学術教養特集2 間橋 淑宏

Similar documents
6 腰椎用エクササイズパッケージ a. スポーツ選手の筋々膜性腰痛症 ワイパー運動 ワイパー運動 では 股関節の内外旋を繰り返すことにより 大腿骨頭の前後方向への可動範囲を拡大します 1. 基本姿勢から両下肢を伸展します 2. 踵を支店に 両股関節の内旋 外旋を繰り返します 3. 大腿骨頭の前後の移

EDP

姿勢

ストレッチング指導理論_本文.indb

GM アフ タ クター & アタ クター どの年代でも目的に合わせたトレーニングができる機器です 油圧式で負荷を安全に調節できます 中殿筋と内転筋を正確に鍛えることで 骨盤が安定し 立位や歩行時のバランス筋力を向上させます 強化される動き 骨盤 膝の安定性 トリフ ル エクステンサー ニー エクステ

20 後藤淳 の回転や角加速度の制御ならびに前庭 眼球反射機能をとおして眼球の制御を 卵形嚢 球形嚢により重力や直線的な加速による身体の動きと直線状の頭部の動きに関する情報を提供し 空間における頭部の絶対的な位置を制御しており また 前庭核からの出力により頸部筋群を制御している 2) 頸部筋群はヒト

untitled

80 武凪沙, 他 態で腰椎のわずかな右側屈により 骨盤を右挙上させ下肢を後方へと振り出す これに対し本症例は 立位姿勢から上位胸椎部屈曲位 胸腰椎移行部屈曲 左非麻痺側 ( 以下 左 ) 側屈位を呈し体幹直立位保持が困難となっていた また右股関節 膝関節が左側と比べてより屈曲していることで骨盤右下

論で考えられる環境で起こる変化の法則を整理することで, 多くの負の現象を引き起して いる本質が明らかになるとともに, そのメカニズムが解明され, 本当の子どもたちの力が 引き出され, 笑顔あふれる環境が整うことを願う 2. 股関節屈曲で 腰椎は後彎, 骨盤は倒れようとする 構造的な理由我々の筋肉には

スライド 1

1 体幹が安定すると早くなる? お腹まわりを安定させ 体幹が安定していると 泳いでいる時に 抵抗の少ない良い姿勢をキープできるようになり 速く泳げるようになる可能性があります体幹が安定せず 抵抗が大きい姿勢となれば 早く泳ぐことができない可能性があります また 脚が左右にぶれてしまうため 抵抗が大き

氏名 ( 本籍 ) 中 川 達雄 ( 大阪府 ) 学位の種類 博士 ( 人間科学 ) 学位記番号 博甲第 54 号 学位授与年月日 平成 30 年 3 月 21 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題目 股関節マイクロ牽引が腰下肢部柔軟性に及ぼす影響 - 身体機能および腰痛

< F2D8FCD95CA81408F4397B E6A7464>

退院 在宅医療支援室主催小児医療ケア実技研修会 看護師のための 緊張が強いこどものポジショニング 神奈川県立こども医療センター 発達支援部理学療法科 脇口恭生 1

コンセントレーションカール 腕を鍛える筋トレメニュー 鍛えられる筋肉 : 上腕二頭筋 前腕屈筋 1. ベンチに座り 片手でダンベルを持ち 上腕を太ももの内側に固定します 2. ゆっくりとひじを曲げてダンベルを上げ ゆっくりと戻します フレンチプレス 鍛えられる筋肉 : 上腕三頭筋 1. 片手にダンベ

紀要2013年-0627.indd

行為システムとしての 歩行を治療する 認知神経リハビリテーションの観点

2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

3. 肘関節 屈曲 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩に近づく動き 伸展 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩から遠ざかる動き 前腕は回外位で検査 肘関節伸展位 前腕回外位で前腕が橈側に偏位する ( 生理的外反肘 肘角 ) 他覚所見として外反( 内反 ) ストレス時疼痛 屈曲 ( 伸展

体幹トレーニング

のモチベーションを上げ またボールを使用することによって 指導者の理解も得られやすいのではないかと考えています 実施中は必ず 2 人 1 組になって パートナーがジャンプ着地のアライメントをチェックし 不良な場合は 膝が内側に入っているよ! と指摘し うまくいっている場合は よくできているよ! とフ

PowerPoint プレゼンテーション

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

歩行およびランニングからのストップ動作に関する バイオメカニクス的研究

...S.....\1_4.ai

姿勢分析 姿勢分析 お名前 北原有希様 体重 45.0 kg 運動レベル 中 生年月日 1977 年 9 月 18 日 身長 cm オレンジ色の項目は 優先度の高い項目です 最適な状態にするための姿勢矯正プログラムが提供されます 頭が前に 18.3 出ています / 前に 2.9 cm 傾

背屈遊動 / 部分遊動 装具の良好な適合性 底屈制動 重心移動を容易にするには継手を用いる ただし痙性による可動域に抵抗が無い場合 装具の適合性は筋緊張の抑制に効果がある 出来るだけ正常歩行に近付けるため 痙性が軽度な場合に用いる 重度の痙性では内反を矯正しきれないので不安定感 ( 外 ) や足部外

Template

<4D F736F F D208FE18A B8982CC8C8892E882C982C282A282C45F967B95B65F2E646F63>

パワースポーター 1 正しい簡単装着方法 上記の UKK のマークが下になるようにしてください 2 取付け位置の基準は腰の位置に! 背中 腰の位置 骨盤

(1) 腕立て伏せ 1 ノーマル 上肢のトレーニング ~ 自重編 ~ 上肢のトレーニング ~ 自重編 ~ (1) 腕立て伏せ 6 膝つき ( 筋持久系 ) まっすぐ 大胸筋上腕三頭筋腹筋 大胸筋上腕三頭筋腹筋 膝をつけて回数を多くする (1) 腕立て伏せ 2 ワイド (2) ディップ 1 膝屈曲位

中枢神経系の可塑性 中枢神経系障害を持つ患者の不適切な介入は不適切な可塑性適応を起こす 運動コントロールの改善には治療中に行われる運動ができるだけ正常と同じ様に遂行される事や皮膚 関節 筋からの求心的情報を必要とする 中枢神経系が環境と相互作用する為には運動やバランス アライメント トーンの絶え間な

膝関節運動制限による下肢の関節運動と筋活動への影響

年度修士論文 男子ラクロスにおける前十字靭帯損傷発生率とその発生要因の検討 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科スポーツ科学専攻スポーツ医科学研究領域 5012CA040-9 西川亜夢子 研究指導教員 : 金岡恒治教授

本文-25.indd

葛原 / 日本保健医療行動科学会雑誌 28(2), 焦点 3 筋の不均衡を改善するためのパートナーストレッチング 葛原憲治愛知東邦大学人間学部人間健康学科 Stretching with a Partner to Improve Muscle Imbalance Kenj

KST(気兼ねなく,しゃべる,ところ) ~第1回 運動器疾患編~

今日勉強すること 1. 反射弓と伸張反射 2. 屈曲反射 3. 膝蓋腱反射の調節機構 4. 大脳皮質運動野の機能

S&C13-09Nov

運動療法と電気療法の併用 ~シングルケース~

46 図 1 spinal manual therapy の分類 脊椎徒手治療法 spinal manual therapy は muscle, nerve, facet, disc technique に四大別するが 特に facet への手技が主体となる 内塗りは急性腰痛に適応 表 1 腰痛の保

症例報告 関西理学 12: 87 93, 2012 右膝関節の疼痛により防御性収縮が強く歩行の実用性を低下させていた右人工膝関節全置換術後の一症例 吉田拓真 1) 山下貴之 1) 石濱崇史 2) Physical Therapy for a Patient who Had Difficulty Wa

京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻紀要健康科学第 5 巻 2008 原 著 外乱刺激に対する予測の可否が体幹筋の筋活動に与える影響 太田 恵 *, 建内 宏重 *, 井上 拓也 * 永井 宏達 *, 森 由隆 **, 市橋 則明 * Modulation of Trunk Muscle Ac

原理とメソッド Methods( メソッド ) は数えきれないほど存在するが Principles( 原理 ) はとても少ない 原理をつかむ者は 自身のメソッドを正しく選択できるが 原理を無視しメソッドのみを試みる者は 問題に遭遇する (Ralph Waldo Emerson)

紀要 Vol 6.indb

30 か 鏡の型スライド ( イス ) 仙骨の前後動させ 腰椎 骨盤周りの歪みを整え 腹圧力アップ 31 か 鏡返しの型 ( イス ) 仙骨の前後動させ 腰椎 骨盤周りの歪みを整え 腹圧力アップ 32 か 鏡の型リカバー ( イス ) 仙骨の前後動させ 腰椎 骨盤周りの歪みを整え 髄液の分泌を促す

第3回 筋系

1 1 仙腸関節痛は臨床の現場でよく見落とさ れます なぜなら 仙腸関節は可動性が低 く 痛みにあまり関与しないと考えられて きたためです しかし 近年になって仙腸 関節の機能について少しずつ明らかにな り 仙腸関節由来の疼痛が存在することが 理解されるようになってきました その結 果 脊柱由来の腰

柔整国試に出るポイント&出る問題下巻.indb

S&C2007_vol14_no07Aug-Sep

p16-23.indd

332 理学療法科学第 22 巻 3 号 I. はじめに脳卒中後遺症者などの中枢神経系障害を持つ患者が示す臨床像は, 環境への適応行動が阻害され, その基盤となる姿勢制御の障害は著しい 理学療法士がその構成要素 (Components) を明確にし, 再構築のために運動療法を行っていくことは必須であ

位 1/3 左脛骨遠位 1/3 左右外果 左右第二中足骨頭 左右踵骨の計 33 箇所だった. マーカー座標は,200Hz で収集した. (2) 筋電計筋活動の計測のために, 表面筋電計 ( マルチテレメータ. 日本光電社製 ) を用いた. 計測はすべて支持脚側とし, 脊柱起立筋 大殿筋 中殿筋 大腿

わたしたちのやりたいケア 介護の知識50

運動器検診マニュアル(表紙~本文)

健康的な姿勢を目指そう

はじめに 骨盤商品ブランド Labonetz( ラボネッツ ) は 2015 年 10 月 8 日 ~11 月 1 日の期間 インターネットによるアンケート調査 ニッポンのコツバン 骨盤実態大調査を実施した 回答総数は 1,952 名 骨盤への意識 知識や 身体の症状 日常の動作ぐせについて 多岐に


トレーニングコーチの仕事現場 6 東海大学ボート部ストレングス & コンディショニングトレーニング講習会から (2) ファンクショナルなウォーミングアップ 戸田ナショナルトレーニングセンター トレーニング専門職 長内暢春 劣化していくウォーミングアップ ~ 機能美を追求しよう ~ どんな競技スポーツ

1 1 COP ここでは リハビリテーションの過程で行わ れる座位での側方移動練習の運動学的特徴を 側方リーチ動作開始時の COP(Center of pressure) の前後 左右の変位と股関節周囲筋および内腹斜筋の表面筋電図を計測 同時に脊柱 骨盤の動きを動画解析することで明確にした研究を紹介

Microsoft PowerPoint - ①濱説明資料.pptx

目次 DAY1 P.1 インストラクターメソッド DAY2 P.2 ヨガの人体科学健康と病気の定義 DAY3 P.3 アーユルヴェーダ健康法 気 とは DAY4 P.4 ヨガで使うインナーマッスル バンダ DAY5 P.5 ヨガの教科書 ヴァガヴァッドギーターとヨガスートラを紐解く DAY6 P.6

Fig.2 5 Fig.3 Fig.4 7 cm Fig kyphosislordosis postureswayback posture flatback posturefig.3 lordosis posture Fig.4 3 VOL.27 NO.2201

足関節

復習問題

スライド 1

スライド 1

ランニング ( 床反力 ) m / 分足足部にかかる負担部にかかる負担膝にかかる負担 運動不足解消に 久しぶりにランニングしたら膝が痛くなった そんな人にも脚全体の負担が軽い自転車で 筋力が向上するのかを調査してみました ロコモティブシンドローム という言葉をご存知ですか? 筋肉の衰えや

Microsoft Word docx

脊髄損傷を呈した症例 ~必要なことは何か~

Ⅰ はじめに 臨床実習において 座位での膝関節伸展筋力の測定および筋力増強訓練を行っ た際に 体幹を後方に傾ける現象を体験した Helen ら1 によると 膝関節伸展 の徒手筋力測定法は 座位で患者の両手は身体の両脇に検査台の上に置き安定を はかるか あるいは台の縁をつかませる また 膝関節屈筋群の

目次 第 1 章はじめに 1 1 予備調査 2 2 姿勢の重要性 不良姿勢による様々な負の影響について 3 3 姿勢と呼吸 関連の先行研究 4 4 先行研究のまとめ 4 5 研究目的 4 第 2 章対象と方法 5 1. 対象について 5 2. 検証手順 5 3. 姿勢の評価について 研

身体福祉論

<4D F736F F D2091E68E6C94C F096558A7782CC8CA9926E82A982E7817A>

<4D F736F F D20819A918D8A E58D988BD881842E646F63>

特 2 立ち上がり動作を中心にアプローチした左大腿骨頚部骨折患者の症例報告所属社団法人地域医療振興協会横須賀市立うわまち病院名前近藤淳 はじめに 今回 左大腿骨頚部骨折の症例を担当した 本症例は立ち上がり動作障害があり 段階を追った訓練を進めた 動作分析から新たにアプローチを考案施行し 良好な結果が

3つま先立ち ( 腓腹筋 ) 4かかと立ち ( 前脛骨筋 ) 5おへそのぞき ( 腹直筋 ) 6ブリッジ ( 大殿筋 ) 7 横向き足上げ ( 中殿筋 ) 8ボートこぎ ( 広背筋 ) 9 胸の運動 ( 大胸筋 ) 10 腕の巻上げ ( 上腕二頭筋 ) 11 片手伸ばし ( 三角筋 ) 立位で行う種

××××××××××××××× ×××××××××××××××

第二回小テスト範囲胸筋 前頚三角 背部筋群 肩甲部 肋間筋と肋間隙 腋窩第三回プレ講義 p23 p25 p175 問題 1 乳房 breast には 皮下組織中の汗腺が変化した( 乳腺 mammary gland) が含まれており 乳汁を産生する 乳房は ( 胸筋筋膜 ) の前方に位置しており 結合

リハビリテーションにおける立ち上がり訓練とブリッジ動作の筋活動量の検討 リハビリテーションにおける立ち上がり訓練とブリッジ動作の筋活動量の検討 中井真吾 1) 館俊樹 1) 中西健一郎 2) 山田悟史 1) Examination of the amount of muscle activity i

第2回神戸市サッカー協会医科学講習会(PDF)F.pptx

Train Wisely


CPP approach Conjoint tendon Preserving Posterior Surgical Technique

原著論文 肩関節屈曲による交互滑車運動器使用時における肩甲骨の動きからみた肩甲上腕リズムの検討 寒川貴雄 (RPT) 1) 成末友祐 (RPT) 2) 新枝誠人 (RPT) 1) 原田貴志 (RPT) 1) 澤近知代 (RPT) 3) Key Word 交互滑車運動器 肩関節屈曲 肩甲骨の動き 肩甲

第 6 章呼吸と姿勢について 人間は身体や精神の安定のために, 普段何も意識することなくリラックスした姿勢で, 大きくゆっくりと呼吸をしています ところが, 本校の児童生徒の多くは肢体不自由, 重度 重複障害の状況にあり, 自力で安定した姿勢を保持することや, ゆっくりとした深呼吸を繰り返すことが難

1 Rachel Park がよいでしょうとのことでしたので 残念 ですが Park 先生が使用した 図そのも のは掲載しませんので ご了承ください 昨年 12 月 3 日 早稲田大学伏見キャンパスで開催された 第 3 回早稲田体幹機能研究会 で 大腰筋のワイヤ筋電解析を行っている Rachel P


学術教養特集 8

筑波技術大学 紀要 National University Corporation 3 レッドコード ニューラックとは レッドコードの正式名称はレッドコード ニューラックといい ノルウェーで生まれたスリングセラピーの新しい技術である スリングセラピーは ただ単に重力を免荷するだけではなく 適切な動き

1 姿勢と痛みの関係は? 日常生活で 肩を挙げるときに痛い 腰が痛い など痛みを感じることがあると思います その痛みの原因の1つとして 骨のずれ が考えられます 骨がずれている状態で体を動かそうとするので 痛みが生じます 姿勢と痛みの関係は 体の仕組みが分かれば実は簡単なんです! 次に 体の仕組みに


演題 1 妊娠に伴う腰背部痛 骨盤痛のメカニズム 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻リハビリテーション科学コース理学療法士梶原由布 1. はじめに 妊娠中はつわり 便秘 頻尿や尿漏れ 腓 ( こむら ) がえり 浮腫 動悸や息切れ 貧血 そして腰背部痛や骨盤痛など様々なマイナートラブルが発生

7: , 2007 Changes in Separation Distances of Scapular Region Muscles before and after Shoulder Joint Flexion and Abduction Yuji HOTTA, RPT 1),

愛知県理学療法学会誌(27巻1号).indd

00 p01 ...W.g.r..

紀要2016年No indd

SSW_blooket.pub

104 理学療法科学第 24 巻 1 号 I. はじめに II. 対象と方法 理学療法の臨床現場や高齢者に対する転倒予防指導などにおいて, 片脚立位は簡便な立位バランス能力の評価として使用されている 片脚立位時の重心動揺と転倒との関連も報告されており, 転倒予防訓練に関する研究では片脚立位時の重心動

倭人逆襲セミナー

Transcription:

きんべこ B.J.I 平成 15 年 5 月号 ~ 平成 15 年 12 月号掲載 H15 年 9 月号 (2-5) データなし

今回より8 回シリ-ズで身体のバランスについて掲載いたします 簡単に言うと身体の歪みについて解剖学的見地から筋のバランス ( 特に腰部を中心に ) をひもといていきます 1, アライメントの形成と筋アライメントは 姿勢を制御する抗重力筋や 普段の姿勢や癖などに代表される筋の働く傾向によって 腹筋群と背筋群のような拮抗筋同士が相反性支配によって お互い影響を与え合うことによって形成される 特に 股関節や脊柱は筋の柔軟性から影響を受けやすいと言われている 例えば 股関節の腸腰筋はオ-バ-ユ-スでも廃用性でも萎縮すれば屈曲位となり 拮抗筋である大臀筋が弛緩傾向になることで骨盤の前傾を助長する * アライメントとは個人の持っている身体の形態的特徴を示す言葉で 身体の支柱となる骨格を形成している骨 関節の配列 形いった骨の形態のことを指す 例 0 脚 X 脚 扁平足 外反母趾 脊柱側彎 外反肘 円背 骨盤の左右傾斜など 2, チェック法 1. 上からの水平面上のチェック : 回旋方向での崩れをチェックする 左右の耳孔 肩峰 腸骨棘 大転子を結ぶ線が平行かどうか 2. 背面からのチェック : 左右の崩れをチェックする 頭部と頸椎の線と正中線の一致 耳孔の左右の高さ 肩峰の高さ 肩甲骨の高さ 脊柱の鉛直性( 側彎の有無 ) 腕と胴の隙間 3. 側彎症のチェックポイント 肋骨の隆起 肩甲骨の隆起 肩の高さ非対称 腰部三角の非対称 ( 傾斜 = 中臀筋 内転筋群のバランス ) 4. 側方からのチェック : 前後の崩れ 耳孔と肩峰を結ぶ線 ( 頸椎のアライメント ) 肩峰と腰椎 大転子を結ぶ線 ( 胸椎と腰椎のアライメント ) 腸骨棘と恥骨を結ぶ線 ( 骨盤の前傾度 ) 腰椎 股関節 膝関節 足関節までを結ぶ線 5. 足関節のアライメント ( 内 外反性 足ア-チ ) 6. 膝関節のアライメント (Qアングル 内 外反性 内 外旋性) 7. 骨盤のアライメント ( 左右の高さ 回旋の状態 ) など参考文献 Training Journal 1999 No214 2001 No263 表 -1 日本リハビリテ-ション医学会と日本整形外科学会による関節可動域表示ならびに測定法 ( 体幹測定 )

部位名 運動方向 可動域 角度 基本軸移動軸測定肢位および注意点 屈曲 ( 前屈 ) 60 肩峰を通る床へ 外耳孔と頭頂を 頭部体幹の側面で行う の垂直線 結ぶ線 原則として腰かけ坐位と 伸展 ( 後屈 ) 50 する 左回 60 両側の肩峰を結 鼻梁と後頭結節 腰かけ坐位で行う 頚部 回旋 旋右回 60 ぶ線への垂直線 を結ぶ線 旋 側屈 左側屈 50 第 7 頸椎棘突起と第 1 仙椎の棘 頭頂と第 7 頸椎棘突起を結ぶ線 体幹の側面で行う 腰かけ坐位で行う 右側 50 突起を結ぶ線 屈 屈曲 ( 前屈 ) 45 仙骨後面第 1 胸椎棘突起と第 5 腰椎棘突 伸展 ( 後屈 ) 30 起を結ぶ線 体幹側面より行う 立位 腰かけ坐位または側臥位で行う 股関節の運動が入らないように行う 左回 40 両側の上後腸骨 両側の肩峰を結 坐位で骨盤を固定して 胸腰部 回旋 旋右回 40 棘を結ぶ線 ぶ線 行う 旋 左側 50 ヤコビ - 線の中 第 1 胸椎棘突起 体幹の側面で行う 側屈 屈右側 50 点にたてた垂線 と第 5 腰椎棘突起を結ぶ線 腰かけ坐位または立位で行う 屈

1, 骨盤傾斜による影響重心が偏ることで 立位等の荷重時に偏った筋の動員と過緊張が起こり 拘縮につながることが多い また 骨盤傾斜 ( 左高位 右低位 ) によって 右脊柱起立筋の萎縮 硬化 過緊張 右外腹斜筋 左内腹斜筋の亢進が生じ脊柱が左斜めに斜傾してしまう このために 重心が左に傾くことになり さらに骨盤の傾斜へといった悪循環となり 筋バランスが崩れていく 2, 体幹のアライメント 1) 骨盤に対する胸郭の位置関係での評価体幹のアライメントは骨盤の安定性に大きく影響を受け 重心の位置に直接影響を及ぼす 骨盤帯の水平性が保たれている場合 仙骨上に 脊柱が鉛直に配列されているのが理想的なアライメントとなる 体幹の筋群のバランスは骨盤の安定性に大きな影響を受ける 例えば 立位での骨盤が傾く ( 左高位 / 右低位 ) と そのままでは脊柱が傾き頭部が仙骨上からズレてしまうので 脊柱を左に側彎させ体幹と頭部を左に移して安定させようとする このとき右外腹斜筋 左内腹斜筋や右脊柱起立筋が動員され 長時間この状態が続くことで緊張が高まって筋バランスが崩れ 骨盤が水平になっても脊柱が傾きアライメントが崩れたままの状態になってしまう このように体幹が左に傾いたままになると左足側に体重が多くかかってくることで重心の位置が崩れてくる この荷重状態は運動性にも直接影響し 結局は左脚の筋や関節への負担が増加してしまう さらにこの状態が続くことで左右の下肢バランスが崩れ 骨盤の傾斜を助長するという悪循環に陥りやすくなる また 骨盤から上の体幹の前傾 後傾は 腹筋群と背筋群の相対的な姿勢制御能力から影響を受ける 背筋群に比べて腹筋群の方が弱くなると前傾しやすく 逆に背筋群の方が弱くなると後傾しやすくなる しかし 体幹の筋バランスは骨盤が水平であっても崩れることがある 椅子に座って字を書くときの傾いた姿勢や 重い物を持って歩くときに体幹を傾いた姿勢などを長時間続けることでも崩れる 姿勢を保持しアイソメトリックス収縮のオ-バ-ユ-スを強いられる側の筋群は硬化し 使われない側は筋力が低下しやすくなり この状態が残ることで前述の悪循環により陥りやすくなる 3, 大臀筋と中臀筋の相対的動員性 * 相対的動員性 : 同じ股関節での大臀筋と中臀筋と左右それぞれの大臀筋 中臀筋を比較した動員性 左右を比較した動員性の高い側を 優性 低い側を 劣性 として相対的動員性を表現する 次回 大臀筋と中臀筋の相対的動員性について 骨盤と股関節のアライメントを中心に特集を組みます 参考文献 Training Journal 2001 No,264

1, 骨盤傾斜による影響重心が偏ることで 立位等の荷重時に偏った筋の動員と過緊張が起こり 拘縮につながることが多い また 骨盤傾斜 ( 左高位 右低位 ) によって 右脊柱起立筋の萎縮 硬化 過緊張 右外腹斜筋 左内腹斜筋の亢進が生じ脊柱が左斜めに斜傾してしまう このために 重心が左に傾くことになり さらに骨盤の傾斜へといった悪循環となり 筋バランスが崩れていく 2, 体幹のアライメント 1) 骨盤に対する胸郭の位置関係での評価体幹のアライメントは骨盤の安定性に大きく影響を受け 重心の位置に直接影響を及ぼす 骨盤帯の水平性が保たれている場合 仙骨上に 脊柱が鉛直に配列されているのが理想的なアライメントとなる 体幹の筋群のバランスは骨盤の安定性に大きな影響を受ける 例えば 立位での骨盤が傾く ( 左高位 / 右低位 ) と そのままでは脊柱が傾き頭部が仙骨上からズレてしまうので 脊柱を左に側彎させ体幹と頭部を左に移して安定させようとする このとき右外腹斜筋 左内腹斜筋や右脊柱起立筋が動員され 長時間この状態が続くことで緊張が高まって筋バランスが崩れ 骨盤が水平になっても脊柱が傾きアライメントが崩れたままの状態になってしまう このように体幹が左に傾いたままになると左足側に体重が多くかかってくることで重心の位置が崩れてくる この荷重状態は運動性にも直接影響し 結局は左脚の筋や関節への負担が増加してしまう さらにこの状態が続くことで左右の下肢バランスが崩れ 骨盤の傾斜を助長するという悪循環に陥りやすくなる また 骨盤から上の体幹の前傾 後傾は 腹筋群と背筋群の相対的な姿勢制御能力から影響を受ける 背筋群に比べて腹筋群の弱くなると前傾しやすく 逆に背筋群の方が弱くなると後傾しやすくなる しかし 体幹の筋バランスは骨盤が水平であっても崩れることがある 椅子に座って字を書くときの傾いた姿勢や 重い物を持って歩くときに体幹を傾いた姿勢などを長時間続けることでも崩れる 姿勢を保持しアイソメトリックス収縮のオ-バ-ユ-スを強いられる側の筋群は硬化し 使われない側は筋力が低下しやすくなり この状態が残ることで前述の悪循環により陥りやすくなる 3, 大臀筋と中臀筋の相対的動員性 * 相対的動員性 : 同じ股関節での大臀筋と中臀筋と左右それぞれの大臀筋 中臀筋を比較した動員性 左右を比較した動員性の高い側を 優性 低い側を 劣性 として相対的動員性を表現する 次回 大臀筋と中臀筋の相対的動員性について 骨盤と股関節のアライメントを中心に特集を組みます 参考文献 Training Journal 2001 No,264

学術部 1, 骨盤と股関節の動きの6つのパタ-ン 1) 骨盤傾斜 - 左高 右低 左大臀筋と右中臀筋が優性 2) 骨盤傾斜 - 左低 右高 左中臀筋と右大臀筋が優性 3) 両股関節が屈曲内旋位 左右中臀筋が優性 より内旋位側の大臀筋が劣性となりやすい 4) 両股関節が外旋位 左右大臀筋が優性より外旋位側の中臀筋が劣性となりやすい 5) 右股関節が不安定 右大臀筋と右中臀筋が劣性 6) 左股関節が不安定 左大臀筋と左中臀筋が劣性 2, 骨盤の左側が前に回旋する場合 左股関節外旋 ( 左外旋筋群優位 ) 右股関節内旋 ( 右内旋筋群優位 ) 3, 骨盤の右側が前に回旋する場合 左股関節内旋 ( 左内旋筋群優位 ) 右股関節外旋 ( 右外旋筋群優位 ) 表 -2 内 外旋位と大臀筋 中臀筋の動員性 右 左 特 徴 右利きパタ-ン内旋位 / 中臀筋優位外旋位 / 大臀筋優位 右利きに多い 左利きパタ-ン 外旋位 / 大臀筋優位内旋位 / 中臀筋優位 左利きに多い 内旋パタ-ン 内旋位 / 中臀筋優位内旋位 / 中臀筋優位外反足 X 脚となりやすい 外旋パタ-ン 外旋位 / 大臀筋優位外旋位 / 大臀筋優位内反足 0 脚となりやすい 4, 骨盤前傾の場合座っている時間が多いと 股関節の屈曲位が続き腸腰筋は短縮し 大臀筋は伸張して弛緩しやすい状態となる 立位や歩行時にも骨盤の前傾が生じやすくなる * 骨盤の前傾を招きやすい筋の動員性 大腿四頭筋 >ハムストリングス> 大臀筋大腿四頭筋が過使用性拘縮し 股関節が屈曲位となりやすい ハムストリングス> 大腿四頭筋 > 大臀筋ハムストリングスが過使用性拘縮となりやすい このような状態は 股関節屈筋群の拘縮が 大臀筋への相反性抑制となり弛緩しやすく 膝関節の伸展が強く行われ大腿四頭筋に負担をかける また 骨盤の前傾によって 上体を支えるために脊柱起立筋群の緊張を高め 腹筋群の緊張が弛みやすく 腰椎への負担を助長することになる 参考文献 Training Journal 2001 No,264

学術部 表 -5 歩行の偏りによって陥りやすい筋群の状態 着地足側オ - バ - ユ - スで 着地足側活動不足で萎縮蹴り足側オ - バ - ユ - スで蹴り足側活動不足で萎縮 硬化しやすい筋または弛緩しやすい筋硬化しやすい筋または弛緩しやすい筋 外旋筋群 内旋筋群 内腹斜筋 外腹斜筋 脊柱起立筋 腰方形筋 大臀筋 内転筋群 腸腰筋 大腿直筋 中臀筋 大腿二頭筋 半腱 半膜様筋 腓腹筋内側頭 腓腹筋外側頭 ヒラメ筋 長母趾屈筋 前脛骨筋 短 / 長腓骨筋 * 大筋群がオ-バ-ユ-スまたは脆弱化することによって 代償作用の協働筋に負担がかかる 表 -6 体幹の関節の動きと筋の動員 関節の動き 主働筋 協働筋 補助筋 1 補助筋 2 補助筋 3 頭と頸椎の屈曲 胸鎖乳突筋 長頭半棘筋 頭と頸椎の伸展 僧帽筋上部 頭半棘筋 頭板状筋 頸板状筋 脊柱起立筋 頭と頸椎の側屈 胸鎖乳突筋 頭板状筋 僧帽筋 脊柱起立筋 頭と頸椎の回旋 胸鎖乳突筋 頭板状筋 脊柱の屈曲 腹直筋 内外腹斜筋 大小腰筋 脊柱の伸展 脊柱起立筋 腰方形筋 半棘筋 多裂筋 脊柱の側屈 内外腹斜筋 多裂筋 腰方形筋 横突間筋 脊柱起立筋 脊柱の回旋 内外腹斜筋 多裂筋 回旋筋 半棘筋 参考文献 Training Journal 2001 No,265 2002 No,267

学術部 1. 長潜時反射 Long latency reflex 一般的に伸張反射は筋が伸ばされる ( 筋伸張 ) 筋感覚センサ-( 固有受容器 ) へ刺激が加わる 感覚神経を信号が伝達する ( 求心性神経 ) 脊髄に到達 運動神経を信号が伝達する ( 遠心性神経 ) 伸ばされた筋が収縮する ( 筋収縮 ) という経路で起こる この経路を脊髄反射とよぶ これに加えて脊髄に到達した信号が さらに脳を中心とする高次中枢を介して脊髄に帰する経路も存在する これは 脊髄反射よりも遠い経路を通るために 刺激があってから筋への信号が送られるのに時間が長くかかる すなわち 脊髄から筋へ単純に送り出される信号と 高次中枢を介してから送られる信号の2 系統があり 後者が長潜時反射の系に相当する この長潜時反射が 反射後の随意動作をスム -ズに行うために一役買っている 筋が伸ばされると脊髄反射に続いて長潜時反射が起こることによって 小さな筋張力が生まれる この張力がその後に起こる随意動作の妨げとなる場合 長潜時反射の成分を小さくするような運動制御が起こる 例えば 拮抗筋に起こる反射的活動による張力は 主働筋の筋活動に対する張力の 抵抗勢力 となるので 長潜時反射を小さくすると動作に有利となる 逆に 反射的筋活動による張力が行おうとする随意動作に利用できる場合 長潜時反射を大きくして 反射に続く随意的筋活動の助けとなるような運動制御をしようとする また 脊髄反射が脊髄レベルで制御されるのに対して 長潜時反射は高次中枢の複数のレベルで制御されるので 運動制御に伴う変化が大きいことが示されている 長潜時反射と運動パフォ-マンスの関係についてはいくつかの研究があり 動作との関連では 反射が速い被検者群の長潜時反射は遅い被検者群よりも変化率が大きいこと (B onnet;1983,woollacott;1984) などが報告されている 報告者 参考文献 齋藤実 大妻女子大学 木塚朝博 筑波大学体育科学系 2002;Training Journal No,272

学術部 1, 抗重力筋について主として重力に対して姿勢を保持するために働く筋肉を抗重力筋という すなわち 運動時や静止時における様々な姿勢において頭部を常に一定に保とうと働き それに伴い各神経 筋が共同して作用しながら重力に抗する働きをしていく筋肉が抗重力筋である 直立時には主に抗重力筋が働くが 前屈 後屈姿勢時等においては 他の抗重力筋以外の筋肉のバランスが働き出すため その時の状態や姿勢において常に変化するものであり 抗重力筋と支持筋との関わり方 抗重力筋と運動筋との関わり方である 1) 立位時 く 直立 : 最も抗重力筋が働く 前屈 後屈 下肢屈曲等 : 抗重力筋とともに支持筋 運動筋が働 2) 坐位時 正座 : 上半身においては抗重力筋が働く 椅子 : 下肢に対しては抗重力筋はあまり働かない 3) 歩行時 抗重力筋とともに支持筋 運動筋が働く 4) 背臥位時 抗重力筋としては働かない 2, クイック伸張法急激な伸張 ( クイックストレッチ ) を用いると伸張反射を誘発することができる 関節面を引き離す牽引と 逆に関節面を押しつける圧縮を交互に用いることは 関節面にある固有受容性感覚器を直接刺激することになる 関節内の受容器は 関節構造の位置的変化に反応するという特徴がある したがって この牽引と圧縮は 関節構造を支配する固有感覚の中枢を刺激する方法として用いられるテクニックとなる 実際の場面において 牽引は運動を促進させるために 圧縮は姿勢を安定させるために有効である 参考文献スポ - ツ PNF トレ - ニング大修館書店覚張秀樹 矢野雅知著 スパイラルバランス療法 田中信孝著