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Transcription:

天文データ解析概論 ~ もし天 2012 に向けて ~ by 2011 年度観測班 : チーム 48 2

0 天体観測序論

天文における天体観測とは ( イメージ ) きれいな天体に望遠鏡を向けて覗き込んで見てる : 間違ったイメージ!

天文における天体観測とは ( 現実 ) 目 ではなく カメラ 目のデメリット 1 一瞬の画像しか見れない ( 光を貯められない ) 2 見れる波長域 ( 色 ) が限られてるカメラのメリット 1 長時間露出により 光を貯められる 2 目では見れないような光 ( 赤外線 紫外線 電波 etc) も観測可能 3 画像を保存できる => 観測後 データ処理をしてより見易くできる 天文の観測波長域

撮像と分光 天文の観測には大きく分けて 2 種類 撮像 : 普通に (?) 天体の写真をとること ただし色々な天体以外の光 ( ノイズ ) も乗っかる => 取り除かないといけない データ処理 ( この後 詳しく ) 分光 : 天体の光を波長毎に分ける 分光画像のデータ処理は 撮像の場合と同じ作業 +α!

( 補足 ) データ 処理 とデータ 解析 よく使う言葉だが 境界はあいまい 人によって違う ここでは ( 馬渡式 ) ( 一次 ) 処理 観測生データからいろいろなノイズを取り除き すぐ物理量を取り出せるデータにする作業 ( 例 )dark 引き flat 割 sky 引き 重ね合わせ 測光ゼロ点決め波長較正など 解析 処理済画像から 天体の物理量を抽出する作業 ( 例 ) 天体の検出位置 測光 色を求める 輝線を出す元素の同定 など

撮像データ解析資料 大野 & 本間

CCD による出力データのイメージ 天体 スカイ ( 空の光 ) レンズ 反射鏡 天体からの光子 ダーク ( 温度ムラ ) バイアス

CCD による出力データのイメージ 天体 スカイ ( 空の光 ) レンズ 反射鏡 ピクセル 1 個の出力値 天体からの光子 ダーク ( 温度ムラ ) バイアス

バイアス引き 天体からの光のみを取り出したいので 人為的に底上げしてある バイアス を画像データから引く バイアス は 出力値が負の値を示さないようにあらかじめ CCD に乗せられている値で 時間に依らず常に一定 バイアス を得るためには 露出ゼロ秒で画像を撮ればよい

バイアス画像

ダーク ( 暗電流 ) 引き ダーク は 各ピクセルの持つ温度によって発生する電流のコト カメラを露出している間 ずっと暗電流が流れ続ける CCD を冷却することで ダーク は抑えられる ダーク は カメラのシャッターを閉じて 天体の露出時間と同じ時間撮影することで得られる ただし画像にはバイアスも含まれている 実際の作業では ダーク画像を引くことでバイアスも引いたことになる

ダーク画像

生データ (M13, V band)

バイアス ダーク引き (M13, V band)

ここで注意点 撮像の際には フィルター が使われる フィルターは波長感度がそれぞれ違うため 使うときは一次処理用の画像もそれぞれのフィルターで取らなくてはならない フィルターを使わない処理用画像 : バイアス ダーク フィルターを使う処理用画像 : フラット

フラット割り 天体の光は レンズ 反射鏡を通ってから CCD に入るため CCD の中心ほど光が集まりやすい 望遠鏡の光学系によって 集まり方が異なる フラット は 一様な光を数秒撮影することで得られる 光の集まりやすいピクセルと 集まりにくいピクセルの差を補正する目的がある

フラット画像 の種類 一様な光を得る方法は複数ある ドームフラット : ドーム内に光を当てて撮る方法 トワイライトフラット : 日の出直前 or 日の入り直後の やや明るい空を撮る方法 スカイフラット : 夜空を撮る方法 何らかの形で星の光を除去する必要がある 今回の観測ではドームフラットは使えない

フラット画像 ( トワイライト, V band)

バイアス ダーク引き (M13, V band)

フラット画像バイアス フラット割り ( ダーク引きトワイライト, (M13, V band) V band)

スカイ引き データ画像には空の光が乗っているため 純粋な天体の出力値を得るために空の光を引く ( スカイを引く ) 必要がある ここでは 画像全体からある一定の値 ( スカイの平均値 ) を引く

スカイ引き前 ( 左 ) と スカイ引き後 ( 右 ) の画像 画像全体から定数を引いただけなので 目立った違いはない ただし右図の場合 暗い部分のカウント値は平均的にゼロとなっている

ここまでで 撮像した各画像に対して 必要な補正は終了している 画像には 天体から届いた光とノイズが検出されていると考えられる 次に ノイズの影響を抑えつつ 天体の光を多く集める (S/N 比を上げる ) 方法を説明する

天体の位置合わせ 天体の光は同じ場所から出ているのに対して ノイズはランダムに発生しているため 画像をたくさん足し合わせることで S/N 比は上がる 天体の位置は 地球の自転 望遠鏡の追尾性能などによって微妙にずれる 更に人為的にズラしたりもする ( ディザリング ) 各画像間で 天体の位置を合わせなくてはならない

位置合わせの様子 出てきた座標から 天体が重なるように画像を平行移動させる

フラット割りスカイ引き後 (M13, V band)

重ね合わせフラット割り (M13, V band, (M13, 5 枚 V band) )

測光 できたデータはただの数字なので 天体の等級と対応させる必要がある まず 等級の分かっている星 ( 標準星 ) の画像上でのカウント値を求める 今回は 開口 (aperture) 測光 を用いる

標準星 SA104-306 V mag = 9.370

標準星 SA104-306 V mag = 9.370 標準星のカウント値が表示される これを基にして 他の天体の等級が分かる

標準星 SA104-306 V mag = 9.370 標準星のカウント値が表示される これを基にして 他の天体の等級が分かる

測光 ~Makalii の出す値 ~ 開口測光は 開口 ( 赤い円内 ) に含まれる全フラックスで等級を求める方法 Makalii では 赤い円の周りに水色の円環が現れる これは 天体のカウント値がどのくらいスカイの上に乗っているかを測るもので 天体の純粋なカウント値を自動で求めてくれる つまり 測光モードで標準星をクリックするだけでよい

測光 ~ ゼロ点の求め方 ~ 標準星のカウント値が分かったら それを用いて任意の天体の等級が分かる m obj = m std 2. 5log 10 C obj /t obj C std /t std = 2. 5log 10 C obj + m std + 2. 5log 10 C std + 2. 5log 10 t obj t std この値を ゼロ点 と呼ぶ 標準星のカウント値を基にして 天体のカウント値と等級を対応させるための定数である 標準星画像と天体画像の積分時間の違いに注意!

まとめ ~ 観測手順 ~ ダーク画像を 目的天体と同じ露出時間で複数撮る バイアスも含まれているので バイアス画像を撮る必要は今回はありません 使うフィルターに対応させる必要もありません フラット画像を 使うフィルターに対応させて複数撮る スカイフラットもしくはトワイライトフラットを用います 観測スタッフが取得したものを 2 班で共有した方が効率的? 標準星を 使うフィルターに対応させて撮る 目標天体と高度が近い星をなるべく選んでください 撮る枚数は標準星の明るさで判断してください 目標天体を 適切な露出時間で複数撮る 天体がサチらない露出時間で 複数撮ってください 多いほど精度は上がりますが 時間対効果は減っていきますので 時間の無駄にならないように注意してください

まとめ ~ 解析手順 ~ 各生データからダーク画像を引く ダーク画像が複数あるときは 足し合わせて平均をとってから使ってください 生データの露出時間と同じ時間のダーク画像を使ってください 次に フラット画像で割る データ画像で使ったフィルターと同じフラット画像を使ってください 次に スカイを引く 複数枚画像を足し合わせる場合はスカイ引きが必要です 一枚しか画像がない場合には Makalii での測光の時に引くだけでも問題ありません 最後に 各画像の位置を合わせて 足し合わせる 同じフィルターの画像を足し合わせてください 必要に応じて 天体の等級を測る データ画像と同じ処理をした標準星の画像で測光してください

2 データ処理 解析 分光観測編 馬渡

光 = 色んな波長の光の寄せ集め 撮像で捉えている光はいろんな色の光の寄せ集め ( フィルターの波長域における積分値 )

分光 = 光を分ける

撮像と分光スペクトルの対応 撮像で捉えている光はフィルターの波長域における積分値 フィルター ( 目 )

より実践的 観測的イメージ 撮像と分光スペクトルの対応 横軸に波長縦軸に光の強度にしてみる

分光におけるデータ処理の必要性 より実践的 観測的イメージ ただし 観測から得られたスペクトルは本来の天体のスペクトルとは違う! 地球大気の影響や装置のノイズを取り除かないと一次元スペクトルも間違ってしまう orz データ一次処理

分光スペクトルに乗るノイズ 黄 : 撮像の時と同じ 赤 : 分光独自 波長方向の強度ムラ = フラックスムラ 空間方向の感度ムラ = フラット ダーク + スカイ

分光データ一次処理 フローチャート かっこ書きは天体や知りたい物理量によってやる必要がないかもしれない作業 ダーク引き ( フラット割り ) ( スカイ引き ) 位置合わせ 足し合わせ 波長較正 ( フラックス較正 ) 撮像の時と同じ 分光独自の処理 どこかで 一次元化 が入る ( 今回はフラット割とスカイ引きの間 )

生画像 分光データ一次処理 :NGC6543( キャッツアイ星雲 ) vega( 標準星 )

1 ダーク引き 分光データ一次処理 : 撮像の時と同じだが 今回使う分光用 CCD カメラ (SBIG/ST-7) は撮像用カメラ (Apogee-Alta-U9000) よりダーク貯めやすいのでより重要! ダーク引き前 ダーク引き後

分光データ一次処理 2 フラット割り : 撮像の時は画像の x 軸 y 軸の両方とも空間方向だったが 分光の場合は x 軸は波長方向であり 空間方向は y 軸だけ => フラット画像で感度ムラが直せるのは空間方向 (y) だけ! フラット ( トワイライト or スカイ or ドーム ) が一様光であるのは空間方向だけ! <= フラット画像 => 波長方向の感度ムラを直したければ 5 フラックス補正で 逆に広がった天体でなければフラット割りは重要でないからやらなくていいかも

分光データ一次処理 フラット割り

2.5 一次元化 分光データ一次処理 :2 次元スペクトルから適当な y 座標の行にだけ注目して横軸を波長 (pix) 縦軸を明るさにする 天体の 1 次元スペクトル スカイの 1 次元スペクトル

3 スカイ引き 分光データ一次処理 : スリットの天体光以外の部分 = スカイ ただし撮像の時と違ってスカイが波長毎に違う => obj(λ) sky(λ) =

4 足し合わせ 分光データ一次処理 :1 次元化したスペクトルを足し合わせて S/N アップ + + + + 5 =

分光データ一次処理 5 波長較正 :x 軸 ( 横軸 ) がピクセルになってるのを波長に直す => 観測前にとってるコンパリソンフレームを使う ( 厳密にやるためには結局 ベガ使った方がいい ) 波長 (A ) 6350A 5320A ピクセル (pix)=> 波長 (A ) の変換式 : 波長 =a ピクセル +b の a,b を求める!(ST-7 の場合 a<0) x( ピクセル ) コンパリソン : 元々波長のわかってる光 ( 特徴的な輝線を持つ光 ) を分光器に入れて取った画像

分光データ一次処理 波長 =a ピクセル +b をオブジェクトフレームに適用 a=-4.153 b=7097 横軸が波長 (A ) になった

count(adu/s) 分光データ一次処理 6フラックス補正 : まだ波長方向の感度ムラが残っている => 分光標準星 ( 本来のスペクトルが分かっている星 ) を使う 波長較正まで行った観測スペクトル 本来のスペクトル Hβ Hα Hγ Hβ Hγ B (O2) Hα 観測されたスペクトルと本来のスペクトルを比べて 変換式 : 本物フラックス(λ)=f(λ) 観測フラックス (λ) のf(λ) を求める 観測スペクトルを 1 秒あたりにしとくこと (L. Colina et al. 1996 Instrument Science Report CAL/SCS-08)

フラックス (erg/s/cm^2/a ) 分光データ一次処理 オブジェクトの観測スペクトルに f(λ) を掛け算 => オブジェクトの本物スペクトル! 波長 (A ) 感度曲線

フラックス (erg/s/cm^2/a ) (1) 元素組成の同定 分光スペクトルの解析例 : 輝線がある場合はその輝線の波長から何の元素がその天体に付随するか分かる Hγ HeI 波長 (A ) Hα(6563A ) と [OIII](5010A,doublet) Hβ(4861A ) Hγ(4340A ) HeI(5876A ) 確認 => 水素と酸素 ヘリウム原子が天体に付随 参考 : 群馬天文台で撮られたスペクトル

(2) 天体の速度の推定 分光スペクトルの解析例 : 輝線がある場合はその輝線の波長と 本来あるべき波長がずれている場合がある => 天体が動いているため ドップラーシフトにより輝線の波長がズレた Δλ λ = v c v = c Δλ λ 今回使う分光器は高分散でも波長分解能 Δλ~10A => v~600km 以上の速度の天体しか速度の推定ができない

分光スペクトルの解析例 (3) 輝線強度や強度比 : スペクトル中の複数の輝線の強度の比から 様々な物理状態が分かる (e.g. 銀河が星を一年でどれくらい作っているか? 元素組成比など ) (Kennicutt+98) 難しい物理フラックス補正をしっかりしてないとできない

データ処理まとめ 撮像データ観測データ = バイアス + 積分時間 ダーク + フラット 天体光 + スカイ を複数枚 この天体光だけを 分光データ抜き出すための作業が データ処理 観測データ = バイアス + 積分時間 [ ダーク + フラット空間 波長方向の2 種類 天体光 + スカイ ] を複数枚 更に横軸をピクセルから波長に直す

3 MAKALII 実習編 馬渡 本間 大野