽石流堆積物 十勝岳 日高山脈 芽室川 十勝川 十勝平野 白糠丘陵 豊頃丘陵 Hr: ホルンフェルス Gb: はんれい岩 L: ローム 地理院地図標高段彩図 を用いて作成 土地分類図 ( 国土庁土地局 ) を用いて作成 4

2-2 地形的な特徴 十勝平野においては 近年 帯広市を中心に十勝川や札内川 音更川と平行する国道沿いに市街地が拡大している 上流山地周辺部の扇状地には農地等が広がり 市街地等の資産は 山地周辺部から扇状地を経由した下流に集積している 出典 : 十勝川水系河川整備計画 [ 変更 ], 平成 25 年 6 月, 北海道開発局 出典 : 十勝川水系河川整備計画 [ 変更 ], 平成 25 年 6 月, 北海道開発局 出典 : 十勝総合振興局 HP 出典 : 十勝川水系河川整備計画 [ 変更 ], 平成 25 年 6 月, 北海道開発局 5

2-3 地質的な特徴 日高山脈周辺では, 氷河期に形成された周氷河性堆積物と呼ばれる土砂層が, 山地斜面表層や谷筋に分布する報告例がある 本検討会における調査により,20m 以上の土砂層の分布も確認されている 日高山脈の山地表層部においては, 現状においても土砂層が広く分布していると推定される 土砂層 土砂層 LP 横断復元位置 土砂層 LP 横断復元位置 地質断面図位置は日勝大橋付近 出水後崩壊地 出水後崩壊地 出水後崩壊地 ( 日勝大橋より撮影 ) 流出部の土砂層厚は 20.7m 土砂層厚は 9.5m 流出部の土砂層厚は 20.7m 戸蔦別川ピリカペタヌ沢川支沢源頭部付近の崩壊 ( 上 : 出水後の崩壊地写真下 : 出水前後の LP 測量から復元した地形横断の重ね合わせ図 ) 流出部の土砂層厚は 6.8m 戸蔦別川清水沢源頭部付近の崩壊 ( 上 : 出水後の崩壊地写真下 : 出水前後の LP 測量から復元した地形横断の重ね合わせ図 ) ペケレベツ川源頭部日勝大橋付近の崩壊 ( 上 : 出水後の崩壊地下 : 昭和 54 年実施のボーリング資料による地質横断図 ) 日高山脈周辺における周氷河性堆積物の報告例小野有五 平川一臣 (1975): ヴェルム氷期における日高山脈の地形形成環境, 地理学評論 vol.48-1,p1~26. 山本憲史朗 (1989): 完新世における日高山脈北部の周氷河性堆積物の移動期, 第四紀研究 vol.28(3),p139-157. 小山内信智ほか (2017): 平成 28 年台風 10 号豪雨により北海道十勝地方で発生した土砂流出, 砂防学会誌 vol.69,no.6,p80~91. 倉橋稔幸 伊藤佳彦ほか (2017):2016 年台風 10 号による日勝峠の斜面災害と地形について, 平成 29 年度日本地すべり学会北海道支部 北海道地すべり学会研究発表会予稿集,p27~30. 6

参考資料 3. 平成 28 年 8 月出水の概要

3-1 豪雨の概要 8 月 17 日 ~23 日の 1 週間に 3 個の台風が北海道に上陸し, 道東を中心に大雨により河川の氾濫や土砂災害が発生した 8 月 29 日から前線に伴う降雨があり, その後, 台風第 10 号が北海道に接近し, 串内観測所では 8 月 29 日から 8 月 31 日までの累加雨量が 515mm を超えるなど, 各地で大雨となった アメダス降雨量分布 ( 平成 28 年 8 月 15 日 1 時 ~24 日 24 時 ) ( 日本気象協会配布資料から転載 ) アメダス降雨量分布 ( 平成 28 年 8 月 29 日 1 時 ~31 日 9 時 ) ( 日本気象協会配布資料から転載 ) 台風第 7 号 第 11 号 第 9 号 第 10 号経路図 道内の主要な地点における年平均降水量 (mm) 地点名 年平均降水量 ( mm ) 統計期間 地点名 年平均降水量 ( mm ) 統計期間 札幌 1,097 1876~2015 釧路 1,077 1890~2015 函館 1,170 1873~2015 帯広 934 1892~2015 小樽 1,241 1943~2015 網走 829 1889~2015 旭川 1,097 1888~2015 北見 766 1976~2015 室蘭 1,183 1923~2015 留萌 1,244 1943~2015 0mm 8/16~8/31の雨量観測について 串内観測所( 空知郡南富良野町 ) 総雨量 888mm 戸蔦別川上流観測所( 北海道帯広市 ) 総雨量 895mm 本資料の数値は速報値であるため, 今後の調査で変わる場合があります 図表は第 1 回十勝川堤防調査委員会資料 -1 p.9 を引用 300mm 以上 8

3-1 豪雨の概要 標高の低い新得雨量観測所などでは台風 10 号の雨量が既往最大でない 日勝雨量観測所では 24 時間雨量は既往最大ではないが,2 日雨量と 3 日雨量は台風 10 号の雨量が既往最大である 台風 10 号の雨量は標高が高い地点で大きく,2 日雨量 3 日雨量と長期の雨量が大きい 新得町 清水町 芽室町 帯広市 中札内村 基図 : 国土地理院電子国土 web( 色別標高図 ) 観測所名 標高 (m) H28 台風 10 号の実績雨量 (mm) 24 時間雨量 2 日雨量 3 日雨量 ウエンザル 860 356.0 400.0 413.0 戸蔦別 602 450.0 521.0 531.0 新得 ( 気 ) 178 162.5 187.5 234.0 日勝 800 170.0 228.0 236.0 札内川ダム 493 337.0 454.0 465.0 狩勝 464 386.0 441.0 507.0 三の山峠 ( 道路 ) 485 133.0 143.0 155.0 北新得 ( 道路 ) 229 156.0 164.0 213.0 新内 ( 道路 ) 421 173.0 189.0 227.0 日勝峠 ( 道路 ) 797 374.0 457.0 485.0 清水道路 ( 道路 ) 141 100.0 134.0 170.0 狩勝峠 ( 道路 ) 623 249.0 287.0 354.0 * 赤字 : 今回が既往最大 地図上の地盤高 観測所名 標高 (m) 既往最大雨量 (mm) 24 時間雨量 2 日雨量 3 日雨量 ウエンザル 860 356.0 400.0 413.0 戸蔦別 602 450.0 521.0 531.0 新得 ( 気 ) 178 277.0 284.0 290.0 日勝 800 219.0 228.0 236.0 札内川ダム 493 337.0 454.0 465.0 狩勝 464 386.0 441.0 507.0 三の山峠 ( 道路 ) 485 192.0 219.0 237.0 北新得 ( 道路 ) 229 166.0 179.0 213.0 新内 ( 道路 ) 421 173.0 210.0 248.0 日勝峠 ( 道路 ) 797 374.0 457.0 485.0 清水道路 ( 道路 ) 141 191.0 191.0 193.0 狩勝峠 ( 道路 ) 623 249.0 287.0 354.0 地図上の地盤高 注 )( 気 ) 以外は国土交通省所管雨量観測所 24 時間雨量 : 日付とは関係なく雨量が最大となる連続した24 時間の雨量 2 日雨量 : 午前 1 時から24 時までを1 日とし雨量が最大となる連続した2 日雨量 3 日雨量 : 午前 1 時から24 時までを1 日とし雨量が最大となる連続した3 日雨量 9

3-1 豪雨の概要 砂防事業実施箇所である高標高部の雨量規模 ( 砂防堰堤の水通し断面に係わる ) の参考に戸蔦別雨量観測所で確率雨量を推定した ( 単独の観測所での推定であり, 観測期間が短いため, 今回の出水を代表する降雨確率では無いことに留意が必要 ) 戸蔦別雨量観測所 ( 標高 602m) では,24 時間最大雨量が 450mm を記録した 戸蔦別雨量観測所の既往最大の 24 時間雨量であり, 確率雨量の推定 ( ) では概ね 130~180 年確率規模と同等の降雨であった 新得町 清水町 ピーク雨量 41mm/h (8/30 23:00) 累加雨量 532mm (8/28 13:00 ~ 8/31 12:00) 24 時間雨量 450mm (8/30 1:00 ~ 8/30 24:00) 芽室町 帯広市 戸蔦別雨量観測所 中札内村 確率雨量の推定には, 一般財団法人国土技術研究センター開発の 水文統計ユーティリティー V1.5 を用いた 10

3-2 被害の概要 平成 28 年 8 月出水は, 十勝川水系の 12 箇所の観測所で既往最大水位を観測し, 茂岩観測所, 千代田観測所, 芽室太観測所, 南帯橋観測所の 4 箇所で計画高水位を超過した 本資料の数値は速報値であるため, 今後の調査で変わる場合があります 図 グラフは第 1 回十勝川堤防調査委員会資料 -1 p.7 を引用 11

3-2 被害の概要 深層崩壊のような大規模な崩壊及び天然ダムの発生は見られなかった また, 多くの渓流で土石流が発生している 渓流の最上流部で発生した土石流の規模は小規模であるが, 土石流が流下の過程で, 大量の水とともに, 河床洗掘 側岸侵食によって花崗岩の礫 花崗岩が風化した細かいマサ土 畦畔林の流木を下流へ大量に運搬した可能性がある 大量の土砂 流木の流出により河道の断面が小さくなっている場所もあり, また, 今後, 上流の河道に堆積している土砂の一部が少ない降雨でも徐々に流下してくることが考えられ, 河道の断面積が急に狭くなる地点 河床勾配の変化点での土砂の堆積が生じるおそれがある 日時 : 現地調査 平成 28 年 9 月 5 日 ( 月 ), ヘリ調査 9 月 7 日 ( 火 ) 調査箇所 : 現地調査 北海道清水町 十勝川水系ペケレベツ川 ヘリ調査 北海道新得町 十勝川水系パンケ新得川 新得町 十勝川水系パンケ新得川 ~ 帯広市 十勝川水系戸蔦別川 調査団 : 団長 小山内信智 ( 北海道大学農学研究院特任教授, 北海道大学突発災害防災 減災共同プロジェクト拠点 ) 団員 笠井美青, 林真一郎 ( 北海道大学 ) 藤浪武史, 阿部孝章 ( 国立研究開発法人土木研究所寒地土木研究所 ) 塩野康浩 ( 国土防災技術北海道株式会社 ) 宮崎知与, 澤田雅代 ( 株式会社シン技術コンサル ) 早川智也, 松岡暁, 佐伯哲朗 ( 日本工営株式会社 ) 戸蔦別川第 2 号砂防堰堤戸蔦別川第 5 号砂防堰堤ペケレベツ川 平成 28 年 9 月 12 日北海道開発局撮影 ( 防災ヘリほっかいによる巡視 ) 12

3-2 被害の概要 平成 28 年 8 月出水では戸蔦別川に整備していた複数の床固工が被災を受けた 戸蔦別川 8 号砂防堰堤 戸蔦別川 7 号砂防堰堤 戸蔦別川 6 号砂防堰堤 戸蔦別川 5 号砂防堰堤 砂防基準点 林道被災 ( 約 3km) 帯広市 戸蔦別川橋落橋 戸蔦別川 1 号砂防堰堤 戸蔦別川床固工群 中札内村 戸蔦別川第 2 号床固工護床工流出状況 戸蔦別川第 4 号床固工被災状況 2,4,7,11 号床固工と複数の帯工が被災 13

3-2 被害の概要 平成 29 年 8 月 31 日撮影 平成 29 年 8 月 30 日撮影 戸蔦別川第 2 号床固工 ( 護床工流出 ): 復旧完了 平成 29 年 9 月 29 日撮影 戸蔦別川第 4 号床固工 ( 左岸導流堤 護床工流出 副堤天端欠損 ): 復旧完了 平成 29 年 9 月 1 日撮影 戸蔦別川第 7 号床固工 ( 左岸側壁護岸流出 ): 復旧完了 平成 29 年 8 月 31 日撮影 戸蔦別川第 11 号床固工 ( 右岸本堤 側壁護岸流出 ): 復旧完了 14

3-2 被害の概要 No.1 広内川 No.2 パンケ新得川 No.2 No.6-1 芽室川 No.3 No.1 No.4-3 ペンケオタソイ川 No.4-1,2 No.4-3 No.6-2 芽室川 No.5-2 ペケレベツ川 No.5-2 No.6-4 芽室川 No.5-1 No.3 九号川 No.5-1 ペケレベツ川 No.6-2 No.6-3 芽室川 No.6-5 芽室川 No.7 渋山川 No.6-1 No.6-3 No.6-4 No.6-5 芽室町 No.4-1,2 ペンケオタソイ川 No.7 15

3-2 被害の概要 ペケレベツ川 1 号砂防堰堤 :90m 下流に位置を変えて施工中 ペケレベツ川渓流保全工最下流の 13 号落差工 : 施工中 平成 28 年 9 月 19 日撮影 平成 29 年 9 月 20 日撮影 ペケレベツ川 1 号砂防堰堤 ( 左岸袖部破堤, 垂直壁 側壁 魚道倒壊, 護床工 護岸工流出 ): 施工中 佐幌川 1 号砂防堰堤 清水町 ペケレベツ川 13 号落差工 平成 28 年 10 月 14 日撮影 平成 29 年 9 月 20 日撮影 ペケレベツ川渓流保全工最下流の 13 号落差工 ( 垂直壁 魚道倒壊, 護床工 護岸工流出 ): 施工中 16

3-2 被害の概要 芽室川 4 号砂防堰堤 清水町 芽室川 3 号砂防堰堤 芽室川 3 号砂防堰堤,4 号砂防堰堤,4 号床固工,3 号床固工, 遊砂地, 渓流保全工施工中 芽室川 4 号砂防堰堤 芽室川 3 号砂防堰堤 芽室川 3 号砂防堰堤工被災直後 ( 垂直壁流出 ) 芽室川 4 号砂防堰堤工被災直後 ( 垂直壁流出 ) 芽室川 3 号砂防堰堤工 施工中 芽室川 4 号砂防堰堤工 施工中 17

3-2 被害の概要 ペンケオタソイ川の砂防堰堤 3 基の土砂および流木の撤去を完了 1 号砂防堰堤 3 号砂防堰堤 1 号砂防堰堤 3 号砂防堰堤 新得町 2 号砂防堰堤 2 号砂防堰堤 ペンケオタソイ川 1 号砂防堰堤被災直後 (H28.9 撮影 ) (H28.9 撮影 ) ペンケオタソイ川 2 号砂防堰堤被災直後 (H28.9 撮影 ) ペンケオタソイ川 3 号砂防堰被災直後 (H29.9.19 撮影 ) ペンケオタソイ川 1 号砂防堰堤撤去後 (H29.9.19 撮影 ) ペンケオタソイ川 2 号砂防堰堤撤去後 (H29.9.19 撮影 ) ペンケオタソイ川 3 号砂防堰堤撤去後 7

3-3 砂防設備の効果 戸蔦別川上流域では砂防堰堤により土砂と流木が捕捉されており, 堰堤工の機能が発揮されたため, 下流への土砂流出による被害を軽減した 戸蔦別川下流域では床固工により拡幅部と狭窄部が固定され, 拡幅部での土砂堆積や流路変動を抑制した 堰堤上流で流出土砂の捕捉 ( 約 70,000m 3 ) を確認し, 堰堤下流への土砂流出を抑制した 戸蔦別川 戸蔦別川 位置図 土砂及び流木を補捉しており砂防堰堤の効果が確認され, 堰堤下流への流出を抑制した 堰堤上流で新たな流出土砂の捕捉が確認され, 堰堤下流への土砂流出を抑制した 被災前の戸蔦別川第 1 号砂防堰堤 (H26.7 撮影 ) 被災後の戸蔦別川第 1 号砂防堰堤 (H28.9 撮影 ) 戸蔦別川の拡幅部と狭窄部が固定され, 土砂移動や流路変動を抑制した 戸蔦別川 戸蔦別川第 7 号砂防堰堤 戸蔦別川第 5 号砂防堰堤出水前 ( 平成 27 年撮影 ) 出水後 ( 平成 28 年撮影 ) 19

11 3-3 砂防設備の効果 位置図 十勝地方新得町清水町芽室町 1 2 3 4 芽室川 造林沢川 6 5 捕捉量 50,100m³ 10 9 8 7 脈捕捉量 118,200m³ JR 根室本線 出典 : 国土地理院電子国土 Web( 色別標高図 ) に加筆 捕捉量 509,100m³ 砂防堰堤 13 基で約 80 万 m 3 の土砂を捕捉 ( 捕捉量は速報値 )

参考資料 4. 平成 28 年 8 月出水時における 土砂動態分析

4-1 山地の崩壊状況 ( 上流域の土砂動態分析 ) 平成 28 年 8 月出水後撮影の衛星画像及び LP オルソ画像を基に, 目視により崩壊地, 崩壊土砂を判読し, それらの面積を流域毎に算出した 判読した崩壊地は, 出水前に存在していた既存崩壊地も含めたものである 判読に用いた衛星画像及び LP オルソ画像 ➀ ランドサット (LS) 流域全体を把握できるため, 主に崩壊地の判読に活用 撮影日 2016 年 10 月 11 日 解像度 30m/pixel ➁ ワールドビュー 3(WV3) 主に崩壊土砂の判読に活用 撮影日 2016 年 10 月 16 日 解像度 0.31m/pixel 3SPOT 主に崩壊土砂の判読に活用 撮影日 2016 年 10 月 19 日 解像度 1.5m/pixel 4LP オルソ画像 戸蔦別川流域の判読に活用 撮影日 2016 年 9 月 6 日,9 月 13 日,9 月 27 日,9 月 28 日,10 月 3 日 崩壊地, 崩壊土砂の判読イメージ 斜面上に崩壊面を持つもの = 崩壊地 流域界 計画基準点流路 ( 河道 ) 斜面下部に堆積しているもの = 崩壊土砂 22

4-1 山地の崩壊状況 ( 上流域の土砂動態分析 ) 日高山脈東麓の崩壊面積率は 0.2% 程度であり, 一度の出水での崩壊としては比較的大きなものであった 美生川上流, 戸蔦別川, 久山川に崩壊地が多く, 高標高部の谷筋や周辺斜面 ( 集水地形をなす 0 次谷の源頭部付近 ) に多く分布している 24 時間雨量が 200mm 程度以上の分布範囲で,1km メッシュ崩壊面積率が高くなる傾向がある 新得町 平均 0.18% 清水町 凡例使用画像 LANDSAT SPOT WorldView 空中写真オルソ 崩壊面積率 芽室町 小林川 戸蔦別川 帯広市 基図 : 地理院地図 24 時間雨量の分布 戸蔦別雨量観測所の 24 時間最大雨量期間である 8 月 30 日 1 時から 24 時までの 24 時間雨量 戸蔦別川 中札内村 崩壊地分布図 基図 : 地理院地図 基図 : 地理院地図 1km メッシュ崩壊面積率 24 時間雨量と 1km メッシュ崩壊面積率 23

4-1 山地の崩壊状況 ( 上流域の土砂動態分析 ) 深層崩壊のような大規模な崩壊は発生しておらず, 平均崩壊面積は 1,128m 2 で,10,000m 2 以下の崩壊が全体の 99% を占める 侵食に弱い深成岩 ( 花崗岩等 ), 付加コンプレックス ( 砂岩泥岩混在層 ) で崩壊面積率が高い 地質によって崩壊数や崩壊規模の傾向は概ね変化せず, 数百 m 2 の規模の崩壊が卓越する ( 規模の大きな崩壊は深成岩に多い ) 最大面積 :38093m 2 最小面積 :3m 2 平均面積 :1128m 2 0.50% 0.40% 0.30% 0.20% 地域平均値 0.18% 新得町 0.10% 0.00% 箇所当りの崩壊地面積の頻度分布 縦軸崩壊面積率 深成岩 堆積岩類 地質 付加コンプレックス 変成岩 清水町 芽室町 350 300 250 200 150 100 50 0 個数 1~25 25~100 深成岩 100~400 400~900 900~1600 1600~2500 2500~3600 3600~4900 4900~6400 6400~10000 10000~40000 箇所当りの崩壊地面積 (m 2 ) 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 累積 (%) 350 300 250 200 150 100 50 0 個数 1~25 25~100 付加コンプレックス 100~400 400~900 900~1600 1600~2500 2500~3600 3600~4900 4900~6400 6400~10000 10000~40000 箇所当りの崩壊地面積 (m 2 ) 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 累積 (%) 基図 : 地理院地図 産総研地質調査総合センター地質図を基に作図 帯広市中札内村 地質に対する崩壊地面積率 24

4-1 山地の崩壊状況 ( 上流域の土砂動態分析 ) 戸蔦別川より北側の流域において, 短時間雨量 ( 最大 1 時間雨量, 最大 3 時間雨量 ) が大きいメッシュが目立つ それに対し 札内川では短時間雨量は全体に小さい傾向にあり, 崩壊面積率も戸蔦別やその他の流域に比べ小さい値を示す傾向が明瞭である 24 時間雨量では 短時間雨量に比べ札内川と戸蔦別川の差は不明瞭であり, 崩壊は短時間雨量に支配されていた可能性がある 凡例 札内川流域 戸蔦別川流域 その他河川 新得町 凡例 新得町 凡例 最大 1 時間雨量 最大 3 時間雨量 0-10mm 0-30mm 清水町 10-20mm 20-30mm 清水町 30-50mm 50-70mm 30-50mm 70-100mm 50-70mm 100-150mm 70-100mm 150-200mm 芽室町 100mm - 芽室町 200mm - 帯広市 帯広市 中札内村 中札内村 最大 1 時間雨量と崩壊地の分布 最大 3 時間雨量と崩壊地の分布 25

4-1 山地の崩壊状況 ( 上流域の土砂動態分析 ) 清水町 渋山川 崩壊面積 :9500m 2 深成岩 ( 花崗岩 ) 付加コンプレックス 土石流流下土砂途中で停止 表土薄い 崩壊面岩盤露出 芽室町 美生ダム 美生川 流下土砂美生湖に到達約 10km 崩壊面積 :38000m 2 基図 : 地理院地図 美生川および渋山川で面積が比較的大きい崩壊地は, いずれも付加コンプレックス ( 砂岩 泥岩等混在層 ) 分布域の崩壊であった 美生川および渋山川の崩壊は, ともに範囲は広いが, 崩壊深は浅く確認され, 表層崩壊と見受けられる 崩壊面には褐色の岩盤 ( 付加コンプレックス ) が見えており, 崩壊土砂に大きな礫は少なく, 小さな礫が主体と見受けられる 美生川の土砂は美生湖まで到達し, 渋山川の土砂は途中で停止しており, どちらも土石流が下流へは到達していない 表土薄い 崩壊面岩盤露出 崩壊残土, 大きな礫含まない 26

4-1 山地の崩壊状況 ( 上流域の土砂動態分析 ) 深成岩 ( 花崗岩 ) 土石流流下跡 崩壊面は土砂で, 白い大きな礫が見える 崩壊面積 :11200m 2 清水町 付加コンプレックス 約 2km 戸蔦別川 基図 : 地理院地図 白い大きな礫が多い 久山川で面積が比較的大きい崩壊地は, 花崗岩を主体とする深成岩 ( 花崗岩等 ) 分布域の崩壊であった 崩壊地から谷状に流出しており, 崩壊面には土砂の堆積が見られ, 白い大きな礫が確認される ( 上右側写真 ) 土石流流下跡にも白い大きな礫が多く見え ( 上左側写真 ), 戸蔦別川の周氷河堆積物の流出と類似している また, 土砂は下流まで到達しているように見受けられる 崩壊面積 :36800m 2 深成岩 ( 花崗岩 ) 帯広市 約 2km 清水沢 付加コンプレックス 基図 : 地理院地図 27

4-1 山地の崩壊状況 ( 上流域の土砂動態分析 ) 戸蔦別川流域における崩壊面積は, 昭和 20 年代より崩壊面積率 0.5% 前後で推移している S30 年,H13 年と H28 年の災害後は, 崩壊面積率は増加する傾向にあるが, それ以外は変化が無いか減少している 崩壊地の中には経年とともに消滅するものもあり, 崩壊面積が災害毎に極端に変わることは無く, 増減を繰り返している 戸蔦別川流域における崩壊面積率の推移グラフ 昭和 22 年 ~ 昭和 52 年までのデータは空中写真判読による ( 札内川砂防基本計画書 p17 に記載されている崩壊面積より算出 ) 昭和 56 年, 昭和 58 年, 平成 5 年, 平成 14 年 ~ 平成 16 年のデータはオルソ画像及び空中写真判読による ( 既往検討報告書より引用 ) 平成 28 年のデータは平成 28 年 8 月出水後に撮影されたオルソ画像判読結果より算出 28