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軸系アライメント計算の高精度化について 技術研究所白木大輔 1. はじめに近年, 大型低速 2 ストローク機関を搭載した船舶において, 軸系アライメントに起因する主機船尾側主軸受の損傷 ( 図 1-1) が増加傾向にある. この原因として喫水差による機関室二重底及び主機の変形, 温度変化による主機自身の熱変形, 主機台板の剛性低下, 高出力化による推進軸の剛性増加等の影響が考えられる. つまり, 主機を含めた機関室二重底は変形しやすい傾向にあり, 推進軸系はこれとは逆の傾向であることから, 船体及び主機の変形に推進軸が追従できず, 軸受間隔が狭くアライメント変化に対する感度が非常に高い主機主軸受に損傷が発生するというシナリオである. 従来の軸系アライメントに起因する損傷は船尾管軸受が大半を占めており, アライメントは, 船尾管軸受における片当たりの緩和を主たる目的として設計がなされてきた. このため, 現在ではスロープアライメントを適用するなど船尾管軸受に関するアライメント設計はある程度確立されている. これに対し, 主機主軸受部分の損傷は機関室二重底及び主機自身の変形と未だ詳細が不明確なものが大きな要因を占めているため, 主機主軸受における高精度なアライメント計算方法は確立されていない. このため, 主軸受の損傷を未然に防ぐ対策としては, いかに主軸受に発生する荷重に余裕を持たせ, 様々な状況に対応できる設計 ( フレキシビリティのある設計 ) を行うかがポイントとなってくる. このような対策を行うにあたって, 主機主軸受を含めたアライメント計算は必要不可欠であり, 主軸受を含めたより高精度なアライメント計算を行う必要がある. しかし, 現在の軸系アライメント計算書を見ると主軸受部分の計算条件はまちまちであり, 主機主軸受を正確に考慮したものとそうではないものが見られる. そこで今回, 軸系アライメント計算の現状を調査すると共に, 主機主軸受を含めた軸系アライメント計算の高精度化について検討した. 軸受下メタル 軸受上メタル 図 1-1 主軸受メタルの損傷の状況 ( 財 ) 日本海事協会 77 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

2. 軸系アライメント計算書の調査 す. 2000 年 ~2003 年前半の軸系アライメント計算書の調査を行った. 図 2-1 に一般的な計算書の概略を示 PROPELLER SHAFT INTERMEDIETE SHAFT THRUST SHAFT Hot Condition BRG. NO.1 2 3 4 5 6 Cold Condition 7 図 2-1 一般的な軸系アライメント計算書 従来のアライメント設計は軽喫水 主機冷態の条件で行われており, 温態に伴う主機自身の変形は考慮されていない. しかし, 近年, 主機メーカーは型式によって冷態 温態の温度差による台板等の熱膨張 ( 図 2-2) を主軸受の平均移動により反映させることを推奨している. これにより, 最近では Cold Condition( 図 2-1 赤実線 ) と Hot Condition( 図 2-1 赤点線 ) との 2 つの条件で主軸受 ( 図 2-1 4~7 番軸受 ) の OFFSET を平均的に一定の量だけ変化させ, 計算を行っているケースが見られる. これにより主機の熱膨張における軸受荷重の変化を知ることができ, 主軸受高さの変化に対してフレキシビリティのある設計であるか否かを確認することができる. しかし, この様な検討を行う場合, いかにクランクケース内部の状態を実際に近づけ正確に計算を行うかが重要となってくる. 一般的にアライメント計算は軸系を連続梁と仮定して計算を行うため, 主軸受部分の計算の際にクランク軸を丸棒 ( 梁 ) に置き換えて計算する必要がある. しかしクランク軸を丸棒に置き換える方法は確立しておらず, 単純にクランクジャーナル部の直径を持つ丸棒に置き換えて計算を行っているケースも見られる. クランク軸とそのジャーナル部の直径を持つ丸棒とでは曲げ剛性の違いは明らかであり, 正確な計算を行えるとは言いがたい. そこで, クランク軸と等価な曲げ剛性を持つ丸棒 ( 以下, 等価丸棒と呼ぶ ) が必要となる. さらに, 主軸受部分の正確な計算を行うにあたっては, 考慮する主軸受の数も重要である. 理想として主軸受はすべて考慮することが望ましいが, 計算書の多くは主軸受の省略を行っており, 考慮する主軸受の数は統一されていない. これについても検討の必要がある. 最後に喫水変化による機関室二重底及び主機の変形を考慮に入れたケースであるが, これについては先にも述べたように船ごとの変形量が不明であるため, 詳細計算や計測の結果から推測するしかない. 一般に喫水によって船体の変形状態が異なり, 機関室二重底は, 軽喫水から深喫水となるときに上に凸の変形を起こし, さらに主機自身も熱膨張等の影響もあり, 上に凸の変形を起こすといわれている. 図 2-3,4 に予想変形図を示す.FEM 解析により機関室二重底の変形を予測することは可能であるが, この場合は計算精度をやはり実測で検証しておく必要がある. 実測に関しては,20 年ほど前までは計測例が幾 ( 財 ) 日本海事協会 78 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

つか報告されていたが 1), 船体に高張力鋼を使用している近年の船舶で計測した例はきわめて少ないと考えられる. このため, 二重底の変形については各造船所の経験に頼るというのが現状である. 船体及び主機の変形に関しては, 対策として, 設計段階で主機船尾部の主軸受のOFFSETを変化させる等の方法が取られているようである. 熱膨張による OFFSET 平均移動量 主機冷態 主機温態 図 2-2 主機台板の熱膨張 軽喫水 深喫水 図 2-3 機関室の予想変形図 軽喫水 主機冷態 深喫水 主機温態 図 2-4 主機の変形予想図 ( 財 ) 日本海事協会 79 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

以上, これまでに述べたことを念頭において, 軸系アライメント計算書の調査を行った. この調査はボアが 500mm 以上, ストロークが 1500mm 以上の大型低速 2 ストローク機関を搭載した船舶を対象としており, 計算で考慮した主機主軸受の数, 主機の冷態 温態における OFFSET 平均移動の有無, クランク軸等価丸棒の採用 不採用, 設計時における船尾側主軸受の OFFSET 変化の有無について行った. 表 2-1 に調査結果をまとめて示す. この調査は造船所 16 社を対象にしたものであり, それぞれ A~P 社とした. 表中の記号は, : 調査したすべての図面において検討されていた : 検討されている場合とされていない場合が見られた : 調査したすべての図面において検討されていなかった ことを示す. 表 2-1 軸系アライメント計算書調査結果 主機主軸受の数 主軸受の OFFSET 平均移動 クランク軸等価丸棒 船尾側主軸受の OFFSET 変化 A 社 5 B 社 6 C 社 6~9 D 社 4~5 E 社 4~8 F 社 4~6 G 社 4 H 社 4 I 社 5~6 J 社 3 K 社 4~5 L 社 4~5 M 社 4~5 N 社 4 O 社 3 P 社 3 上記の調査結果から以下の見解が得られた. (1) 主機主軸受の数各造船所において考慮している主機主軸受の数は表 2-1 からわかるようにまちまちであり, 実際の主軸受すべてを考慮しているところもあれば, 船尾側から 3 番目までしか考慮していないところもある. また, シリンダー数に関係なく主軸受の数を決めているケースが半分程度あった. 図 2-5 にシリンダ数と計算時に考慮されている主軸受の数をグラフにしたものを示す. このグラフから, 例えば 6 シリンダの場合でも考慮の数が 3 個から 8 個と幅広く, 決まった値は見られないことが確認できる. ( 財 ) 日本海事協会 80 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

図 2-5 シリンダ数と主軸受数の関係 (2) 冷態 温態における主軸受の OFFSET 平均移動主機の温度変化を考慮した主軸受 OFFSET の平均移動を行っている造船所は半分程度であった. また, 造船所によっては OFFSET を与える場合とそうでない場合があり, これについては, 各主機メーカーが示す型式ごとの推奨値があるため, それがある場合のみ計算条件に加えていると思われる. OFFSET 平均移動量は主機の据え付け位置から主軸受までの高さで計算されるが, 概略であれば主機のボアで整理できると考えられる. そこで, この平均移動量の主機メーカー推奨値をボアによって整理して図 2-6 に示す. 大手主機メーカー三社 (MA 社,MB 社,MC 社とする ) を対象とし, 今回の調査によって得られた値の範囲でグラフ化を行った. このグラフから, ボア 500~850mm の主機における OFFSET 平均移動量は 0.24~0.40mm の範囲であることがわかる. 図 2-6 OFFSET の平均移動量とボアの関係 ( 財 ) 日本海事協会 81 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

(3) クランク軸等価丸棒クランク軸等価丸棒を採用している造船所は, 主軸受の OFFSET 平均移動と同様に半分程度であった. また, 主軸受の平均移動を行っている造船所の多くは等価丸棒も採用していることがわかる. この等価丸棒に関しても主軸受の平均移動と同様に主機メーカーの推奨値があり, 等価丸棒の軸径はこの推奨値を用いているようである. この等価丸棒については本会においても検討を行ない, 等価丸棒の直径を算出する簡易算式を導出したので, 後に簡単な説明を行う. (4) 船尾側主軸受の OFFSET 変化船尾側主軸受の OFFSET 変化を採用している造船所は,16 社中 3 社とわずかであった. この主軸受の OFFSET 変化については, 船尾側主軸受を上に変化させる場合と, 下に変化させる場合とがあった. また, これまでと同様に, 最近ではこの変化量も主機メーカーの推奨によって決定されているようである. 以上, 最近の軸系アライメント計算書を調査した結果, 主機メーカーの推奨を基に主軸受損傷を対象として十分対策を行っている場合もあれば, 船尾管軸受及び中間軸受のみを検討対象としている場合もあり, 軸系アライメントの設計は各社様々であることが確認された. しかし, 主軸受の損傷は, 軸受及び軸の損傷だけでなく, クランクケースの爆発をも引起す危険性があるので, 損傷防止として現段階で考慮しうる計算条件をできるだけ設計に取り込む必要があるといえる. さて, 本会で軸系アライメントに関する試計算を実施し, 上記調査項目が実際にどのような効果をもたらすかを確認すると共に, 計算の高精度化について検討を行ったのでそれについて紹介する. 3. アライメント計算の高精度化 3.1 計算対象船及び損傷経緯計算対象とした船舶は, アライメント不良を起因として主軸受に損傷が発生した 27,915G/Tのプロダクト運搬船である. 深喫水 主機温態時に主機船尾側において軸が浮き上がり ( 船尾から 2 番目の主軸受, 図 3-1 にこの様子を示す ) 主軸受が無荷重状態となったため, 軸受が軸によって叩かれ軸受メタルに過大な変動圧力が作用した結果, メタル剥離を起こした事例である. 2) 本船の主機は 7 シリンダであり, この損傷を起点として, その後船尾側の数個の主軸受に損傷が発生している. Lifted off 軽喫水 冷態状態 深喫水 温態状態 図 3-1 軸の浮きあがりの様子 ( 財 ) 日本海事協会 82 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

3.2 設計当初における軸系アライメント計算まず対象船の設計時の軸系アライメント計算書に沿って計算を行った. ここでは軸径, 軸受 OFFSET 量, 荷重等のデータは省略する. アライメント計算の条件は, 軽喫水 主機冷態のみであり, 主機の冷態 温態の温度変化は考慮されていない. 主軸受の数は船尾側から 4 番目までが考慮され, いずれの軸受も OFFSET は一定であった. また等価丸棒は採用されていない. 図 3-2 に軸系を, 図 3-3 に計算結果 ( 縦軸に軸受荷重, 横軸に軸受位置 ) を示す. BRG. Name S/A S/F IM 図 3-2 アライメント計算条件 No.1 No.3 No.2 No.4 図 3-3 アライメント計算結果 計算書にある条件で計算した結果, すべての軸受に荷重が作用しており, 軽喫水 主機冷態における 軸受荷重に問題はないことが確認された. 次に, 主軸受の数, 等価丸棒の使用, 主機温態を考慮した計 算を行ない, 比較検討を行った. ( 財 ) 日本海事協会 83 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

3.3 調査項目の検討 3.3.1 主軸受の数 3.2 で行ったアライメント計算では, 主軸受は船尾側から 4 番目まで考慮した. しかし表 2-1 に示した調査結果では, 最も少ないもので主軸受を 3 番目までしか考慮していないものも見られたので, 主軸受の数を 3 個 ~9 個 ( すべての主軸受 ) まで変化させて計算を行った. 図 3-4 に計算結果を示す. 図 3-4 主軸受数を変化させた場合の軸受荷重 図 3-4 から, 主軸受数の影響は No.1~No.3 主軸受部に現れ, 中間軸受 (IM) より船尾側の軸受はまったく影響を受けないことが明らかである. 特に No.2 及び No.3 軸受においては, 主軸受数が 3 個の場合と 4 個の場合とで荷重が大きく変化している.9 個のときの荷重を真の値とすると,3 個の場合には No.2 軸受の荷重が過大評価され,No.3 軸受の荷重は過小評価される.4 個の場合には, 逆に No.2 軸受の荷重が過小評価され,No.3 軸受の荷重が過大評価されることになる. 真の値に近いのは主軸受数が 5 個以上の場合である. 船尾側主軸受における軸受荷重を正確に評価しようと考えるなら, 主軸受の数は最低 5 個以上必要であることがわかる. 逆に S/A~IM 軸受の荷重だけをを知りたいのであれば, 主軸受は 3 個考慮すれば充分であると言える. 3.3.2 クランク部分への等価丸棒の採用等価丸棒の採用についてであるが, 計算結果を示す前に, 本会が検討した等価丸棒の求め方について簡単に説明を行う. 3),4) クランク軸を丸棒と比較した場合, 前述した通り, 剛性の違いは明らかである. そこで数値解析からクランク軸の曲げ剛性を求め, クランク軸と等価な曲げ剛性を有する丸棒への置き換えについて検討した. 解析は図 3-5 に示すクランク軸と丸棒の解析モデルを用い, 軸左端の完全拘束及びその他の軸受接触点への強制変位という境界条件を与え, 各軸受接触部分に発生する荷重すなわち軸受反力を調査するというものである. この方法を用いて, 徐々に丸棒の直径を変化させ, 軸受反力がクランク軸の場合と ( 財 ) 日本海事協会 84 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

等しくなるときの丸棒が等価丸棒となる. 図 3-6 に解析によって求めた軸受反力を示す. このグラフは縦軸に軸受反力, 横軸に軸受番号を取っており, グラフ中の赤のラインがクランク軸の軸受反力, 緑がジャーナルの直径を持つ丸棒の軸受反力, 青が直径をジャーナルの 60% まで減少させた丸棒の軸受反力である. このグラフからジャーナル直径の丸棒は, クランク軸と比較して剛性が非常に高いことが明らかであり, このクランク軸の場合には, ジャーナル直径の 60% の径を持つ丸棒が等価丸棒であるといえる. : 完全拘束 : 強制変位 0 1 2 3 4 5 6 0 1 2 3 4 5 6 図 3-5 解析モデル 図 3-6 軸受反力の比較 さらにこの解析結果を基に, 材料力学的手法によって種々のクランク軸に対する等価丸棒の直径を算出する簡易算式の導出を行った. これはクランク軸 1 スローを図 3-7 に示すように梁 mnpp n m と仮定し, 軸の自由端 m 点において荷重 W を与え, この m 点における変位がクランク軸と丸棒とで等しくなるように丸棒の直径を導出したものである. クランク軸の変形モードとしては, ピン ジャーナル ウェブの曲げ せん断 ねじりを考慮した. ( 財 ) 日本海事協会 85 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

t p p qr d I j =πd 4 /64 I W =Bt 3 /12 m n n m l L W B I j,i W : 断面 2 次モーメント 図 3-7 クランク軸 1 スロー梁モデル これにより, 以下の式が導かれた. ( d eq d j ) 4 = 1 2 ( 1 1+A W + 1 1+B W +B p ) 但し, A W = 3E j I j 2E W I W B W = q 1 r L 3E j I j 2G W I WP 2 2 l2 (1+ L 2 ) / (1+0.65d j L 2 ) q 2 r L (1+0.65 3E d j I j B L 2 ) r 2 l P = 2G W I PP L 3 / (1+0.65d j L 2 ) (1+ l2 L 2 ) / 2 q 1,2 = 1-1 - k, 1 2 k ( r d 1, 2 = 1 d 4, 1 + ( K = 0.1 b t, 3 ) K K = 0.4 1 2 ) 1 2 5 ここで, d eq : 等価丸棒の直径 E j I j : ジャーナルの曲げ剛性 G W I WP : ウェブのねじり剛性 d j : ジャーナルの直径 E W I W : ウェブの曲げ剛性 G W I PP : ピンのねじり剛性 この式を用いて求めた様々なクランク軸の等価丸棒の直径と,FEM 解析によって求めた直径をストロークで整理し, 図 3-8 において比較した. また, 参考に主機メーカーの推奨する等価丸棒の直径も掲載する. このグラフは縦軸にクランク軸ジャーナル直径に対する等価丸棒の直径の割合, 横軸にストロークを取ったものである. このグラフから, 簡易算式の値は解析結果を良く近似しており, メーカー推奨値にも近い値となっていることがわかる. ( 財 ) 日本海事協会 86 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

図 3-8 等価丸棒の直径の比較 この簡易算式を用いて計算した結果, 対象船の等価丸棒の直径は, ジャーナル直径の 63.5% であった. そこでこの等価丸棒を用いてアライメント計算を行った. 計算は先の 3.2 において使用した条件に等価 丸棒を加えて行った. また, 主軸受は 9 つすべてを考慮した. 計算結果を図 3-9 に示す. 図 3-9 軸受荷重の比較 図 3-9 のグラフでは, 等価丸棒を採用した場合としない場合で No.1,2,3 主軸受の軸受荷重に違いが見られる.No.1 においては荷重が半分ほど低下し, 逆に No.2 では荷重が半分ほど上昇している. つまり, 主軸受の強度評価をする上で最も正確な値が期待される No.1,2 において比較的大きな荷重の違いが見られる. 船尾側主軸受のアライメントは非常にセンシティブであるため, この軸受荷重の違いを無視することはできない. これより, 主機内部のアライメント計算を行うにあたって, クランク軸は単にジャーナル直径を持つ丸棒に置き換えるのではなく, 等価丸棒に置き換えて計算する必要があるといえる. ( 財 ) 日本海事協会 87 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

3.3.3 主機冷態 温態における主軸受 OFFSET の平均移動次に, 主軸受 OFFSET の平均移動について検討する. 計算は No.1~No.9 軸受に一定の OFFSET 変化を与えて行った.OFFSET 量はメーカー推奨値とした. 計算条件は 3.3.2 と同様 ( 等価丸棒を採用 ) であり, 温態ではプロペラ荷重を減少させている ( プロペラが完全に水没したと仮定 ). 冷態と温態において計算結果の比較を行った. 図 3-10 に比較のグラフを示す. 図 3-10 冷態 温態における軸受荷重の比較 上のグラフから, 主機が温態になると IM,No.2 軸受で軸受荷重がマイナスになることが確認できる. これは軸が浮いた状態を表す. 実際に損傷が起きた時点でも No.2 主軸受部の軸の浮き上がり ( 図 3-1) が確認されており, さらに IM 軸受においても同様の現象が確認されていることから, これは実態に合った結果であると考えられる. つまり, 本船の軸系は主軸受におけるアライメント感度が非常に高く, 軸が浮きやすい設計であった. 軽喫水 主機冷態において軸受荷重が良好な結果を示しても, 実際の運航状態である主機温態において良好な軸受荷重が得られなければ, 軸系に支障をきたし損傷を引起してしまう典型的な例といえる. 本アライメント計算は, 主機メーカーの推奨値が提示される以前に行われたものであり, この様な結果の予測は難しかったと考えるが, 最近では, どのメーカーでも推奨値を提示していると思われるので, 必ずそれを計算に取り入れて軸系アライメントの設計を行う必要がある. 3.3.4 対象船における対策本船はこれまでの結果を見ればわかるとおり, アライメントのフレキシビリティが非常に低く, 主軸受におけるアライメント感度が非常に高い. その結果, 主軸受の損傷を招いたといえる. 本船以降に建造された同型船においては, この軸受損傷を回避するために適切なアライメント設計がなされた. そこで本会においても, 同型船に採用された対策の効果を検証するためアライメント計算を行ってみた. 図 3-11 にアライメント計算条件を示す.( これまでと同様, 詳細な計算条件は省略する ) ( 財 ) 日本海事協会 88 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

Hot Condition Cold Condition BRG. Name S/A IM No.1 No.3 No.2 No.4 図 3-11 アライメント計算条件 ( 対策後 ) 対策後のアライメント設計は, 中間軸受の位置を後方に下げ, 船尾管の船首側軸受 ( 図 3-2 の S/F 軸受 ) をなくすという方法が取られている. また損傷船での計算結果において,No.1 主軸受の負担が大きくなり, その結果 No.2 軸受が浮いてしまう傾向にあったことから, 船尾側主軸受の OFFSET をあらかじめ下げて設計している. この様な設計は, 軸系のフレキシビリティを増し, 主機の温度変化に対応できるようにする 1 つの方法と考えられる. このアライメント条件を用いて, 主機冷態 温態を考慮した計算を行った. 主軸受はすべて (9 個 ) 考慮し, クランク部分は等価丸棒を使用している. 図 3-12 に主機冷態と温態の軸受荷重の比較を示す. 図 3-12 冷態 温態における軸受荷重の比較 図 3-12 のグラフから, 冷態 温態のどちらの条件であっても, すべての軸受に荷重が作用し良好な結果を示している. また, このアライメントは冷態で No.1 軸受の荷重が 0 に近く, 温態になると荷重が増す設計となっている. 確かに冷態 温態のどちらにおいても十分な軸受荷重が得られることが理想ではあるが, 冷態という条件は主に軸の据え付け時における荷重を知る目的で設けられた条件なので, 運 ( 財 ) 日本海事協会 89 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

航状態 ( 深喫水 主機温態 ) における荷重のほうが重要である. 各船の用途を考慮し, その船の代表的 な運航状態を考えた上でアライメント設計を行うことが重要であると言える. 3.3.5 機関室二重底変形及び機関変形の考慮アライメント設計を行う際, 最も重要なのは代表的な運航状態における軸受荷重であると述べた. そこで最後に, 機関室二重底及び主機の変形を軸系アライメント計算に取り入れることを検討した. 二重底及び主機は, 図 2-2, 3 のように変形すると考えられている. 損傷が起こった船では, 損傷対策時に機関室二重底変形の計測を行ない機関室後部の凸変形を確認している. これはレーザーを用いて機関室船首側から, 機関室後部バルクヘッド ( 以下,BHD と略す ) 付近までの距離における変形を計測したものであり, 軽喫水から深喫水に変化したとき 3.5mm 程度の変形が起こるという結果であった. そこで, 多少強引ではあるが機関室部分の変形を単純な 2 次曲線と仮定して, 船体変形をアライメント計算に取り入れることを検討した. 対象は 3.3.4 において使用した損傷対策後のアライメント計算書とし, 曲線は損傷が起こった船の計測結果を基に,BHD 部において 0.5mm~3.5mmまで垂れ下がったとして求める. 曲線は主機の両端 (No.1,9) において変形を 0mm と仮定し,BHD での変形量を 0.5mm から 3.5mm までの 1mm 間隔の 4 ケースとし, 近似曲線を求める. また,BHD より後部は変形しないと考え,BHD 部からプロペラ位置までは直線としている. 図 3-13 に仮想変形を表した曲線を, 表 3-1 に各軸受位置の変形量を示す. BHD M/E 3.5mm S/A IM No.1 No.9 軸受位置 図 3-13 仮想機関室変形たわみ曲線 ( 財 ) 日本海事協会 90 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

表 3-1 各軸受における変形量 (mm) BHD 部変形量 -3.5mm -2.5mm -1.5mm -0.5mm S/A -5.467-3.905-2.343-0.781 BHD -3.500-2.500-1.500-0.500 IM -1.7018-1.2156-0.7293-0.2431 No.1 0.000 0.000 0.000 0.000 No.2 0.195 0.139 0.083 0.028 No.3 0.322 0.230 0.138 0.046 No.4 0.397 0.283 0.170 0.057 No.5 0.421 0.300 0.180 0.060 No.6 0.393 0.281 0.168 0.056 No.7 0.313 0.224 0.134 0.045 No.8 0.183 0.130 0.078 0.026 No.9 0.000 0.000 0.000 0.000 * 表中グレーの部分を基に近似曲線を求めている. 表 3-1 に示した喫水変化による機関室二重底及び機関の仮想変形量をアライメントの計算条件に取り 入れ, 計算を行う. その他の条件は, 主軸受 9 個, 主機温態, 等価丸棒採用である. 図 3-12 に機関室二 重底の変形を考慮した計算結果を示し, 比較として変化を考慮していない時の軸受荷重も示す. 図 3-14 仮想の機関室二重底変形を考慮した軸受荷重 図 3-14 のグラフから, 今回仮定した機関室二重底及び主機の変形においては, いかなる場合においてもすべての軸受に荷重が下向きに作用していることが確認できた. つまり, 損傷の対策として同型船に採用されたアライメント設計は非常にフレキシビリティが高く, 深喫水 主機温態の条件においても十分な軸受荷重が得られるアライメント設計であると考えられる. 今回はあくまで仮定として機関室二重底及び主機の変形を単純な曲線で考慮したが, この様な手法で, 様々な条件, 曲線を仮定して計算を行えばアライメントのフレキシビリティの確認は十分に行えると考えられる. 実際の計測結果及び同型船における経験値等があるのであれば, これらも参考にすることにより主軸受の損傷を防止する確実な対策になると考えられる. ( 財 ) 日本海事協会 91 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会

4. 最後に今回, 主機主軸受の損傷防止を目的に, 軸系アライメント計算書の現状調査を行ったが, そこで最も懸念された点は多くの図面で様々な計算条件を省略していることである. 一例をあげると主機温度変化による OFFSET やクランク軸等価丸棒の問題である. これらの取り扱いは造船所によってまちまちであった. また, これは主軸受の考慮の数にも言えることである. 本文中でも示したが, 主軸受を 3 個にまで省略すると主軸受部の荷重は誤った結果になってしまう. 今回紹介した等価丸棒や主軸受の OFFSET 平均移動など, 主機メーカーの推奨がある場合は必ずこれを計算に取り入れるべきであり, また, 機関室二重底の変形に関しても,( 確立した手法はないが ) 可能であれば代表的な運航状態を想定してアライメントのフレキシビリティを確認するのが望ましい. アライメント設計の段階においては, 船尾管軸受や中間軸受に加え, 主機主軸受の損傷をも防止する目的で考えられる種々の条件を計算に取り込むことが肝要と考えられる. 1) 社団法人日本造船研究会 : 軸系アライメントの設定基準に関する研究 2) 原田廉平 : 日本舶用機関学会第 34 巻第 5 号 3) 白木, 大石, 宋, 佐々木 : 第 67 回マリンエンジニアリング学術講演会講演論文集 4) 佐々木, 宋, 大石, 白木 : 第 68 回マリンエンジニアリング学術講演会講演論文集 ( 財 ) 日本海事協会 92 平成 15 年度 ClassNK 研究発表会