マイコトキシンとその対策

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Transcription:

マイコトキシンの影響とその対策 について 2010 年 9 月 3 日 物産バイオテック株式会社

マイコトキシン : カビ毒とは マイコトキシン (Myco-toxin) カビの二次代謝産物として産生されるカビの総称人や家畜に対して急性もしくは慢性の生理的あるいは病理的障害を与える現在では100-300 種類以上のマイコトキシンが報告されている

マイコトキシン アスペルギルス属 (Aspergillus spp) ペニシリウム属 (Penicillium spp) フザリウム属 (Fusarium spp)

マイコトキシン マイコトキシン Aspergillus トキシンアフラトキシンオクラトキシンステリグマトシスチン等 Penicillium トキシンパツリン シトリニン等 Fusarium トキシン ゼアラレノン フモニシン トリコテセン類ボミトキシン (DON) ニバレノール T-2 HT-2

マイコトキシン 最も一般的に見つかるカビ毒はアフラトキシンとフザリウム属 ( 赤カビ ) 系カビ毒であるアフラトキシンの分析は比較的開発されているフザリウム属系カビ毒は その化学組成のばらつきや 種類が多くなるために分析は困難であるこのためあるカビ毒を指標として用いる 多くは DON( ボミトキシン ) である

代表的なマイコトキシン (1) Aspergillus spp: ( 黒かび ) A. flavus, A. parasiticus アフラトキシン 最も高い発がん性を有する A. ochraceus オクラトキシン A, B 腎毒性 肝毒性を示す 一部は Penicillium viridicatum より産生 A. versicolor ルテオスカイリン ( 肝毒性 ) ステリグマトシスチン ( 発がん性 )

代表的なマイコトキシン (2) Penicillium spp: ( 青かび ) P. citrinum, P. viridicatum シトリニン 腎細尿管上皮変性 ( 黄変米の毒成分 )

代表的なマイコトキシン (3) Fusarium spp: ( 赤カビ ) トリコテセン系マイコトキシン 共通骨格を有する 50 種類以上のマイコトキシングループ デオキシニバレノール (DON: ボミトキシン ) ニバレノール T-2 トキシン HT-2 トキシン ロリディン A ベルカリン A 嘔吐 下痢 免疫不全 造血機能障害 他のフザリウム属由来のマイコトキシン ゼアラレノン ( エストロジェン活性 ) フモニシン ( 脂質の代謝経路阻害 )

トリコテセン類 トリコテセンはフザリウム属系カビ毒の一つのグループで 100 種類以上のカビ毒があるトリコテセンは飼料摂取低下を引き起こすカビ毒であるこのグループで最もよく見られるのは DON( デオキシニバレノール ボミトキシン ) であるトリコテセンは 血中トリプトファンが上昇することで脳内セロトニンが増えることで脳神経伝達物質に影響を与える

トリコテセン類 トリコテセンは上皮壊死要素で 細胞タンパク質合成を阻止するトリコテセンは腸内出血 潰瘍 筋胃潰瘍 血便 栄養素吸収不足による軟便 粘糞を招く

トリコテセン類 トリコテセンは免疫低下を招く このことにより 二次的なカビ毒による疾病感受性を高めるこれは部分的に 免疫グロブリン生成を抑制する

フザリウム属系カビ毒 豚 馬 犬は最も感受性が高い 家禽はより抵抗性を持つが 代謝異常や病変が増える反芻家畜は最も抵抗性があるが 繁殖や産乳に影響がでる

ゼアラレノン ゼアラレノンはエストロジェン様フザリウム属系カビ毒であるゼアラレノンはエストロジェン吸着部に取り付き 唯一繁殖臓器において蛋白質生成を促進するために子宮肥大 膣脱 脱肛を起こす家禽においての影響は少ないが 豚 牛においては不妊や繁殖障害が起こる

フザリン酸 フザリン酸は急性中毒を起こすことは無いが 薬理的作用を起こすフザリン酸は ドパミンをノルエピネフィリンに変換するドパミンβヒドロキシラーゼを阻止するフザリン酸の生理的な作用は血圧を下げる牛では乳房 四肢の浮腫を招く

フザリン酸 フザリン酸はまた 脳内でトリプトファン量を増やし セロトニンを増やすフザリン酸は DON と共に筋肉弛緩 睡眠 飼料摂取減少を相乗的に招く

フモニシン フモニシンは油脂膜生成を抑制する馬においては馬白質脳軟化症 (ELEM) や豚では肺浮腫が起こる馬においての症状を出すには 3ppm 豚では 40ppm の濃度が必要であるブロイラーの成長停止には 100ppm 乳牛の肝臓障害には 200ppm 必要である ( これらの量を一般的な飼料で見ることはまず無い ) 飼料によるフモニシンの最も大きな問題は 免疫低下である

飼料中の DON( 平成 13-20 年度 )(1) 飼料原料名検出 / 分析数範囲 (ppb) 検出率主な産地 配混合飼料 164/284 100-890 58 CGF 20/24 280-2900 83 国産 スクリーニング P 5/7 210-2200 71 カナダ DDGS 7/10 110-1300 70 アメリカ DDG 2/3 320-1200 67 アメリカ ふすま 56/103 100-1600 54 国産 とうもろこし 93/202 100-2800 46 アメリカ CGM 3/10 100-670 33 国産 マイロ 18/66 100-770 27 アメリカ 小麦 16/59 130-1300 27 アメリカ

飼料中の DON( 平成 13-20 年度 )(2) 飼料原料名検出 / 分析数範囲 (ppb) 検出率主な産地 えん麦 1/5 185 20 カナダ 末粉 1/5 190 20 国産 菜種油粕 3/15 180-290 20 国産 ハ イナッフ ル粕 3/15 180-290 17 タイ ライ麦 7/57 120-730 12 カナダ 米ぬか油粕 0/5 0 0 国産 大麦 23/235 160-2100 10 アメリカ とうもろこし 1/1 300 100 国産 外皮 あわぬか 1/1 600 100 中国 大豆油かす 1/56 270 2 中国

マイコトキシン形成に関係する要因 水分含量 湿度温度酸素 二酸化炭素熟成度合微生物の相互関係 ph 物理的損傷 これらの変化 ダメージによってマイコトキシンを産生

何故今頃になってカビ毒か? 粗飼料 : 濃厚飼料比率の変化 濃厚飼料多給傾向 (ph ) ルーメン内での分解量 世界的な穀類 牧草の移動研究の蓄積 (1980-1990 年代 ) 分析方法 分析機器の開発食品の安全性 人の健康への影響気候の変化更なるカビ毒における知見

覆面カビ毒 植物の根や茎の成長において カビ毒が悪影響を及ぼすため より毒性の低いカビ毒構造へ置き換える ( 一種の防御策 ) 主にフザリウム系カビ毒 (DON, ゼアラレノン ) が グルコース ( 糖類 ) または脂肪酸と結合し いわゆる 覆面カビ毒 の構造となる

覆面カビ毒 動物の消化管内において分解 カビ毒として作用 HPLCやELISAでは認識されない (ELISAでの擬陽性?) 全体の10-30% 程度の割合で覆面カビ毒が認められる

デオキシニバレノール (DON) OH OH OH O OH DON-3-glucoside

OH O Me H CH 2 OH O H H O O O OH OH H H Zearalenone-4-ß-D-glucopyranoside OH O Me H O HO ゼアラレノン O

カビ毒の相乗作用 相互作用 実験動物で ペニシリン酸とシトリニンは 単独給与は無害だが 同時給与は到死毒性を持つこと証明される (Lillehoi と Ceigler,1975 年 ) フザリン酸と DON との相乗作用確認 (Smith と MacDonald,1991 年 ) アフラトキシンの自然汚染飼料の給与は 同濃度の純粋 Af を加えた飼料を給与した場合より 乳牛への毒性が強かった (Applebaume,1982 年 ) DON の豚への試験でも同様の結果 (Foster, 1986 年 )

日本におけるマイコトキシン基準 基準値 ( 配合飼料 : ppm) アフラトキシン B1 ほ乳期子牛 乳牛 ほ乳期子豚 幼すう ブロイラー前期 : 0.01 それ以外 : 0.02 DON 3ヶ月令以上の牛 : 4.0 それ以外の家畜 : 1.0 ゼアラレノン 1.0

フザリウム属カビ毒のブロイラー への影響 ブロイラー : ブロイラー雛に自然に汚染したコーン 小麦を 8 週間給与 飼料には DON が最大で 9.7ppm フザリン酸が 20ppm ゼアラレノンが 0.2ppm 認められた 低汚染 : DON: 4.7ppm, フザリン酸 : 20.7pm 高汚染 : DON: 8.3ppm, フザリン酸 : 20.2ppm 高汚染 +: DON: 21.7ppm, フザリン酸 : 21.7ppm *: +: 吸着材給与 Swamy et al., 2002. Poult. Sci. 81: 966 975. Swamy et al., 2004. Poult. Sci. 83: 533 543.

フザリウム属カビ毒のブロイラー への影響 1,800 1,600 1,400 増体重 (g/ 羽 ) 1,200 1,000 800 600 400 200 0-21 日令 21-42 日令 42-56 日令 0 対照区低汚染高汚染高汚染 + *: +: 吸着材給与 Swamy et al., 2002. Poult. Sci. 81: 966 975. Swamy et al., 2004. Poult. Sci. 83: 533 543.

フザリウム属カビ毒のブロイラー への影響 3,000 2,500 飼料摂取量 (g/ 羽 ) 2,000 1,500 1,000 500 0-21 日令 21-42 日令 42-56 日令 0 対照区低汚染高汚染高汚染 + *: +: 吸着材給与 Swamy et al., 2002. Poult. Sci. 81: 966 975. Swamy et al., 2004. Poult. Sci. 83: 533 543.

フザリウム属カビ毒のブロイラー への影響 尿酸 (μmol/l) 胸肉 a 値 対照区 259 a 0.453 低汚染 286 ab 0.667 高汚染 357 b 0.804 高汚染 + 281 ab 0.214 *: +: 吸着材給与 **: a,b p<0.05 Swamy et al., 2002. Poult. Sci. 81: 966 975. Swamy et al., 2004. Poult. Sci. 83: 533 543.

フザリウム属カビ毒のブロイラー への影響 8 7 a a ab 胆汁中 IgA 6 5 4 3 2 1 0 対照区低汚染高汚染高汚染 + b *: +: 吸着材給与 **: a,b p<0.05 Swamy et al., 2002. Poult. Sci. 81: 966 975. Swamy et al., 2004. Poult. Sci. 83: 533 543.

ブロイラー種鶏への フザリウム属カビ毒の影響 ブロイラー種鶏 : ブロイラー種鶏は自然に汚染された小麦 コーンによる飼料を 12 週間給与 飼料には DON フザリン酸 ゼアラレノン 15 アセチル DON が含まれていた Yegani et al., 2006. Poult. Sci. 85: 1541

ブロイラー種鶏への フザリウム属カビ毒の影響 88 86 84 産卵率 (%) 82 80 78 76 1 箇月目 2 箇月目 3 箇月目 74 対照区汚染飼料汚染飼料 + *: +: 吸着材給与 Yegani et al., 2006. Poult. Sci. 85: 1541

ブロイラー種鶏へのフザリウム属カビ毒の影響 (1 箇月目 ) 卵殻厚 (μm) 初期胚死亡率 (%) 孵化率 (%) 対照区 32.1 a 5.4 a 76.5 a 汚染飼料 30.1 b 21.5 b 68.7 a 汚染飼料 + 31.5 a 2.3 a 89.2 a *: +: 吸着材給与 **: a,b p<0.05 Yegani et al., 2006. Poult. Sci. 85: 1541

複数のカビ毒による相乗的な影響 カビ毒を単体もしくは2つ人為的に添加した飼料をブロイラー雛に給与し 増体に及ぼす影響について検討した供試鶏 : ブロイラー雛 ( 雄 )10 羽 / 区 6 反復 ( 計 240 羽 ) 試験期間 : 1 日令から3 週令まで

複数のカビ毒による相乗的な影響 700 3 週令時の平均体重 (g) 650 600 550 500 450 400 対照区 AF 区 T2 区 AF+T2 区 AF: アフラトキシン (2.5ppm), B1, B2, G1, G2 の総量 T2: T2 トキシン (4.0ppm)

複数のカビ毒による相乗的な影響 650 3 週令時の平均体重 (g) 600 550 500 450 400 350 300 対照区 AF 区 OA 区 AF+OA 区 AF: アフラトキシン (2.5ppm), B1, B2, G1, G2 の総量 OA: オクラトキシン A(2.0ppm)

マイコトキシン緩和のための手段 として : 非汚染飼料で汚染飼料を希釈感受性の低い家畜に用いるふるいなどの処理方法を用いる焙煎 加熱を用いて処理するプロピオン酸のような防カビ剤の利用酵素の利用カビ毒吸着材の利用

マイコトキシン吸着材 粘土系 : ゼオライトなど鉱物系酵母系 : グルコマンナンオーク炭化微粉末マイコトキシン分解酵素 微生物等

最適なカビ毒吸着材とは? 多種類のカビ毒を吸着可能短い時間で吸着する低配合で有効である広い ph の範囲において活性がある高濃度のカビ毒においても高容量で吸着できる低濃度のカビ毒においても吸着する親和性があるカビ毒と吸着材間の作用機序が確認されている数多くの動物試験において効果が証明されている

イコソーブのカビ毒結合率フサリオトキシンマ(%カビ毒の種類と吸着能力 : グルコマンナンでの例 吸着割合 (%) 90 80 70 60 50 40 30 20 10 アフラトキシン ゼアラレノン ボミトキシン シトリニン オケラトキシン T2 ニバレノール 0 )(Salas, 1997)

カビ毒吸着速度が速い 吸着割合 (%) 80 70 60 50 40 30 20 10 グルコマンナン粘土材 1 粘土材 2 粘土材 3 0 10 分 24 時間 72 時間 Völkl and Karlovsky, 1998

客観的判定 : 鶏に関する論文からのまとめ アフラトキシン DON フザリン酸 OT T2 A HSCAS + - - ゼアラレノン アルミノシリケイト +/- ナトリウムベントナイト + モンモリロナイト + ゼオライト + - 珪藻土 + 活性炭 +/- グルコマンナン + +/- + + - + 生イーストカルチャー酵母 + + + - +: 効果として有効である -: 効果として無効である +/-: いくつかのパラメーターにより判断が異なるもの 2009 年 EFSA 報告書からの抜粋 (AFSSA, CDDA-CERVA, INRA, IRTA, ISPA, 2009)