を 0.1% から 0.5% 1.0% 1.5% 2.0% まで増大する正負交番繰り返し それぞれ 3 回の加力サイクルとした 加力図および加力サイクルは図に示すとおりである その荷重 - 変位曲線結果を図 4a から 4c に示す R6-1,2,3 は歪度が 1.0% までは安定した履歴を示した

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エネルギー吸収を向上させた木造用座屈拘束ブレースの開発 Development of Buckling Restrained Braces for Wooden Frames with Large Energy Dissapation 吉田競人栗山好夫 YOSHIDA Keito, KURIYAMA Yoshio 1. 地震などの水平力に抵抗するための方法は 種々提案されているところであるが 大きく分類すると三種類に分類される 即ち 耐震工法 免震工法そして制震工法である この中で制震工法は 地震エネルギーを吸収することにより被害を抑制するという原理に基づく工法である 工事費 施工期間など他の工法と比較し 安く早いという特徴があるが 現在のところエネルギー吸収性能が設計に反映されていないため その長所が知られておらず これを利用した工法の採用は少ないというのが現状である 座屈拘束ブレース () はエネルギーを吸収する制震工法の代表的ものであるが木造への転用は図られていない これは 丸鋼を に転用することが困難なためである 本報告では これまで提案 1) した と比較し よりエネルギー吸収の向上を目的とした丸鋼使用の内部取り付け用 の実験報告である 2 単体実験 2.1 本試験に用いた は 材質 SS400 直径 M6 の転造ねじによる芯ブレースと 炭素管の補剛材から構成されている 直径 M6 の芯ブレースと炭素鋼管の補剛材のみで構成した場合 両者の間隔が大きく 軸力が作用するとブレースに座屈が生じてしまう これを防止するために芯ブレースの中間に適当な間隔でナットを配置し その間にアルミ管を配置して座屈長さを調整している これはナットを取り付ける手間の軽減を図り使用したものである 補剛材の構成は図 1 に示すとおりである またブレースと木造フレームの金物 ( 厚さ 3.2mm) の取り付け形状は図 2 に 材料特性を表 1 に示す 単体用名は R6-1,2,3 の 3 体である 使用した補剛材の構成は表 2 に掲げてあるように 内管としてアルミ管 φ18 2 と補剛材としてφ27.2 2.9 鋼管を重ねて二重鋼管としたものを使用し 木造フレームと金物の取り付けにはコーチスクリュー φ10 を 5 本使用した 2.2 単体実験 図 1 の構成 図 2 取り付け金物 表 1 材料特性 補剛材芯ブレース 降伏点 (kn/mm 2 ) 0.32 0.40 引張強さ (kn/mm 2 ) 0.46 0.51 ヤング係数 (kn/mm 2 ) ブレース材長 補剛材 177.3 224.4 表 2 補剛材構成 R6-1 R6-2 R6-3 L=788mm( 座屈有効長 708mm) 内管 φ18 2 (I=0.33cm 4 ) 外管 φ27.2 2.9 (I=1.66cm 4 ) 単体の加力は変形制御とし 軸歪 - 52 -

を 0.1% から 0.5% 1.0% 1.5% 2.0% まで増大する正負交番繰り返し それぞれ 3 回の加力サイクルとした 加力図および加力サイクルは図に示すとおりである その荷重 - 変位曲線結果を図 4a から 4c に示す R6-1,2,3 は歪度が 1.0% までは安定した履歴を示した しかし 歪度が 1.5% を過ぎると圧縮荷重が増加する傾向を見せた R6-1,2,3 の最大荷重はそれぞれ 10.43kN 10.41kN 10.44kN の値を示した R6-1,2,3 の破断時歪度は全て 1.5% において生じたが R6-1,3 は繰り返し加力が 3 回目の際に破断し R6-2 は繰り返し加力が 2 回目の際に破断するという違いがあった これをみると 歪度が 0.5%,1% および 1.5% に対し等価減衰定数はそれぞれ平均でほぼ 20% 35% 及び 44% と高い性能を示す結果となった また これに伴う加速度低減率も軸歪が 1% を超えると効果が薄れるものの 0.5 から 0.28 に低減された 軸歪 (%) 図 4a 荷重 - 変位曲線 (R6-1) 図 3 加力図および加力サイクル 2.3 R 体の減衰定数と加速度低減率 の制振効果を検証するために荷重 - 変位曲線の最大荷重と変位を用い 等価減衰定数をそれぞれ (1) と (4) 式より算出した 1 W h ( δ ) = eq max (1) 4π Δ W 図 4b 荷重 - 変位曲線 (R6-2) ここで W : 履歴吸収エネルギー Δ W : 等価剛性による弾性エネルギー 1 Δ W = kδ 2 max 2 e Q( δ ) max k ( δ ) = e max δ F h 1.5 = 1 + 10h max (2) (3) (4) 図 4c 荷重 - 変位曲線 (R6-3) 等価減衰定数の算定結果を表 3 と図 5 に 加速度低減率の算定結果を表 4 と図 6 に示す - 53 -

ら構成されている 内付タイプのブレース取り付け形状は 1P タイプのものにブレースを 2 本 ( 名 1PB2) 設置したもの 同様の木造フレームにブレースを 3 本 ( 名 1PB3) 設置したもの 2P タイプに方杖のように取り付けたもの ( 名 2PB4) の 3 種類である 図は図 7 に示すとおりである 図 5 軸歪 - 等価減衰定数 ( 単体 ) 2,730 910 910 1820 (a) 1 PB1 (b) 1 PB3 (c) 2 PB4 図 7 図 図 6 軸歪 - 加速度低減率 ( 単体 ) 軸歪 (%) 表 3 等価減衰定数 ( 単体 ) (%) R6-1 R6-2 R6-3 平均 0.5 19.36 19.98 19.12 19.49 1.0 35.60 39.71 35.54 36.75 1.5 42.95 45.42 44.82 44.40 軸歪 (%) 表 4 加速度低減率 ( 単体 ) R6-1 R6-2 R6-3 平均 0.5 0.511 0.500 0.515 0.501 1.0 0.329 0.302 0.329 0.320 1.5 0.283 0.271 0.274 0.276 3. 木造フレーム実験 3.1 木造フレーム は新築用としてブレースがフレーム面内に取り付けたタイプ 計 3 体を制作した 本に使用した木造用フレームの軸組み寸法は幅 0.91m 高さ 2.73m の 1P タイプと幅 1.82m 高さ 2.73m の 2P タイプであり 土台 梁 柱か 3.2 木造フレーム実験結果実験結果の結果一覧を表 5 に 荷重 - 変位曲線を図 8a から図 8c に 加力前と加力後の写真を図 9a から図 9c に示す 図 10 には破壊箇所の写真を示す 1PB2 は 履歴特性にスリップ型形状が見られた 最終過程においては 金物の変形が増大しコーチスクリューにせん断破壊が生じ 芯ブレースが破断していた ( 図 10a) この時の最大荷重は 7.3kN であった 1PB3 も同様の挙動を示し 履歴にスリップ形状が見られ 最終過程において金物の取り付けに使用したコーチスクリューにせん断破壊を生じていた その影響で金物が土台から外れていた さらに が破断していた ( 図 10b) しかし 最大荷重は 先ほどのより大きく 8.84kN に達した 一方 2PB4 については これも前述の 2 体のと同様の挙動を示し 履歴にスリップ形状が見られ 最終過程において金物の取り付けに使用したコーチスクリューにせん断破壊 ( 図 10c) が生じると共に の芯ブレースに破断が生じた 最大荷重は 9.96kN に達した 1PB2 1PB3 と 2PB4 の全とも 芯ブレースと金物に破断が見られる結果となった 壁倍率は表 5 に掲げる通り 1PB3のが最大値 2.0を示し 2PB4 のは最低の 1.3 となった - 54 -

荷重 (kn) 荷重 (kn) 荷重 (kn) 図 8a 荷重 - 変位曲線 ( 1 PB2) 図 8b 荷重 - 変位曲線 ( 1 PB3) 図 9a 1 PB2 実験前 ( 左 ) 実験後 ( 右 ) 図 9b 1 PB3 実験前 ( 左 ) 実験後 ( 右 ) 図 8c 荷重 - 変位曲線 ( 2 PB4) 図 9c 2 PB4 実験前 ( 左 ) 実験後 ( 右 ) 表 5 試験結果一覧 1PB2 1PB3 2PB4 壁倍率 1.5 2.0 1.3 初期剛性 K (kn/mm) 0.12 0.26 0.19 降伏耐力 Py (kn) 3.61 5.51 6.39 降伏変位 δy (mm) 31.0 21.1 34.4 終局耐力 Pu (kn) 6.40 8.00 8.92 終局変位 δu (mm) 147.3 91.4 183.4 塑性率 μ 2.68 2.99 3.83 構造特性係数 Ds 0.48 0.45 0.39 図 10a 1 PB2 破壊状況図 10b 1 PB3 破壊状況 図 10c 2 PB4 破壊状況 - 55 -

3 体のともブレースの全体座屈は見られなかったことから補剛材剛性は十分であるといえる また 単体の試験結果ではスリップが見られなかったのに対し 木造フレームのにスリップ形状が見られたのは 取り付け金物の剛性およびコーチスクリューの取り付け本数が不十分であったことが原因であると考えられる 3.3 木造フレームの減衰定数と加速度低減率木造フレーム実験を通して得られたそれぞれのの減衰定数と加速度低減率の一覧を表 6 と表 7 に 変形角 - 減衰定数と変形角 - 加速度低減率を図 11 と図 12 に掲げる 柱頭 柱脚部のみを補強した 1 PB2 と 2 PB4 の減衰定数は変形角の進展とともに増大するものの その割合は減少する傾向を示している 一方中央部分にも補強をしている 1 PB3 にこの傾向は見られないことから 木造柱の曲げ剛性の不足により等価減衰定数の増大率が減少したと考えられる このことから柱部分の剛性の増加および取り付け金物の改良により減衰定数の改善はこれ以上に見込まれると考えられる 等価減衰定数 he(%) 加速度低減率 Fh 表 6 等価減衰定数 ( フレーム ) 変形角 (rad) 1PB2 1PB3 2PB4 1/200 4.24 6.39 3.79 1/150 4.98 7.79 4.68 1/100 7.15 11.03 6.53 1/75 8.00 12.00 7.87 1/50 11.13 14.43 8.96 1/30 11.99 19.30 10.34 表 7 加速度低減率 ( フレーム ) 変形角 (rad) 1PB2 1PB3 2PB4 1/200 1.05 0.92 1.09 1/150 1.00 0.84 1.02 1/100 0.87 0.71 0.91 1/75 0.83 0.68 0.84 1/50 0.71 0.65 0.79 1/30 0.68 0.89 0.74 4 まとめ 変形角 (rad) 図 11 変形角 - 等価減衰定数 変形角 (rad) 図 12 変形角 - 加速度低減率 木造住宅用座屈拘束ブレース () のエネ ルギー吸収向上を目的としたブレースの開発を行い 実験を通して検証した結果 以下の知見が得られた (1) アルミ管をナットの一部として使用した は 軸歪が 0.5% 程度で等価減衰定数がおおよそ 20% 加速度低減率 0.5 と優れたエネルギー吸収性能を示した (2) 木造フレーム実験を通し座屈拘束ブレースが全体座屈を生じなかったことから補剛材剛性は十分であった (3) 取り付け金物の性能が不十分なためにフレームの履歴特性がスリップ形状を示した (4) を柱頭から柱脚まで取り付けるタイプのは壁倍率において 1P タイプで - 56 -

2.0 変形角 1/100rad で減衰定数 he が 11% 加速度低減率 Fh が 0.71 と柱頭 柱脚のみを補強した場合と比較し高い性能を示した (5) 柱頭 柱脚部のみを補強したの減衰定数は変形角の進展とともに増大するものの その割合は木造柱の曲げ剛性に影響される (6) 木造用 自体は高いエネルギー吸収性能を示していることから 取り付け金物の改善を行うことにより スリップ履歴の改善が行われより高い性能を有する になりうる可能性が示された 文 1) 吉田 栗山 : 座屈拘束ブレース () を使用した木造フレームの耐震補強 職業能力開発総合大学校東京校紀要第 24 号 PP37-42 2009 年 3 月 2) 吉田 他 : 鉄筋コンクリート補剛材によるアンボンドブレースの必要剛性に関する研究 日本建築学会論文報告集 No.521,PP141-147 1999 年 7 月 3) 吉田 他 : 有限要素法によるアンボンドブレースの接触解析 ( その 1 芯ブレース突起による不均一性がモードの分岐に及ぼす影響 ) 日本建築学会大会学術講演梗概集 C-1 構造 III PP875-876,2006 4) 吉田 栗山 : 座屈拘束ブレースを利用した耐震補強方法の開発 職業能力開発総合大学校東京校紀要第 25 号 PP63-66 2010 年 3 月 - 57 -