Microsoft Word - 3.No._別紙.docx

Similar documents
(Microsoft Word \203v\203\214\203X\203\212\203\212\201[\203X\216\221\227\2772.doc)

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

H26説明配布資料_斎藤芳郎HP用.pptx

ン投与を組み合わせた膵島移植手術法を新たに樹立しました 移植後の膵島に十分な栄養血管が構築されるまでの間 移植膵島をしっかりと休めることで 生着率が改善することが明らかとなりました ( 図 1) この新規の膵島移植手術法は 極めてシンプルかつ現実的な治療法であり 臨床現場での今後の普及が期待されます

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

スライド 1

犬の糖尿病は治療に一生涯のインスリン投与を必要とする ヒトでは 1 型に分類されている糖尿病である しかし ヒトでは肥満が原因となり 相対的にインスリン作用が不足する 2 型糖尿病が主体であり 犬とヒトとでは糖尿病発症メカニズムが大きく異なっていると考えられている そこで 本研究ではインスリン抵抗性

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

Untitled

PowerPoint プレゼンテーション

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

32 小野啓, 他 は変化を認めなかった (LacZ: 5.1 ± 0.1% vs. LKB1: 5.1 ± 0.1)( 図 6). また, 糖新生の律速酵素である PEPCK, G6Pase, PGC1 α の mrna 量が LKB1 群で有意に減少しており ( それぞれ 0.5 倍,0.8 倍

News Release 報道関係各位 2015 年 6 月 22 日 アストラゼネカ株式会社 40 代 ~70 代の経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんと 2 型糖尿病治療に従事する医師の意識調査結果 経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんは目標血糖値が達成できていなくても 6 割が治療

消化器病市民向け

平成24年7月x日

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

Microsoft Word Webup用.docx

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

<4D F736F F D EA95948F4390B3817A938C91E F838A838A815B835895B68F F08BD682A082E8816A5F8C6F8CFB939C F

Microsoft PowerPoint - 6篁准教授.ppt

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

説明書

第三問 : 次の認知症に関する基礎知識について正しいものには を 間違っているものには を ( ) 内に記入してください 1( ) インスリン以外にも血糖値を下げるホルモンはいくつもある 2( ) ホルモンは ppm( 百万分の一 ) など微量で作用する 3( ) ホルモンによる作用を内分泌と呼ぶ

Microsoft Word - FHA_13FD0159_Y.doc

Microsoft Word - 【変更済】プレスリリース要旨_飯島・関谷H29_R6.docx

エネルギー代謝に関する調査研究

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

Microsoft Word - Ⅲ-11. VE-1 修正後 3.14.doc

2015 年度 SFC 研究所プロジェクト補助 和食に特徴的な植物性 動物性蛋白質の健康予防効果 研究成果報告書 平成 28 年 2 月 29 日 研究代表者 : 渡辺光博 ( 政策 メディア研究科教授 ) 1

<4D F736F F D208DC58F498F4390B D4C95F189DB8A6D A A838A815B C8EAE814095CA8E86325F616B5F54492E646F63>

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

Microsoft Word - プレスリリース最終版


スライド 1

研究成果の概要ビタミンCを体内で合成できない遺伝子破壊マウス (SMP30/GNL 遺伝子破壊マウス ) に1 水素 (H2) ガスを飽和状態 (0.6 mm) まで溶かした水素水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) を与えた群 2 充分なビタミンCを与えた群 3 水のみを与えた群の 3 群に分け 1 ヶ

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

スライド 1

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

平成14年度研究報告

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

病気のはなし48_3版2刷.indd

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

第6号-2/8)最前線(大矢)

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

<4D F736F F D DC58F4994C5817A C A838A815B83588CB48D F4390B3979A97F082C882B5816A2E646F6378>

図 1 マイクロ RNA の標的遺伝 への結合の仕 antimir はマイクロ RNA に対するデコイ! antimirとは マイクロRNAと相補的なオリゴヌクレオチドである マイクロRNAに対するデコイとして働くことにより 標的遺伝 とマイクロRNAの結合を競合的に阻害する このためには 標的遺伝

Microsoft Word - 17_07_04

Microsoft Word CREST中山(確定版)

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

シトリン欠損症説明簡単患者用

界では年間約 2700 万人が敗血症を発症し その多くを発展途上国の乳幼児が占めています 抗菌薬などの発症早期の治療法の進歩が見られるものの 先進国でも高齢者が発症後数ヶ月の 間に新たな感染症にかかって亡くなる例が多いことが知られています 発症早期には 全身に広がった感染によって炎症反応が過剰になり

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

<4D F736F F D F4390B388C4817A C A838A815B8358>

2011年度版アンチエイジング01.ppt

ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

目次 1. 抗体治療とは? 2. 免疫とは? 3. 免疫の働きとは? 4. 抗体が主役の免疫とは? 5. 抗体とは? 6. 抗体の構造とは? 7. 抗体の種類とは? 8. 抗体の働きとは? 9. 抗体医薬品とは? 10. 抗体医薬品の特徴とは? 10. モノクローナル抗体とは? 11. モノクローナ

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を


生物時計の安定性の秘密を解明

<4D F736F F D E30392E32398B5A8F70838A838A815B83588BE391E594C55F8D4C95F18DC58F49816A2E646F63>

高齢者の筋肉内への脂肪蓄積はサルコペニアと運動機能低下に関係する ポイント 高齢者の筋肉内に霜降り状に蓄積する脂肪 ( 筋内脂肪 ) を超音波画像を使って計測し, 高齢者の運動機能や体組成などの因子と関係するのかについて検討しました 高齢男性の筋内脂肪は,1) 筋肉の量,2) 脚の筋力指標となる椅子

<4D F736F F D F4390B38CE3816A90528DB88C8B89CA2E646F63>

nsg01-04/ky191063169900010781

<4D F736F F F696E74202D CA48B8689EF8D E9197BF332E31302E B8CDD8AB B83685D>

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

Microsoft Word - 【最終】Sirt7 プレス原稿

要旨 グレープフルーツや夏みかんなどに含まれる柑橘類フラボノイドであるナリンゲニンは高脂血症を改善する効果があり 肝臓においてもコレステロールや中性脂肪の蓄積を抑制すると言われている 脂肪肝は肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まった状態で 動脈硬化を始めとするさまざまな生活習慣病の原因となる 脂肪肝

No. 2 2 型糖尿病では 病態の一つであるインスリンが作用する臓器の慢性炎症が問題となっており これには腸内フローラの乱れや腸内から血液中に移行した腸内細菌がリスクとなります そのため 腸内フローラを適切に維持し 血液中への細菌の移行を抑えることが慢性炎症の予防には必要です プロバイオティクス飲


<4D F736F F D DC58F49288A6D92E A96C E837C AA8E714C41472D3382C982E682E996C D90A78B408D5C82F089F096BE E646F6378>


大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

平成13年度研究報告

平成24年7月x日

ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明 ポイント これまで マウス拘束ストレスモデルの解析で ストレスは内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし インスリン抵抗性 血栓症の原因となることを示してきました マウス拘束ストレスモデルの解析を行ったところ ストレスは xanthine oxidored

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

Transcription:

膵臓のインスリン産生とインスリン抵抗性の両方を改善する物質を世界で初めて発見 2 型糖尿病の治療法開発に大きな光 < ポイント > l 2 型糖尿病で増加する セレノプロテイン P は 血糖値を下げる インスリン の効果を抑制し ( インスリン抵抗性 ) 糖尿病を悪化する l セレノプロテイン P に結合するタンパク質 ( 抗体 ) を複数作成し その中からセレノプロテイン P の作用を抑制する 中和抗体 を同定しました 中和抗体を糖尿病モデルマウスに投与すると インスリン抵抗性が回復し 糖尿病を改善することが明らかとなりました l 増加したセレノプロテイン P が 膵臓のインスリン産生も抑制することが世界で初めて明らかとなりました 中和抗体は 糖尿病モデルマウスのインスリン産生も改善することが分かりました l セレノプロテイン P の中和抗体により インスリン産生とインスリン抵抗性の両方を改善して 複合的に糖尿病を治療できると考えられます 糖尿病を治療する新たな医薬としての発展が期待されます < 背景 > 近年 2 型糖尿病などの生活習慣病は 増加の一途をたどっており その対策は急務となっています 我が国における糖尿病患者数は 3 万人を突破し その予備群も 1, 万人と推計されています 血糖値が増加する 糖尿病 の発症には 血糖値を下げるメッセンジャー物質 インスリン が深く関与しています 食事によって血糖値が増加すると 膵臓 β 細胞でインスリンが産生され 分泌されたインスリンは 骨格筋などに作用し 血液中から糖分を取り込み 血糖値が下がります 2 型糖尿病患者では インスリンの効果が低下し 骨格筋での糖取り込みが低下する インスリン抵抗性 が見られます また 膵臓 β 細胞からの インスリン産生 の低下が引き金となる場合もあります インスリンの産生や作用の低下がどのようにして引き起こされるかについては 未だ不明な点が多く残されていますが 我々の研究グループでは 糖尿病で増加する セレノプロテイン P に着目した研究を行っています セレノプロテイン P は 肝臓で主に合成され 血液中に分泌されるタンパク質です セレノプロテイン P は 必須微量元素 セレン を含むタンパク質で 食事から吸収したセレンを 各臓器に運ぶ重要な役割をしています ( 図 1 文献 1) セレンを含むタ 1

ンパク質として 活性酸素を除去するグルタチオンペルオキシダーゼ (GPx) が知られており GPx の合成にセレンは必要不可欠です セレノプロテイン P が低下すると様々な障害が引き起こされることが知られていますが その障害は GPx などのセレン含有タンパク質の減少で説明されます 一方 最近我々の研究から セレノプロテイン P が増えすぎても様々な障害を引き起こすことが明らかとなってきました ( 図 2 文献 2) 2 型糖尿病患者で増加したセレノプロテイン P は インスリンの効果を低下させ ( インスリン抵抗性 ) 血糖値を増加し 糖尿病を悪化する 悪玉 として作用することが分かりました 増加したセレノプロテイン P は 運動による健康増進効果も抑制すること ( 運動抵抗性 ) が明らかとなっています ( 図 2 文献 3) 適度な運動によって活性酸素が生じますが 微量の活性酸素はインスリンの効果を高め 血糖の取り込みを促進して 糖尿病を改善します 糖尿病で増加したセレノプロテイン P は 適度な活性酸素も消去し インスリン抵抗性や運動抵抗性を引き起こすと考えられました ( 文献 2 3) 以上 増加したセレノプロテイン P は 糖尿病の重要な治療標的と考えられます しかしながら セレノプロテイン P の作用を抑制する糖尿病治療薬は開発されていませんでした P P GPx 図 1 セレノプロテイン P の機能 セレノプロテイン P は 肝臓から分泌され 血液を介して 各臓器にセレンを運搬する 図 2 過剰セレノプロテイン P による 糖代謝の悪化 増加したセレノプロテイン P は 筋肉の活性 酸素を消去し インスリン抵抗性や運動抵抗 性を生じる 2

同志社大学リリース No.57 別紙 2 型糖尿病の治療法開発に大きな光 Nature Communications に掲載 研究の内容 私たちの研究グループは セレノプロテイン P に結合するタンパク質 抗体 を複数 作成し その中からセレノプロテイン P の作用を抑制する 中和抗体 を同定しました 筋肉のモデルである C2C12 細胞に セレノプロテイン P を添加すると セレノプロテイ ン P とセレン含有タンパク質 GPx の増加が見られます 図3 黒いバンドは各タンパク 質の量を示す 中和抗体 AE2 存在下では 両方のバンドが低下し セレノプロテイン P の作用が抑制されていると考えられました C2C12 P hsep IgG AE2 AH5 C21 AA3 FL NF GPx1 25 DC12 kd 5 mg/dl PBS IgG 3 2 5 2 ** 15 ** * 1 β-ac-n 5 図3 中和抗体はセレノプロテイン P の セレン運搬を抑制する 図4 筋肉モデル C2C12 細胞にセレノプロテイン P SeP を添加し 24 時間培養後 細胞内に取り込まれた 3 6 9 12 中和抗体は糖尿病モデルマウ スの糖負荷後血糖値を低下する 糖尿病モデルマウス KKAy に中和抗体を投与 SeP および GPx1 量の変化を解析した SeP の添加 後 グルコースを投与し 糖負荷 各時間に により 細胞内の SeP 取り込みと GPx1 の増加を 血糖値を測定した *P <.5, **P <.1 認めた 赤矢印 中和抗体 AE2 存在下では SeP vs.コントロール抗体投与マウス の取り込みと GPx1 の増加が抑制された 赤枠 これまでの研究から 糖尿病モデルマウスでもセレノプロテイン P が増加してくるこ とが明らかとなっています 文献2 三田雄一郎博士研究員と中山華穂さん 同志社 大学 は 糖尿病モデルマウスに 中和抗体を投与し 糖負荷後の血糖値を測定しまし た その結果 血糖値が低下し 糖尿病が改善していることが分かりました 図4 また 中和抗体投与後に インスリンを投与して その効果を検討しました その結果 インスリン投与後の血糖値が低下し 中和抗体はインスリンの効果も回復することが分 かりました 図5 さらに 血中へのインスリン分泌についても調べました 糖負荷 後に血中に分泌されるインスリン量を測定した結果 中和抗体によりインスリン分泌の 回復も見られました 図6 3

mg/dl 2 15 1 5 * ng/ml 6 5 4 3 2 1 * ** ** 3 6 9 12 3 6 図 5 中和抗体は糖尿病モデルマウスのインスリンの効果を高める 糖尿病モデルマウス KKAy に中和抗体を投与後 インスリンを投与し 各時間に血糖値を測定した *P <.5 vs. コントロール抗体 図 6 中和抗体は糖尿病モデルマウスのインスリン分泌を高める 高スクロース高脂肪食により作成した糖尿病モデルマウスに中和抗体を投与後 グルコースを投与し ( 糖負荷 ) 各時間に血中インスリ ン濃度を測定した *P <.5, **P <.1 vs. コントロール抗体投与マウス 稲荷尚吾さん ( 同志社大学 ) は 過剰セレノプロテイン P の膵臓への影響について さらに調べました その結果 過剰セレノプロテイン P の投与により 膵臓のインスリン産生が低下していることが分かりました ( 図 7) また 中和抗体の投与によって セレノプロテイン P によるインスリン産生の低下が抑制されることも明らかとなりました ( 図 7) セレノプロテイン P による膵臓の障害について 組織学的な解析を行いました 正常な膵島 ( インスリンを分泌するβ 細胞が密集して存在する部位 ) は 中央に緑色で染まるβ 細胞が存在しています ( 図 8) 過剰セレノプロテイン P を処理したマウスでは 膵島が萎縮し 構造が大きく歪んでいることが分かりました ( 図 8) この過剰セレノプロテイン P による膵島の構造変化は 中和抗体によって抑制できることが明らかとなりました 4

Insulin hsep NF GAPDH PBS Control IgG P Control IgG AE2 kd 1 x 5 5 37 図 7 過剰セレノプロテイン P は 膵臓のインスリン産生を低下する 糖尿病患者における増加量を反映したセレノプロテイン P(SeP) を投与したマウスの膵臓では インスリン産生の低下が見られた 中和抗体 AE2 の投与により インスリンの低下が抑制された 図 8 過剰セレノプロテイン P は 膵島の構造変化を誘導する 糖尿病患者における増加量を反映したセレノプロテイン P(SeP) を投与したマウスの膵臓を ヘマトキシリン エオジン染色 (HE 染色 : 核と細胞質を染色 ) および免疫蛍光染色 ( 赤 グルカゴン ; 緑 インスリン ) した結果 SeP 投与 による膵島の萎縮と構造変化が観察された 中 和抗体 AE2 は 膵島の変化を抑制した < 今後の展開 > 本研究から セレノプロテイン P の中和抗 体により インスリンの分泌と作用の両方を 改善して 複合的に糖尿病を治療できると考 えられました ( 図 9) 今後 糖尿病を治療 する医薬品への発展が期待されます 現在 我々の研究グループは 血中セレノプロテイ ン P を測定する糖尿病診断薬を開発してい ます この診断薬と治療薬を組み合わせるこ とで セレノプロテイン P レベルが高い糖尿 病患者に セレノプロテイン P 標的治療薬を 投与するテーラーメイド糖尿病治療が実現できると考えられます また 本研究からセレノプロテイン P レベルが膵臓のインスリン分泌に大きく影響す ることが世界で初めて明らかになりました 今後 セレノプロテイン P を標的とするこ とで 膵臓を保護する新たな糖尿病治療薬の開発が期待されます 5 Block P 図 9 セレノプロテイン P 中和抗体に よる糖尿病の改善効果 Block

< 文献 > 1. 斎藤芳郎セレンの生物学 セレノプロテインの機能と疾患細胞工学 35 24-246 (216) 2. H Misu, et al. A Liver-Derived Secretory Protein, Selenoprotein P, Causes Insulin Resistance. Cell Metabolism, 12, 483-495 (21) 3. H Misu, et al. Deficiency of the hepatokine selenoprotein P increases responsiveness to exercise in mice through upregulation of ROS and AMPK in muscle. Nature Medicine, 23, 58-516 (217) doi: 1.138/nm.4295 < 用語解説 > 1) インスリン抵抗性インスリンは 肝臓や筋肉 脂肪に作用して 血糖値を低下する 様々な要因によりインスリンの効果が低下し 血糖値が下がりにくい状態を インスリン抵抗性 と呼ぶ 2 型糖尿病患者では インスリン抵抗性の増加が見られる 2) インスリン産生 分泌膵臓に存在するβ 細胞は 血糖の変化に応じてインスリンを分泌する役割を担う β 細胞は 活発にインスリンを産生し 細胞内に保持している 血糖が増加すると 細胞内でのエネルギー産生が増加し それに伴いインスリンが分泌される 2 型糖尿病患者には インスリン産生 分泌の低下が主要な要因となる場合もある 3) セレン必須微量元素の一つであり 生体内ではグルタチオンペルオキシダーゼ (GPx) などのセレン含有タンパク質に含まれる GPx は 活性酸素を還元 無毒化し 活性酸素から生体を守る抗酸化作用を示す 生体の抗酸化防御に セレン含有タンパク質は重要な役割を果たしている 4) 活性酸素反応性の高い酸素の総称 活性酸素には スーパーオキシドアニオンやヒドロキシラジカル 過酸化水素などが含まれる 反応性の高さから タンパク質や DNA を酸化 変性する作用を示す 生体内における酸化反応の亢進を 酸化ストレスと呼ぶ 一方 近年活性酸素がシグナル伝達にも重要な役割を果たすことが明らかとなってきている 微量の活性酸素の存在により インスリン刺激に伴う血糖の取り込みが促進されることが知られている 6

5) 中和抗体細菌などの異物が感染すると 免疫系が働き 抗体 が抗体産生細胞によって作られる 抗体は 細菌などの異物に特異的に結合し 細菌の除去に機能する この生体反応を利用し 様々なタンパク質に対して特異的に結合する抗体が作られ 生命科学分野の研究に用いられている 抗体の種類によっては 結合した抗原の生物活性を消去する抗体があり 中和抗体と呼ばれる < 論文タイトル > Selenoprotein P-neutralizing antibodies improve insulin secretion and glucose sensitivity in type 2 diabetes mouse models ( セレノプロテイン P 中和抗体は 2 型糖尿病モデルマウスにおけるインスリン分泌およびグルコース感受性を改善する ) < お問い合わせ先 > < 研究に関すること> 斎藤芳郎 ( サイトウヨシロウ ) 同志社大学生命医科学部システム生命科学研究室准教授 61-394 京都府京田辺市多々羅都谷 1 3 TEL:774-65-6258 e-mail:ysaito@mail.doshisha.ac.jp 7