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染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

耐性菌届出基準

(別添様式)

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ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

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症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

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あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

食欲不振 全身倦怠感 皮膚や白目が黄色くなる [ 肝機能障害 黄疸 ] 尿量減少 全身のむくみ 倦怠感 [ 急性腎不全 ] 激しい上腹部の痛み 腰背部の痛み 吐き気 [ 急性膵炎 ] 発熱 から咳 呼吸困難 [ 間質性肺炎 ] 排便の停止 腹痛 腹部膨満感 [ 腸閉塞 ] 手足の筋肉の痛み こわばり

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重篤な副作用は 自然流産の 1 例 1 件であった 本症例は 本剤服用後も性交があり どの時点での妊娠か判断できず 本剤と自然流産との関連は評価できないと考えた 非重篤な副作用のうち 使用上の注意から予測できない副作用は 腹部膨満及び月経困難症各 2 件 腹部不快感 口内炎 ざ瘡 尿臭異常 月経障害

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改訂後 ⑴ 依存性連用により薬物依存を生じることがあるので 観察を十分に行い 用量及び使用期間に注意し慎重に投与すること また 連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により 痙攣発作 せん妄 振戦 不眠 不安 幻覚 妄想等の離脱症状があらわれることがあるので 投与を中止する場合には 徐々に

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本日の内容 1. 未承認対照薬等の取り扱い別添の 4.(3) ウ.( ア ) 2. 対象疾患の悪化等を評価項目にする試験別添の 7.(3) イ.( ア ) 3. 承認取得者以外の治験国内管理人が治験 依頼者となる場合別添の7.(3) オ. 4. 医師主導治験との情報共有別添の7.(3) カ. 5.

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Transcription:

審査報告書 平成 29 年 1 月 13 日 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 る 承認申請のあった下記の医薬品にかかる医薬品医療機器総合機構での審査結果は 以下のとおりであ 記 [ 販売名 ] オゼックス細粒小児用 15% [ 一般名 ] トスフロキサシントシル酸塩水和物 [ 申請者 ] 富山化学工業株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 28 年 5 月 23 日 [ 剤形 含量 ] 1 g 中にトスフロキサシントシル酸塩水和物 150 mg( トスフロキサシンとして 102 mg) を含有する細粒剤 [ 申請区分 ] 医療用医薬品 (4) 新効能医薬品 [ 特記事項 ] なし [ 審査担当部 ] 新薬審査第四部 [ 審査結果 ] 別紙のとおり 提出された資料から 本品目の申請効能 効果における肺炎マイコプラズマ ( マイコプラズマ ニューモニエ ) に対する有効性は示され 認められたベネフィットを踏まえると安全性は許容可能と判断する 以上 医薬品医療機器総合機構における審査の結果 本品目については 以下の効能又は効果並びに用法及び用量で承認して差し支えないと判断した [ 効能又は効果 ]( 下線部追加 ) < 適応菌種 > トスフロキサシンに感性の肺炎球菌 ( ペニシリン耐性肺炎球菌を含む ) モラクセラ( ブランハメラ ) カタラーリス 炭疽菌 コレラ菌 インフルエンザ菌 肺炎マイコプラズマ ( マイコプラズマ ニューモニエ ) < 適応症 > 肺炎 コレラ 中耳炎 炭疽 [ 用法及び用量 ]( 下線部変更 ) 通常 小児に対してはトスフロキサシントシル酸塩水和物として 1 回 6 mg/kg( トスフロキサシンとして 4.1 mg/kg) を 1 日 2 回経口投与する ただし 1 回 180 mg 1 日 360 mg( トスフロキサシンとして 1 回 122.4 mg 1 日 244.8 mg) を超えないこととする

審査報告 (1) 別紙 平成 28 年 11 月 28 日 本申請において 申請者が提出した資料及び医薬品医療機器総合機構における審査の概略等は 以下 のとおりである 申請品目 [ 販売名 ] オゼックス細粒小児用 15% [ 一般名 ] トスフロキサシントシル酸塩水和物 [ 申請者 ] 富山化学工業株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 28 年 5 月 23 日 [ 剤形 含量 ] 1 g 中にトスフロキサシントシル酸塩水和物 150 mg( トスフロキサシンとして 102 mg) を含有する細粒剤 [ 申請時の効能又は効果 ] < 適応菌種 > トスフロキサシンに感性の肺炎球菌 ( ペニシリン耐性肺炎球菌を含む ) モラクセラ ( ブランハメラ ) カタラーリス 炭疽菌 コレラ菌 インフルエンザ菌 肺炎マイコプラズマ ( マイコプラズマ ニューモニエ ) < 適応症 > 肺炎 コレラ 中耳炎 炭疽 [ 申請時の用法及び用量 ] 通常 小児に対してはトスフロキサシントシル酸塩水和物として 1 日 12 mg/kg( トスフロキサシンとして 8.2 mg/kg) を 2 回に分けて経口投与する ただし 1 回 180 mg 1 日 360 mg( トスフロキサシンとして 1 回 122.4 mg 1 日 244.8 mg) を超えないこととする ( 下線部追加 ) [ 目次 ] 1. 起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等... 3 2. 品質に関する資料及び機構における審査の概略... 3 3. 非臨床薬理試験に関する資料及び機構における審査の概略... 3 4. 非臨床薬物動態試験に関する資料及び機構における審査の概略... 7 5. 毒性試験に関する資料及び機構における審査の概略... 7 6. 生物薬剤学試験及び関連する分析法 臨床薬理試験に関する資料並びに機構における審査の概略 7 7. 臨床的有効性及び臨床的安全性に関する資料並びに機構における審査の概略... 7 8. 機構による承認申請書に添付すべき資料に係る適合性調査結果及び機構の判断... 13 9. 審査報告 (1) 作成時における総合評価... 13

[ 略語等一覧 ] 略語 英語 日本語 AZM Azithromycin アジスロマイシン CAM Clarithromycin クラリスロマイシン CFU Colony Forming Unit コロニー形成単位 CLDM Clindamycin クリンダマイシン CLSI Clinical and Laboratory Standards Institute 米国臨床検査標準協会 EM Erythromycin エリスロマイシン EMA European Medicines Agency 欧州医薬品庁 FDA The U.S. Food and Drug Administration 米国食品医薬品局 GRNX Garenoxacin ガレノキサシン ITT Intention-to-Treat JP318 試験 T3262G15%-JP318 試験 LAMP Loop-Mediated Isothermal Amplification 遺伝子増殖法の一つ LVFX Levofloxacin レボフロキサシン MIC Minimum inhibitory concentration 最小発育阻止濃度 MINO Minocycline ミノサイクリン M. pneumoniae Mycoplasma pneumoniae 肺炎マイコプラズマ ( マイコプラズマ ニューモニエ ) PPS Per Protocol Set TC Tetracycline テトラサイクリン TFLX Tosufloxacin トスフロキサシン 診療ガイドライン 小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2011 追補版 ( 平成 25 年 2 月 19 日 )( 日本小児呼吸器学会雑誌 2014; 25: 54-8) 機構 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 本剤 オゼックス細粒小児用 15% 2

1. 起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等トスフロキサシン (TFLX) は 富山化学工業株式会社により創製されたフルオロキノロン系抗菌薬である 本邦では 1990 年に TFLX トシル酸塩水和物を有効成分とする経口剤としてオゼックス錠 75 及び同錠 150 が呼吸器科領域 耳鼻科領域等の細菌感染症に対して また 2009 年に小児用製剤として同細粒小児用 15%( 本剤 ) が肺炎 コレラ 中耳炎及び炭疽を効能 効果として承認されている マイコプラズマ肺炎は M. pneumoniae を原因菌とする急性呼吸器感染症であり M. pneumoniae が飛沫感染や接触感染により体内に侵入し 2~3 週間程度の潜伏期間を経て 頭痛 倦怠感 発熱 咽頭炎等の症状を呈した後 嗄声 咳嗽等の下気道症状が認められる また 疾患進行に伴い 高熱 咳嗽の悪化及び呼吸困難が認められる場合もある (Harrison's Principles of Internal Medicine, 18th ed. McGraw-Hill Professional; 2011: 1417-20 Nelson Textbook of Pediatrics, 19th ed. Elsevier Saunders; 2011:1029-31) 本邦におけるマイコプラズマ肺炎の報告の約 8 割は小児であり [ 国立感染症研究所 2012 年第 39 号 < 注目すべき感染症 >マイコプラズマ肺炎 (http://www.nih.go.jp/niid/ja/mycoplasma-pneumonia-m/mycoplasm a-pneumonia-idwrc/2735-idwrc-1239.html<2017 年 1 月 >)] 日本小児呼吸器学会及び日本小児感染症学会により作成された診療ガイドラインでは マイコプラズマ肺炎患児に対してマクロライド系抗菌薬が第一選択薬として推奨されている しかし近年では マクロライド系抗菌薬に対する低感受性株が臨床分離される割合の増加傾向が報告されている (Antimicrob Agents Chemother 2013; 57: 4046-9) このような状況を踏まえ 申請者は マイコプラズマ肺炎患児を対象とした国内臨床試験を実施し 当該試験成績等に基づき 肺炎マイコプラズマ ( マイコプラズマ ニューモニエ ) を本剤の適応菌種に追加する製造販売承認事項一部変更承認申請を行った なお 2016 年 11 月時点では TFLX トシル酸塩水和物を含有する経口製剤は 日本及び韓国のみで承認されている 2. 品質に関する資料及び機構における審査の概略 新効能医薬品に関する申請のため 本申請に際し 新たな試験成績は提出されていない 3. 非臨床薬理試験に関する資料及び機構における審査の概略 3.1 効力を裏付ける試験 3.1.1 in vitro 抗菌活性 3.1.1.1 小児由来臨床分離株に対する各種薬剤の抗菌活性 (CTD 4.2.1.1.1 4.2.1.1.2) 国内で年 ~ 月及び年月 ~ 年月に小児鼻咽頭より分離された M. pneumoniae に対する各被験薬の抗菌活性が輿水らの方法に準じた微量液体希釈法 ( マイコプラズマとその実験法 : 近代出版 1988; 441-8) により検討された 結果はそれぞれ表 1 及び表 2 のとおりであった 表 1 年小児由来臨床分離株 M. pneumoniae に対する抗菌活性 分離株 ( 株数 ) 被験薬 MIC 範囲 (μg/ml) MIC 50(μg/mL) MIC 90(μg/mL) CAM の MIC が 8 µg/ml 以下の菌株 (36 株 ) TFLX 0.25 0.5 0.25 0.5 LVFX 0.5 1 0.5 0.5 TC 0.25 0.5 0.5 0.5 MINO 0.5 4 2 2 CLDM 0.5 2 1 2 EM 0.002 0.0078 0.0039 0.0039 CAM 0.001 0.0039 0.002 0.0039 AZM 0.000125 0.0005 0.00025 0.00025 3

分離株 ( 株数 ) 被験薬 MIC 範囲 (μg/ml) MIC 50(μg/mL) MIC 90(μg/mL) CAM の MIC が 16 µg/ml 以上の菌株 (40 株 ) TFLX 0.25 0.5 0.25 0.5 LVFX 0.5 0.5 0.5 TC 0.25 0.5 0.5 0.5 MINO 1 4 2 2 CLDM 64 >128 128 128 EM 128 >128 >128 >128 CAM 64 >128 >128 >128 AZM 1 >128 64 64 TFLX: トスフロキサシン LVFX: レボフロキサシン TC: テトラサイクリン MINO: ミノサイクリン CLDM: クリンダマイシン EM: エリスロマイシン CAM: クラリスロマイシン AZM: アジスロマイシン 表 2 ~ 年小児由来臨床分離株 M. pneumoniae に対する抗菌活性 分離株 ( 株数 ) 被験薬 MIC 範囲 (μg/ml) MIC 50(μg/mL) MIC 90(μg/mL) 23S rrna 遺伝子ドメイン V 領域の塩基配列には変異が認められない菌株 (28 株 ) 23S rrna 遺伝子ドメイン V 領域の塩基配列に変異が認められた菌株 (43 株 ) TFLX 0.0625 0 5 0.25 0.25 LVFX 0.25 0 5 0 5 0.5 TC 0.25 0 5 0 5 0.5 MINO 0.25 2 1 2 CLDM 0.25 1 1 1 EM 0.001 0.0039 0.0039 0.0039 CAM 0.0005 0.002 0.002 0.002 AZM 0.0000625 0.00025 0.00025 0.00025 TFLX 0.125 0 5 0.25 0.25 LVFX 0.5 1 0 5 0.5 TC 0.25 0 5 0 5 0.5 MINO 0.5 4 1 2 CLDM 0.5 128 64 128 EM 1 >128 >128 >128 CAM 0.25 >128 >128 >128 AZM 0.0078 128 32 64 また 年月 ~ 年月の臨床分離株について マクロライド系抗菌薬に対する感受性低 下に関連する 23S rrna 遺伝子ドメイン V 領域の塩基配列の解析が実施され 感受性低下に関連する変 異 (A2063G A2064G A2063T A2063C 又は C2617G) を有する M. pneumoniae 43 株の変異部位別の抗 菌活性は以下の表 3 のとおりであった 表 3 23S rrna 遺伝子ドメイン V のマクロライド系抗菌薬に対する感受性低下に関連する変異を有する M. pneumoniae に対する抗菌活性 変異部位 ( 株数 ) MIC 範囲 (μg/ml) A2063G(32 株 ) A2064G(5 株 ) A2063T(3 株 ) A2063C(2 株 ) C2617G(1 株 ) TFLX 0 125 0.5 0.25 0.25 0.25 0.25 LVFX 0.5 1 0.5 0.5 0.5 0.5 TC 0 25 0.5 0.25 0.5 0.25 0.5 0.5 0.5 MINO 0.5 2 0.5 2 1 4 2 1 CLDM 32 128 8 16 32 128 16 0.5 EM 64 >128 128 64 128 >128 1 CAM 32 >128 16 16 64 >128 0.25 AZM 8 128 8 16 0.5 1 8 0.0078 3.1.1.2 国内臨床試験で分離された M. pneumoniae に対する TFLX の抗菌活性 (CTD 5.3.5.1.1) 国内臨床試験 (T3262G15%-JP318 試験 ) で分離された M. pneumoniae 10 株に対する各被験薬の抗菌活性が Ishida et al. の方法に準じた微量液体希釈法 (Antimicrob Agents Chemother 1994; 38: 790-8) により検討され 結果は表 4 のとおりであった このうち CAM の MIC 16 µg/ml 以上 ( 日本マイコプラズマ会誌 4

2008;35:59-60) 又は 23S rrna 遺伝子ドメイン V 領域の遺伝子変異 (A2063C A2063G A2064G 又は C2617G) のいずれかが認められた菌株 [ 肺炎マイコプラズマ (Mycoplasma pneumoniae) 検査マニュアル 平成 23 年 9 月 ( http://www.nih.go.jp/niid/images/lab-manual/mycoplasmalpn.pdf)] に対する TFLX MINO CAM の MIC 範囲は それぞれ 0.25-0.5 0.12-4 16 であった 表 4 国内臨床試験における小児臨床分離株に対する抗菌活性 分離株 ( 株数 ) 被験薬 MIC 範囲 (μg/ml) MIC 90(μg/mL) M. pneumoniae (10 株 ) TFLX 0.06 0.5 0.5 MINO 0.06 4 4 CAM 0.06 16 16 3.1.1.3 国内臨床研究で分離された M. pneumoniae に対する TFLX の抗菌活性 ( 参考 CTD 5.3.5.4.1) 2010 年 ~2012 年に国内臨床研究で分離された M. pneumoniae 13 株に対する各被験薬の抗菌活性が CLSI に準じた微量液体希釈法により検討された 結果は表 5 のとおりであった 表 5 国内臨床研究における臨床分離株に対する抗菌活性 被験薬 MIC 範囲 (μg/ml) MIC 90(μg/mL) TFLX 0.5 0.5 LVFX 1 2 1 GRNX 0.03 0.06 0.06 EM 0.004 >64 >64 AZM 0.004 >32 >32 MINO 0.5 1 1 GRNX: ガレノキサシン 3.1.1.4 生育曲線に及ぼす影響 (CTD 4.2.1.1.3) 1/2 1 2 及び 4 MIC の各被験薬 (TFLX LVFX MINO CAM 1) AZM) を含む液体培地に マクロライド感性 M. pneumoniae FH 株又はマクロライド低感受性 M. pneumoniae M-270 株 (1.84 10 4-5.40 10 4 CFU/well) を接種し M. pneumoniae FH 株は 24 48 72 及び 96 時間後 M. pneumoniae M-270 株は 24 48 72 96 120 及び 144 時間後に生菌数が測定された マクロライド感性 M. pneumoniae FH 株に対して TFLX は 2 及び 4 MIC でそれぞれ 96 及び 72 時間後に殺菌的作用 [ 菌液接種時から 3.00 Log CFU/mL(99.9%) 以上生菌数が減少 ] を示した また MINO は 4 MIC で LVFX 及び AZM は 2 及び 4 MIC で 96 時間後に殺菌的作用を示した 他方 CAM は殺菌的作用を示さなかった マクロライド低感受性 M. pneumoniae M-270 株に対して TFLX は 2 及び 4 MIC でそれぞれ 144 及び 96 時間後に LVFX は 2 及び 4 MIC で それぞれ 120 及び 72 時間後に殺菌的作用を示した 他方 MINO 及び AZM は殺菌的作用を示さなかった 3.1.1.5 自然耐性菌出現率 (CTD 4.2.1.1.4) 4 8 及び 16 MIC の各被験薬を含む寒天平板培地に マクロライド感性 M. pneumoniae FH 株又はマクロライド低感受性 M. pneumoniae M-270 株 ( 約 10 9 CFU) を接種し それぞれ 7 又は 10 日間培養後に出現したコロニーを計数し 自然耐性菌出現率が算出された 結果は表 6 のとおりであった TFLX はいずれの検討濃度でも TFLX に対する耐性菌は検出されなかった 1) マクロライド低感受性 M. pneumoniae M-270 株に対する CAM の MIC は 128 μg/ml 超であるため M. pneumoniae M-270 株に対する CAM の生育曲線は未検討 5

マクロライド感性 M. pneumoniae FH 株 マクロライド低感受性 M. pneumoniae M-270 株 被験薬 表 6 M. pneumoniae の自然耐性菌出現率 MIC a) (μg/ml) 自然耐性菌出現率 b) 4 MIC 8 MIC 16 MIC TFLX 0.5 <1.5 10-10 <1.5 10-10 <1.5 10-10 LVFX 0.5 <1.5 10-10 <1.5 10-10 <1.5 10-10 MINO 0.5 <1.5 10-10 <1.5 10-10 <1.5 10-10 CAM 0.0078 1.8 10-9 4.1 10-9 2.1 10-9 7.8 10-9 1.2 10-9 4.0 10-9 AZM 0.0078 1.4 10-9 5.9 10-9 7.6 10-10 2.5 10-9 9.1 10-10 3.3 10-9 TFLX 0.5 <9.3 10-10 <9.3 10-10 <9.3 10-10 LVFX 0.5 <9.3 10-10 <9.3 10-10 <9.3 10-10 MINO 0.5 <9.3 10-10 <9.3 10-10 <9.3 10-10 CAM >128 AZM 128 -: 未実施 a)clsi に準じた寒天平板希釈法による測定 b) 自然耐性菌出現率 = 出現コロニー数の合計 (CFU)/ 接種菌数の合計 (CFU) 3 回実施して得られた自然耐性菌出現率の範囲 3.1.2 in vivo 抗菌効果 (CTD 4.2.1.1.5) マクロライド低感受性 M. pneumoniae M-270 株 (4.6 10 7 CFU) を BALB/c マウス ( 各群 14 例 ) に経鼻 接種し 肺感染モデルマウスが作成された 菌接種 2 時間後より 各被験薬 80 mg/kg/ 日 2) 又は溶媒 (0.5% メチルセルロース 10 ml/kg) を 1 日 1 又は 2 回 [TFLX CAM MINO 及び溶媒は 1 日 2 回 AZM は 1 日 1 回 ] それぞれ 5 日間経口投与された 最終投与翌日における気管支肺胞洗浄液中生菌数は 表 7 のとおりであった 3.R 機構における審査の概略 表 7 マクロライド低感受性 M. pneumoniae M-270 株肺感染モデルマウスにおける抗菌効果 MIC a) (μg/ml) 気管支肺胞洗浄液中生菌数 (Log 10 CFU/mL) 溶媒 - 5.04±0.407 TFLX 0.25 2.52±0.634 CAM >128 5.11±0.359 AZM 32 4.86±0.527 MINO 1 2.88±0.948 平均値 ± 標準偏差 a) 輿水らの方法に準じた微量液体希釈法による測定 M. pneumoniae の TFLX に対する薬剤感受性及び耐性化について 申請者は TFLX に対する M. pneumoniae の耐性化について 以下のように説明している M. pneumoniae の自然耐性菌出現率の検討において TFLX はいずれの検討濃度においても TFLX に対 する低感受性菌は検出されなかった (3.1.1.5 参照 ) 本邦において本剤はマイコプラズマ感染症に対し て使用されることもあるが ( 日本小児呼吸器会誌 2014; 25: 54-8) これまでにキノロン耐性 M. pneumoniae についての報告はない ( 日化療会誌 2014; 62: 110-7) また 本剤の製造販売承認前の M. pneumoniae 臨床分離株 [ 分離年 :2003~2004 年 (10 株 ) 2000~2005 年 (50 株 )] の TFLX に対する 感受性は それぞれ MIC 90 0.25 及び 0.5 µg/ml 並びに MIC 範囲 0.12~0.25 及び 0.25~0.5 µg/ml であ り ( 日化療会誌 2005; 53: 364-70 日化療会誌 2007; 55: 1-20) 本剤発売後の年及び ~ 年に小児から分離された M. pneumoniae の TFLX に対する感受性と比較して同程度であった (3.1.1.1 参 照 ) 以上のことから 現時点で M. pneumoniae の TFLX に対する耐性化の懸念は認められていない 2) TFLX をマウスに 80 mg/kg/ 日投与したときの投与開始から投与後 24 時間までの血漿中遊離型薬物濃度 - 時間曲線下面積 (fauc 0-24) は 小児に本剤 12 mg/kg/ 日を投与したときの fauc 0-24 に相当 6

機構は 提出された資料から 本申請の追加適応菌種である M. pneumoniae に対する TFLX の抗菌活性は期待できると考える また 現時点で M. pneumoniae の TFLX に対する低感受性化の懸念は認められていないとする申請者の説明は受入れ可能と考える ただし 小児臨床分離株の TFLX に対する感受性について引き続き情報収集し 新たな知見が得られた際には医療現場に適切に情報提供すべきと考える 4. 非臨床薬物動態試験に関する資料及び機構における審査の概略 新効能医薬品に関する申請のため 本申請に際し 新たな試験成績は提出されていない 5. 毒性試験に関する資料及び機構における審査の概略 新効能医薬品に関する申請のため 本申請に際し 新たな試験成績は提出されていない 6. 生物薬剤学試験及び関連する分析法 臨床薬理試験に関する資料並びに機構における審査の概略 新効能医薬品に関する申請のため 本申請に際し 新たな試験成績は提出されていない 7. 臨床的有効性及び臨床的安全性に関する資料並びに機構における審査の概略本剤の有効性及び安全性に係る評価資料として マイコプラズマ感染症患児を対象とした国内臨床試験 1 試験の成績が提出された なお 本項においては 本剤の投与量は TFLX トシル酸塩水和物としての投与量として示す 7.1 国内臨床試験 (CTD 5.3.5.1.1:JP318 試験 [ 年月 ~ 年月 ]) 1 歳以上 15 歳以下のマイコプラズマ肺炎が臨床所見及び胸部 X 線画像所見より疑われる患児 [ 目標例数 100 例 ( 各群 50 例 )] を対象に 本剤の有効性及び安全性を検討することを目的として CAM を対照とした無作為化非盲検並行群間比較試験が 国内 32 施設で実施された 用法 用量は 本剤群は本剤 1 回 6 mg/kg(1 回投与量上限 180 mg) を 1 日 2 回 CAM 群は CAM 1 回 5 mg/kg(1 回投与量上限 200 mg) を 1 日 2 回 それぞれ食直前又は食後に 14 日間経口投与と設定された なお 投与 7 日後に 治験責任 ( 分担 ) 医師により解熱並びに全ての臨床症状及び所見の消失が確認された場合は 投与 7 日後の時点で投与終了することが可能と設定された 無作為化され 治験薬が 1 回以上投与された 63 例 ( 本剤群 33 例 CAM 群 30 例 ) 全例が ITT 集団及び安全性解析対象集団であり 有効性解析対象集団であった また 治験実施計画書に適合した 14 例 ( 本剤群 6 例 CAM 群 8 例 ) が PPS であり 3) 有効性解析対象集団であった なお 本試験では 臨床症状等からマイコプラズマ肺炎が疑われる患児が対象とされ 無作為化時に 血清 鼻咽頭拭い液及び咽頭拭い液が採取され マイコプラズマ抗体検査 マイコプラズマ培養検査 マイコプラズマ遺伝子検出検査 (LAMP 法 ) のいずれかで陽性となった被験者が マイコプラズマ陽性例とされた 本試験のマイコプラズマ陽性例 14 例は PPS と同一の集団であった 3) PPS から 49 例 [ その他の検討事項 ( マイコプラズマ陰性 ) 49 例 用法 用量 投与期間逸脱 4 例 併用薬剤及び併用療法逸脱 及び 中止基準逸脱 各 1 例 ( 重複含む )] が除外された なお その他の検討事項 ( マイコプラズマ陰性 ) 以外の除外理由に該当した症例はいずれもマイコプラズマ陰性例であった 7

有効性の主要評価項目は ITT 集団における投与終了時又は中止時までに腋窩温が初めて 37.5 未満 に低下した患児の割合 ( 解熱率 ) 4) とされた 解熱率は 本剤群 93.9%(31/33 例 ) CAM 群 80.0%(24/30 例 ) であり 両群の群間差 [95% 信頼区間 ] は 13.9[-2.5, 30.4]% であった 有害事象 ( 臨床検査値異常変動を含む ) の発現割合は 本剤群 66.7%(22/33 例 ) CAM 群 66.7%(20/30 例 ) であり このうち治験担当医師又は治験依頼者により治験薬投与との関連ありと判定された事象 ( 副 作用 以下同様 ) の発現割合は 本剤群 15.2%(5/33 例 ) CAM 群 10.0%(3/30 例 ) であった いずれ かの投与群で 2 例以上に発現した有害事象及び副作用は表 8 のとおりであった 死亡及び重篤な有害事象は認められなかった 中止に至った有害事象は 本剤群 1 例 ( 多形紅斑 ) に 認められ 治験薬との因果関係ありと判断されたが 転帰は軽快であった また 関節に関連する有害 事象は 本剤群及び CAM 群各 1 例 ( いずれも成長痛 ) に認められ いずれも治験薬との因果関係は否 定され 転帰は消失であった 表 8 いずれかの群で 2 例以上に認められた有害事象及び副作用 ( 安全性解析対象集団 ) 有害事象 副作用 事象名 本剤群 (33 例 ) CAM 群 (30 例 ) 本剤群 (33 例 ) CAM 群 (30 例 ) 全体 22(66.7) 20(66.7) 5(15.2) 3(10.0) 上気道の炎症 5(15.2) 2(6.7) 0 0 鼻咽頭炎 5(15.2) 0 0 0 嘔吐 2(6.1) 3(10.0) 0 1(3 3) 便秘 2(6.1) 1(3.3) 2(6.1) 0 ヘルパンギーナ 2(6.1) 0 0 0 蕁麻疹 2(6.1) 0 0 0 下痢 1(3.0) 4(13.3) 1(3.0) 2(6.7) 気管支炎 1(3.0) 2(6.7) 0 0 喘息 1(3.0) 2(6.7) 0 0 胃腸炎 0 3(10.0) 0 0 鼻漏 0 3(10.0) 0 0 発疹 0 2(6.7) 0 0 例数 (%) 7.R 機構における審査の概略 7.R.1 臨床データパッケージ及び有効性について 申請者は 本申請の臨床データパッケージ及び有効性について 以下のように説明している 日本小児呼吸器学会及び日本小児感染症学会により作成された本邦の診療ガイドラインにおいて マ イコプラズマ肺炎患児に対しては マクロライド系抗菌薬が第一選択薬として推奨されているが 近年 マクロライド系抗菌薬に対する低感受性株の分離率の増加が報告されている (Antimicrob Agents Chemother 2013; 57: 4046-9) また 同ガイドラインでマクロライド低感受性株によるマイコプラズマ肺 炎に対しては TFLX 及びテトラサイクリン系抗菌薬が記載されているが マイコプラズマ肺炎患児に 対して適応を有する MINO は小児 ( 特に歯牙形成期にある 8 歳未満の小児 ) に投与した場合に歯牙着色 エナメル質形成不全等を起こすことがあるため 他の薬剤が使用できない場合や無効の場合にのみ使用 を考慮する旨が注意喚起されている ( ミノマイシン顆粒 2% 添付文書第 19 版 ) このような状況を踏 まえ 申請者はマイコプラズマ肺炎患児を対象とした本剤の国内臨床試験 (JP318 試験 ) を計画 実施 した JP318 試験は実施可能性を考慮し 目標例数 100 例 ( 試験予定期間年間 ) と設定して 年 月から開始したが マイコプラズマ肺炎の流行が 年に入り終息傾向となったことが影響し 年月時点における組入れ例数は 63 例 ( 本剤群 33 例 CAM 群 30 例 ) であっ 4) 体温が同日に複数回測定された場合は その日の最高体温に基づき判定された 8

た マイコプラズマ肺炎の流行予測は困難であること等から 医薬品申請前相談を経て JP318 試験の 組入れは 63 例で終了し 当該成績を含む臨床データパッケージを構成し 本申請に至った 本剤の有効性については 臨床試験における評価例数は限定的であることから 非臨床試験 公表文献 使用成績調査等のデータも含めて検討した 非臨床では M. pneumoniae の国内臨床分離株 ( マクロライド低感受性株含む ) に対する TFLX の抗菌活性が確認された (3.1.1 参照 ) マイコプラズマ肺炎患児を対象とした JP318 試験においては 主要評価項目である ITT 集団における投与終了時又は中止時の解熱率は 本剤群 93.9%(31/33 例 ) CAM 群 80.0%(24/30 例 ) であった ま 5) た 投与終了時又は中止時の臨床効果が 著効 又は 有効 であった被験者の割合 ( 有効率 ) は 本剤群 97.0%(32/33 例 ) CAM 群 90.0%(27/30 例 ) であった マイコプラズマ陽性例における投与終了時又は中止時の解熱率及び有効率は 本剤群でいずれも 100%(6/6 例 ) CAM 群で 75%(6/8 例 ) 及び 100%(8/8 例 ) であり 投与終了時又は中止時において菌消失が認められた被験者 ( 判定不能を除く ) は 本剤群 4/4 例 CAM 群 3/5 例であった 過去に実施した細菌性肺炎患児を対象とした本剤の国内臨床試験 (T3262G10%-P3PNE 試験 ) 公表文献及び本剤の使用成績調査において マイコプラズマ陽性者における臨床効果の有効率は T3262G10%- P3PNE 試験 ( 本剤 1 回 6 mg/kg 1 日 2 回投与 )3/4 例 公表文献 2 報 ( 本剤 1 回 6 mg/kg 1 日 2 回投与 ) ではそれぞれ 93.2%(41/44 例 )( 日化療会誌 2014; 62: 613-21) 94.0%(78/83 例 )(Jpn J Antibiotics 2012; 65: 173-9) 使用成績調査( 本剤 1 回 3~6 mg/kg 1 日 2 回投与 ) では 2/3 例であった 以上より 非臨床で TFLX の M. pneumoniae に対する抗菌活性が確認されたこと JP318 試験における評価例数は少ないものの JP318 試験 過去の臨床試験及び使用成績調査の結果並びに公表文献において本剤のマイコプラズマ肺炎患児に対する一定の有効性が示唆され 診療ガイドラインにマイコプラズマ肺炎患児に対する治療薬として本剤が記載されていることも踏まえると マイコプラズマ肺炎患児に対する本剤の有効性は期待できると考える 機構は JP318 試験における評価例数は限定的であるが 以下の理由から マイコプラズマ肺炎患児に対する本剤の有効性は期待できると考える 本剤は 1 回 6 mg/kg 1 日 2 回投与の用法 用量にて既に承認されており 小児の肺炎に対して効能 効果を有していること 非臨床で M. pneumoniae の国内臨床分離株 ( マクロライド低感受性株含む ) 及び既承認の適応菌種に対する TFLX の抗菌活性が確認されたこと [3.1.1 及びオゼックス細粒小児用 15% 審査報告書 ( 平成 21 年 8 月 18 日付け ) 参照 ] JP318 試験及び過去の臨床試験の結果において本剤の一定の有効性が示唆されており 使用成績調査の結果及び公表文献においても本剤の有効性は否定されていないこと 本邦の診療ガイドラインに マイコプラズマ肺炎患児に対する治療薬として本剤が記載されていること 以上の機構の判断については 専門協議で議論したい 5) 臨床効果は著効 有効 やや有効 無効 判定不能で判定された 著効は 体温及びすべての臨床症状 所見が 7 日 (6~8 日 ) 以内にほとんど消失した場合 有効は 体温及びすべての臨床症状 所見が 14 日 (12~15 日 ) 以内にほとんど消失した場合とされた 9

7.R.2 安全性について申請者は 本剤の安全性について 以下のように説明している JP318 試験における有害事象及び副作用の発現割合は 本剤群 66.7%(22/33 例 ) 及び 15.2%(5/33 例 ) CAM 群 66.7%(20/30 例 ) 及び 10.0%(3/30 例 ) であり 死亡及び重篤な有害事象はいずれも認められなかった また 本剤群で認められた事象は 本剤の既承認効能 効果に対する安全性プロファイルと同様であった また TFLX の非臨床試験及び過去に実施された本剤の臨床試験では関節への影響の可能性が示唆されているが JP318 試験において 筋骨格系および結合組織障害 は本剤群及び CAM 群で各 1 例 ( いずれも成長痛 ) に認められたが いずれも治験薬との因果関係は否定され 処置なく 転帰は消失であった また 既承認の効能 効果に対する本剤の使用成績調査において 副作用発現割合は 2.8%(21/759 例 ) であり 使用成績調査及び再審査期間中の自発報告において認められた重篤な副作用は 35 例であったが 自発報告で認められた胃潰瘍 1 例 ( 転帰は軽快であり 本剤との関連は低いと判断されている ) を除き いずれも現行の添付文書の副作用の項に記載されている事象であった 関節障害は使用成績調査では認められなかった なお キノロン系抗菌薬の安全性に関して 本邦における本剤の承認 (2009 年 ) 以降 欧米では以下の1~4の事象が検討され 措置が実施された 本邦における 本剤での各事象の発現状況等についても 以下のとおりである 1 EMA は キノロン系抗菌薬による QT 間隔延長リスクについて 添付文書等で注意喚起するよう指示した (2011 年 ) 本剤の承認(2009 年 ) 以降 2014 年 1 月までに TFLX トシル酸塩水和物 ( 錠剤 ) 使用時に QT 間隔延長の副作用が 3 例報告されているものの TFLX トシル酸塩水和物との関連は低いと判断されている 2 FDA は キノロン系抗菌薬による重症筋無力症の悪化 頭蓋内圧亢進及び末梢性ニューロパチーについて 注意喚起を強化 ( 添付文書等での注意喚起 注意喚起レベルの強化等 ) するよう指示した (2011 年及び 2013 年 ) これらの事象について いずれも本邦で本剤による副作用報告は確認されていない 重症筋無力症の悪化については 既に本剤の添付文書において注意喚起がされている 3 FDA は キノロン系抗菌薬により腱 筋肉 関節 神経及び中枢神経系に重篤かつ不可逆的な副作用が発現する可能性があることから 他の治療選択肢がない場合のみキノロン系抗菌薬を用いるべきであると判断し 添付文書の改訂を指示した (Drug Safety Communications 07/26/2016, FDA) 本剤の承認 (2009 年 ) 以降 2016 年 7 月までに 小児における筋骨格系及び結合組織障害の副作用は 46 例 51 件 ( 関節痛 24 件 四肢痛 8 件 横紋筋融解症 6 件等 ) 及び 神経系の副作用は 38 例 39 件 ( 傾眠 14 件 痙攣発作及び頭痛各 5 件等 ) 報告されている 重篤な副作用は横紋筋融解症 6 例 痙攣発作 2 例及び熱性痙攣 1 例であったが いずれも本剤の添付文書で既に注意喚起されている事象であった また 本剤の添付文書で注意喚起されていない事象として 四肢痛 腱炎 腱痛 筋炎 背部痛及びてんかんが報告されたが いずれも非重篤であり 四肢痛の 1 例を除いて 本剤との関連は低いと判断されていることから 現時点で添付文書での注意喚起は不要と判断している 4 EMA は キノロン系抗菌薬と網膜剥離との関連について現時点で結論が出ていないものの 網膜剥離の転帰が重篤であることを考慮し 全てのキノロン系抗菌薬の添付文書で 視覚障害や眼の異常に対する注意喚起を行うよう指示した (2014 年 ) 本剤の承認(2009 年 ) 以降 2016 年 10 月ま 10

でに 眼充血 1 件 羞明 4 件 眼瞼浮腫 2 件 眼球浮腫 1 件 眼瞼紅斑 1 件 眼の隈 1 件が報告されており 重篤な副作用の報告は眼瞼浮腫 1 件であった 眼充血 眼瞼浮腫 眼球浮腫及び眼瞼紅斑は 本剤の添付文書で既に注意喚起されている皮膚粘膜眼症候群 アナフィラキシー等の症状と考えられた また 羞明及び眼の隈は添付文書に記載された 使用上の注意 から予測できない副作用であったが いずれも本剤との関連は低いと判断されている 以上 JP318 試験成績 国内製造販売後の安全性情報等から 現時点で新たな注意喚起は不要と判断 した 機構は JP318 試験及び製造販売後の情報において 現時点で新たな注意喚起を必要とする安全性の懸念は認められていないが 本剤の添付文書で注意喚起されている副作用等について引き続き注意を要すると判断した また 本剤の安全性情報を引き続き収集し 必要に応じて医療現場に情報提供する必要があると考える 以上の機構の判断については 専門協議で議論したい 7.R.3 臨床的位置付けについて申請者は 本剤の臨床的位置付けについて 以下のように説明した 本邦の診療ガイドラインには マイコプラズマ肺炎患児について以下の内容が記載されている マイコプラズマ肺炎の治療の第一選択薬としては マクロライド系抗菌薬が推奨される マクロライド系抗菌薬が無効のマイコプラズマ肺炎には 抗菌薬による治療が必要と判断される場合は TFLX 又はテトラサイクリン系抗菌薬の投与を考慮する ただし テトラサイクリン系抗菌薬は 歯牙着色 エナメル質形成不全等の副作用を起こすことがあるため 8 歳未満の小児には他の薬剤が使用できないか 無効の場合にのみ適用を考慮する 診療ガイドラインに記載されているように マイコプラズマ肺炎患児に対する第一選択薬のマクロラ イド系抗菌薬が無効かつ抗菌薬投与の必要があると判断される場合に 本剤が選択されるものと考える 機構は 以下の点から 本剤はマイコプラズマ肺炎患児に対して治療選択肢の一つになり得るが 本剤は関節への影響に関して潜在的なリスクが否定されていないことを踏まえると マクロライド系抗菌薬が無効のマイコプラズマ肺炎の流行状況 マクロライド系抗菌薬に対するアレルギー等の懸念がなければ 通常はマイコプラズマ肺炎患児に対してはマクロライド系抗菌薬が選択されるものと考える 本邦の診療ガイドラインに マイコプラズマ肺炎患児に対する治療薬の一つとして TFLX が記載されていること 非臨床試験 JP318 試験 公表文献 使用成績調査等において マイコプラズマ肺炎患児に対する本剤の有効性が示唆され (7.R.1 参照 ) 安全性についても新たな懸念は認められておらず 許容可能と考えられたこと (7.R.2 参照 ) 近年マクロライド低感受性株の分離率の増加が報告されていること (Antimicrob Agents Chemother 2013; 57: 4046-9) 11

7.R.4 効能又は効果 用法及び用量について機構は 有効性及び安全性における検討 (7.R.1 及び 7.R.2 参照 ) より マイコプラズマ肺炎患児に対する本剤 6 mg/kg 1 日 2 回経口投与による有効性及び安全性が確認されたことから 本剤の効能 効果の適応菌種に 申請のとおり 肺炎マイコプラズマ ( マイコプラズマ ニューモニエ ) を追加すること 用法 用量は 現行と同様に 6 mg/kg 1 日 2 回と設定することは可能と判断した 申請者は 本剤の投与期間について 以下のように説明している 診療ガイドラインにおいて マイコプラズマ肺炎患児に対する TFLX の投与期間として 7~14 日間は必要と考えられる旨が記載されている また 坂田らの報告において本剤の投与期間の平均値 ( 範囲 ) は 6.2(3~13) 日であり 投与終了時又は中止時の有効率は 93.2%(41/44 例 ) であったが 菌消失率は 61.5%(8/13 例 ) であり ( 日化療会誌 2014; 62: 613-21) また その他の公表文献においても短期間の投与期間では十分に菌消失が得られないという報告があり 菌消失には 7 日以上の本剤投与が必要となる可能性が示唆されている JP318 試験においては 診療ガイドラインに従い本剤の投与期間は 7~14 日間と設定し 4/4 例 (4 例の投与期間は 8~13 日間 ) で菌消失が確認されている 一般的な感染症の場合は 症状が軽快すれば抗菌薬による治療は終了されることがあるが マイコプラズマ肺炎の場合は 臨床症状が改善した場合でも菌が残存し 他者への感染の可能性が否定できないことから 伝播予防の観点から マイコプラズマ肺炎に対する本剤の投与期間は 7~14 日間が望ましい旨を添付文書で情報提供する必要がある 機構は 以下の点等から 医師が個々の患児の症状 臨床症状の経過等を踏まえ 必要最小限の本剤の投与終了時期を判断することが適切であると考える 公表文献において 投与終了時又は中止時の評価において 臨床効果と菌消失率の乖離が報告されているが 投与終了時に菌が残存している患児においても臨床効果が認められていること ( 日化療会誌 2014; 62: 613-21) 本剤の投与期間を 7~14 日間とする明確な根拠は 感染拡大阻止への影響も含め 示されていないこと 以上の機構の判断については 専門協議で議論したい 7.R.5 製造販売後の検討事項について申請者は 製造販売後の検討事項について 以下のように説明している 申請時は追加予定の適応菌種での患児については 臨床試験における評価例数が限られていることから 市販直後調査及び特定使用成績調査の実施を予定していた しかし 申請効能 効果及び既承認効能 効果の安全性プロファイルを踏まえると 新たな安全性上の懸念が生じる可能性は低いと考えられたことから 通常の医薬品安全性監視活動として情報収集を行うこととし 追加予定の効能 効果を対象とした新たな追加の安全性監視活動 ( 市販直後調査及び使用成績調査 ) は実施しないこととする 機構は 追加予定の効能 効果を対象とした新たな追加の安全性監視活動は実施しないとする申請者 の説明は受入れ可能であり 製造販売後において新たな調査等を直ちに実施する必要性は低く 医薬品 リスク管理計画において 追加の安全性監視活動及びリスク最小化活動は現時点で不要と判断した 12

以上の機構の判断については 専門協議で議論したい 8. 機構による承認申請書に添付すべき資料に係る適合性調査結果及び機構の判断 8.1 適合性書面調査結果に対する機構の判断医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律の規定に基づき承認申請書に添付すべき資料に対して書面による調査を実施した その結果 提出された承認申請資料に基づいて審査を行うことについて支障はないものと機構は判断した 8.2 GCP 実地調査結果に対する機構の判断医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律の規定に基づき承認申請書に添付すべき資料 (CTD 5.3.5.1-1) に対して GCP 実地調査を実施した その結果 提出された承認申請資料に基づいて審査を行うことについて支障はないものと機構は判断した 9. 審査報告 (1) 作成時における総合評価提出された資料から 小児における肺炎マイコプラズマ ( マイコプラズマ ニューモニエ ) による肺炎に対する有効性は期待でき 認められたベネフィットを踏まえると安全性は許容可能と考える 本剤は マイコプラズマ肺炎患児に対する新たな治療の選択肢を提供するものであり 臨床的意義はあると考える 機構は 専門協議での検討を踏まえて特に問題がないと判断できる場合には 本品目を承認して差し 支えないと考える 以上 13

審査報告 (2) 平成 29 年 1 月 13 日 申請品目 [ 販売名 ] オゼックス細粒小児用 15% [ 一般名 ] トスフロキサシントシル酸塩水和物 [ 申請者 ] 富山化学工業株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 28 年 5 月 23 日 1. 審査内容専門協議及びその後の医薬品医療機器総合機構 ( 以下 機構 ) における審査の概略は 以下のとおりである なお 本専門協議の専門委員は 本品目についての専門委員からの申し出等に基づき 医薬品医療機器総合機構における専門協議等の実施に関する達 ( 平成 20 年 12 月 25 日付け 20 達第 8 号 ) の規定により 指名した 専門協議では 審査報告 (1) に記載した論点 ( 7.R.1 臨床データパッケージ及び有効性について 7.R.2 安全性について 7.R.4 効能又は効果 用法及び用量について 及び 7.R.5 製造販売後の検討事項について ) に関する機構の判断は支持された また 機構は 以下の点について追加で検討を行い 必要な対応を行った 1.1 投与期間について専門協議において 本剤の投与期間に対する機構の判断 ( 審査報告 (1) 7.R.4 参照 ) は専門委員から支持された また 以下の意見が出された 臨床試験における菌消失は 咽頭ぬぐい液の培養結果であり 肺炎マイコプラズマの主な増殖部位である下気道由来の検体では検討されていないことから 咽頭ぬぐい液の培養結果のみを根拠に 本剤の投与期間は 7~14 日を必要とするとの申請者の主張は適切でない 気道に肺炎マイコプラズマが残存していた場合でも 咳嗽が消失すれば他者への伝播のリスクは低いと考えられる 一般的に マイコプラズマ肺炎に伴う咳嗽等の臨床症状は遷延化する傾向があるため 結果的に投与期間が 2 週間程度になる可能性はあるが 投与期間を 7~14 日と規定する明確な根拠はない 機構は 専門協議における議論を踏まえ マイコプラズマ肺炎に対する本剤の投与期間を 7~14 日と 推奨することは適切でないと判断し 現行の添付文書のとおり 医療上必要な最小限の期間の投与にと どめる旨を医療機関に情報提供するよう申請者に指示し 申請者は了承した 1.2 関節障害及び腱障害について 本剤の安全性について 専門委員より以下の意見が出された 14

キノロン系抗菌薬の投与と小児の関節障害の明確な関連は不明であるものの 成長過程の小児にお いて 関節障害は重要な問題となる 現時点では本剤の使用による安全性上の懸念は生じていない ものの 今後も公表文献等を含めて十分な情報収集が必要であると考える 機構は 専門協議における議論を踏まえ 現行の添付文書の使用上の注意に 関節障害が発現するおそれがあるので 本剤の使用に際しては リスクとベネフィットを考慮すること と既に注意喚起されていることから 今後も適正使用が遂行されるよう医療現場に再度注意喚起すると共に 引き続き情報収集に努めるよう申請者に指示し 申請者は了承した 1.3 用法 用量について 機構は 本剤の用法 用量について 医療安全の観点から 1 日量 ではなく 1 回量 を記載する ことが適切と判断し 以下のとおり記載整備するよう申請者に指示し 申請者は適切に対応した 通常 小児に対してはトスフロキサシントシル酸塩水和物として 1 回 6 mg/kg( トスフロキサシンとして 4.1 mg/kg) を 1 日 2 回経口投与する ただし 1 回 180 mg 1 日 360 mg( トスフロキサシンとして 1 回 122.4 mg 1 日 244.8 mg) を超えないこととする 2. 総合評価 以上の審査を踏まえ 機構は 以下の効能又は効果並びに用法及び用量で 承認して差し支えないと 判断する [ 効能又は効果 ]( 下線部追加 ) < 適応菌種 > トスフロキサシンに感性の肺炎球菌 ( ペニシリン耐性肺炎球菌を含む ) モラクセラ( ブランハメラ ) カタラーリス 炭疽菌 コレラ菌 インフルエンザ菌 肺炎マイコプラズマ ( マイコプラズマ ニューモニエ ) < 適応症 > 肺炎 コレラ 中耳炎 炭疽 [ 用法及び用量 ]( 下線部変更 ) 通常 小児に対してはトスフロキサシントシル酸塩水和物として 1 回 6 mg/kg( トスフロキサシンとして 4.1 mg/kg) を 1 日 2 回経口投与する ただし 1 回 180 mg 1 日 360 mg( トスフロキサシンとして 1 回 122.4 mg 1 日 244.8 mg) を超えないこととする 以上 15