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国民 1 人当たり GDP (OECD 加盟国 ) ( 付表 2)OECD 加盟国の国民 1 人当たりGDP(2002~2009 年 ) 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 1 ルクセンブルク 58,709 ルクセンブルク 59,951 ルクセンブルク 64,016 ルクセンブル

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

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2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

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2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

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日本の高齢者の所得分布の 特色と政策的課題 慶應義塾大学経済学部山田篤裕 2008 年 4 月 30 日

平均的には 高い所得だが 100 90 80 70 66-75 歳層の可処分所得の疑似所得代替率 (2000 年 ) 日本では高齢者 (66-75 歳層 ) の可処分所得の疑似所得代替率は 8 割以上で 他の先進国と比較して 平均的には 遜色ない水準に達している 60 50 40 所得は等価可処分所得 (= 世帯規模を調整した可処分所得 ) で計算されている 30 20 10 0 疑似所得代替率 :51-65 歳層の可処分所得に対する 66-75 歳層の可処分所得の比 メキシコ ポーランド フランス カナダ ドイツ オーストリア 日本 アメリカ オランダ スイス イタリア OECD 平均 ギリシャ ハンガリー スウェーデン フィンランド デンマーク ポルトガル ( 出所 )Förster and Mira d'ercole (2005) チェコ ニュージーランド ノルウェイ イギリス アイルランド オーストラリア 各国における所得統計の取り方には差異があるので 各国間の単純な数値の比較 順位付けには十分な注意が必要 2

大きい所得格差 現役と高齢者の所得格差 (Gini 係数 ) の大きさ (2000 年頃 ) 18-65 歳層 66 歳以上 18-65 歳層 66 歳以上 AUS 29.5 > 28.0 LUX 26.2 > 24.9 AUT 24.6 > 24.3 MEX 48.0 < 53.3 BEL n.a... n.a. NLD 25.0 > 21.9 CAN 30.5 > 26.0 NZL 33.0 > 27.5 CZE 26.0 > 17.7 NOR 26.0 > 21.7 DEN 22.6 > 21.6 POL 37.0 > 30.5 FIN 26.0 > 24.3 POR 34.8 < 37.5 FRA 27.2 > 26.9 SPA 32.3 > 30.9 GER 27.2 > 26.9 SWE 24.2 > 21.6 GRC 33.5 < 37.2 SWI 26.4 < 28.8 HUN 29.6 > 23.4 TUR 43.4 < 50.9 IRL 29.0 < 32.9 UKG 31.9 > 27.8 ITA 34.5 > 32.4 USA 34.6 < 36.9 JPN 31.0 < 33.8 OECD avr. 30.5 > 29.6 日本では高齢者 (66 歳以上 ) の所得格差の方が現役 (18-65 歳層 ) の所得格差より大きくなっている 所得は等価可処分所得 (= 世帯規模を調整した可処分所得 ) で計算されている Gini 係数 : 所得格差指標の中で最も多用されているものであり 完全平等の時に 0% 完全不平等の時に 100% の値を取る 各国における所得統計の取り方には差異があるので 各国間の単純な数値の比較 順位付けには十分な注意が必要 ( 出所 )Förster and Mira d'ercole (2005) 3

35 30 25 20 高い相対的貧困率 高齢世代と全人口の相対的貧困率の高さ (2000 年 ) 日本の高齢者の相対的貧困率は高い 65 歳以上全人口 所得は等価可処分所得 (= 世帯規模を調整した可処分所得 ) で計算されている 相対的貧困率 : 中位等価可処分所得の 50% 以下の人々の割合 ( 出所 )Förster and Mira d'ercole (2005) 各国における所得統計の取り方には差異があるので 各国間の単純な数値の比較 順位付けには十分な注意が必要 アイルランド 35.5 ポルトガル メキシコ アメリカ ギリシャ オーストラリア 日本 トルコ イタリア イギリス OECD-25 カ国 ノルウェー スイス フランス フィンランド オーストリア ドイツ スウェーデン デンマーク ルクセンブルク ハンガリー カナダ ポーランド チェコ オランダ ニュージーランド 29.2 28.4 24.6 24.3 23.6 21.1 16.4 15.3 14.4 13.3 12.4 11.2 10.5 10.4 9.2 8.5 7.8 6.1 6.1 5.2 4.3 4.3 2.1 0.4 1.6 15 10 5 0 4

所得格差の要因は勤労収入 高齢層の所得格差への 4 所得要素の寄与率 勤労収入社会移転 80% 75% 70% 65% 60% 55% 50% 45% 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% -5% 2001 2001 カナダフィンラント ドイツイタリア日本オランダスウェーテ ンイギリスアメリカ カナダフィンラント ドイツイタリア日本オランダスウェーテ ンイギリスアメリカ 資本所得直接税 社会保険料 80% 0% 70% -5% 60% -10% 50% -15% 40% -20% 30% -25% 20% -30% 10% -35% 0% -40% 2001 2001 カナダフィンラント ドイツイタリア日本オランダスウェーテ ンイギリスアメリカ カナダフィンラント ドイツイタリア日本オランダスウェーテ ンイギリスアメリカ 所得格差指標の絶対的な大きさを 100% とした場合の各時点の各所得要素の寄与を示す 社会移転には主に公的年金 資本所得には主に財産所得や私的年金が含まれる 寄与率の計算方法は Shorrocks (1982) に基づく プラスの寄与率は所得格差拡大を マイナスの寄与率は所得格差縮小を示している なお 直接税 社会保険料のパネルのみ目盛幅が異なる ( 出所 )Yamada (2002) および山田 (2006)

高齢単身女性に多い低所得者 75 歳以上の高齢単身女性に占める第 I 所得五分位の割合 (1990 年代半ば 日本のみ2002 年も ) カナダフィンランドドイツイタリア日本 (1996 年 ) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 日本では高齢単身女性に低所得者が多い 所得五分位とは 所得の少ない順に人口を並べ 2 割ずつ 5 グループに区切ったものである 最も所得の低いグループを第 I 所得五分位と呼ぶ 日本 (2002 年 ) オランダスウェーデンイギリスアメリカ ( 出所 )Yamada & Casey(2002) 日本において 75 歳以上の高齢者に占める単身女性の割合は 2002 年時点で 16% である 各国における所得統計の取り方には差異があるので 各国間の単純な数値の比較 順位付けには十分な注意が必要 6

中程度の再分配効果と低い防貧機能 年金給付の累進度 1 階部分および低所得者への給付水準 保険料のシミュレーション値 年金累進度指標 OECD 平均賃金分布 各国賃金分布 1 階部分 : 普遍的 再分配的年金部分 (AW の賃金との比 )% 資力調査付給付 基礎年金最低年金受給額計 低所得者の相対的な年金給付水準 (AW の賃金との比 )% 改革前 ( ネット ) 改革後 ( ネット ) 年金保険料 ( 雇用主拠出分含む )% 1994 年 2004 年 カナダ 87 -- 17 14 -- 31 -- -- 5 10 フランス 25 -- 32 -- 23 32 43 42 22 24 ドイツ 27 26 19 -- -- 19 40 33 19 20 イタリア 3 4 22 -- -- 22 56 47 28 33 日本 47 46 -- 16 -- 16 32 27 17 14 スウェーデン 13 10 34 -- -- 34 45 43 19 19 イギリス 81 82 20 15 15 30 29 36 -- -- アメリカ 41 51 22 -- -- 22 -- -- 12 12 OECD 平均 37 37 -- -- -- -- -- -- 20 20 ( 出所 )OECD (2007) 年金累進度指標とは年金給付額のGini 係数を賃金のGini 係数で割り その値を100% から引いたものである もし 年金給付額と賃金の分布がまったく同じ場合には累進度指標は0% 年金が従前賃金の水準に関わらず全員にまったく同額給付される場合には累進度指標は 100% となる つまり累進度指標は100% に近いほど 年金制度内の再分配効果が大きい AWとは平均的労働者を意味し その平均賃金は推計時点の日本(2004 年 ) で494 万円 シミュレーションは 2004 年時点 ( 予定された改革を含む ) での各国の給付計算式のパラメータを固定 単身世帯を設定 20 歳から年金受給開始年齢まで全期間の拠出を前提 また イギリスの 最低年金 ( minimum pension) の計算は 所得比例年金において きわめて低い賃金の労働者にたいして あたかもより高い賃金 (minimum credit) があるものとみなす制度に基づいている また は該当する制度が無い データがない あるいは主要な改革が過去 10 年間なかったことを示す 低所得者とは賃金が平均賃金 (AW) の半分である者をここでは指している イギリスの年金保険料が示されていないのは 各社会保険への拠出がまとめて徴収されており 年金保険に関する保険料部分のみをその中から識別できないため 7

資力調査付給付の利用は少ない 資力調査付給付の受給率 1990 年代半ば ( 日本のみ2003 年 ) カナダフィンランドドイツ日本オランダスウェーデンイギリスアメリカ 60-64 18 18 10 2 12 10 20 12 65-69 16 14 7 2.. 16 17 11 70-74 19 16.... 25 27 11 2 75+ 29 21.. 13 42 38 11 ( 出所 )Yamada & Casey(2002) 厚生労働省 (2004) 被保護者全国一斉調査平成 15 年度 総務省 年齢別推計人口 Yamada(2007).. はサンプル数が 50 に満たないため表示していない また 日本については元資料で 70-74 歳と 75 歳以上が識別可能ではないため 当該年齢階級は 70 歳以上計として表示している 8

非典型労働者の将来の貧困リスク 被用者保険に適用すべき非典型労働者の適用率 (%) 90 80 70 60 50 40 年金保険 30 医療保険 20 10 0 ( 出所 ) 非典型労働者に対する年金等に関する意識調査 (2006) に基づく丸山 (2007) 被用者保険に適用すべき非典型労働者の大部分が未適用となっている 将来 高齢期に貧困に陥るリスクがある ここでの 被用者保険に適用すべき非典型労働者 とは 雇用契約期間が 3 ヶ月以上かつ週平均労働時間が 30 時間以上かつ 1 ヶ月の平均労働日数が 17 日以上という条件を満たす非典型労働者のことを言う 9

まとめ 平均的には 高齢者の所得は高いが 大きい所得格差 勤労収入等により裕福な高齢者がいる一方 75 歳以上単身女性などの低所得層が厚い 公的年金制度にはいくつかの問題 年金制度内の再分配効果は中程度ある一方 基礎年金の防貧機能が弱く 基礎年金が得られない人の安全網 ( 資力調査付給付 ) が機能しているかどうか疑問 将来 高齢期に貧困に陥るリスク グループの存在 厚生年金保険に適切に適用されていない非典型労働者 10

参考資料 Förster, Michael. F., and Marco Mira d Ercole (2005) Income Distribution and Poverty in OECD Countries in the Second Half of the 1990s, Social, Employment and Migration Working Papers, No. 22, OECD, Paris. OECD (2007) Pensions at a Glance: Public Policies across OECD Countries 2007 Edition, OECD, Paris. Shorrocks, A. F., (1982) Inequality Decomposition by Factor Components, Econometrica, vol. 50, No. 1, pp.193-211. Yamada, A., (2002) The Evolving Retirement Income Package: Trends in Adequacy and Equality in Nine OECD Countries, OECD Labour Market and Social Policy Occasional Paper, No 63. (2007) Income Distribution of People of Retirement Age in Japan, Journal of Income Distribution, vol.16, No.3-4, pp.31-54. and B. H. Casey (2002) The Public-Private Mix of Retirement Income in Nine OECD Countries: Some Evidence from Micro-data and an Exploration of its Implications, Luxembourg Income Study Working Paper, No. 311. 丸山桂 (2007) 就業形態の多様化と非典型労働者の公的年金適用問題 年金と経済 vol.26 No.1 山田篤裕 (2006) 雇用と年金 高齢期における勤労収入の所得格差 低所得率への影響 財務総合政策研究所 + 貝塚啓明編 年金を考える 持続可能な社会保障制度 中央経済社 11