広域交通ネットワーク計画について 交通政策審議会答申に向けた検討の中間まとめ 平成 27 年 3 月 東京都
1 東京における広域交通ネットワークの整備東京を利便性が高く豊かで活力ある都市としていく上で鉄道は不可欠な交通インフラであり 都はこれまで国や鉄道事業者等と連携し 平成 12 年の運輸政策審議会答申第 18 号 ( 以下 現答申 という ) に位置付けられた路線の実現に取り組んできている 現答申において 目標年次である平成 27 年までに開業することが適当である路線 (A1 路線 ) は 都内に副都心線やつくばエクスプレス 日暮里 舎人ライナーなど 16 路線あり その全路線が既に開業あるいは事業中の状況にある 一方 現答申に位置付けのあるその他の路線 (A2 路線及び B 路線 ) は 事業主体や事業採算性等の課題があり 都内の全路線が未着手である 今後も東京の持続的な発展を図るためには鉄道ネットワークの充実が重要であるが 路線の整備には多大な事業費を要すること等から 計画路線の整備効果や課題を十分に見極めながら取り組むことが必要である 2 検討経緯国は 現答申の目標年次が近づいていることから 平成 26 年 月に交通政策審議会へ 東京圏における今後の都市鉄道のあり方について を諮問しており 平成 27 年度中に審議会答申 ( 以下 次期答申 という ) が取りまとめられる予定である 都においても 次期答申に向け 平成 26 年 5 月に学識経験者等で構成する委員会を設置し 都における今後の鉄道ネットワークの在り方等について調査検討を進めてきた この中で路線の効果等についての調査が進捗したことから 現答申の未着手の路線 (A2 路線及び B 路線 ) を中心に現時点の検討状況を取りまとめることとした 今後 国の審議会の動向を踏まえながら検討の深度化を図るとともに 総合的な交通政策のあり方検討会 における取りまとめと整合を図り 本調査計画の取りまとめを行う - 1 -
3 路線の検討 (1) 広域交通ネットワーク形成の目標と指標近年の社会経済情勢の変化を踏まえて 広域交通ネットワークの形成に向けて取り組むべき政策目標を つ設定した その目標への寄与度を定量的に把握するため 各目標に対して指標を設定し 都市政策的な効果を分析する 目標 A: 高齢者を含めた誰もが快適に移動できる都市づくり 指標 : 混雑率の低下 乗換回数の減少など目標 B: 都市の活力の維持向上 指標 : 空港アクセスの強化 拠点間移動の時間短縮など目標 C: 災害に強く 環境にやさしい都市づくり 指標 : 防災拠点へ直通する地域の増加 CO 2 排出量の削減など目標 D: 地域の課題への対応 指標 : 多摩部における速達性の向上 開発に伴う混雑率上昇抑制など (2) 検討の進め方 (1) の政策目標への寄与度に加え 収支採算性や費用対効果の分析を 基に 東京全体のネットワークのバランスを考慮して 総合的に検討する 現在の検討状況これまでの概略的な検討においては 現答申に位置付けられている路線等 ( 東京 8 号線延伸 東京 11 号線延伸 東京 12 号線延伸 新空港線 蒲蒲線 JR 中央線複々線化 JR 京葉線延伸 区部周辺部環状公共交通 つくばエクスプレス延伸 多摩都市モノレール延伸など ) について 事業主体 収支採算性や技術面等 多くの課題が存在するものの 鉄道ネットワークの強化や周辺路線の混雑緩和 沿線地域の利便性向上等の整備効果が見込まれる 上記の路線について 整備効果や課題について更に詳細に検討を進める - 2 -
とともに 広域交通ネットワークの在り方について 全体を見渡した上で引き続き検討し 今後 都として 次期答申における各路線の位置付けをどのように求めていくかについて取りまとめていく また 新空港線など空港アクセスについては 関係機関の検討状況や羽田空港の機能強化に向けた取組等を踏まえて 引き続き検討を行う なお 以下の 5 路線について 整備効果が高いことが見込まれることから 想定される課題とともに詳細を以下に示す 東京 8 号線延伸 ( 豊洲 ~ 住吉 ) 整備効果 本路線は 東西線の高い混雑率の緩和に大きく寄与する また 周辺の既存路線と結節することで 臨海部から東京区部東部を南北方向につなぐネットワークが強化され 利便性が大きく向上する 今後の課題 本路線の収支採算性の確保は 加算運賃等の利用者負担を設定するなど既存の補助制度以上の資金を確保することが前提となることから 事業主体及び事業スキームについて検討の深度化が必要である 東京 12 号線延伸 ( 光が丘 ~ 大泉学園町 ) 整備効果 本路線は 区部周辺部に存在する鉄道利用が必ずしも便利でない地域内を結ぶことで 沿線の利便性の向上に資する路線である さらに 都心部の中核拠点や都心周辺部とのネットワークが強化される 今後の課題 本路線の収支採算性の確保は 開業後の需要の確保が前提となるため 沿線まちづくりの具体化等による将来的な輸送需要の確保が必要である また 既存の補助制度以上の資金を確保することが前提となることから 事業スキーム等の検討の深度化が必要である - 3 -
多摩都市モノレール延伸 ( 箱根ヶ崎方面 ) 整備効果 本路線は 多摩都市モノレールの開業区間と一体となって 多摩地域の南北方向を中心とした拠点間の連携強化に資する路線である また 多摩地域において 鉄道利用が必ずしも便利でない地域内を結ぶことで 沿線の利便性の向上が図られるとともに 多摩地域の活力の向上につながる 今後の課題 事業費については インフラ外部 1 に対し国などからの補助について協議を行うほか 導入空間も含めインフラ部 2 は地方自治体による投資が多額であり 財源の確保が必要である また 関係者間において 幅広く費用負担の在り方を含めた事業スキームを検討する必要がある なお 本路線は導入空間となりうる道路整備に既に着手しているが 収支採算性確保の観点から 将来の輸送需要動向を十分に見極める必要がある 多摩都市モノレール延伸 ( 町田方面 ) 整備効果 本路線は 多摩都市モノレールの開業区間と一体となって 多摩地域の南北方向を中心とした拠点間の連携強化に資する路線である また 多摩地域において 鉄道利用が必ずしも便利でない地域内や交通需要への対応が必ずしも十分でない地域内を結ぶことで 沿線の利便性の向上が図られるとともに 多摩地域の活力の向上につながる 今後の課題 事業費については インフラ外部 1 に対し国などからの補助について協議を行うほか 導入空間も含めインフラ部 2 は地方自治体による投資が多額であり 財源の確保が必要である また 事業採算性や事業主体も踏まえ 関係者間において 幅広く費用負担の在り方を含めた事業スキームを検討する必要がある 都市モノレールは 従来の整備手法では導入空間となる道路が確保されていることが条件となるが 本路線においては 道路が未整備である区間や道路の都市計画もない区間がある したがって 事業の実現に当たっては 事業主体を含めた道路整備計画や事業手法の検討が必要である - -
JR 東日本羽田アクセス線 < 現答申外 > 整備効果 本路線は 空港アクセス旅客の利用が多く見込まれることから 既存の空港アクセス路線に新たな路線が加わることで 羽田空港への安定的な輸送を確保することができる また 既存のネットワークと接続することで路線整備の便益が広範囲に及び 国際競争力強化に資する路線である 今後の課題 事業費や事業計画の深度化が必要である また 事業スキーム等が未定であることから 関係機関による十分な調整が必要である また ネットワークの効果を最大限に活用できるような計画を検討する必要がある 5 今後の予定今後 次期答申の全体像や具体的な路線に関する議論等 交通政策審議会における検討状況を見ながら 平成 27 年度に都の考え方を取りまとめ 国に提出する予定である 1: インフラ外部とは 軌道事業者により整備されるものであり 車両 駅舎の内装 通信設備 線路設備 電車線 配電線 変電所等が含まれる 2: インフラ部とは 道路構造物として道路管理者により整備されるものであり 支柱 桁 床板 駅舎の骨格 ( 屋根 壁 柱等 ) 交通安全施設等が含まれる - 5 -
参考 1 運輸政策審議会答申第 18 号 ( 平成 12 年 ) における路線一覧 ( 東京都周辺 ) 分類路線名東急東横線複々線化 ( 多摩川 ~ 日吉 ) 東急目黒線改良 ( 目黒 ~ 田園調布 ) 都営地下鉄三田線 ( 目黒 ~ 三田 ) 東京メトロ南北線 ( 目黒 ~ 溜池山王 ) 埼玉高速鉄道線( 赤羽岩淵 ~ 浦和美園 ) 西武池袋線複々線化 ( 石神井公園 ~ 練馬 ) 小田急小田原線複々線化 ( 東北沢 ~ 喜多見 ) 東京メトロ半蔵門線 ( 水天宮前 ~ 押上 ) 東急大井町線改良 ( 大井町 ~ 二子玉川 ) 東急田園都市線複々線化 ( 二子玉川 ~ 溝の口 ) A1 東武スカイツリーライン複々線化 ( とうきょうスカイツリー ( 押上 )~ 曳舟 ) 都営地下鉄大江戸線 ( 都庁前 ~ 新宿 ) 東京メトロ副都心線 ( 池袋 ~ 渋谷 ) りんかい線 ( 東京テレポート~ 大崎 ) JR 上野東京ライン ( 上野 ~ 東京 ) つくばエクスプレス ( 秋葉原 ~つくば ) 東京モノレール羽田空港線 ( 羽田空港第 1ビル~ 羽田空港第 2ビル ) ゆりかもめ ( 有明 ~ 豊洲 ) 日暮里 舎人ライナー ( 日暮里 ~ 見沼代親水公園 ) 1 東京 1 号線東京駅接着 2 東京 8 号線延伸 ( 豊洲 ~ 住吉 ) 3 東京 8 号線延伸 ( 押上 ~ 野田市 ) 東京 9 号線複々線化 ( 和泉多摩川 ~ 新百合ヶ丘 ) 5 東京 11 号線延伸 ( 押上 ~ 松戸 ) 6 東京 12 号線延伸 ( 光が丘 ~ 大泉学園町 ) A2 7 新空港線 蒲蒲線 8 JR 中央線複々線化 9 JR 京葉線延伸 10 JR 総武線 京葉線接続新線 11 ゆりかもめ延伸 12 多摩都市モノレール延伸 ( 箱根ヶ崎方面 ) 1 東京 9 号線延伸 ( 唐木田 ~ 横浜線 相模線方面 ) 2 東京 10 号線複々線化 ( 調布 ~ 笹塚 ) 3 東京 12 号線延伸 ( 大泉学園町 ~ 武蔵野線方面 ) 区部周辺部環状公共交通 B 5 羽田空港アクセス新線 6 つくばエクスプレス延伸 7 東海道貨物支線貨客併用化 8 多摩都市モノレール延伸 ( 町田方面 ) 9 多摩都市モノレール延伸 ( 八王子方面 ) 凡例 A1: 目標年次 ( 平成 27 年 ) までに開業することが適当である路線 A2: 目標年次 ( 平成 27 年 ) までに整備着手することが適当である路線 B: 今後整備について検討すべき路線 A1 の路線の都内区間は全て事業中又は開業済み 開業した路線については現在の名称を記載するなど 運輸政策審議会答申第 18 号に記載の路線名とは一部異なる
参考2 運輸政策審議会答申第18号 平成12年 広域路線図 東京都周辺 3 6 3 12 5 8 9 6 1 2 2 11 10 9 1 8 7 7 5 運輸政策審議会答申 第18号付図を基に作成 行政区域 鉄道 は 国土 数値情報の 行政区域 データ 鉄道データ 国 土交通省/2015年1月時 点 を一部加工