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かかわらず 軟骨組織や関節包が烏口突起と鎖骨の間に存在したものを烏口鎖骨関節と定義する それらの出現頻度は0.04~30.0% とされ 研究手法によりその頻度には相違がみられる しかしながら 我々は骨の肥厚や軟骨組織が存在しないにも関わらず 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨靭帯と筋膜で囲まれた小さな空隙が存在する症例に多数遭遇した この事実から 烏口鎖骨関節と類似の構造物が これまで考えられてきたよりもかなり高頻度に存在するのではないかと考えた 本研究の目的はこの空隙の構造を明らかにし その機能的役割について考察することである < 方法 > 本研究は東京医科歯科大学に献体された8 体 16 側 ( 男性 2 体 女性 6 体 : 平均年齢 88.2 歳 ) の上肢帯を対象とし 肉眼解剖学的手法を用いて行われた 最初に 大胸筋を外側に翻転して鎖骨下筋の前面を覆う筋膜の広がりを観察した 続いて 肩甲骨 鎖骨および第 1 肋骨前半部の連続性を失わないように注意しつつ 鎖骨下筋 肋鎖靭帯 烏口鎖骨靭帯 肩鎖靭帯および周囲の筋膜を一塊にして取り出した 結合組織を丁寧に除去した後に 鎖骨胸骨端を固定して肩甲骨下角を徒手的に操作してその動きを観察した 16 側のうち 6 側は鎖骨下面に付着する鎖骨下筋 烏口鎖骨靭帯および肋鎖靭帯を観察するために肩甲骨を切り離した 鎖骨下筋は9~10の小筋束に分けて 筋線維の配列を起始から停止にかけて記録した 10 側については烏口鎖骨靭帯 肋鎖靭帯および鎖骨下筋をその筋膜とともに鎖骨から切り離して 肩鎖関節を支点に鎖骨を外側へ翻転した 鎖骨下筋と鎖骨下筋の前面を覆う筋膜を丁寧に剥がしつつ その筋膜の広がりを観察した < 結果 > 鎖骨下筋の起始 停止および筋線維の走行鎖骨下筋は第一肋骨と肋軟骨境界部の上面に起始していた 停止部は鎖骨下面にある肋鎖靱帯圧痕の外側から円錐靱帯結節の前方かつ菱形靱帯線の内側にかけて広がっていた 9~10の小筋束を起始から停止に向かって観察したところ ほとんどの筋線維は直線的に走行していたが 最外側起始部は前方から後方へと位置を変えていた 烏口鎖骨靱帯の鎖骨付着部と鎖骨下筋の前面を覆う筋膜の広がり鎖骨下筋の前面を覆う筋膜は 内側に広がって鎖骨前縁 第 1 肋骨の内側端および第 1 肋間膜に付着していた 外側では 鎖骨前縁 烏口突起および烏口鎖骨靱帯に付着していた 烏口鎖骨靱帯は菱形靱帯と円錐靱帯に分かれていた 菱形靱帯は烏口突起水平部の後方に広く付着し 円錐靱帯の烏口突起付着部はより後内側部に限局していた 両靱帯は外側へ上行し菱形靱帯線および - 2 -

円錐靱帯結節にそれぞれ付着していた 鎖骨下筋の前面を覆う筋膜は外側へ向かうにつれて 菱形靱帯と円錐靱帯に付着する2つの筋膜に分かれていた 烏口突起上面と鎖骨下面の間に この筋膜と烏口鎖骨靱帯で囲まれた小さな空隙が存在していた この空隙内において 烏口突起に付着する菱形靭帯上面には結合組織が存在していたが 軟骨組織は認めなかった また円錐靱帯結節部の肥厚は1 例を除いて認めなかった 肩甲骨と鎖骨の動き ( 機能的観察 ) 鎖骨胸骨端を把持し 肩甲骨下角を前外側方向へ徒手的に動かすと 烏口突起上面の菱形靱帯が鎖骨下面の円錐靱帯結節前方部と衝突する様子が全例で確認された この烏口突起上面と鎖骨下面の衝突は 先述した鎖骨下筋の前面を覆う筋膜と烏口鎖骨靱帯によって囲まれた小さな空隙部で起こっていた この衝突によって肩甲骨の動きが制限されたため さらにこの肩甲骨の動きを継続しようとすると 鎖骨が後方回旋 ( 鎖骨前縁が上方へ持ち上がる動き ) かつ挙上するように動いた < 考察 > エックス線画像やさらし骨を用いた研究において 烏口鎖骨関節は烏口突起上面と鎖骨下面に相対する骨の肥厚を伴った関節突起様の変化として定義されてきた 一方 解剖学的研究において 烏口鎖骨関節は烏口突起上面と鎖骨下面の間に軟骨組織で覆われた関節面が存在するものと定義されてきた 本研究では これまでの報告と同じ位置に 軟骨組織が存在しないにもかかわらず 小さな空隙がすべての症例で観察され かつ 1 例を除いたすべての症例で 円錐靭帯結節部の肥厚 すなわち関節突起様変化を認めなかった これらの結果から 烏口鎖骨関節と類似の構造を持つ小さな空隙は 従来報告されていたよりもかなり高い頻度で存在すると考えられ この空隙の構成には鎖骨下筋の前面を覆う筋膜や烏口鎖骨靱帯の関与が明らかとなった 臨床上 局所の痛みや上肢の痺れをきたす烏口鎖骨関節の存在は円錐靭帯結節部における骨の肥厚を切除することが必要とされ その切除片には軟骨組織が認められている 組織学的に 新たな軟骨組織は結合組織の化生によって作られるとされ その機序は結合組織への機械的圧迫力であることが知られている 本研究では 烏口突起上面に存在する結合組織が鎖骨下面との間に介在していた また 鎖骨を把持して肩甲骨を動かす機能的観察では空隙内で鎖骨と烏口突起が衝突する結果となった したがって 烏口鎖骨関節内の軟骨組織は鎖骨と烏口突起の衝突により結合組織が化生を起こすことで生じることもあると推測される さらに この衝突は上肢の運動痛や胸郭出口症候群様の痺れの一因となるほか 鎖骨の動きに影響を与えうると考えられる 上肢挙上運動に関する生体力学的研究によれば 肩甲骨は矢状面上で後傾 前額面上で上方回旋の動きを 鎖骨は前額面上で挙上 鎖骨長軸上で後方回旋の動きをすることが知られている 本研究における機能的観察時に生じた肩甲骨下角の前外側方向への徒手的操作は 前方向が後傾 - 3 -

に 外側方向が上方回旋に対応しており 生体力学的研究結果とほぼ同様の動きである さらに 烏口突起と鎖骨の衝突後に生じた鎖骨の挙上と後方回旋運動も生体力学的研究と同様の動きになっている したがって 本研究における肩甲骨を徒手的に操作した際の機能的観察結果は生体と非常に近い動きであると考えられる この一連の動きの中で とりわけ鎖骨の後方回旋運動に関しては不明な点が多い 解剖学書によれば 鎖骨は肩甲骨を動かす筋を介して間接的に動かされると記され 詳細な説明はなされていない 一方 生体の鎖骨に針金を挿入した状態でその動きを調査した研究者らは 鎖骨の後方回旋について 上肢挙上運動時に烏口突起は下方へ下がるため 烏口鎖骨靱帯を介して鎖骨が後方回旋すると述べている しかしながら 近年の研究では烏口突起の動きは下がらない結果が示されている 本研究で観察された衝突は 鎖骨下筋の外側停止部かつ円錐靱帯結節の前方で発生した 換言すればこの部位は 外側 1 3 部で扁平状になっている鎖骨の前縁部分である つまり 烏口突起の衝突が鎖骨の前縁を下から押し上げ 鎖骨の挙上あるいは後方回旋運動を導いており この一連の動きが生体でも生じていると考えられる 別の研究報告によれば この鎖骨の後方回旋運動は上肢挙上角度が90 度を越えると大きくなることから 生体における烏口突起と鎖骨の衝突は上肢挙上約 90 度で生じると推測される < 結論 > 本研究は肉眼解剖学的手法を用いて 烏口鎖骨間隙の構造を調査した その結果 烏口突起上面と鎖骨下面の間で 烏口鎖骨靱帯および鎖骨下筋の前面を覆う筋膜で囲まれた空隙が常に存在する結果を得た この空隙は 上肢挙上時において鎖骨の挙上や後方回旋運動を導く重要な役割を果たしていることが考えられる - 4 -

論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4 5 7 6 号中澤正孝 論文審査担当者 主査宗田大副査星治 森田定雄 ( 論文審査の要旨 ) 肩関節はヒトの中で最も可動域の大きな関節である 臼蓋上腕関節だけでなく 肩甲骨 鎖骨の動きによってその大きな動きが可能になっている 申請者らはこれまで肉眼解剖学検討が十分になされていない烏口鎖骨関節を対象として詳細な解剖を行った 烏口鎖骨関節は烏口突起上面と鎖骨下面の間に存在する比較的稀な関節である しかし申請者らは先行観察で 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨関節と類似した小さな空隙を多く観察した そのためさらに8 体 16 側の上肢帯を用いてこの空隙を詳細に記録し 併せてその機能的役割を検討した 肩甲骨 鎖骨および第 1 肋骨前半部を鎖骨下筋とその周囲の筋膜とともに一塊にして取り出し 鎖骨に対する肩甲骨の動きを観察した後に 烏口鎖骨靭帯 鎖骨下筋とその筋膜の広がりを肉眼的に観察した その結果 鎖骨下筋の前面を覆う筋膜は菱形靭帯に付着する筋膜と円錐靭帯に付着する筋膜に分かれていた 烏口突起上面と鎖骨下面の間に これらの筋膜と烏口鎖骨靭帯によって囲まれる小さな空隙が全例に存在していた 鎖骨胸骨端を固定して肩甲骨下角を徒手的に動かすと 烏口突起上面にある菱形靭帯と鎖骨下面が空隙内部で衝突し 肩甲骨の動きが屈曲 外転ともに約 90 度で制限される様子が観察された 申請者らは肉眼解剖によって 烏口突起と鎖骨の間の空隙は常に存在し上肢挙上時における肩甲骨と鎖骨の動きに重要な役割を普遍的に果たしていることを示した ( 1 )