4 農薬の防除効果の検証農薬散布による防除効果を検証するため 次の害虫 ( 樹種 ) を対象に農薬を散布し 効果の有無等を調査した ルビーロウムシ ( ゲッケイジュ ) ツノロウムシ ( クチナシ ) ヘリグロテントウノミハムシ ( ヒイラギモクセイ ) ツゲノメイガ ( セイヨウツゲ ) (1) ルビーロウムシア調査の概要カイガラムシ類の冬季の防除法として マシン油乳剤の散布が有効とされるが ツノロウムシやカメノコロウムシ ルビーロウムシなどのカタカイガラムシ類に対してはほとんど防除効果は期待できないとする文献もある また 夏季の防除法としては 多くの殺虫剤は成虫にはほとんど効果がないため 若齢幼虫期の防除が必要とされる そこで これらの防除法を試験実施し その防除効果を検証した ( ア ) 調査樹種年間を通じて 本種 ( ルビーロウムシ ) が枝等に群生し その排泄物やすす病の併発により 極めて美観が損ねられているゲッケイジュで調査することとし 特に被害の大きい 5 本 (A~E) を選定して調査対象とした 樹高は全て約 2.5m 被害状況 ( すす病を併発し 極めて汚い ) 調査木の一枝にエフを取付け 継続観察 < H24.1.12 調査木 A> < H24.1.12 調査木 E> ( イ ) 薬剤散布薬剤は 対象木 5 本 (A~E) に対し 下表のとおり散布した 月日 1 月 12 日 6 月 18 日 6 月 26 日 散布薬剤マシン油乳剤スプラサイド乳剤スプラサイド乳剤 A 30 倍液 1,000 倍液 1,000 倍液 B 1,000 倍液 1,000 倍液 C 60 倍液 1,000 倍液 1,000 倍液 D E 100 倍液 散布状況 ( マシン油乳剤 ) 散布状況 ( スプラサイド乳剤 ) < H24.1.12 調査木 E> < H24.6.18 調査木 A> 31
( ウ ) 薬剤散布後の状況 マシン油乳剤 3 通りの倍率でマシン油乳剤を散布し 定期的に状況を観察した 本種はチョコレート色の蝋物質 ( 殻 ) に覆われており 外観は月日の経過とともに少しずつ黒ずんできたように思われたが 内部の成虫の生死や産卵の有無などの判断は難しく 防除効果の確認は幼虫発生期まで待たざるを得なかった 調査木 A 1 月 12 日 2 月 10 日 4 月 6 日 調査木 C 1 月 12 日 2 月 10 日 4 月 6 日 調査木 E 1 月 12 日 2 月 10 日 4 月 6 日 スプラサイド乳剤 幼虫の発生を確認した 6 月 18 日と 6 月 26 日にスプラサイド乳剤の 1,000 倍液を散布した 散布は 冬季にマシン油乳剤を散布した 2 本と無散布の 1 本の計 3 本 (A B C) に実施し D E も含めて随時 状況を観察した 殻の周囲や枝 葉上を多数の薄茶色の孵化幼虫が動き回る B( 左の写真 ) に比べると少数の若齢幼虫が 白い点のように見える若齢幼虫は すでに定着していると枝に点在 < H24.6.18 調査木 E> 思われる < H24.6.18 調査木 B> 32
スプラサイド乳剤散布後の各調査木における幼虫の発生状況は エフを取り付けた一枝 ( 調査枝 ) を中心に継続観察した 次の写真は 記録写真の抜粋である 調査木 A(1 月 12 日 : マシン油乳剤 6 月 18 日 26 日 : スプラサイド乳剤 ) 定着した若齢幼虫は徐々に成長 肉眼でもはっきりと し 肉眼でも本種であることを 本種であることを確認で 確認できるようになってきた きるまで成長した (9 月 3 日 ) (8 月 9 日 ) 成虫の群塊の枝先部に白い点の ように見える定着後の若齢幼虫 が群生 (7 月 17 日 ) 隣接する枝では死んで白化したと 思われる本種の残骸? が多数見られた 薬剤散布の効果と思われる (9 月 3 日 ) 調査木 B(6 月 18 日 26 日 : スプラサイド乳剤 ) 動き回る孵化幼虫や定着前後の若齢 成虫の殻は 干からびて黒く乾固した 黒く乾固した成虫の残骸の隙間に 幼虫が成虫 ( 殻 ) の周囲に群生する 周囲には やや成長した若齢幼虫が群 成長した若齢幼虫が定着している 成虫の殻は 黒く干からびてきた 生する (8 月 9 日 ) (9 月 3 日 ) (7 月 17 日 ) 調査木 D( 無散布 ) 極めて多数の孵化幼虫や定着前後の定着前後の若齢幼虫が多数見られる成虫の殻は 干からびて黒く乾固した 若齢幼虫が群生する が 動き回る孵化幼虫も点在する 周囲には やや成長した若齢幼虫が群 (6 月 26 日 ) (7 月 17 日 ) 生する (8 月 9 日 ) 33
イ調査結果と考察冬季の防除に有効とされるマシン油乳剤と 若齢期の幼虫の防除に有効とされるスプラサイド乳剤を散布して その防除効果を検証した マシン油乳剤については その効果を散布後の外観の変化で判断することは難しく 孵化幼虫の出現の有無や多少で判断することとなった 散布した A C E と無散布の B D を対比すると 前者の方が若干 幼虫の出現数が少なく感じたものの大差は無かった また スプラサイド乳剤の散布は 茶色に縁取られた白い点のように見える若齢幼虫を確認後 すぐに実施したが この時点では既に 幼虫が定着するまでに成長していた可能性が高く やや遅きに失した感がある 本種は雌成虫が殻の中で産卵し 孵化した幼虫は殻から這い出て四方に散らばって行き 枝や葉上に移動して定着するとされる 殻から這い出る孵化幼虫は微小で 肉眼で確認することは難しく 今回の調査でも 白い点のように見える若齢幼虫を接写した写真をパソコンの画面で拡大して 初めて よく動く薄茶色の孵化幼虫に気付いた 調査では 7 月 17 日の記録写真でも孵化幼虫を確認しており 孵化はかなり長期に亘ることも確認できた スプラサイド乳剤は 6 月 18 日と 26 日の 2 回散布したが 散布した A B C と無散布の D E を比べると 散布した調査木 A の一部の枝で 若齢幼虫の残骸と思われる白化個体が目立ったが 木全体では明確な差異は表れず 散布効果を確認するには至らなかった これは 前述のとおり 散布適期を失したことや 長期にわたる孵化幼虫の出現への対応が適切ではなかったことが要因と考えられる 今後の課題としては 孵化幼虫の出現時期の詳細な把握や 定着に至る期間や形態の変化など 成長過程を明らかにし 薬剤散布の適期や必要回数等を提示することが必要と考えられる (2) ツノロウムシア調査の概要ツノロウムシの防除もルビーロウムシと同様に 冬季のマシン油乳剤の散布や幼虫発生期の薬剤散布が有効とされるが マシン油乳剤の効果については 疑問視する文献もある そこで これらの防除法を試験実施し その防除効果を検証した ( ア ) 調査樹種本種は 雑食性で極めて多くの樹種に発生するが 当センターでは毎年クチナシの小枝に発生して美観が損ねられる そこで 隣接して植栽されている 2 本 ( 樹高約 1.7m) を対象に防除効果を検証した 調査木 < H24.1.12> ( イ ) 薬剤散布薬剤は 調査対象木 (A B) のうち B に対し下表のとおり散布した 月日 1 月 12 日 6 月 26 日 散布薬剤マシン油乳剤スプラサイド乳剤 A B 100 倍液 1,000 倍液 34
散布状況 ( マシン油乳剤 ) 散布状況 ( スプラサイド乳剤 ) < H24.1.12 調査木 B> < H24.6.26 調査木 B> ( ウ ) 薬剤散布後の状況 マシン油乳剤 調査木 B に対し 100 倍液を約 2l 散布し 無散布の A と比較観察した 無散布の A の調査枝では 6 月頃まで 白い蝋物質に覆われた外観に全く変化は見られなかった B の調査枝では 散布して 1 ヵ月後の調査で 多くの成虫 ( 蝋物質 ) が欠落していた 欠落は マシン油乳剤散布の効果により 成虫が死んで欠落したとも考えられるが 調査枝以外では 付着していた本種に全く変化が見られなかった枝もあったことから 実を啄ばみにきた鳥が落としたり 風で落ちた可能性も排除できない 調査木 A の調査枝 ( 無散布 ) 1 月 12 日 4 月 6 日 調査木 B の調査枝 ( 散布 ) 1 月 12 日 4 月 6 日 35
スプラサイド乳剤 幼虫の発生を確認した 6 月 26 日 調査木 B にスプラサイド乳剤の 1,000 倍液を約 1.5l 散布し 無散布の A と対比しながら 継続観察した B は 当初設定した調査枝の成虫が早々に欠落したため 他の枝で継続観察した 調査木 A( 無散布 ) 定着したと思われた白い若齢幼虫は 成虫の周囲にはかなり多数の薄茶 薄茶色の孵化幼虫 白い若齢幼虫 欠落し 動き回る孵化幼虫も見られ 色の孵化幼虫が動き回る ともに減少 < H24.7.9 > ない < H24.7.17 > 白い若齢幼虫は すでに定着して いると思われる < H24.6.26 > 調査木 B( 散布 ) 成虫の周囲には多数の薄茶色の孵化 孵化幼虫はやや減少 ( 薬剤散布の 成虫は落下 ( 薬剤散布の効果?) 幼虫が動き回る 効果?) 定着したと思われた白い若齢幼虫も 白い若齢幼虫は すでに定着してい 白い若齢幼虫に変化は見られない 減少 < H24.7.6 > ると思われる < H24.6.26 > < H24.6.28 > イ調査結果と考察冬季の防除に有効とされるマシン油乳剤と 若齢期の幼虫の防除に有効とされるスプラサイド乳剤を散布して その防除効果を検証した マシン油乳剤の効果については 前述のとおり 散布した調査木の調査枝では多くの成虫が落下したが その他の枝では全く変化が見られず 無散布の調査木と同様に 多くの孵化幼虫が出現したため その効果には疑問が残る結果となった スプラサイド乳剤の散布は 白い点のように見える若齢幼虫を確認後 すぐに実施した しかし この白い幼虫は 薄茶色の孵化幼虫が移動後 定着し蝋物質を出して白くなったもので 孵化後いくらか成長した後の若齢幼虫であった スプラサイド乳剤を散布した 6 月 26 日の時点で多数見られた孵化幼虫は徐々に減少し 既に定着していた白い若齢幼虫も次第に欠落した ただ 記録写真のとおり 無散布の調査木 A でも 定着していた白い若齢幼虫の多くが欠落したことから 調査木 B における幼虫の減少を薬剤散布の効果と断言するのはやや無理があると思われる 36
また 今回の調査では 若齢幼虫の出現を確認した 6 月 26 日に 1 回散布しただけであるが もう少し早く孵化幼虫の出現に気付き その時点から孵化が終わるまで数回の散布を実施していれば異なる結果になったと思われる (3) ヘリグロテントウノミハムシア調査の概要センター内には 生垣としてヒイラギモクセイが多く植栽されているが 毎年 春から初夏にかけてヘリグロテントウノミハムシの成虫 幼虫の食害により被害葉が茶変して 著しく美観が損ねられる そこで 区分毎に時期をずらして薬剤を散布し 散布時期の違いによる防除効果を検証した ( ア ) 調査樹種延長 26m のヒイラギモクセイの生垣を 4 等分 (A~D) し 区域毎に薬剤散布の効果を比較調査した 生垣は 高さ 1.4m 幅 0.9m 1.4m 0.9m 26m 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 調査対象の生垣 成虫出現羽化成虫出現成虫越冬 幼虫出現 本種の発生時期 ( 平成 23 年度調査による ) ( イ ) 本種の発生状況と薬剤散布区域毎の本種の発生状況と薬剤散布は 下表のとおり 月日 4 月 25 日 5 月 7 日 5 月 10 日 5 月 21 日 6 月 18 日 6 月 20 日 6 月 26 日 6 月 28 日 7 月 9 日 薬剤散布 区域 A 区域 B 区域 C 区域 D 密度は低いが 全域に成虫が分布 スミチオン 1,000 倍液約 3l 新葉に少数の成虫が点在 加害 本種見られず 葉裏に幼虫が点在 被害顕著 本種見られず スミチオン 1,000 倍液約 4l ごく少数の成虫 成虫点在 成虫点在 本種見られず 成虫 11 匹確認 成虫 44 匹確認 成虫 61 匹確認 成虫 6 匹確認 成虫 18 匹確認 成虫 38 匹確認 成虫 61 匹確認 成虫 10 匹確認 スミチオン 1,000 倍液約 3l 成虫 19 匹確認 成虫 18 匹確認 成虫 1 匹確認 成虫 8 匹確認 成虫ほとんど見られず 37
薬剤散布状況 ( スミチオン乳剤 ) 本種の成虫 < H24.4.25> < H24.5.7 区域 D > ( ウ ) 薬剤散布後の状況昨年は 4 月上旬に成虫が出現し 中 下旬には急増して甚大な被害を受けたが 今年は 4 月下旬に区域全体に低い密度で発生した 調査では 5 月 7 日に区域 D でスミチオン乳剤の 1,000 倍液を散布し 他区域と比較観察した 無散布の区域 A~C では成虫による食害が進行し 葉裏に点在する幼虫による被害も顕著になってきた そこで 幼虫に対する薬剤散布の効果を検証するため 5 月 21 日に区域 A でスミチオン乳剤の 1,000 倍液を散布した 6 月中旬になり 新たに羽化した成虫が出現したため 区域毎に成虫の概数を調査したが 先入観に惑わされないために 薬剤散布の記録を知らない職員がカウントした 6 月 26 日には 成虫への散布効果を検証するため 最も多くの虫数を記録した区域 C でスミチオン乳剤の 1,000 倍液を散布した 7 月になると虫数は減少し 点在する成虫を見かける程度となった 被害状況 < H24.5.21 区域 C > 被害状況の対比 < H24.5.21 > 被害状況 ( 幼虫 ) 右側 ( 区域 D) は 5 月 7 日にスミチオン散布 < H24.5.21 区域 A > 左側 ( 区域 C) は無散布のため 被害が進行 新たに羽化した成虫による食害 < H24.6.18 区域 C > 成虫の概数調査 < H24.6.26 > 38
イ調査結果と考察生垣を 4 つに区分し 1 越冬成虫が出現した後 2 幼虫による被害が顕著になった頃 3 新たな羽化成虫が増加した頃 の 3 回それぞれ別の区域にスミチオン乳剤の 1,000 倍液を散布し その効果を比較検証した 1 に散布した区域 D では 他の区域で成虫 幼虫の被害が顕著となった 5 月中 下旬にも全く被害は見られず 6 月中 下旬には新たな羽化幼虫が出現したが 他区域に比べると少なかった 2 の区域 A は 無散布の B C に比べると羽化成虫の出現は少なかったものの D よりも多く出現した 幼虫は 葉の表皮の内側に潜って葉肉を食うため 幼虫発生期の散布に大きな効果は期待できないと思われる 3 の区域 C は 散布直後の調査で 成虫は著しく減少したが 本種による被害は 6 月下旬でほぼ終息することから 被害の軽減効果は乏しい ただし 本種は落葉下などで成虫越冬することから 3 の散布は 翌春の発生を抑制する効果は大きいと考えられる これらの調査結果から 本種の防除は越冬幼虫が出現する 4 月中 下旬 ~5 月上旬の散布が最も効果的であることが明らかとなった (4) ツゲノメイガア調査の概要センターの前庭と駐車場の境には セイヨウツゲ ( ボックスウッド ) の植込み 生垣があり 毎年春から夏に ツゲノメイガの食害により著しく美観を損ねられる 本種は 年 3~4 回の発生とされるが 昨年までの調査では 若齢 ~ 老齢までの幼虫が混在していることが多く 産卵や孵化 蛹化などの時期の特定は難しい 従って 薬剤散布についても適切な時期の把握が難しいため 区域毎に農薬の種類 散布時期を変えて散布し 効果の違いを検証した ( ア ) 調査樹種セイヨウツゲの植込み 生垣を 5 つの区域に分割し 薬剤散布の効果を比較調査した 1.2m 22.0m 12.0m 幅 0.8~1.2m 1.5m 6.8m 4.0m 12.7m 17.4m 35.9m 調査区域の全景 39
( イ ) 本種の発生状況と薬剤散布区域毎の本種の発生と被害の状況に応じ 下表のとおり薬剤を散布した 月日 3 月 21 日 4 月 6 日 4 月 10 日 5 月 10 日 5 月 21 日 6 月 11 日 6 月 18 日 6 月 25 日 6 月 26 日 6 月 27 日 7 月 17 日 7 月 23 日 7 月 25 日 8 月 9 日 8 月 20 日 8 月 29 日 薬剤散布区域 A 区域 B 区域 C 区域 D 区域 E トレボン トレボン トクチオン アディオン 少数の若齢幼虫 (7~10mm) の発生を確認若齢幼虫 (10~20mm) による被害点在 ( 軽微 ) 1,000 倍液 被害やや拡大軽微な被害点在ほとんど被害無し軽微な被害点在新たな被害の発生見られず若齢幼虫 (10mm弱) による被害発生 ( ごく軽微 ) 被害拡大 ( 幼虫 20~30 mm ) 幼虫 (20~30 mm ) による被害点在 刈込剪定 全域で被害拡大 幼虫 (30 mm程度 ) 多数 被害の拡大は見られず 被害拡大 被害の拡大は見られず 幼虫点在 (10~30mm) 被害拡大 全域 1,000 倍液散布 被害痕著しいが 終息 回復の兆し 1,000 倍液 1,000 倍液 老齢幼虫点在 被害拡大 被害痕目立つが 終息? 老齢幼虫点在 加害 全域 2,000 倍液散布 新梢先端部の食痕目立つが 終息? 被害甚大 被害痕目立つが本種見られず 食痕目立つが 終息? 若齢幼虫 < H24.4.6 区域 D > 初期の被害状況 < H24.4.6 区域 D > 老齢幼虫 < H24.6.26 区域 A > ( ウ ) 薬剤散布後の状況今年の調査では 昨年より少し遅れて 3 月 21 日に若齢幼虫の出現を確認した 昨年は 4 月中旬にかけて被害が拡大したため 調査では 4 月 10 日に区域 C でトレボン乳剤の 1,000 倍液を散布した その後 5 月中旬までに被害は終息したが 6 月 11 日に 2 回目の発生を確認し 6 月下旬にかけて被害が拡大したため 6 月 27 日に区域 A~C と区域 E でトレボン乳剤の 1,000 倍液を散布した 散布した区域では 被害の拡大は抑えられたが 無散布の区域 D では食害が進行し 甚大な被害となった 7 月下旬には 3 回目の発生と思われる若齢幼虫と残存した老齢幼虫が混在して食害する様子を確認したため 7 月 25 日に全域でトクチオンの 1,000 倍液を散布し防除を図った 40
その後 8 月 9 日の調査では 一部区域を除いて 依然として老齢幼虫による食害が進行していたため 8 月 20 日に全域にアディオン乳剤 2,000 倍液を散布した結果 被害は終息した 被害状況 ( 右 : 部分 ) 被害状況 ( 右 : 部分 ) <H24.6.27 区域 A> <H24.6.27 区域 B> 被害状況 ( 右 : 部分 ) 薬剤散布 ( トレボン ) <H24.6.27 区域 D> <H24.6.27 区域 A> 被害状況 <H24.7.17 区域 D> 被害状況 <H24.7.23 左半分 : 区域 D 右半分 : 区域 E> 被害状況 ( 右 : 部分 ) 被害は終息し 萌芽により徐々に回復 <H24.8.9 区域 A> <H24.8.29 区域 D> 41
イ調査結果と考察調査地を 5 つの区域に区分し 幼虫の発生状況や被害の状況を見ながら薬剤を試験散布して 効果等を比較検証した 例年 1 回目の発生は軽微な被害で終息することが多く 今年も全域で被害は発生したが 軽微であったため 4 月 10 日の散布については 無散布区域との差が顕著にならなかった 2 回目の発生では 6 月下旬に全域で被害が拡大したため 区域 D を除く全域で 6 月 27 日に薬剤散布を実施したが 散布区域では被害の拡大は抑止されたのに対し 無散布区域では被害が進行し 甚大な被害となった 区域 A では 薬剤散布前の刈込み剪定が散布効果に及ぼす影響を調べるため 前日に刈込み剪定を行ってから散布したが 結果的には効果に差異は見られず 逆に その後の新緑の美しさが損ねられることとなった 7 月下旬には 6 月に散布した区域でも若齢 ~ 老齢の幼虫が点在したため 7 月 25 日に全域で薬剤散布したが その後も被害は拡大したため 8 月 20 日にも散布して被害は終息した 春は比較的軽微な被害で終息することが多いが 盛夏にかけて拡大し 摂食量が多いため放置すると 丸坊主にされることもある 本種は 年 3~4 回の発生と推定されているが 詳細は不明で 発生時期の特定が難しいため 効率的な薬剤散布の時期の判断も難しい 若齢幼虫は葉の片面を食害するため 白くかすれた葉が目立つようになったら直ちに散布することが 被害の拡大防止につながると考えられる Ⅲ 調査結果 ( 成果 ) 1 害虫ガイド の作成調査期間の前年からセンター内及び近隣において発生を確認した害虫の写真を掲載した 害虫ガイド を作成した 害虫ガイド (1) 掲載内容等平成 22 年 11 月までに発生を確認した4 目 52 科 216 種の害虫写真を掲載し 文献等から引用して発生時期 発生樹種 形態等のコメントを付した 掲載順は 学術的な分類にこだわらず チョウ類 メイガ類 カイガラムシ類など一般的な呼称による分類で アイウエオ順に掲載し 害虫名は目別に色分けして表示した 生育段階において形態が大きく変化する主要害虫については できる限り各生育段階の写真を掲載した 甚大な被害が発生した場合は 被害状況の写真を掲載するとともに 調査中に確認した天敵についても 捕食状況の写真を掲載した (2) 資料の活用等この地域で発生する害虫で 肉眼で確認できるものについては大半を掲載していると思われるので 緑化木の生産現場や緑地 庭園等で害虫が発生した時に 本資料で種を特定し 防除対策につなげられる 2 樹種別病害虫検索ガイド の作成調査期間中に実施した病害虫発生の実態調査や農薬の防除効果の検証結果をふまえて 病害虫の診断や防除に活用できる 樹種別病害虫検索ガイド を作成した 樹種別病害虫検索ガイド (1) 資料の構成等区分 ( 構成 ) 記載内容等 掲載している病害虫の一覧( 病害虫写真の目次 ) 害虫は 4 目 57 科 280 種を掲載病害虫一覧 害虫は 甲虫目 チョウ目 ハチ目 カメムシ目の順に 科名 種名をアイウエオ順に配置 病気は 病名をアイウエオ順に配置 42
樹種別病害虫リスト 病害虫写真 主要害虫の生態と防除 樹種別に 調査において発生を確認した病害虫名を記載 柑橘類 サクラ類 ツツジ サツキ類 ツバキ サザンカ類など 同様の病害虫が発生する類似樹種は まとめて 1 樹種とし 174 種の樹種を掲載 樹種名の 内には 具体的な調査樹種 品種等を表示 害虫は 甲虫目 チョウ目 ハチ目 カメムシ目の順に 種名をアイウエオ順に記載 次に病気をアイウエオ順に記載 樹種別病害虫リストに記載した病害虫の写真を掲載 写真には 撮影日 樹種 撮影地 ( 植木センター以外のみ ) を記載 さらに 害虫については 文献等を参考に 発生時期 樹種 形態等を付記 主要害虫について 各生育段階における形態や被害の状況の写真を掲載 害虫の特徴 ( 発生時期や形態等 ) や被害の特徴は 調査記録をもとに 文献等の引用により補足して記述 防除対策については 農薬の登録変更等により 適用の内容が変更される場合があるため 具体的な農薬名の記載は省略 (2) 資料の活用等ア樹種別病害虫リスト樹木に発生する病害虫は きわめて多くの樹種に発生するものもあるが 特定の樹種にしか発生しないものも多い 樹種別病害虫リストでは 樹種別に 発生を確認した病害虫名を羅列しているので その樹種に発生しやすい病害虫の一覧として活用できる 病害虫が発生した場合 樹種が分かれば一覧に記載されている病害虫の写真と照合して 害虫の種や病名の特定に役立てることができる 害虫の写真には 調査結果や文献等をもとに発生時期や形態等のコメントを付しているので これらも種の特定の際には参考になると思われる イ主要害虫の生態と防除害虫の特徴 ( 発生時期 形態等 ) や被害の特徴等の記載や 各生育段階における幼虫写真 被害状況写真などの掲載により 種の特定に活用できる 加害期間や被害の程度 対策の記載により 防除法を検討する際の参考となる 3 緑化木主要病害虫の 防除指針 ( ポスター ) の作成主要な病害虫の生態 ( 症状 ) や防除法を記載したポスター仕様の 緑化木主要病害虫の 防除指針 を作成した 緑化木主要病害虫の 防除指針 ( ポスター仕様 ) また 机上で見やすいように冊子仕様に再編 (5 ページ ) した 防除指針 も併せて作成した 緑化木主要病害虫の 防除指針 ( 冊子仕様 ) (1) 掲載内容等当地域で相当な被害の発生が懸念される病害虫を対象とし 写真 発生時期 樹種 生態 ( 症状 ) 防除法及び防除農薬名を記載し 掲示できるようにポスター仕様とした 防除農薬の記載に当たっては 農薬登録情報提供システム ( 農林水産省消費安全技術センターホームページ ) で検索し 樹木類 に適用のある農薬を優先的に記載した また 記載農薬については愛知県農林水産部農業経営課の指導を受けるとともに 平成 24 年 11 月 2 日現在の登録状況を反映していることを明記した (2) 資料の活用等防除農薬名を記載しており 農薬による防除が必要な場合の農薬の選定に活用できる 43
作成した 防除指針 は 植木生産団体等にデータを提供し 団体が印刷して会員に配布されるなど 団体の協力により普及を図った センターで作成したポスターは 植木生産や緑地管理等に関わる官公署や団体 事業所等に配布して 害虫の特定や防除法の普及に努めた なお 平成 25 年 8 月 5 日以降 愛知県植木センターのホームページに 樹種別病害虫検索ガイド と 緑化木主要病害虫の 防除指針 を掲載し 広報 普及に努めている 44