マイナースポーツの課題 インラインホッケーの実践者の立場から 学籍番号 14W0014 学生氏名宇野加恒哉 目的 2017 年 10 月に中国の南京で開催された World Roller Games というローラースポーツの世界大会に インラインホッケー部門に出場したのは世界 7 カ国 (7 チーム ) であった 日本代表チームは 5 勝 2 敗と善戦したが オリンピック競技となる競技種目と比較して世界大会の参加チームは極めて少なく マイナー競技であるといえよう 本研究は インラインホッケーの実践者の立場から マイナースポーツの課題を検討する しかし アイスホッケーの盛んなアメリカ カナダなどの国においては 道具や装備 スキルやルールなど共通性があり インラインホッケーの人気が高く アイスホッケーの線上にいる選手や愛好者がアイスホッケーの補完的競技として受け容れられていると考えられる 本研究を通じて マイナースポーツが抱える課題は メジースポーツ枠の補完的要素をどのように受け入れ 普及展開に活かす事ができるのかという事が判った 結果及び考察 2020 年に東京オリンピックが開催されるということもあり 我国におけるスポーツ熱は日々高まりを見せている しかし 一方でスポーツ愛好者は限定された競技種目に偏っているのではないだろうか 愛好者や選手は オリンピック種目となる競技に集中している傾向が考えられ また 学校体育の教材や部活に採用されている競技に偏りがちになっている 筆者自身 高校までおこなっていた野球部を卒業とともに終えて 大学のサークル活動として新たにインラインホッケー競技に取り組んだ 学生実践者の立場からみると 練習や試合を行なう施設の問題 運営資金難である特に資金難が深刻 である 今回の世界大会出場にあたっても 日本代表チームは 中国までの遠征費 大会登録費用は免除されず 費用は全て選手個人が負担して参加している
膝関節損傷のエスノグラフィー - 高校サッカー選手の場合 - 運動器外傷学研究室 指導教員久保山和彦准教授 学籍番号 14W0025 学生氏名斎藤愛生 目的本研究は柔道整復師の施術の場における 問診や視診などの 医療面接 において 発生原因や機序の聞き取りやカルテへの記載などの面接力の向上を狙い 損傷患者の訴えをつぶさに記述する事を通じ 柔道整復術の診断にあたる 評価 向上に知見を提供する事を目的とした また 筆者自身の膝関節損傷の経験を記述し直す事で 後療法 に必要な柔道整復術を明確にした 結果 1 患者のエスノグラフは 何故このことについて調べようと思ったのかというと 私はサッカーを幼いころからやっているが 高校時代に膝の靭帯と半月板を損傷してしまい それらの怪我で 3 年間の内の半分ほどはリハビリだった また 復帰をしても怪我をする前のプレイに完全に戻す事が出来なかった そこで サッカーをするなかで何故このような怪我が起こるのか また怪我をしたあと完璧に元に戻すことはできるのかということを疑問に思い調べることにした ( 斎藤 ) と述べた また 2 サッカーにおける膝の怪我の大部分は 体の接触や打撲傷によることや 選手が走ったり 加速したり 減速したり 体をひねったり 方向転換したりした際に生じた力によって起こる これらの動作をしたとき 膝関節にどのように軟部組織損傷が起こるのかの損傷メカニズムや危険因子また競技復帰までの過程を調べてみた ( 斎藤 ) という損傷原因に競技特性が関係していた事を示唆した 考察 F MARCサッカー医学マニュアル によると サッカー中で 最も見られる2つの原因をあげ タックルにより膝の1 外側 2 内側に衝撃を受ける事だとしている 1では 膝が外反 脛骨外旋する結果 膝内側部の損傷が発生し 2は 膝が内反し 脛骨が内旋し 膝外側部の損傷を受傷する と書かれている また ボールをけった衝撃においても受傷する事があり 足の外側でボールを蹴ったことにより 下腿が内旋し 膝に内反ストレスがかかる場合にも起こる さらに 足を地面に固定したまま方向転換したことにより 脛骨が外旋または内旋し 膝に内反または外反ストレスがかかった場合がある と記述されており 相手との衝突がないストップ動作や方向転換においもACL 損傷の受傷があるようだ 患者の 膝の靭帯と半月板を損傷してしまい それらの怪我で 3 年間の内の半分ほどはリハビリだった また 復帰をしても怪我をする前のプレイに完全に戻す事が出来なかった と述べている事から この症例は 相手の選手とボールを同時に足の内側で蹴った事により膝関節のMCLの部分断裂と半月板損傷をひき起こしてしまった また 半月板損傷の怪我はボールを介した体接触により 膝が外反しMCLとACLに強い力が加わり損傷した そのため MCLと関節包に強く付着している半月板 ( 内側半月 ) も損傷したと考えられる と解釈された また 後療法は 患部の安静 物理療法 ( アイシング ) により 患部の炎症を抑え 関節可動域訓練をスムーズに行う 次に筋力トレーニング 運動療法を行い 筋力トレーニングでは緩衝機能 荷重の均等化 関節の安定化 関節潤滑の役割がある 特に大切なのが大腿四頭筋と半膜様筋でこれらの滑走性を高める事により半月板の拘縮を防ぐ事にですすめていく 本研究により 評価の段階で 損傷の原因や発生機序の把握が 診断評価 施術内容 後療法のプログラムに大きく影響していることが判った
捕球時の空間認識能力 投球動作とスポーツビジョン 学籍番号 14W0026 学生氏名齋藤祐樹 目的野球において 投球 は最も重要な動作の一つである 宮西ほか (2015) は さらに守備別にみると 投げる距離 空間的 時間的制約の度合いも異なりそれぞれ特有の違いが生じていることを示唆している 中でも外野手は 長い距離を投げなければいけないため 大きな投球速度が必要であるとされている ( 野村ら,2013 仲沢,2004) この投球速度を上げるためには助走を用い準備するなどの投球前動作の分析 ( 蔭山ら,2015) また 下肢で生成されたエネルギーをタイミングよく順次に体幹へ加算 伝達され 体幹の回旋 捻転により肩関節 手関節での大きなエネルギー生成へとつながり強い投球ができる ( 蔭山ら,2015; 宮西ら,1996; 宮西ら,2015) など 運動連鎖の重要性が指摘されている これまでに投球動作をバイオメカニクス トレーニングといった視点で 投球速度に関する研究が行われている これらの研究結果をもとに合理的な投球動作を行うことができれば より強い投球ができ また傷害が発生するリスクも抑えられるだろう しかしながら これまでの研究は 試合中でのデータではなく 研究のために行われた投球動作を計測しており 実際の試合中の投球動作は捕球から投球に移るなど 実験上の姿勢保持のように万全な状態で投球を行なっておらず 投球動作行うには素早く捕球地点に向かい ランナーを確認し投球の目標場所を決めるといった 投球の前段階にみられる捕球時の空間認識能力 つまりスポーツビジョンが 投球を効率よく行うためには重要だと考えた そこで本研究では 文献とトップアスリートのプレー動画を参考にして 投球動作に入るまでの準備段階の捕球とスポーツビジョンの関係性に注目して スポーツにおける空間認識能力について検討する 結果及び考察野球のイチロー選手は一瞬で物事を把握するという 瞬間視が優れており サッカーの中田英寿選手は一瞬視線を巡らせただけでその後のプレーが予測できる 深視力 が優れていたといわれている ( 吉本ら,2002) これらのことより スポーツビジョン能力は スポーツ選手としての成績を左右する要因の一つと考えられる イチロー選手のプレーを例にスポーツビジョンと投球動作の関係性を考察すると イチロー選手といえば矢のような送球の レーザービーム が思いつく なぜあのような送球をすることができるのか イチロー選手の守備プレーの動画をみると 捕球地点を素早く察知して移動し 捕球から投球までの一連の動作をスムーズに行っている ことが判った これは イチロー選手は捕球体勢に入る前からランナーの進行方向に体を向け 助走しながら捕球し そのまま投球動作を可能としており 捕球前の段階に空間認識能力を窺わせた また イチロー選手のスポーツビジョンが優れていることがわかる動画がある それはフェンス直撃の打球の処理方法にみられ 捕球すると見せかけてランナーの進塁を妨げるというプレーで フライの打球を一瞬でフェンスにあたると認識し あえて打球を追わずフェンスに当たったボールが戻ってくるところにイチロー選手が待機している というもので スポーツビジョン能力を知るためのプレーといえよう 私は上記のことからスポーツビジョン能力を向上させることは プレーの質の向上 また競技力の向上に繋がると考えられ また 円滑な運動連鎖により傷害予防になると考えた 今回の研究を通じて 幼少時から指導者が基礎 ( フォームなど ) だけでなく スポーツビジョンのトレーニング また 年少時からの運動習慣によって発達し 豊富な経験でより発達 ( 石垣ら ) など スポーツにおける空間認識能力の重要性を知った
日体大の集団行動 の意義 清原信彦の言説から 学籍番号 14W0029 学生氏名佐々木空 目的私は日本体育大学の伝統である集団行動をおこなっており 実践者の立場から 歩く について研究をすすめた 集団行動は 1970 年に清原信彦が寮監督を務めた際に考案したもので 当時も寮で集団生活をするのに上級生がわががままに 勝手なことを言ったり 上級生が麻雀をやっている横で下級生がお酌をしているようなありさまだった 2 という状況を目にし 学生の寮生活の改善を目的とした つまり 根本から集団とはどういうものなのか教育する意味で やり始めたのが集団行動だった と述べ 初期は 乱れた規律の改善 を目的として集団行動がおこなわれていた しかし 現在の集団行動は 学生の一糸乱れぬ 演技 となり 美 を追求する集団の審美性が増しており また 演技が終ったらみんなで感動をわかちあい涙を流します ( 筆者 ) という集団行動の変容がみられた 本研究においては 歩く動作が なぜみんなで行うと感動が生まれひとつになるか という設問に基づいて研究を進めた 結果及び考察筆者は 2016 年 8 月にはスイスで開催された 軍楽隊の祭典 (Basel Tattoo) に集団行動に演者として参加し 集団で 歩く 演技を実践した 歩行 は 一般男性の平均 [ 歩幅 : 約 74 cm 1 分間 : 110 歩時速 :4,8 km ] 1 とされ 集団行動 場合は [ 歩幅 : 約 95 cm 1 分間 :162 歩時速 :9,2 km ] とみられ このデータからわかるように 普通の歩行とは全くの別物である ( 筆者 ) と考えられる 筆者の経験から 1 分間に 162 歩とはどのくらいのスピードか想像つかない思うが 陸上部の 100m の選手にグラウンドを一緒について歩いてもらうと 陸上の選手が半周も追いつけません 歩くだけでも普通じゃできないスピードで歩くことで感動を生むと考える という 集団行動参加学生の意見を多く耳にする また 現在も指導にあたっている清原信彦は著書のなかで 人を作っていることだ 集団行動をやりたいと 私の下に集まった学生は 自分の意思できたわけですから 私から学べと言っています 私は集団行動の技術だけではなく 今 人を作っているのです 2 また 集団行動の練習の中で きついとよく口にします でも きついのはそれを見ている私が一番わかります 50 年間集団行動を見てきているのです それをあえてやらせているというのは ここまでしかできないというのでは 私がいる意味がないのです 私がいる以上は 今いるレベルからもうひとつ上のレベルに上がるということがどういうことかを教えているのです 現状のままであれば 自分でやればいいのです そのレベルの人はたくさんいます しかし 私が教える以上は 今のレベルのさらに上のレベルを目指す この差が 人に感動を与えるのです と話している このように 誰もがやらないことをやることで 感動を生み感動を与えているのだと思う 3 と述べ 集団で歩く目的 は スピードや審美性を追求したものではなく 人づくり という教育目標にあったことが判る 日体大の集団行動の意義は 歩くという身体運動を協調 共有することが 演技者の感動の要因となっていたと考えられる
跳躍力と滞空時間の関係 股関節周辺筋の影響 学籍番号 14W0032 学生氏名志村海 目的本研究はバスケットボールやバレーボールなどの跳躍動作に貢献する股関節周辺の筋のトレーニング方法を考案する目的ですすめた これまで 跳躍に関する研究は 下肢 ( 助走 ) と上肢 ( 腕振り ) の反動を制限して 下肢機能そのものの垂直跳びを検討したもの その制限を無くして反動動作の効果を付けて検討したもの 等があり 跳躍動作は上肢 下肢 体幹など全身の運動連鎖から研究がなされ 跳躍力は全身筋力の総体として捉えられている また 下肢に注目し垂直跳びに関連した研究は Fukashiro&Komi 1 佐川ら 1 が検討しており 結果は股関節の仕事量の増加によって跳躍は増加することが報告されている 振り動作についても同様で 腕振り動作を行うと股関節の仕事量が増えて跳躍が増加することが Lees, A 1 Hara, M 1 が報告しており この二つの報告から 跳躍には股関節が深く関わってくることが考えられる 結果及び考察跳躍力は 床と足の距離 で計測し 床から垂直方向の距離となっており 空中の水平面上の移動は除外される この垂直跳びでは跳躍動作の股関節の初期角度が小さいほど高くなるという事が原樹子ら 1 により報告されており 跳躍前の 沈み込み が 垂直跳びの向上に関連していることが判った また 跳躍力を向上させるには股関節や股関節回りの筋 ( 腹筋群 腸腰筋群 臀部の筋 ハムストリング ) の強化や 腕の振り動作が重要かという事が判った では このようなことに注目してトレーニン グを行い 実際の跳躍を主とするスポーツ ( バスケットボールやバレーボール ) で活躍できるのかどうかという事が疑問となってくる どんなに跳躍力が上がったとしても 身体的な要因として代表的なものが身長である 身長が高い人の方が最高到達点は高いのでスポーツでは有利になる 例として 1972 年のミュンヘンオリンピックの際にバレーボールの全日本男子チームは金メダルを獲得している 当時の平均身長が 190 cmで 成績上位 3 チームの平均身長 189,7cmを唯一上回っている このような身体的要因が実戦での成績に関与した ここまで垂直跳びに限って跳躍力をみてきたが 総合的に観たところ幅跳びのようなステップを踏んで跳躍をした方がより高くて滞空時間が長い跳躍になるのではないかと考え 調べたところによると 鳥海ら 1 は幅跳びの方が垂直跳びに比べて勝っているという事を検討している 今回調べた結果 スポーツ活動において ただ跳躍力を上げるだけでは活躍できないという事が分かった スポーツにおいての跳躍は 股関節の動きと幅跳びのようなステップジャンプを意識して行うことが重要になってくる 空中滞空時間を水平方向への移動によって 維持するための跳躍スキルについては今後の課題とした