プレス発表に関する手引き

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

情報提供の例

1. 背景 NAFLD は非飲酒者 ( エタノール換算で男性一日 30g 女性で 20g 以下 ) で肝炎ウイルス感染など他の要因がなく 肝臓に脂肪が蓄積する病気の総称であり 国内に約 1,000~1,500 万人の患者が存在すると推定されています NAFLD には良性の経過をたどる単純性脂肪肝と

11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

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記 者 発 表(予 定)

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

2 肝細胞癌 (Hepatocellular carcinoma 以後 HCC) は癌による死亡原因の第 3 位であり 有効な抗癌剤がないため治癒が困難な癌の一つである これまで HCC の発症原因はほとんど が C 型肝炎ウイルス感染による慢性肝炎 肝硬変であり それについで B 型肝炎ウイルス

肝疾患に関する留意事項 以下は 肝疾患に罹患した労働者に対して治療と職業生活の両立支援を行うにあたって ガイド ラインの内容に加えて 特に留意すべき事項をまとめたものである 1. 肝疾患に関する基礎情報 (1) 肝疾患の発生状況肝臓は 身体に必要な様々な物質をつくり 不要になったり 有害であったりす

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汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

14栄養・食事アセスメント(2)

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

核医学分科会誌

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ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

平成14年度研究報告

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

生物時計の安定性の秘密を解明

はじめに 我が国の肝がん死亡者数は,2005 年頃を最多とし, その後はゆっくりと減少しつつあります しかし, いまだに年間死亡者数は 3 万人を超えており, 依然として対策が極めて重要な病気です 原因としては,C 型肝炎,B 型肝炎, 非アルコール性脂肪肝炎 (NASH: ナッシュ ) やアルコー

6. 研究対象者として選定された理由 当科を受診された各種慢性肝疾患の方が研究対象者に含まれます 7. 研究対象者に生じる利益 負担および予想されるリスクノベルジン錠の国内臨床試験に置ける安全性評価対象例 74 例中 23 例 (31.1%) に副作用が認められ 主な自覚症状では悪心 4 例 (5.

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

1. ウイルス性肝炎とは ウイルス性肝炎とは 肝炎ウイルスに感染して 肝臓の細胞が壊れていく病気です ウイルスの中で特に肝臓に感染して肝臓の病気を起こすウイルスを肝炎ウイルスとよび 主な肝炎ウイルスには A 型 B 型 C 型 D 型 E 型の 5 種類があります これらのウイルスに感染すると肝細胞

Powered by TCPDF ( Title 非アルコール性脂肪肝 (NAFLD) 発症に関わる免疫学的検討 Sub Title The role of immune system to non-alcoholic fatty liver disease Author

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要旨 グレープフルーツや夏みかんなどに含まれる柑橘類フラボノイドであるナリンゲニンは高脂血症を改善する効果があり 肝臓においてもコレステロールや中性脂肪の蓄積を抑制すると言われている 脂肪肝は肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まった状態で 動脈硬化を始めとするさまざまな生活習慣病の原因となる 脂肪肝

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

平成24年7月x日

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

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疫学研究の病院HPによる情報公開 様式の作成について

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糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

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脂肪滴周囲蛋白Perilipin 1の機能解析 [全文の要約]

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

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要旨 平成 30 年 2 月 21 日新潟県福祉保健部 インターフェロンフリー治療に係る診断書を作成する際の注意事項 インターフェロンフリー治療の助成対象は HCV-RNA 陽性の C 型慢性肝炎又は Child-Pugh 分類 A の C 型代償性肝硬変で 肝がんの合併のない患者です 助成対象とな

審査結果 平成 23 年 4 月 11 日 [ 販 売 名 ] ミオ MIBG-I123 注射液 [ 一 般 名 ] 3-ヨードベンジルグアニジン ( 123 I) 注射液 [ 申請者名 ] 富士フイルム RI ファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 22 年 11 月 11 日 [ 審査結果

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

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60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 2 月 4 日 独立行政法人理化学研究所 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の進行に二つのグリア細胞が関与することを発見 - 神経難病の一つである ALS の治療法の開発につながる新知見 - 原因不明の神経難病 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) は 全身の筋

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

さらに, そのプロセスの第 2 段階において分類方法が標準化されたことにより, 文書記録, 情報交換, そして栄養ケアの影響を調べる専門能力が大いに強化されたことが認められている 以上の結果から,ADA の標準言語委員会が, 専門職が用いる特別な栄養診断の用語の分類方法を作成するために結成された そ

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を


汎発性膿庖性乾癬の解明

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

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1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

報道発表資料 2007 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 ヒト白血病の再発は ゆっくり分裂する白血病幹細胞が原因 - 抗がん剤に抵抗性を示す白血病の新しい治療戦略にむけた第一歩 - ポイント 患者の急性骨髄性白血病を再現する 白血病ヒト化マウス を開発 白血病幹細胞の抗がん剤抵抗性が

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日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

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1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

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プレス発表 2012 年 9 月 4 日 14 時独立行政法人放射線医学総合研究所 脂肪肝の発症及び進行を PET でモニタリングすることに成功 PET 検査が脂肪肝の診断や進行度判定に有効な手段となる可能性 独立行政法人放射線医学総合研究所 ( 理事長 : 米倉義晴 ) 分子イメージング研究センター分子認識研究プログラム謝琳博士研究員 ---- 本研究成果のポイント ---- 脂肪肝を超早期に診断できる PET 薬剤 [ 18 F]FEDAC を開発した マウスにおける脂肪肝の発症及び進行を PET でモニタリングすることに成功した 放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター 1 分子認識研究プログ ラム分子プローブ開発チームの謝琳 ( しゃりん ) 博士研究員らは 肝硬変や肝 がんにつながる脂肪肝 2 を超早期に診断できる PET 3 薬剤を開発し マウスにお ける脂肪肝の発症や進行をモニタリングすることに成功しました 脂肪肝は 食べ過ぎや飲み過ぎによって肝臓に中性脂肪やコレステロールがた まった 肝臓の肥満症ともいえる状態です それ自体は自覚症状もなく病気の部 類ではありませんが 早期に発見し生活習慣改善等の対応をすることで 肝硬変 などの重篤な病気への進行を避けることができます 脂肪肝の診断には 血液検 査や 超音波検査 CT MRI など各種画像検査が行われますが 唯一の確定診断 法である肝生検は患者に負担が大きく 容易には実施できません そのため患者 に負担が少なく より簡便で早期に発見できる診断方法が期待されています 今回の研究では 様々な肝疾患においてミトコンドリア障害 4 が起きているこ とに着目し ミトコンドリア膜に存在する特定のタンパク質に特異的に結合する PET 薬剤 [ 18 F]FEDAC 5 を開発しました 脂肪肝モデルマウス 6 に対し [ 18 F]FEDAC を用いて PET でモニタリングした結果 脂肪肝から脂肪性肝炎 肝硬変への進行 に伴い 肝臓における [ 18 F]FEDAC の集積が増加する画像が得られました また 肝臓における [ 18 F]FEDAC 集積レベルは 脂肪肝の病理スコアと高い相関性を示し ました 今回の研究成果をヒトへの応用を考え発展させることで PET 検査が 脂肪肝 の診断や進行度の判定に対しても有効な手段となる可能性が期待できます 今回 の結果の最終稿は 9 月 4 日 19 時 ( 日本時間 ) に Journal of Hepatology のオン ライン版に掲載されます 1 / 5

研究の背景と目的 脂肪肝とは肝臓内部に中性脂肪が過剰に入り込んでいる状態をいいます 正常では 3-4% ですが 脂肪肝では中性脂肪が 30% 以上の過剰な状態になります 脂肪肝の状態が続くと肝臓が繊維化し 肝機能が低下し 脂肪性肝炎から肝硬変を経て肝がんに移行することが分かっています 脂肪性肝炎の診断には血液検査や 超音波検査 CT MRI など各種画像検査は困難であり 肝生検のみが現段階では唯一の方法です しかし この方法は患者に負担が大きく 容易に実施できる検査法ではありません そのため臨床では多くの脂肪性肝炎患者が存在しているのに関わらず, 診断が行われず肝硬変へ進展していく患者が少なくありません そこで 患者に優しく 判断が容易で より早期に検出できる脂肪肝の診断方法が期待されています そこで 我々は 様々な肝疾患においてミトコンドリア障害が起きていることに着目しました 肝細胞が異常に活性化した時 ミトコンドリア膜に存在するトランスロケータータンパク質 (TSPO) 7 が増加します その結果 ミトコンドリア膜の透過性が強まり 中性脂肪や活性酸素が増加し さらにはアポトーシス誘導が増加して脂肪肝に至りますが この TSPO に特異的に結合する PET プローブ [ 18 F]FEDAC を用いることで 脂肪肝マウスの肝臓における放射能濃度を測定し TSPO の量との相関を確認することによって マウスを大きく傷つけることなく脂肪肝の発症及び進行を鑑別できる画像診断法の開発を行いました 研究手法と結果 肝臓内のミトコンドリアは肝臓が行う分解や解毒などすべての処理に必要なエネルギーを通常はグリコーゲンを分解することにより作っています 脂肪が細胞の中に大量に入り込むと脂肪からエネルギーを作るようになりますが その際 コレステロールなどに親和性の高い TSPO が増加します そして TSPO の増加によりミトコンドリアはより多くの活性酸素種を放出して肝細胞を傷つけてしまい 相乗的に肝細胞の状態を悪化させてしまいます そのため時間が経つごとにマウスの肝臓は単純性脂肪肝から 炎症 繊維化へと状態が悪化していきます 実験に使用した脂肪肝モデルマウスは MCD 食 ( メチオニン コリン欠損食 : methionine/choline-deficient diet) を投与することで作製し 肝重量 / 体重比 血清 AST/ALT などを測定したうえで 脂肪肝の病理変化を経時的に調べました その結果 時間の経過につれ 肝臓が単純性脂肪肝から肝炎を経て肝硬変に悪化していることを確認できました 2 / 5

そこで MCD 食投与後 0 週 2 週 4 週 8 週の脂肪肝マウス及び正常なマウス それぞれ 1 匹ずつに麻酔をかけた後 TSPO に特異的に結合する [ 18 F]FEDAC (3.5-3.7 MBq/ 0.1 ml) を静脈注射し 直ちに小動物用 PET 8 で肝臓における放射能濃度を測定し PET 画像 ( 撮像時間は 30 分 ) 及び CT 画像を取得しました その結果 脂肪肝の進行に伴い 肝臓における [ 18 F]FEDAC の集積は経時的に増加し 遺伝子解析の結果からも TSPO の発現量及び TSPO 機能に関わる各遺伝子の発現量も高くなっていたことが明らかとなりました 一方 同時に取得した CT 画像のシグナルは低く 脂肪肝の進行に伴う経時的変化はあまりみられませんでした 図マウスの肝臓の PET 画像と CT 画像 マウスの PET 画像は脂肪肝の病変が進むにつれて画像が明るくなっているのがわかる マウスの右下に写っているのは胃 使用した PET カメラは Small-animal Inveon PET scanner (Siemens,Knoxville, TN) PET 終了後 すぐ CT 撮像を行う 使用した CT カメラは Small-animal CT system, R_mCT2 (Rigaku, Tokyo) 3 / 5

本研究成果と今後の展望 今回の研究を通じて 我々はミトコンドリア膜に存在する特定のタンパク質である TSPO に特異的に結合する PET 薬剤 [ 18 F]FEDAC を PET で使用することにより 脂肪肝の進行度を高い定量的な相関性で示すことを発見しました これらの結果から 脂肪肝の早期診断や進行度の判定及び分類に対し [ 18 F]FEDAC-PET は高感度かつ特異性をもつ有用な診断ツールであることが世界で初めて証明され 今後臨床への応用が期待されます また 脂肪肝だけでなく ミトコンドリア障害に関わる他の生活習慣病の診断と予防に役に立てていきたいと考えています 用語解説 1 分子イメージング研究センター平成 17 年度に放医研に創立された分子イメージング研究を行っている研究センター 腫瘍や精神疾患に関する基礎研究や臨床研究のほか 分子プローブの開発や放射薬剤製造技術開発 PET や MRI の計測技術開発や病態適用など 分子イメージングの基礎研究から疾患診断の臨床研究まで幅広い研究を行う世界屈指の分子イメージング研究拠点 文部科学省が推進する 分子イメージング研究戦略推進プログラム の PET 疾患診断研究拠点 として選定を受けている 2 脂肪肝肝臓に中性脂肪が異常に蓄積した状態 栄養過多のほか 過剰な飲酒によっても引き起こされる 過剰な飲酒によって引き起こされる脂肪肝をアルコール性脂肪肝といい 過食が原因で脂肪肝から肝炎 肝硬変となる病気を非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) と呼んでいる このプレスでの脂肪肝とは NASH に至る脂肪肝を示す 3 PET PET とは Positron emission tomography の略称で 陽電子断層撮像法のこと PET 装置は 画像診断装置の一種で陽電子を検出することにより様々な病態や生体内物質の挙動をコンピュータ処理によって画像化する 4 ミトコンドリア障害ミトコンドリア自体の減少 またはミトコンドリア内の酵素不足により 細胞内のエネルギーの通貨とも言える ATP( アデノシン三リン酸 ) が不足し 細胞の機能が損なわれること ミトコンドリアは 細胞内に存在する器官で 栄養源を分解して ATP を作る能力を持つ 4 / 5

5 18 F-FEDAC N-benzyl-N-methyl-2-[7,8-dihydro-7-(2-18 F-fluoroethyl)-8-oxo-2-pheny l-9h-purin-9-yl]acetamide の略 2009 年に放医研が PET 用に開発した TSPO ( ベンゾジアゼピン受容体ともいう ) に特異的に結合する性質を持った試薬 半減期が 110 分程度の 18 F を付けている 6 脂肪肝モデルマウス研究用に脂肪肝を発生させたマウス 四塩化炭素などの薬剤投与でも発生させることができる 今回の場合は 6-8 週齢の C57BL/6 マウスに MCD 食 ( メチオニン コリン欠損食 :methionine/choline-deficient diet) を投与することにより 作製した コリンの欠乏は 体内での活性酸素種を過剰に発生させ 肝細胞障害及び脂肪化を引き起こす 7 TSPO ミトコンドリア外膜に存在する輸送タンパク質 他の蛋白質と複合体を形成することにより ミトコンドリア膜を通り抜けるための穴を作る 生理学的役割に不明な点はあるが 免疫機能の調整や ステロイド生合成 細胞増殖に関与するとされている 8 小動物用 PET 分子イメージング技術の向上のために 実験用の小動物を測定する PET スキャンをする対象物が小動物であるため 臨床用の装置と比べて空間分解能が高く 開口径が小さい傾向にある ( 問い合わせ先 ) 独立行政法人放射線医学総合研究所企画部広報課 TEL:043-206-3026 FAX:043-206-4062 E-mail:info@nirs.go.jp 5 / 5