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このたび 硬度 1,400 mg /L を超過する MW( 以下 高硬度 MW という ) 中の CN - 及び ClCN について 併用法にて検査を実施したところ 4-PP 変法の試験溶液においてリン酸緩衝液の添加後に大量の白色沈殿が生じ 回収率が大幅に低下した また IC 法においてもクロマトグラムが乱れ ピークの分離が不十分となった そこで 高硬度 MW の測定を可能とするため 4-PP 変法に変更を加え 白色沈殿が生成せず かつ吸光度に影響を与えない試験条件を検討した また IC 法については グラジエントの変更によりピークの分離が改善することが判明した これらの対策を実施した併用法 ( 以下 改良併用法 という ) にて ガイドラインに基づく妥当性確認を実施したところ 良好な結果を得ることができたので報告する 2. 方法 2-1 試料市販の MW である製品 A( 殺菌 除菌無 硬度表示値 1,468 mg /L) を用いた 2-2 試薬試液及び標準液 (1) 試薬ポリリン酸ナトリウムは和光純薬 ( 株 ) 製食品添加物グレードを メタリン酸ナトリウムは関東化学 ( 株 ) 製鹿特級を エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物 (EDTA-2Na) は関東化学 ( 株 ) 製特級を 3-Morpholinopropanesulfonic acid(mops) は同仁化学研究所製を用いた これ 5) 以外の試薬については 既報に従った (2) 主な調製試液類 1 10% ポリリン酸 Na 溶液 : ポリリン酸ナトリウム 10g を水で溶かして 100mL とした 2 10% メタリン酸 Na 溶液 : メタリン酸ナトリウム 10g を水で溶かして 100mL とした 3 MOPS 緩衝液 :MOPS 20.9g を水で溶かして 1000mL とし 0.1mol/L 水酸化ナトリウム溶液で ph=7.2 とした 4 飽和 EDTA:EDTA-2Na( 特級 ) を水に溶かして飽和溶液 ( 約 10%) とした 5 EBT 指示薬 : エリオクロムブラック T 0.5 g 及び塩酸ヒドロキシルアミン 4.5g をエタノールで 100mL とした 6 アンモニア緩衝液 : 塩化アンモニウム 6.75g にアンモニア水 57mL を加えて溶解し 水で 100mL とした いずれの溶液についても 溶解が不十分な場合は超音波処理にて溶解した これ以外の調製試液については 既報 5) に従った 2-3 装置及び分析条件 (1) 分光測定条件装置 : 日立ハイテクノロジーズ ( 株 ) 製ダブルビーム分光光度計 U-2900 光路長 :50mm 測定波長 :638nm (2) IC 測定条件装置 : サーモフィッシャーサイエンティフィック ( 株 ) 製ダイオネクス ICS-2100 カラム :IonPac AG11-HC( ガードカラム ) IonPac AS11-HC 溶離液 :A 超純水 B OH(KOH) 溶離液グラジエント : 既報 5) のとおり溶離液流量 :1.0mL/ 分カラム温度 :35 検出器 : 電気伝導度検出器 ( サプレッサ型 ) サプレッサ条件 :35 198mA CR-TR:ON 注入量 :250μL 2-4 併用法による高硬度 MW の測定とその改良 (1) 4-PP 変法による高硬度 MW の測定 4-PP 変法の測定溶液調製フローは図 2 のとおりである 4-PP 変法にて 製品 A 及び製品 A に CN - を添加 (0.010mgCN/L 相当 ) したものについて検査を実施したところ リン酸緩衝液 (ph7.2)10ml を添加した時点で試験溶液に多量の白色沈殿を生じた 試験溶液の調製が完了した時点で試験溶液をφ 0.8μm のフィルタでろ過し 沈殿を除去した後に - 48 -

試料 20mL 1mol/L リン酸緩衝液 200μL リン酸緩衝液 (ph7.2) 10mL クロラミン T 溶液 250μL 軽く混和後 5 分間静置 4- ピリジンカルボン酸 - ピラゾロン溶液 10mL 冷却水で 50mL に定容 軽く混和後 25 の室内で 30 分間静置 試験溶液 図 2 4-PP 変法測定溶液調製フロー図 分光光度計による測定を実施したが 回収率は 77.0% に留まった (2) 改良 4-PP 変法の検討 (1) の結果を受け 4-PP 変法を高硬度 MW に対応 可能となるよう改良することとした 4-PP 法に変更を加えた上で 試験溶液に白色沈 殿が形成されず かつ添加試料の発色の程度が著 しく低下せず さらに回収率が低下しない条件を 検討した 製品 A( ブランク試料 ) 製品 A に CN - 及 び SCN - を添加 ( それぞれ 0.010mgCN/L 相当及び 0.005mgCN/L 相当 ) したものについて 以下 1~5 の条件で試験溶液の調製を行い 白色沈殿の形成 の有無及び吸光度を確認した また 0.015 mg CN/L 相当の標準液を 4-PP 変法に従い操作したものの吸 光度を別途測定し 結果を比較した 1 リン酸緩衝液 (ph7.2) 10mL を添加せずに 試験溶液を調製した 2 リン酸緩衝液 (ph7.2) 10mL を MOPS 10mL に変更し 試験溶液を調製した 3 試料 20mL を InertSep mini ME-1( ジーエ ルサイエンス社製 ) に通じた後に試験溶液を 調製した 4 リン酸緩衝液 (ph7.2) 添加の前に飽和 EDTA を添加して混合し 試験溶液を調製した な お 飽和 EDTA の添加量は 予備試験として 製品 A 20mL に EBT 指示薬を数滴滴下し ア ンモニア緩衝液 400μL を添加したものを飽和 EDTA で滴定し 液の色調が赤紫から青になった時を終点として求めた量とした (1.29mL) 5 1mol/L リン酸緩衝液の添加量を 200μL から 1mL に増量し 更にリン酸緩衝液 (ph7.2) の添加前に 10% メタリン酸 Na 溶液を添加し 試験溶液を調製した さらに 条件 5 及び下記の条件 6について 追加の検討を行った 6 5の条件において 10% メタリン酸 Na 溶液を 10% ポリリン酸 Na 溶液に変更し 他は5 と同様に試験溶液を調整した 追加の検討においては 製品 A( ブランク試料 ) 製品 A に CN - 及び SCN - を添加 ( それぞれ 0.010mgCN/L 相当及び 0.005mgCN/L 相当 ) したものを対象に 条件 5 及び6に従って吸光度を測定し 回収率を比較した また 0.005 0.010 0.015 及び 0.020mgCN/L の標準液を調整し 条件 5 及び6に従って操作したものをそれぞれ検量線とした なお 操作ブランク ( 水を条件 5 及び6に従い試験操作したもの ) についても吸光度 0.004~ 0.007 程度の発色が観測されるため 測定にあたっては 操作ブランクを分光光度計の対照セルに使用した 以上の1~6の検討条件のうち 白色沈殿が形成されず かつ添加試料の吸光度及び回収率が最も良好な条件を改良 4-PP 変法として採用した (3) IC 法 (SCN - ) による高硬度 MW の測定製品 A( ブランク試料 ) 及び製品 A に SCN - を 0.005mgCN/L 相当添加したものについて 直接イオンクロマトグラフに注入し 試料中の SCN - の濃度 (mgcn/l) を測定した 標準液は SCN - として 0.005 0.010 0.015 及び 0.020mgCN/L に調製した グラ 5) ジエント条件は既報に従った 標準品のクロマトグラムを図 3-1 に示す 製品 A の測定の結果 クロマトグラムの SCN - の近傍に大きなピークが観測され SCN - のピークが妨害され測定不可能となった ( 図 3-2 3-3) - 49 -

SCN - ピーク 図 3-1 IC 法クロマトグラム ( 標準品 SCN - 0.005mgCN/L) 妨害ピーク SCN - ピークの RT 図 3-2 IC 法クロマトグラム ( ブランク試料 ) (4) 改良 IC 法 (SCN - ) の検討 (3) の結果を受け IC 法 (SCN - ) を高硬度 MW に対応可能となるよう改善を試みた SCN - のピークと妨害ピークとの分離を改善するため 分析時間を延長の上でグラジエント条件を緩和し これを改良 IC 法とした 改良グラジエント条件を表 1 に示す 2-5 改良併用法による CN - 及び ClCN 濃度の算出 2-4(2) の改良 4-PP 変法の結果 (CN - ClCN 及び SCN - の総和 ) から 2-4(4) の改良 IC 法の結果 (SCN - ) を差引くことで CN - 及び ClCN の濃度 (mgcn/l) が算出される この方法を 改良併用法とすることとした 2-6 改良併用法の妥当性確認改良併用法の妥当性確認はガイドラインに基づき 製品 A ( ブランク試料 ) に CN - を基準値 (0.010mgCN/L) 相当 及び SCN - を 0.005mgCN/L 相当添加して実施した 実験計画は 添加量の明らかな試験品を分析者延べ 5 名により各々が 2 併行で 計 5 試行実施した 測定値から性能パラメータを推定し 表 2 に示す性能パラメータの目標値と比較して評価を行った また ブランク試料の測定結果から選択性を評価した 妨害ピーク SCN - ピークの RT 図 3-3 IC 法クロマトグラム ( 添加試料 SCN - 0.005mgCN/L 含有 ) 表 1 改良グラジエント条件 時間 ( 分 ) OH 濃度 (mm) 0 1.5 13 1.5 31 19.5 41.25 40 61.25 80 62 80 64 10 66 1.5 73 1.5-50 -

表 2 シアン類分析法の性能パラメータ目標値 性能ハ ラメータ名 真度 (%) 併行精度 (RSD%) 室内精度 (RSD%) 選択性 3. 結果 3-1 改良併用法の検討結果 (1) 改良 4-PP 変法について 目標値 90~110 5 未満 5 未満誤差信号が基準値相当信号の 1/10 未満 2-4(2) にて実施した検討条件 1~5 の比較結 果を表 3 に示す 白色沈殿が形成されず かつ 0.015 mg CN/L 相当の添加試料の吸光度が 同濃度 の標準液を 4-PP 変法に従い操作したものの吸光度 と遜色なく さらにブランク試料の吸光度が十分 に低い条件は 5 であり メタリン酸 Na の添加によ り白色沈殿の形成が抑制されることが判明した 条件 1 及び 2 については添加試料の発色が不十 分で 条件 2 及び 3 については白色沈殿が消失し なかった 条件 4 においてはブランク試料につい ても有意な発色が観測された さらに 条件 5 と メタリン酸 Na に代えポリリ ン酸 Na を添加した場合 ( 条件 6) を比較検討した 結果を表 4 に示す 回収率は条件 5 及び 6 ともほ ぼ同等のため 添加試料の吸光度の発色が僅かに 良好である条件 6を改良 4-PP 変法として採用することとした 改良 4-PP 変法の測定フローを図 4 に示す 改良 4-PP 変法において 水及びブランク試料 ( 製品 A) を用いて操作した際に僅かに発色がみられたが 吸光度としていずれも約 0.004~0.007 程度であった これは基準値 (0.010mgCN/L) 相当の標準液から得られる値 (0.084) と比較して充分に小さいと考えられる 改良 4-PP 変法の検量線は 水を図 4 のフローに従って試験操作したものを吸光光度計の対照セルに使用して作成し R 2 >0.999 と良好な直線性を示した ( 図 5) (2) 改良 IC 法について改良 IC 法の検量線は R 2 >0.999 と良好な直線性を示した ( 図 6) 製品 A( ブランク試料 ) に SCN - を 0.005mgCN/L 相当添加したものについて 表 3 のグラジエント条件にて分析を実施したところ SCN - のピークと妨害ピークが良好に分離した 代表的なクロマトグラムを図 7-1~7-3 に示す 3-2 妥当性確認結果改良併用法の妥当性確認を実施した結果 表 5 のとおり 全ての性能パラメータが表 2 の目標値を満足した 表 3 改良 4-PP 変法の検討結果 (1) 表 4 改良 4-PP 変法の検討結果 (2) 4-PP 変法標準液 1 2 3 4 5 5 6 白色沈殿無無有有無無白色沈殿無無 添加試料吸光度フ ランク試料吸光度 0.119 0.063 0.009 0.106 0.147 0.113 <0 <0 0.006 0.009 0.039 0.004 0.015 mg CN/L 相当の標準液を 4-PP 変法にて操作したもの全て対照セルに水を使用 添加試料吸光度フ ランク試料吸光度 0.110 0.112 0 0 回収率 (%) 92.4 92.6 対照セルに水を試験操作したものを使用 - 51 -

試料 20mL 1mol/L リン酸緩衝液 1mL 10% ポリリン酸 Na 溶液 2mL リン酸緩衝液 (ph7.2) 10mL クロラミン T 溶液 250μL 軽く混和後 5 分間静置 4- ピリジンカルボン酸 - ピラゾロン溶液 10mL 冷却水で 50mL に定容 軽く混和後 25 の室内で 30 分間静置 試験溶液 図 4 改良 4-PP 変法測定溶液調製フロー図 図 7-1 改良 IC 法クロマトグラム ( 標準品 SCN - 0.005mgCN/L) SCN - ピーク 妨害ピーク 図 5 改良 4-PP 変法検量線 図 7-2 改良 IC 法クロマトグラム ( ブランク試料 ) 妨害ピークが分離 SCN - ピーク 図 6 改良 IC 法検量線 図 7-3 改良 IC 法クロマトグラム ( 添加試料 SCN - 0.005mgCN/L 含有 ) - 52 -

表 5 改良併用法の妥当性確認結果性能ハ ラメータ名結果真度 (%) 94.0 併行精度 (RSD%) 1.6 室内精度 (RSD%) 2.2 選択性良好 4. 考察 4-1 4-PP 変法とその改良について製品 A について リン酸緩衝液 (ph7.2) 10mL の添加後に試験溶液に大量の白色沈殿を生じた原因は明確になっていないが 製品 A 中の高い硬度 ( カルシウム マグネシウム等二価の金属イオン ) とリン酸緩衝液が反応したものと予測された 併用法は上水試験方法を出典としているが 国内の水道水質基準から大きく外れる性質を持つ製品 A には適用が困難であったものと考えられる この白色沈殿を生じさせず さらに回収率を良好に保持する条件を検討することで解決を試みた 4-PP 変法においては 最初に 1mol/L リン酸緩衝液の添加により液性を酸性側 (ph3~4) として ClCN の安定化をはかり 次いでリン酸緩衝液 (ph7.2) の添加により液性を 4-ピリジンカルボン酸 -ピラゾロンの発色至適 ph 領域である中性域へと変更した後に発色反応を行っている 製品 A について リン酸緩衝液 (ph7.2) を添加せず試験溶液を調製した ( 条件 1) 際に発色が悪くなったのは 液性が 4-ピリジンカルボン酸 -ピラゾロンの発色至適 ph 領域から外れたためであると考えられる そこで リン酸との反応を防ぎ かつ試験溶液の ph を発色至適領域にするため リン酸緩衝液の代替として MOPS 緩衝液の使用を試みた ( 条件 2) が 試験溶液が黄色に呈色し 4-ピリジンカルボン酸 -ピラゾロン特有の青色の発色が消失した 続いて 固相カラム (InertSep mini ME-1) の使用 あるいは EDTA の添加により製品 A 中のカルシウム マグネシウム等の二価金属イオンを選択 的に除去することで改善を試みた ( 条件 3 及び4) 条件 3については 当該固相カラムはアルカリ性条件下での使用を推奨されているが CNCl はアルカリ性条件下での安定性が著しく悪いことが知られているため 6) 製品 A の ph を調整せず操作を実施した 結果 吸光度には改善が見られたものの 白色沈殿の消失に至らなかった さらに 検討の結果 1 回分の試験溶液 ( 製品 A 20mL に該当 ) の白色沈殿の生成を抑制するために当該固相カラムが 5 個以上必要であることが判明したため 使用を断念した 条件 4については ブランク試料が有意に発色し 回収率も不十分であった ブランク試料の発色理由は不明だが EDTA を構成する炭素原子及び窒素原子が 4-ピリジンカルボン酸 -ピラゾロンの発色機構に何らかの影響を与えた可能性があると考え 窒素を含有しない二価金属イオン除去剤としてメタリン酸 Na 及びポリリン酸 Na を選択した ( 条件 5 及び6) また 製品 A に対して 1mol/L リン酸緩衝液の添加量が 200μL では試験溶液の液性が十分に酸性とならないことが判明した これは 製品 A が後述するIC 法の結果から 金属イオンのみならず SO 2-4 PO 3-4 Cl - 等の種々のイオンを多く含んでいることが示唆されており 緩衝力が高いためであると予想された この対策として 1mol/L リン酸緩衝液の添加量を 1mL に増加した 以上の対策を施した結果 メタリン酸 Na 及びポリリン酸 Na いずれの添加においても白色沈殿の形成が抑制され 良好な回収率が得られることが判明した これら両者の発色の程度を比較し 発色の程度が僅かに良好であったポリリン酸 Na 溶液を最終的に採用した 4-2 IC 法とその改良について 5) 既報に記載されたグラジエント条件においては SCN - の位置に大きな妨害ピークが現れ SCN - の分析を著しく阻害した そこで OH - 濃度の立ち上がりを緩徐にし 分析時間を延長したところ - 53 -

妨害ピークと SCN - のピークが良好に分離し SCN - の測定を可能とすることができた なお 妨害ピ ークの成分は RT から PO 4 3- であると予測された 5. 結語高硬度 MW 類中の CN - 及び ClCN について 改良 4-PP 変法と改良 IC 法による改良併用法を検討した 改良併用法をガイドラインに従って妥当性確認したところ 全ての性能パラメータがガイドラインの目標値を満たした 改良併用法により ポストカラム付イオンクロマトグラフを用いず 高硬度 MW 類中の CN - 及び ClCN を検査することが可能となった 6. 文献 1) 厚生労働省 : 平成 26 年 12 月 22 日付け食安発 1222 第 1 号医薬食品局食品安全部長通知 乳及び製品の成分規格等に関する省令及び食品 添加物等の規格基準の一部改正について 2) 厚生労働省 : 平成 26 年 12 月 22 日付け食安発 1222 第 4 号医薬食品局食品安全部長通知 清涼飲料水等の規格基準の一部改正に係る試験法について 3) 日本水道協会 : 上水試験方法 (2011 年版 ) Ⅲ. 金属類 ( 無機物部会 )15. シアン 4) 厚生労働省 : 平成 26 年 12 月 22 日付け食安発 1222 第 7 号医薬食品局食品安全部長通知食品中の有害物質等に関する分析法の妥当性確認ガイドラインについて 5) 細木伸泰, 折原智明, 江湖正育, 宮本啓二, 木田潔 : 吸光光度法 -イオンクロマトグラフ法の併用によるミネラルウォーター類中のシアン類分析法の妥当性確認, 札幌市衛生研究所年報, 43,37-42,2016 6) 折原智明, 岡隆康, 安藤正典 : 水質基準改正等に伴う検査方法の検討 (Ⅱ)-シアンの検査方法 -, 第 55 回全国水道研究発表会講演集, 636-637,2004-54 -