ス化した さらに 正常から上皮性異形成 上皮性異形成から浸潤癌への変化に伴い有意に発現が変化する 15 遺伝子を同定し 報告した [Int J Cancer. 132(3) (2013)] 本研究では 上記データベースから 特に異形成から浸潤癌への移行で重要な役割を果たす可能性がある

Similar documents
学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 神谷綾子 論文審査担当者 主査北川昌伸副査田中真二 石川俊平 論文題目 Prognostic value of tropomyosin-related kinases A, B, and C in gastric cancer ( 論文内容の要旨 ) < 要旨

博士の学位論文審査結果の要旨

子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

EBウイルス関連胃癌の分子生物学的・病理学的検討

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

15 氏 名 し志 だ田 よう陽 すけ介 学位の種類学位記番号学位授与の日付学位授与の要件 博士 ( 医学 ) 甲第 632 号平成 26 年 3 月 5 日学位規則第 4 条第 1 項 ( 腫瘍外科学 ) 学位論文題目 Clinicopathological features of serrate

<原著>IASLC/ATS/ERS分類に基づいた肺腺癌組織亜型の分子生物学的特徴--既知の予後予測マーカーとの関連

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

H27_大和証券_研究業績_C本文_p indd

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

博士学位申請論文内容の要旨

Wnt3 positively and negatively regu Title differentiation of human periodonta Author(s) 吉澤, 佑世 Journal, (): - URL Rig

<4D F736F F D F4390B38CE3816A90528DB88C8B89CA2E646F63>

学位論文内容の要旨 Abstract Background This study was aimed to evaluate the expression of T-LAK cell originated protein kinase (TOPK) in the cultured glioma ce

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 中谷夏織 論文審査担当者 主査神奈木真理副査鍔田武志 東田修二 論文題目 Cord blood transplantation is associated with rapid B-cell neogenesis compared with BM transpl

Microsoft Word - FHA_13FD0159_Y.doc

モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の特性と

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

学位論文の要約 Clinical Significance Of Platelet-Derived Growth Factor 5 Receptor-β Gene Expression In Stage II/III Gastric Cancer With S-1 Adjuvant Chemothe

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現

1. 研究の名称 : 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍の分子病理学的研究 2. 研究組織 : 研究責任者 : 埼玉医科大学総合医療センター病理部 准教授 百瀬修二 研究実施者 : 埼玉医科大学総合医療センター病理部 教授 田丸淳一 埼玉医科大学総合医療センター血液内科 助教 田中佑加 基盤施設研究責任者

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

-119-

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

がん登録実務について

平成14年度研究報告

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

妊娠認識および胎盤形成時のウシ子宮におけるI型IFNシグナル調節機構に関する研究 [全文の要約]

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

大腸癌術前化学療法後切除標本を用いた免疫チェックポイント分子及び癌関連遺伝子異常のプロファイリングの研究 

博第265号

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

1)表紙14年v0

学位論文 ( 要約 ) Downregulation of mir-15a due to LMP1 promotes cell proliferation and predicts poor prognosis in nasal NK/T-cell lymphoma ( 鼻性 NK/T 細胞リンパ腫

インプラント周囲炎を惹起してから 1 ヶ月毎に 4 ヶ月間 放射線学的周囲骨レベル probing depth clinical attachment level modified gingival index を測定した 実験 2: インプラント周囲炎の進行状況の評価結紮線によってインプラント周囲

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

Untitled

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

頭頚部がん1部[ ].indd

が 6 例 頸部後発転移を認めたものが 1 例であった (Table 2) 60 分値の DUR 値から同様に治療後の経過をみると 腫瘍消失と判定した症例の再発 転移ともに認めないものの DUR 値は 2.86 原発巣再発を認めたものは 3.00 頸部後発転移を認めたものは 3.48 であった 腫瘍

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

転移を認めた 転移率は 13~80% であった 立細胞株をヌードマウス皮下で ~1l 増殖させ, その組

32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

MTX を使用している患者に発症するリンパ増殖性疾患は WHO 分類では 移植後リンパ増殖性疾患や HIV 感染に伴うリンパ増殖性疾患と類縁の Other iatrogenic immunodeficiency associated LPD に分類されている 関節リウマチの治療は 近年激変し 早期の

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

50% であり (iii) 明らかな心臓弁膜症や収縮性心膜炎を認めない (ESC 2012 ガイドライン ) とする HFrEF は (i)framingham 診断基準を満たす心不全症状や検査所見があり (ii) は EF<50% とした 対象は亀田総合病院に 年までに初回発症

PowerPoint プレゼンテーション

Untitled

学位論文の要旨 Clinical significance of platelet-derived growth factor 5 receptor-β gene expression in stage II/III gastric cancer with S-1 adjuvant chemothe

1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

考えられている 一部の痒疹反応は, 長時間持続する蕁麻疹様の反応から始まり, 持続性の丘疹や結節を形成するに至る マウスでは IgE 存在下に抗原を投与すると, 即時型アレルギー反応, 遅発型アレルギー反応に引き続いて, 好塩基球依存性の第 3 相反応 (IgE-CAI: IgE-dependent

表 1. 罹患数, 罹患割合 (%), 粗罹患率, 年齢調整罹患率および累積罹患率 ; 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く ; 部位別, 性別 B. 上皮内がんを含む 表 2. 年齢階級別罹患数, 罹患割合 (%); 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く B. 上皮内がんを含む 表 3. 年齢

らに本検査により 術中に腹膜再発リスク患者の高感度判定が可能となったため 現在 2017 年 4 月より 大阪市立大学医学部附属病院において 胃癌手術中の判定に基づいて術中に腹膜再発予防的治療を行う臨 床試験を開始しています 図 1. 胃癌の腹膜転移経路と手術中診断法 胃粘膜上皮で発生した癌細胞が胃

Microsoft Word _前立腺がん統計解析資料.docx

子宮頸部細胞診陰性症例における高度子宮頸部病変のリスクの層別化に関するHPV16/18型判定の有用性に関する研究 [全文の要約]

性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 庄司仁孝 論文審査担当者 主査深山治久副査倉林亨, 鈴木哲也 論文題目 The prognosis of dysphagia patients over 100 years old ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 日本人の平均寿命は世界で最も高い水準であり

脂肪滴周囲蛋白Perilipin 1の機能解析 [全文の要約]

サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

Chapter 1 Epidemiological Terminology

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

Microsoft Word _肺がん統計解析資料.docx

計画研究 年度 定量的一塩基多型解析技術の開発と医療への応用 田平 知子 1) 久木田 洋児 2) 堀内 孝彦 3) 1) 九州大学生体防御医学研究所 林 健志 1) 2) 大阪府立成人病センター研究所 研究の目的と進め方 3) 九州大学病院 研究期間の成果 ポストシークエンシン

study のデータベースを使用した このデータベースには 2010 年 1 月から 2011 年 12 月に PCI を施行された 1918 人が登録された 研究の目的から考えて PCI 中にショックとなった症例は除外した 複数回 PCI を施行された場合は初回の PCI のみをデータとして用いた

「             」  説明および同意書

するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

学位論文の要約

平成 7年 3月 国立広島大学附属福山高等学校  卒業

直腸癌における壁外浸潤距離の臨床的意義に関する多施設共同研究

<4D F736F F D DC58F4994C A5F88E38A D91AE F838A838A815B835895B68F FC189BB8AED93E089C82D918189CD A2E646F63>

Untitled

ABSTRACT

本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形


Microsoft Word - all_ jp.docx

< E082AA82F1936F985E8F578C768C8B89CA816989FC92F994C5816A2E786C73>

う報告26)がみられるが Barrett 食道癌における FAK する必要がある 本研究における我々の目的は 1 の発 現 とそ の機能 に ついて の 報 告は み ら れ な い FAK の Barrett 食道癌における役割を検討すること Barrett 食道は胃食道逆流症により正常扁平上皮が

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

九州大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(慢性重症虚血肢(閉塞

Transcription:

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 守谷友二朗 論文審査担当者 主査 : 三浦雅彦副査 : 森山啓司 坂本啓 論文題目 The high-temperature requirement factor A3 (HtrA3) is associated with acquisition of the invasive phenotype in oral squamous cell carcinoma cells ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 口腔癌の発癌過程には多くの遺伝子が関与していることが知られている しかし この過程における遺伝子発現の変化の詳細な機構はよく分かっていない 我々はこれまでに口腔扁平上皮の発癌に関与する遺伝子発現の変化を同一検体を用いたデータから明らかにし この過程で連続的に増加あるいは減少する 15 遺伝子を報告した 本研究では このデータベースをもとに上皮性異形成から浸潤癌への進展に特異的に関与する 4 つの遺伝子を同定し その一つである HtrA3 を選択し 解析を進めた qrt-pcr と免疫組織化学染色を用いた解析により 口腔上皮性異形成から扁平上皮癌への進展で HtrA3 の発現が有意に増加することを確認した また HtrA3 の発現量の変化が 無病生存率 (p=0.045) と全生存率 (p=0.003) と有意に相関し 多変量解析により HtrA3 の発現量が全生存率の予測因子 (p=0.018) であることが示唆された 以上から HtrA3 は 口腔扁平上皮癌の予後マーカー 及び上皮性異形成の悪性化予測のマーカーになり得ることが示唆された < 緒言 > 口腔扁平上皮癌は世界で 5 番目に多い悪性腫瘍である 外科手技 放射線治療 化学療法の進歩が 組織温存と生活の質の改善を達成しているにも関わらず ここ 20 年間の全生存期間の延長はあまりみられていない 全生存期間の改善に 癌化の分子機構を理解することは不可欠である 既出の研究で マイクロアレイ解析を用いた口腔癌進展過程の研究はいくつか報告があり 遺伝子変異の蓄積で発癌することが示されている しかし 同一の口腔癌サンプルで口腔癌の遺伝子発現変化を証明した報告はほとんどない そこで 我々は 口腔癌 11 検体より レーザーマイクロダイセクションを用い それぞれの検体から正常部 上皮性異形成部 癌部を採取し マイクロアレイ解析を行うことで口腔癌の発癌過程における mrna レベルの発現の変化をデータベー - 1 -

ス化した さらに 正常から上皮性異形成 上皮性異形成から浸潤癌への変化に伴い有意に発現が変化する 15 遺伝子を同定し 報告した [Int J Cancer. 132(3) 540-548 (2013)] 本研究では 上記データベースから 特に異形成から浸潤癌への移行で重要な役割を果たす可能性がある遺伝子を同定し 解析を行った < 方法 > 1999 年 ~2012 年の間に 東京医科歯科大学歯学部附属病院顎顔面外科で一次治療として外科的切除を行った口腔扁平上皮癌 上皮性異形成を対象とした 本学歯学部倫理委員会承諾 ( 承認番号 213 および 829) のもと 全ての患者からインフォームドコンセントにより研究の承諾が得られている すでに確立した口腔癌における遺伝子発現プロファイルのデータベースを用い Human V4.0 OpArray 上の 35,035 プローブを対象に まず正常部と異形成部で有意な差を示さなかった遺伝子を選択した Fold-change (FC) 値はそれぞれの組織での遺伝子発現レベルの平均の比率を使用して計算し 10 % (0.909-1.1 倍 ) 未満の差を示している遺伝子を選択した そして Wilcoxon signed-rank test( 有意水準 0.05) を用いて上皮性異形成と浸潤癌を比較し 発現が浸潤癌で 3 倍以上の発現増強がある遺伝子に絞った さらに低発現レベルのために偽陽性を示す遺伝子を除外するため 浸潤癌で平均発現レベルが少なくとも 100 単位あるものを選択した 次にマイクロアレイ解析の結果の確認のため 口腔扁平上皮癌 15 症例のホルマリン固定パラフィン包埋組織を用い 2 つの遺伝子 HtrA3 と MMP11 の免疫組織化学染色を行った さらに正常組織 異形成組織 癌組織それぞれ 9 検体を用いて qrt-pcr により行った 口腔扁平上皮癌 67 症例 上皮性異形成 29 例のホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックを用いて HtrA3 の免疫組織化学染色を行い 発現を評価した 評価法は HtrA3 が細胞質内に局在している細胞を陽性細胞とし 10 倍視野 10 箇所で陽性細胞の割合が 30% 以上のものを高発現 30% 未満のものを低発現と定義した 統計解析は R 統計ソフトウェア 2.12. と SPSS15.0J を用い それぞれの結果と臨床病理学的因子との関連はフィッシャーの正確確率検定 Cox 比例ハザードモデルを用い 生存率については Kaplan-Meier 法で解析をおこなった p<0.05 を有意差ありと設定した < 結果 > 上記データベースから 4つの遺伝子 HtrA3 MMP11 LARP6 COL5A1 が選択された 口腔扁平上皮癌 15 症例でHTRA3とMMP11の免疫組織化学染色を行ったところマイクロアレイ解析の結果と一致してHtrA3,MMP11の蛋白質の発現量が浸潤癌で特異的に増加していた またqRT-PCR でも同様に 浸潤癌で特異的にHtrA3が増加することも確認した これらの検証実験から マイクロアレイ解析により得られたデータは 信頼できるものであることが示された - 2 -

口腔扁平上皮癌 67 検体と上皮性異形成 29 検体で HtrA3 の免疫組織化学染色を施行したところ 扁平上皮癌 67 検体中 39 検体 (58.2%) で高発現 28 検体 (41.8%) で低発現を示した HtrA3 の発現が癌組織で特異的に増加しており 上皮性異形成から浸潤癌への進展に関与する遺伝子である可能性が示唆された 単変量解析の結果 HtrA3 発現様式と年齢 性別部位 浸潤様式には有意な関係が認めず 病理学的 T ステージ (p=0.001) 病期 (p<0.01) 分化度(p=0.045) リンパ節転移(p<0.01) 再発 (p=0.045) 全生存率(p=0.003) で有意な差を認めた カプランマイヤー生存曲線では 無病生存率 p=0.04, 全生存率 p=0.003 と HtrA3 発現量の高い影響を示し ともに高発現群が低発現群の症例に対して有意に経過が不良であった 多変量解析においては 転移が危険率 (HR) 4.170 信頼区間 (CI) 1.804-9.639,p=0.001) で無病生存率の指標であることを示した一方 HtrA3 高発現は (HR, 11.732; CI, 1.532 89.865; p = 0.018) で全生存率の予測因子であることが示された < 考察 > これまでに 口腔扁平上皮癌を含む頭頸部癌進行モデルを確立し 病理組織学的段階に関係した癌遺伝子の変化を調べた研究は既に報告があり 最近では さらにマイクロアレイ解析を用いた口腔癌進行における遺伝子変化に関する報告が散見される しかし それらは異なる患者の検体組織から採取したものを解析しており さらにその採取方法のため間質が混在し 遺伝子発現の結果に影響を与えている可能性が考えられる そこで我々は 口腔扁平上皮癌検体を用い レーザーマイクロダイセクション マイクロアレイを用いることにより同一検体での口腔癌発癌過程の遺伝子変化についてデータベースの確立を試み 正常部 上皮性異形成部 癌部の順に発現が増加あるいは減少する 15 遺伝子を口腔癌の進展に関与する遺伝子として既に報告した 本研究では 上記データベースを基に 正常上皮から上皮性異形成でほとんど変化せず 上皮性異形成から浸潤癌で発現が有意に増加する4 遺伝子 (HtrA3,MMP11,LARP6,COL5A1) を選択した これは 4 遺伝子が上皮性異形成から浸潤癌進行に特異的に関与する遺伝子であることを示唆している さらに この 4 遺伝子から HtrA3 に注目し さらなる解析を行った 我々は 浸潤癌 正常上皮 上皮性異形成での HtrA3 の mrna とタンパク発現を明らかにし 臨床病理学的因子を含め 予後因子解析を行った この研究は 口腔発癌の HtrA3 発現と臨床病理学的因子 患者生存との関係を示した初めてのものである HtrA ファミリーは ATP 非依存性セリンプロテアーゼでバクテリアからヒトまで保有している遺伝子で ヒトでは HtrA1-から HtrA4 までが発見されており セリンプロテアーゼ領域と C 末端に PDZ 領域をいずれも共通に有している それらは ミトコンドリアの恒常性 アポトーシス 細胞シグナル伝達に関与し それらの機能障害が癌 関節炎 神経変性障害を含むいくつかの疾 - 3 -

患の病因となる可能性が示唆されている HtrA3 は HtrA1 と類似しており TGFβ を抑制する機能が示唆されている これまでに この遺伝子の発現様式はいくつかの悪性病変で検証され HtrA3 が癌化に何らかの役割をすることが示されてきたが HtrA3 が子宮内膜癌の進行とともに抑制されること 卵巣癌 肺癌で発現抑制されることが報告された一方で 甲状腺癌では この蛋白質の発現量増加が報告されている このように癌の種類による多様な発現様式の変化が HtrA3 の発癌に関する役割の解明を困難にしている 今回の研究で 我々は HtrA3 が浸潤癌で特異的に発現が増加することを明らかにした 加えて 複数の口腔扁平上皮癌細胞株での発現増強も確認した これらの発見は HtrA3 が口腔扁平上皮癌細胞株の浸潤能獲得に重要な役割を果たしている可能性を示唆している 一般にプロテアーゼは 細胞外マトリックス (ECM) を分解し 細胞の遊走 浸潤を促進して癌の発育進展に関与する さらに HtrA3 はデコリン ビグリカン フィブロネクチンのような細胞外マトリックスプロテオグリカンに特異的に作用し 遊走 浸潤を促進することが報告されている このことから 一つの可能性として HtrA3 が口腔粘膜の細胞外マトリックス環境の調節に関与しており 過剰な発現が細胞の遊走能 浸潤能を獲得するきっかけになると考えられる さらに 既出の報告で示されているように HtrA3 は 細胞成長と分化に関与し 癌の発達に関与する TGFβ 蛋白を阻害する機能を有している TGFβ は 癌の早期段階では腫瘍抑制的に 進行段階では進展 転移に促進的に働くことが報告されている つまり 二つ目の可能性として HtrA3 が 発癌の初期の TGFβ による癌化抑制機能を阻害していることも考えられる しかしながら HtrA3 には いまだ不明な機能が多く 口腔癌発癌における HtrA3 の機能的役割についてさらなる研究が必要である < 結論 > 口腔上皮性異形成から浸潤癌に進行するのに特異的に関係する 4 つの遺伝子を同定した 4 つの遺伝子の一つ HtrA3 の発現量は 口腔扁平上皮癌の予後予測マーカー 上皮性異形成の悪性化を予測するマーカーになり得ると考えられた - 4 -

論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4790 号守谷友二朗 論文審査担当者 主査 : 三浦雅彦副査 : 森山啓司 坂本啓 ( 論文審査の要旨 ) 口腔癌の発癌過程には多くの遺伝子が関与している しかし この過程における遺伝子発現の変化は 同一口腔癌内において いまだ証明されていない そこで 守谷は 口腔扁平上皮癌 11 検体より レーザーマイクロダイセクション (LMD) を用いて それぞれの検体から正常部 上皮性異形成部 癌部を採取し マイクロアレイ解析を行うことで 口腔癌の発癌過程に関与する遺伝子発現の変化を明らかにしようとしており この着眼は妥当なものであると考えられた 実験手法としては 凍結組織の口腔癌 11 症例でマイクロアレイ解析を行い パラフィン包埋組織の口腔癌 9 症例 白板症 9 症例を用い qrt-pcr パラフィン包埋組織の口腔癌 67 症例 白板症 29 症例を用いて 免疫組織化学染色を行った 凍結組織の口腔癌から 正常部 上皮性異形成部 癌部の採取の際に LMD を用いることで 目的細胞以外の混入を除外する工夫もなされており 本研究が周到な準備のもとに行われたことがうかがわれる 得られた結果は以下の通りである 1) マイクロアレイ解析の結果より 35,035 遺伝子のうち 正常部と上皮性異形成部で発現量にほとんど差がみられず 上皮性異形成部に比べて癌部で発現が上昇する4 遺伝子を見出した 2)qRT-PCR の結果 正常部と癌部 (p<0.01) 異形成部と癌部(p=0.008) の間で HtrA3 の発現量に有意な差を認めた 3) 口腔癌 67 症例のうち HtrA3 タンパクの高発現 (39 症例 ) 低発現(28 症例 ) を認めた 4) 口腔癌において 臨床病理学的因子との関連については T ステージ (p=0.001), 病期分類 (p<0.001) 分化度分類(p=0.045) リンパ節転移(p<0.001) 再発の有無(p=0.045) 全生存率 (p=0.003) で有意な相関が認められた Kaplan-Meier 生存分析では 無病生存率 (p=0.045) 全生存率(p=0.003) ともに 高発現群が低発現群の症例に対して有意に予後不良を示した 以上のように本研究では 口腔上皮性異形成の癌化に特異的に関与する4 遺伝子を同定した その4 遺伝子の中の1 遺伝子である HtrA3 は 口腔扁平上皮癌細胞の浸潤能獲得に重要な役割を果している可能性が示唆された 一般にプロテアーゼは 細胞外マトリックス (ECM) を分解し 細胞の遊走 浸潤を促進して癌の発達進展に関与する HtrA3 はデコリン ビグリカン フィブロネクチンのような細胞外マトリックスプロテオグリカンに特異的に作用し 遊走 浸潤を促進することが報告されている このことから 一つの可能性として HtrA3 が口腔粘膜の細胞外マトリックス環境の調節に関与しており 過剰な発現が 細胞の遊走能 浸 ( 1 )

潤能を獲得するきっかけになると考察している さらに 既出の報告で示されているように HtrA3 は 細胞成長と分化に関与し 癌の進行に関与する TGFβ 蛋白を阻害する機能を有している TGFβ は 癌の早期段階では腫瘍抑制的に 進行段階では進展 転移に促進的に働くことが報告されていることから HtrA3 が 発癌の初期の TGFβ による癌化抑制機能を阻害している可能性も挙げている これらの考察ならびに推論は 妥当なものであると考えられた HtrA3 の口腔癌での働きは 依然不明な点が多いが 本研究から得られた知見は 口腔癌の予後を予測する上で極めて有用であると評価された このように守谷は 口腔上皮性異形成の癌化に関与する 4 遺伝子を同定し さらに そのうちの1つである HtrA3 に絞って解析を行った結果 口腔扁平上皮癌の予後マーカー 上皮性異形性の悪性化を予測するマーカーになりうることを示した 本研究で守谷は HtrA3 と関連する遺伝子産物を含め 癌細胞の遊走 浸潤過程のメカニズムにまで議論を展開しており 今後の癌研究に大きく貢献することが期待できる よってこれらの研究成果は 今後の歯科医学の発展に寄与するところが極めて大きいと考え 博士 ( 歯学 ) の学位を請求するに十分に価値のあるものと認められた ( 2 )