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に 正当な理由がない限り無償で交付しなければならないものであるとともに 交付が義務付けられている領収証は 指定訪問看護の費用額算定表における訪問看護基本療養費 訪問看護管理療養費 訪問看護情報提供療養費及び訪問看護ターミナルケア療養費の別に金額の内訳の分かるものとし 別紙様式 4を標準とするものであ

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重度認知症加算 2. 重度認知症加算は 今改定において 入院した日から起算して3 月以内の期間に限り, 重度認知症加算として, 日につき 00 点を所定点数に加算する から 入院した日から起算して 月以内の期間に限り 重度認知症加算として 日につき 300 点を所定点数に加算する へ変更となったが

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Transcription:

DPC 制度の概要と基本的な考え方 診調組 D-3-1 2 2. 1 0. 2 6 1.DPC 制度の概要 (1) これまでの経緯 DPC 制度 (1 日当たりの包括評価制度 ) は 閣議決定に基づき平成 15 年に導入された 急性期入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度である ( 参考 ) 平成 15 年 3 月 28 日閣議決定急性期入院医療については 平成 15 年度より特定機能病院について包括評価を実施する また その影響を検証しつつ 出来高払いとの適切な組合せの下に 疾病の特性及び重症度を反映した包括評価の実施に向けて検討を進める DPC 制度の導入に先立って 平成 10 年 11 月から国立病院等 10 病院における1 入院当たりの急性期入院医療包括払い制度の試行が実施された ( 平成 16 年 3 月まで ) 試行開始後の検討で 同じ疾患であっても患者によって入院期間のばらつきが大きく 1 入院当たりの包括評価制度と比較して1 日当たりの包括評価制度の方が 在院日数がばらついていても包括範囲点数と実際に治療にかかった点数との差が小さいことや 1 日単価を下げるインセンティブが存在すること等が示された ( 別紙 1) これらを踏まえ 平成 15 年度から 特定機能病院を対象に 定額算定方式として在院日数に応じた1 日あたり定額報酬を算定する という現行の DPC 制度が導入された ( 別紙 2) 以降 DPC 制度の対象病院は段階的に拡大され 平成 22 年 7 月 1 日現在で 1,391 病院となり 全一般病床 ( 約 91 万床 ) の約 50.4%( 約 46 万床 ) を占めるに至っている ( 別紙 3) 1

(2)DPC 包括評価の概要 1 DPC( 診断群分類 ) の導入入院期間中に医療資源を最も投入した 傷病名 と 入院期間中に提供される手術 処置 化学療法などの 診療行為 の組み合わせにより分類された患者群である 現在 2,658 の診断群分類が設定されており このうち 1,875 分類について 均質性が担保されていると考えられたことから 1 日当たりの包括点数が設定されている 2 包括点数の設定方法診療報酬の額は DPC( 診断群分類 ) 毎に設定される包括評価部分と出来高評価部分の合計額となる 包括評価部分は 1 日当たり点数 (3 段階の階段設定 ) に在院日数と医療機関ごとに設定された係数 ( 医療機関別係数 ) を乗じて算出される 包括評価部分 診断群分類毎に設定 入院基本料 検査 画像診断 投薬 注射 1,000 点未満の処置等 + 出来高評価部分 医学管理 手術 麻酔 放射線治療 1,000 点以上の処置等 包括評価部分 D P C 毎の 1 日当たり点数 在院日数 医療機関別係数 1 日当たり点数の階段設定 ( 一般的な診断群分類 ) 2

2.DPC 制度の基本的な考え方 (1) 包括評価に係る前提条件 ( 包括評価の基本原則 ) 適切な包括評価とするため 評価の対象は バラつきが比較的尐なく 臨床的にも同質性 ( 類似性 代替性 ) のある診療行為又は患者群とする 前提 1 平均的な医療資源投入量を包括的に評価した定額報酬 ( 点数 ) を設定 診療報酬の包括評価は 平均的な医療資源投入量に見合う報酬を支払うものであることから 包括評価の対象に該当する症例 包括項目 ( 包括範囲 ) 全体として見たときに適切な診療報酬が確保されるような設計とする 逆に 個別症例に着目した場合 要した医療資源と比べて高額となる場合と低額となる場合が存在するが 個別的には許容する必要がある ( 出来高算定ではない ) 一方 現実の医療の中では 一定の頻度で必ず例外的な症例が存在し 報酬の均質性を担保できない場合があることから そのような事例については アウトライヤー ( 外れ値 ) 処理として除外等の対応を行う ( 後述 ) 前提 2 包括評価 ( 定額点数 ) の水準は出来高報酬制度における点数算定デー タに基づいて算出 制度設計に際し 包括評価 ( 定額点数 ) のあり方や具体的な手法については様々な議論や検討がなされたが 1. 既存の出来高診療報酬体系で評価されていた医療機関の報酬体系の移行として DPC 制度を発足させたこと 2. 既存の診療報酬体系と独立したコスト調査等の結果に基づく包括点数設定は現実的に困難なこと ( データや評価体制が不十分 ) 等から 包括評価 ( 定額点数 ) の範囲に相当する出来高点数体系での評価 ( 点数 ) を準用した統計処理により設定する方式を採用している ( 包括評価の設定は医療資源投入量を評価して設定すべき という考え方から逆に見れば 出来高報酬制度における点数を医療資源投入量の近似値として使用 ( 準用 ) している と見ることもできるが 制度設計としては 出来高見合いの報酬 ( 点数 ) 設定が基本となっている ) 3

このことから 包括評価 ( 定額点数 ) の水準の是非についての議論は DPC 制度単独の評価体系を除き その評価の基礎となる出来高点数体系で の評価水準の是非に遡って検討する必要がある (2) 包括評価の実際 1 包括評価の対象患者 急性期入院医療の定額払い方式の試行において採用された包括範囲を基 本としつつ 一部修正をして DPC 制度として導入している ( 別紙 4) イ対象病棟 一般病棟入院患者 ロ DPC( 診断群分類 ) の設定 医療資源を最も投入した 傷病名 入院期間中に提供される手術 処置 化学療法等の 診療行為 併存症の有無を表す 副傷病 等により臨床的にも同質性 ( 類似性 代替性 ) のある患者群を臨床家の思考方法に近い形で分類し DPC ごとに定額点数を設定する 臨床的な観点から一つの DPC としての診療行為の評価が不適切な場合 ( 代替性がない場合 ) 当該 DPC を包括評価から除外又は分岐により細分化することにより対応する ハ包括評価からの除外 ( ア ) 急性期以外の患者に係る特定入院料を算定する患者 緩和ケア病棟入院料 回復期リハビリテーション病棟入院料等の急性期以外の患者に係る特定入院料 ( 基本全包括 ) の算定対象となる患者 医師数が医療法標準の 100 分の 70 以下の病院に入院する患者 ( イ ) データ上均質性の担保できない患者群 ( 一部再掲 ) 報酬設定の根拠となるデータ ( 出来高点数の実績データ ) から見て一つの DPC として均質性が確保できていない ( 件数不足又はデータ変動大きい ) 患者群 特定の手術 処置 ( 原則直近の診療報酬改定に新しく保険導入されたもの ) を算定した患者 新規の高額薬剤 ( 当該薬剤を使用した場合の標準的薬剤費が 分類されうる診断群分類における薬剤費の平均 +1SDを超える薬剤 ) を使用した患者 4

( ウ ) 例外的に高額な費用を要する特殊な患者等 ( 急性期入院医療の定額払い方式の試行において採用された対象を一部修正 ) 24 時間以内の死亡患者 ( 新生児は生後 1 週間以内 ) 臓器移植患者 治験対象患者 先進医療対象患者 2 包括評価の対象とする診療報酬項目 ( 包括範囲 ) 包括評価の対象として設定されている出来高診療報酬項目は 入院基本料等 検査 画像診断 投薬 注射 リハビリテーション 精神科専門療法における薬剤料 処置 (1,000 点未満 ) 病理標本作製料等である ( 別紙 5) これらは DPC 制度に先行して実施された国立病院等 10 病院における急性期入院医療の定額払い方式の試行において採用された包括範囲を修正したものであり 当時の検討を踏まえ 実施の有無によって報酬が大きく異なる手術料をはじめとする技術料的な色彩の強い診療報酬項目を除外するとともに 薬剤等のいわゆるモノ代や入院基本料等の施設管理運営の範疇に入るような項目を中心に評価する という方向に沿って設定されたものであった ( 別紙 6) 参考 支払い方式出来高払い 長所 患者の状態に応じた医療サービスの提供が容易 ( 過尐診療の予防 ) 新しい医療を保険診療に取り入れることが容易 短所 過剰診療を誘発する恐れ 請求 審査支払い事務の複雑化 包 払 括 い 過剰診療の防止 請求 審査支払い事務の簡素化 過尐診療の恐れ 診療内容の不透明化 5

3 包括評価 (1 日当たり定額点数 ) の設定方式 急性期入院医療における平均在院日数等の診療のバラツキの実態 ( 制度導入当時 ) を踏まえ 診療の効率化推進と早期退院インセンティブの度合のバランスから 一件あたり定額ではなく 一日あたり定額を採用した ( 再掲別紙 2) 入院初期を重点評価するため 在院日数に応じた3 段階の定額報酬を設定する方式となっている ( 別紙 7) また 例外的に在院日数が長期化する患者 ( アウトライヤー ) については 平均在院日数 +2SD( 標準偏差 ) を超えた部分について 出来高診療報酬を算定することで対応している 4 医療機関別係数の設定方式 対象病院の施設特性や診療機能等 個別の医療機関に着目した評価を反映 させる方法として 包括点数に乗じる係数を設定している イ調整係数特定機能病院における診療内容の実態 ( 平成 15 年 DPC 制度導入に向けた検討時点で指摘された平均在院日数等のバラつきの存在 ) を踏まえた制度導入時の経過措置として 医療機関ごとの診療特性等の違いによる影響を補正するため 前年度の診療報酬算定実績を反映 ( 補正 ) する係数として導入された 導入の経緯から 平成 22 年度診療報酬改定以降 段階的に置き換えを進めていくこととされている ( 参考 ) 平成 17 年 11 月 16 日基本小委調整係数については DPC 制度の円滑導入という観点から設定されているものであることを踏まえ DPC 制度を導入した平成 15 年以降 5 年間の改定においては維持することとするが 平成 22 年度改定時に医療機関の機能を評価する係数として組み替える等の措置を講じて廃止することを検討してはどうか ロ機能評価係数 Ⅰ 入院基本料における看護配置の差 入院基本料等加算のうち医療機関単位で その機能に着目して算定するもの等を係数として評価している ( 別紙 8) ハ機能評価係数 Ⅱ 調整係数の役割に代替するものとして 医療機関ごとの診療特性等を評価す る係数として平成 22 年度から導入されている 6