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ノート 医療薬学 42(3) (2016) mfolfox6 療法後 FOLFIRI 療法時への切替における予防的制吐療法変更状況とその効果 進行 再発大腸がん患者を対象とした後方視的探索研究 * 小山佐知子, 荒川裕貴, 佐藤由美子, 牛膓沙織, 江尻将之 5 2 6

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資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

レジメン名抗がん剤 ( 一般名 ) 抗がん剤 ( 商品名 ) 用量用法 1 クール適応 シタラビン (AraC) キロサイド注 75mg/ m2 静脈内注射 day 36, 1013, 17 20, メルカプトプリン (6MP) ロイケリン散 60mg/

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AC 療法について ( アドリアシン + エンドキサン ) おと治療のスケジュール ( 副作用の状況を考慮して 抗がん剤の影響が強く残っていると考えられる場合は 次回の治療開始を延期することがあります ) 作用めやすの時間 イメンドカプセル アロキシ注 1 日目は 抗がん剤の投与開始 60~90 分

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ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

「             」  説明および同意書

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

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( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

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抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

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がん化学療法に伴う 悪心 嘔吐対策について 薬剤部がん専門薬剤師村上通康

目次 抗がん剤誘発悪心 嘔吐の機序 各種制吐薬の特徴 制吐薬適正使用ガイドライン 当院の制吐療法の現状

抗がん剤の副作用に関する大規模調査 H25.3. 国立がん研究センター調査 n=854

悪心 嘔吐を制御する意義 患者にとって最も辛い副作用である 持続すると脱水 電解質異常 低栄養を引き起こす 抗がん剤の減量が必要となり治療効果が低下する 患者の治療意欲が減退する QOL および全身状態を維持し 治療を継続するためには悪心 嘔吐のコントロールが必須である

抗がん剤誘発悪心 嘔吐 (CINV) CINV (Chemotherapy-induced nausea and vomiting) 抗がん剤が消化管の粘膜や脳の嘔吐中枢を刺激することによっておこる 抗がん剤の種類によって 発現リスクが異なり 制吐療法も異なる 個人差が大きい ( 若年 女性 アルコール非飲者 嘔吐経験あり 不安が強い ) 嘔気の種類 ( 急性 遅発性 予測性 ) によって有効な制吐剤が違う

悪心 嘔吐の種類と制吐剤 種類伝達経路制吐剤 急性投与 24 時間以内 遅発性投与 24 時間後 ~ 数日 予測性投与前 消化管 嘔吐中枢 血液 CTZ 嘔吐中枢 消化管 嘔吐中枢 感覚 情動 大脳 セロトニン 5HT 3 受容体拮抗剤グラニセトロン注 ゾフラン錠 アロキシ注 ステロイド (DEX) デキサート注 デカドロン錠 NK1 受容体拮抗剤イメンド Cap プロイメンド注 抗不安薬ワイパックス錠 etc

抗がん剤の嘔吐に関与する神経伝達物質 セロトニン サブスタンス P ドパミン 嘔吐反射 エンドルフィン ヒスタミン GABA アセチルコリン

嘔吐のメカニズムと制吐剤の作用部位 1 抗がん剤 2 抗がん剤 嘔吐中枢 CTZ 迷走神経 消化管 NK 1 受容体 サブスタンスP 中枢 末梢 5HT 3 受容体? セロトニン NK1 受容体拮抗剤 ステロイド 5HT3 受容体拮抗剤 CTZ:chemoreceptor trigger zone ( 化学受容体引き金帯 )

嘔吐パターンと神経伝達物質の関与 (CDDP) セロトニン セロトニン 5HT 3 受容体拮抗剤 強 サブスタンス P 嘔吐の程度 急性 ステロイド NK1 受容体拮抗剤 遅発性 弱 0 1 2 3 4 5 抗がん剤投与後の時間 ( 日 )

セロトニン 5HT 3 受容体拮抗剤 日本では 7 薬剤が保険承認されている当院採用第 1 世代 : グラニセトロン注 ゾフラン錠第 2 世代 : アロキシ注 第 1 世代は急性期の悪心 嘔吐の予防に有効だが遅発期に関しては効果が乏しい 急性期 (Day1) に使用 連日投与のエビデンスなし 第 2 世代は急性期および遅発期の悪心 嘔吐に対する有効性が証明されている 便秘 頭痛 過敏症等の有害作用あり

ステロイド 急性および遅発期の悪心 嘔吐に有効で しかも安価であり ベース薬として不可欠 制吐作用機序については解明されていない 抗がん剤の制吐剤として デキサメタゾン ( デキサート注 デカドロン錠 ) が保険承認されている 十分量を使用する! 適正量についての明確なエビデンスはないが CDDP 使用時の比較試験 メタ解析あり 高血糖 易感染 吃逆等の有害事象有り

NSCLC PS 0-2 デキサメサゾンの至適投与量の検討 (CDDP) CDDP >50mg/m2 OND 8mg DEX 4mg R (n=530) OND 8mg DEX 8mg OND 8mg DEX 12mg OND 8mg DEX 20mg MET 80mg MET 80mg MET 80mg DEX 16mg DEX 16mg DEX 8mg Total dose of DEX = 44 ~ 60mg day 1 day 2 day 3 day 4 (%) 80 60 40 20 Complete protection rate on day 1 Vomiting Nausea p<0.02 n.s. 0 4 mg 8 mg 12 mg 20 mg Italian Group for Antiemetic Research JCO 16:2937-2942, 1998

Dose effect of DEX in acute phase in a meta-analysis acute phase Total dose on day 1 Odds ratios (95%C.I.) Odds ratios (95%C.I.) Ioannidis JPA. JCO18:3409-3422, 2000 Favor control Favor DEX Favor control Favor DEX

Dose effect of DEX in delayed phase in a meta-analysis Total dose days 1-7 Odds ratios (95%C.I.) Odds ratios (95%C.I.) Ioannidis JPA. JCO18:3409-3422, 2000 Favor control Favor DEX Favor control Favor DEX

アプレピタント イメンドカプセル 選択的 NK 1 受容体拮抗剤 ( サブスタンス P 結合阻害 ) 強い悪心 嘔吐が生じる抗悪性腫瘍剤 ( シスプラチン等 ) に限り 他の制吐剤と併用 (5HT 3 RA+DEX) 1 日目 125mg 2 日目以降 80mg を 1 日 1 回経口 1 日目は抗悪性腫瘍剤の投与 1 時間以上前に 2 日目以降は午前中に服用 3 日間投与を目安とし 5 日間を超えて使用しない 薬物相互作用に注意!( 併用ステロイド減量 )

イメンドの薬力学的試験 - 脳内 NK 1 受容体占有率の評価 (PET 試験 )- PET トレーサー分布 イメンド投与前 イメンド投与後 PET トレーサーは NK 1 受容体と結合した ( イメンド投与前 ) イメンドは血液脳関門を通過し NK 1 受容体を占有した イメンド 100mg 以上を経口投与することによって 90% 以上の NK 1 受容体占有率を示した 低 高 イメンド投与前の NK 1 受容体の発現は線条体で最も高かった 最終投与終了後 24 時間後の血漿中濃度と線条体中の NK 1 受容体占有率の間に相関が見られた 線条体中の NK 1 受容体の 50% および 90% 占有する時のイメンドの血漿中濃度は約 10ng/mL および約 100ng/mL と推定された Bergstrom M et al. Biol Psychiatry, 55 : 1007 1012, 2004

高度催吐性がん化学療法を受ける患者を対象とした二重盲検比較試験 CDDP 70mg/m 2 100 p<0.05 90% 88% p<0.05 - 国内臨床試験 - イメンド群 (146 例 ) 標準治療群 (150 例 ) χ 2 検定 患者割合 ( % ) 80 60 40 20 69% 56% 73% 56% 有意な悪心なし : 最大悪心が軽度以下 悪心の評価は 4 段階カテゴリー尺度 ( なし 軽度 中等度 高度 ) を用いた 0 全期間 (1~5 日目 ) 急性期 (1 日目 ) 遅発期 (2~5 日目 ) シスプラチン ( 70mg/m 2 ) を含むがん化学療法を受ける患者を対象とし, イメンド群 (1 日目 125mg,2~ 5 日目 80mg), または標準治療群のいずれかに割り付けた 本試験ではすべての患者に1 日目にグラニセトロンを,1~3 日目にリン酸デキサメタゾンを投与した 申請時評価資料

ホスアプレピタント プロイメンド注 アプレピタントのプロドラッグ注射剤 抗悪性腫瘍剤投与 1 日目に 1 回点滴静注で イメンド 3 日間内服と同等の効果 1 時間前に 30 分間かけて投与 点滴時間の延長 3 日目に併用ステロイドの血中濃度が低下 ( イメンドと比較 ) 3 日目のステロイド増量が必要 イメンドカプセルと併用不可 ( 保険上 ) 4 日目以降の追加投与ができない 注射部位障害 ( 血管痛 静脈炎 ) の報告が多い

パロノセトロン アロキシ注 第 2 世代のセロトニン 5HT 3 受容体拮抗剤 急性及び遅発期の悪心 嘔吐に有効 5HT 3 受容体に高い結合親和性と選択性を有する ヒトでの血漿中消失半減期は約 40 時間と長い ( 第 1 世代グラニセトロン約 3 時間 ) アロステリック受容体効果 ( 受容体内在化 ) 抗悪性腫瘍剤投与前の 1 回投与で持続的な制吐効果 ( 約 5 日間有効 ) を示す 副作用 : 便秘 高額

各 5HT3 受容体拮抗剤の受容体結合占有率 受容体結合占有率 (%) 100 アロキシ 0.75mg 80 60 40 20 グラニセトロン 40μg/kg オンダンセトロン 4mg ラモセトロン 0.3mg アザセトロン 10mg φ B (%)= φ B (%) Cp f Ki Cp f Ki+Cp f 100 : 受容体結合占有率 (%) : 非結合型血漿中薬物濃度 : ヒト 5-HT 3 受容体に対する Ki 値 方法 0 24 48 72 96 時間 : 各 5-HT3 受容体拮抗剤について報告されている血漿中未変化体濃度推移より 血漿蛋白結合率を用いて非結合型薬物濃度推移を算出した さらに ヒト5-HT3 受容体の強制発現蛋白を用いた同一実験にて算出されたKi 値を用い 受容体結合占有率の時間推移を算出した 20 社内資料, 研究報告書 No.337, 2010 120

PROTECT (PAL vs GRA in HEC) 100 嘔吐性事象 完全抑制率 CR率 嘔吐/空嘔吐なし レスキュー追加制吐治療なし アロキシ群 555例 グラニセトロン群 559例 *** *** ***p<0.001 80 75.3 C R 率 73.3 60 56.8 40 51.5 44.5 40.4 20 0 急性期 0 24時間 遅発期 24 120時間 全体 0 120時間 アロキシのグラニセトロンに対する急性期の非劣性が示された * アロキシのグラニセトロンに対する遅発期の優越性が示された 有意水準 両側確率0.05未満 Saito.M. et al : Lancet Oncol.,10 115 (2009)

薬価 グラニセトロンバッグ : 2,756 円 デキサート注 (6.6mg) :203 円 デカドロン錠 (0.5mg) :5.9 円 16T 3 日間 = 283 円 アロキシ注 :14,632 円 イメンド :125mg 4,946 円 1 日目 +80mg 3,380 円 2 日間 = 11,706 円

制吐療法ガイドライン ( 海外 ) MASCC NCCN ASCO

従来の制吐療法の問題点 1. 海外の標準治療薬 ( アプレピタント パロノセトロン ) が国内で未承認であった 2. 国内に制吐療法のガイドラインがなく 医療機関 医師によってやり方が様々であった 3. ステロイドの適正使用 ( 未使用 投与量不足 ) ができていなかった 4. 5HT 3 受容体拮抗剤の適正使用 ( 不必要な投与 ) ができていなかった 5. 海外で推奨される標準的な制吐療法が実施できず 多くの患者が悪心 嘔吐に苦しんでいた

制吐薬適正使用ガイドライン ( 日本 ) MASCC NCCN ASCO

制吐療法の原則 1. 悪心 嘔吐の発症予防が治療目標である 2. 催吐リスクに応じ適切な制吐薬を使用する 3. 発症リスクのある間 最善の治療を行う ( 高度催吐性 4 日間 中等度催吐性 3 日間 ) 4. 過去の制吐療法の効果や患者背景因子を考慮する 5. 抗がん剤に直接起因しないものも考慮する 6. 各制吐薬特有の有害事象を考慮する 日本癌治療学会制吐剤適正使用ガイドライン

催吐リスク分類 高度催吐性薬剤 (HEC: high emetogenic chemotherapeutic agents) 急性 遅発性ともに 90% 以上の発現率 中等度催吐性薬剤 (MEC: moderate ) 急性が 30~90% で遅発性も問題となる 軽度催吐性薬剤 (LEC: low ) 急性が 10~30% で遅発性は問題なし 最小度催吐性薬剤 (Minimal) 急性が 10% 以下で遅発性は問題なし

抗がん剤の催吐性リスク分類 催吐性 薬剤名 高度 (>90%) ( シスプラチン ダカルバジン AC(EC) 療法 シクロホスファミド FEC 療法 >1500mg/m 2 カルボプラチン ドキソルビシン イダルビシン 中等度 (30-90%) ネダプラチンエピルビシン オキサリプラチンイリノテカン ダウノルビシンテラルビシン シタラビン >200mg/m 2 メルファラン 50mg/m イホスファミド 2 アムルビシンエノシタビンテモゾロミド亜ヒ酸 メトトレキサート 250~1000mg/m 2 ブスルファン >4mg/day シクロホスファミド 1500mg/m 2 インターロイキン 2 >12~15 million units/m 2 アクチノマイシン -D インターフェロン α 10000 units/m 2

抗がん剤の催吐性リスク分類 催吐性 薬剤名 ドセタキセル リポソーマルドキソルビシン マイトマイシン C 軽度 (10-30%) パクリタキセル パクリタキセルーアルブミン エトポシド ゲムシタビン ミトキサントロン ペントスタチン 5FU シタラビン 100~200mg/m 2 ペメトレキセド メトトレキサート 50~250mg/m 2 ベバシズマブ L- アスパラギナーゼ ビンブラシチン 最小度 (10%<) セツキシマブ クラドリビン トラスツズマブ シタラビン <100mg/m 2 リツキシマブ メトトレキサート ボルテゾミブ ブレオマイシン <50/m 2 ビンクリスチン ビノレルビン ビンデシン

高度催吐性リスク群 (HEC) 1( 抗がん薬投与前 ) 2 3 4 5 ( 日 ) アプレピタント (mg) 125 80 80 5-HT 3 受容体拮抗薬 デキサメタゾン (mg) 9.9 8 8 8 8 急性 遅発性 注 ) アプレピタントを使用しない場合は 1 日目のデキサメタゾン注射薬は 13.2-16.5mg とする デキサメタゾンの投与日数について 点線で囲ってある場合は状況に応じて投与の可否を選択できるものとする 制吐剤適正使用ガイドライン一般社団法人日本癌治療学会

中等度催吐性リスク群 (MEC) 5-HT 3 受容体拮抗薬 1( 抗がん薬投与前 ) 2 3 4 5 ( 日 ) デキサメタゾン (mg) * 9.9 (6.6) 8 8 8 オプション カルボプラチン イホスファミド イリノテカン メトトレキサートなど使用時 アプレピタント (mg) 5-HT3 受容体拮抗薬デキサメタゾン (mg) 125 80 80 * 4.95 (3.3) 4 4 4 * カッコ内は代替用量 急性 遅発性 制吐剤適正使用ガイドライン一般社団法人日本癌治療学会

軽度催吐性リスク群 (LEC) 1( 抗がん薬投与前 ) 2 3 4 5 ( 日 ) デキサメタゾン (mg) 6.6 急性 遅発性 制吐剤適正使用ガイドライン一般社団法人日本癌治療学会

当院の制吐療法の問題点 ( 当時 ) 1. HEC : Day1のステロイド投与量不足 (iv) 2. HEC MEC : Day2~ 経口ステロイド無し ガイドライン準拠の制吐療法を投与量不足! No! 3. LEC:5HT 3 受容体拮抗剤のルーチン使用 4. HEC : アプレピタント未使用 HEC:high emetogenic chemotherapeutic agents( 高度催吐性薬剤 ) MEC:moderate ( 中等度催吐性薬剤 ) LEC:low ( 軽度催吐性薬剤 )

抗がん剤誘発悪心 嘔吐実態調査 HEC ( 人 ) MEC ガイドライン非準拠 ( 人 )

抗がん剤誘発悪心 嘔吐実態調査 HEC MEC 共に制吐療法が不十分である ステロイドが適正使用されていない HECはステロイドだけでは不十分 アプレピタント必要 MEC は十分量のステロイドが有効 LEC は 5HT 3 受容体拮抗剤なしでも同等 ( 人 ) ( 人 ) HEC ガイドライン準拠の制吐療法を MEC ガイドライン! 非準拠

日本癌治療学会制吐薬適正使用ガイドライン (2010.5. 第 1 版 ) 催吐リスク 急性 (day1) 遅発性 (day2~) 当院採用レジメン 5-HT 3 RA DEX8mg:days2-4 乳 :FEC, EC + + 胃 :TS-1/CDDP 高度催吐性 DEX9.9mg APR80mg:days2-3 CPT-11/CDDP (HEC) + 食道 :5FU/CDDP APR125mg 肺 :CDDP 含有レジメン APR 未使用時泌 :CDDP 含有レジメン DEX13.2~16.5mg 中等度催吐性 (MEC) 低度催吐性 (LEC) 5-HT 3 RA + DEX9.9mg (6.6mg) 又は 5-HT 3 RA + DEX4.95mg (3.3mg) + APR125mg DEX6.6mg (3.3mg) DEX8mg:days2-3 APR80mg:days2-3 ± DEX4mg:days2-3 Non 頭頸部 :CDDP 含有レジメン乳 :TC, CMF 胃 :CPT-11 大腸 :FOLFOX, FOLFIRI, XELOX, CPT-11 肺 :CBDCA 含有レジメン婦 :CBDCA 含有レジメン泌 :CBDCA 含有レジメン血内 : トレアキシン 乳 :DOC, PTX, GEM, VNR 胃 :DOC, WPTX, 肝胆膵 :GEM 肺 :DOC, GEM, PEM 婦 :PTX, DOC, ドキシル, 泌 :DOC, GEM 5-HT 3 RA=5-HT 3 受容体拮抗薬, APR= アプレピタント, DEX= デキサメタゾン

ガイドライン準拠後の効果について調査 < 調査対象 > 外来化学療法室および外科 呼吸器科病棟で高度催吐性薬剤 (HEC) および中等度催吐性薬剤 (MEC) による治療を受けた患者 < 調査方法 > 悪心 嘔吐 食欲不振のグレード評価 (CTCAE.v4.0) ができる調査票 (MRAT) を用いて 症状発現を調査

MRAT (Matsuyama Red Cross Antiemesis Tool) MAT (MASCC Antiemesis Tool) 国際がん支持療法学会 (MASCC) が推奨している悪心 嘔吐の調査票 吐き気を数値で評価, 食欲不振に関する項目がないため悪心 食欲不振について CTCAE のグレーディングが不可能 改変 CTCAE のグレーディングが可能 MASCC: Multinational Association of Supportive Care in Cancer

悪心 嘔吐 食欲不振の重症度分類 有害事象共通用語基準 (CTCAE v4.0) 有害事象 Grade1 Grade2 Grade3 Grade4 嘔吐 24 時間に 1-2 エピソード 24 時間に 3-5 エピソード 24 時間に 6 エピソード TPN, 入院必要 生命を脅かす 悪心 摂食習慣に影響のない食欲低下 顕著な体重減少, 脱水, 栄養失調を伴わない経口摂取量の減少 カロリーや水分の経口摂取が不十分経管栄養, TPN, 入院必要 生命を脅かす 食欲不振 食生活の変化を伴わない食欲低下 顕著な体重減少や栄養失調を伴わない摂取量の変化, 経口栄養剤による補充必要 顕著な体重減少や栄養失調を伴う Div, 経管栄養, TPN 必要 生命を脅かす CTCAE: Common Terminology Criteria for Adverse Events

ガイドライン準拠率と遅発性症状の変化 (%) n=14 n=46 n=54 n=126 HEC MEC

レジメン別症状発現状況 (HEC) ( 人 ) SP XP FP G2 28% CPT-11/CDDP G2 0% FEC G2 53%

レジメン別症状発現状況 (MEC) ( 人 ) mfolfox6 ±BV XELOX ±BV FOLFIRI ±BV TC (DOC/CPA) CBDCA/ PEM±BV CBDCA/ CPT-11 CBDCA/ GEM G2 36% G2 30% G2 44% G2 33% G2 30% G2 31% G2 20%

アプレピタント追加効果 消化器外科, 乳腺外科の MEC レジメン (mfolfox6±bv, FOLFIRI, XELOX/BV, TC)13 名 追加前 追加後 著効 (G2 G0)7 名, 有効 (G2 G1)1 名, 無効 5 名 改善率 62%

第 2 世代 5HT3RA パロノセトロン HEC(CDDP+AC) 5-HT3 + Dex + Aprepitant Dex + Aprepitant ASCO 2011 MEC Palonosetron + Dex Dex HEC(CDDP+AC) PALO + DEX + Aprepitant ± lorazepam ±H2RA or PPI DEX + Aprepitant ± lorazepam ±H2RA or PPI National Comprehensive Cancer Network. V1. 2012. MEC PALO + DEX ± Aprepitant ± lorazepam ±H2RA or PPI preferred Select patients: CBDCA, CPA. DXR DEX ± Aprepitant ± lorazepam ±H2RA or PPI HEC(CDDP) 5-HT3 + Dex + Aprepitant Dex + Aprepitant MEC(AC)** 5-HT3 + Dex + Aprepitant Aprepitant MEC(non-AC) Palonosetron + Dex Dex ESM0/MASCC 2010 **If Aprepitant is not available women receiving AC, PALO+DEX is recommended. 日本癌治療学会 2010 年 5 月版 HEC(CDDP+AC) MEC(Select Pat) MEC(Others) 5-HT3 + DEX + Aprepitant ± lorazepam ±H2RA or PPI 5-HT3 + DEX + Aprepitant ± lorazepam ±H2RA or PPI 5-HT3 + Dex ± lorazepam ±H2RA or PPI DEX + Aprepitant ± lorazepam ±H2RA or PPI DEX + Aprepitant ± lorazepam ±H2RA or PPI Dex ± lorazepam ±H2RA or PPI

パロノセトロンの導入 (%) G2 以上の遅発性悪心の発現率 6/11 n.s 5/11 13/46 P<0.01 3/46 n=11 n=11 n=46 n=46 乳がん HEC(FEC) 消化器がん MEC

TRIPLE (PAL vs GRN in HEC) CR 率 ( 嘔吐無し レスキュー無し ) CDDP 70mg/m 2 P=1.0000 P=0.0539 P=0.0142 0 Hashimoto et al, ASCO 2013 # 9621

結果 考察 (HEC) 制吐療法の院内統一後 ガイドライン準拠率は 20% 100% 遅発性悪心の発現率が減少 (G2 :73% 34%) レジメンによってリスク差あり 乳腺 FEC 療法ではガイドラインを準拠しても発現頻度が高い (G2 :53%) アロキシをルーチン使用 効果不十分 個別対応 ( 抗うつ剤等 ) 高用量 CDDP レジメン (G2 :28%) にアロキシをルーチン使用 効果評価中

結果 考察 (MEC) 院内の制吐療法統一後 ガイドライン準拠率は改善したが (20% 73%) 遅発性悪心の発現率は変化なし (31% 26%) レジメンによって催吐リスクに差あり 第 1 世代 5HT 3 受容体拮抗剤とステロイドだけでは不十分 イメンド追加症例で 62% 改善 個別に追加使用 MEC レジメンに対しアロキシをルーチン使用 消化器レジメンで有意に改善 呼吸器レジメンは改善傾向あり

まとめ 治療継続のためには CINV の制御が必須! ガイドライン準拠により CINV は軽減してきたが まだまだ不十分で 特に遅発性悪心 食欲不振が軽視されている ガイドラインをベースとした上で レジメン別 個別対応が必要 各制吐薬の特徴を理解し 症状を適切にアセスメントした上で アレンジが必要!