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KMMH16 益城 (KiK-net) 益城町宮園 ( 益城町役場 地方公共団体震度計 ( 熊本県 )) 500m 図 3.1 調査経路 (Google Map を利用 ) 4. 調査建築物と被害概要 4.1 調査建築物今回調査した鉄骨造建築物 96 棟の位置を図 4.1 に示す 図中の印は強震観測点である益城町役場と KiK-net 益城を示す 観測点近傍の地区と大きな被害が報告されている地区を中心に 事前に Google Map 及びストリートビュー並びに賃貸住宅の情報等を利用して候補を挙げた上で 調査後に鉄骨造と確定したものを調査建築物として示している 図中の黒色のマークは倒壊又はと判断されたもの ( 判断の方法については 4.2 被害の概要 参照 ) を示し 白色のマークは構造躯体が無被害か 損傷があってもに該当しない比較的軽微なものを示す 図 4.2 に調査建築物の内訳を示す 図 4.2(a) は階数を示したもので 1 階建 28 棟 2 階建 59 棟 3 階建 8 棟 4 階建 1 棟である 図 4.2(b) は用途で分類したもので 店舗 事務所等 34 棟 集合住宅 23 棟 戸建住宅 14 棟 店舗併用住宅 ( 集合住宅との併用を含む )12 棟 倉庫 ( 車庫 工場を含む )12 棟 駐車場 1 棟である なお 調査建築物には 体育館は含まれていない 2

KMMH16 益城 KiK-net 益城町宮園 益城町役場 地方公共 団体震度計 熊本県 500m 図 4.1 調査建築物 全 96 棟 Google Map を利用 4階建 1棟 駐車場 1 1階建 28棟 3階建 8棟 店舗 事務 所等 34棟 倉庫 12棟 店舗併用 住宅 12棟 戸建住宅 14棟 2階建 59棟 (a) 階数 (b) 用途 図 4.2 4 2 集合住宅 23棟 調査建築物の内訳 被害の概要 全体の 96 棟のうち 倒壊は 1 棟 1 は 15 棟 16 である の判断は 被災度区分判定基準 1)に示される柱の残留傾斜角 1/30 を参考にしつつ 調査の範囲で 確認できる被害状況を勘案して判断した 主に現地調査の情報に基づく暫定的な判断であ り 今後の追加調査等により変更される可能性を有している 倒壊やといった構造躯 体への大きな被害の割合は全体の 17 であった 倒壊又はした建築物 16 棟の一覧を図 4.3 に 被害調査結果を次章にまとめて示す 建設年については 国土地理院の航空写真 ウェブサイトの情報 現地でのヒアリングの情報等に基づいて推定を行ったものであり 今後 追加で情報が得られれば変更される可能性がある 3

建築物 01 建設年 1987 年頃 建築物 02 建設年 1971 年 建築物 03 建設年 1980 年 倒壊 建築物 04 建設年 1976 年 建築物 05 建設年 1993 年 建築物 06 建設年 1986 年 建築物 07 建設年 1982 年以 前 建築物 08 建設年 1982 年以 前 建築物 10,11 建設年 2006 年 建築物 12 建設年 1982 年 建築物 13 建設年 1985 年 建築物 14 建設年 1992-1997 年 建築物 15 建設年 2000 年 建築物 16 建設年 2003-2008 年 図 4.3 建築物 09 建設年 1995 年 倒壊又はした建築物 全 16 棟 の一覧 4

5 倒壊又はした鉄骨造建築物の被害調査結果 1 建築物 01 建設年 1987 年頃 倒壊 本建築物は 4 階建ての店舗併用住宅である 角形鋼管柱 200 角 2 階 が使用されてい る 2 階が完全に層崩壊しており 柱梁接合部パネルとダイアフラム間の溶接部で破断が生 じている 写真 5.1.1 写真 5.1.2 左 写真 5.1.3 右 パネルとダイアフラム間の溶接部の破断 5

2 建築物 02 建設年 1971 年 本建築物は 2 階建ての共同住宅である 日の字断面柱 以下 日の字柱と呼ぶ 250 角が 使用されている 1 階が大きく傾いており 柱の残留傾斜角は 23 度である 写真 5.2.1 写真 5.2.2 梁端破断 写真 5.2.3 梁下フランジ添え板の孔欠損部破断 3 建築物 03 建設年 1980 年 本建築物は 3 階建ての住宅である 日の字柱と H 形柱が混在して使用されている 1 階 が大きく傾いており 柱の残留傾斜角は 8 度である 柱脚部にアンカーボルトの伸びが生 じている 写真 5.3.1 写真 5.3.2 6 柱脚部の損傷状況

4) 建築物 04( 建設年 1976 年 ): 本建築物は 1 階鉄骨造 2 階木造 (2 階はヒアリングによる情報 ) の店舗併用住宅である 日の字柱 200 角が使用されている 1 階が大きく傾いており 柱の残留傾斜角は 5 度である ヒアリングによると建設年は 40 年程前とのことであった 写真 5.4.1 5) 建築物 05( 建設年 1993 年 ): 本建築物は 2 階建ての店舗併用住宅である 角形鋼管柱が使用されている 1 階が大きく傾いており 柱の残留傾斜角は 30.5 度である ( 写真で ) 左隣の倒壊した RC 造が寄りかかり力を受けて傾斜したものと推定される 写真 5.5.1 7

6) 建築物 06( 建設年 1986 年 ): 本建築物は 2 階建ての店舗である 角形鋼管柱 250 角が使用されている 1 階が大きく傾いており 柱の残留傾斜角は 8.5 度である 柱の局部座屈 柱とダイアフラム間の溶接部の破断が生じている 写真 5.6.1 写真 5.6.2 柱の局部座屈 ダイアフラム 柱 写真 5.6.3( 左 ) 写真 5.6.4( 右 ) 柱とダイアフラム間の溶接部の破断 8

7 建築物 07 建設年 1982 年以前 本建築物は平屋の車庫である トラス梁の下弦材の破断が生じている 応急危険度判定 によると 建物全体の傾斜 柱の座屈 柱脚の破損 梁継手の破壊が生じているとのこと であった 写真 5.7.1 8 建築物 08 建設年 1982 年以前 本建築物は平屋の倉庫である 大きく傾いており 柱の残留傾斜角は 7 度である 柱脚 部のアンカーボルトの伸び コンクリートの側方破壊が生じている 写真 5.8.1 写真 5.8.2 9 柱脚部の損傷状況

9) 建築物 09( 建設年 1995 年 ): 本建築物は 2 階建ての共同住宅である 角形鋼管柱 200 角が使用されている 梁せいは 300 である 1 階が大きく傾いており 柱の残留傾斜角は 3 度である 梁端破断が生じている また 柱梁接合部パネルとダイアフラム間の溶接部で破断が生じている 写真 5.9.1 写真 5.9.2 梁端破断 写真 5.9.3( 左 ) パネルとダイアフラム間の溶接部の破断 写真 5.9.4( 右 ) パネルとダイアフラム間の溶接部の破断 ( 拡大 ) 10

10 11 建築物 10 11 建設年 2006 年 本建築物 10 11 は共に同じタイプの 2 階建ての共同住宅である 大きく傾いており 柱 の残留傾斜角は 4.5 度である 建築物 10 で測定 ブレース ターンバックル の破断 座屈による著しいたわみが それぞれ建築物 10 及び 11 に生じている 宅地擁壁部分が崩 壊しており それが建築物の損傷に何らかの影響を及ぼした可能性がある 建築物 10 建築物 11 写真 5.10/11.1 建築物 11 写真 5.10/11.2 建築物 10 11 建築物 10 建築物 11 写真 5.10/11.3 宅地擁壁部分の崩壊

12 建築物 12 建設年 1982 年 本建築物は 2 階建ての店舗である 日の字柱 200 角が使用されている 梁せいは 250 で ある 1 階が大きく傾いており 柱の残留傾斜角は 17.5 度である 柱の破断 梁端破断 柱の局部座屈が生じている 写真 5.12.1 写真 5.12.3 写真 5.12.2 写真 5.12.4 梁端破断 柱の破断 柱の局部座屈 13 建築物 13 建設年 1985 年 本建築物は 3 階建ての共同住宅である 日の字柱 175 角が使用されている 1 階が大き く傾いており 柱の残留傾斜角は 9 度である 写真 5.13.1 写真 5.13.2 12 柱の傾斜

14) 建築物 14( 建設年 1992-1997 年 ): 本建築物は平屋の店舗である 角形鋼管柱 150 角が使用されている 大きく傾いており 柱の残留傾斜角は 10 度である 梁端溶接部の破断 柱梁接合部パネルとダイアフラム間の溶接部の破断が生じている 写真 5.14.1 写真 5.14.2 柱の傾斜 写真 5.14.3 梁端溶接部の破断 写真 5.14.4 パネルとダイアフラム間の 溶接部の破断 15) 建築物 15( 建設年 2000 年 ): 本建築物は 3 階建ての住宅である 角形鋼管柱 250 角 150 角 ( 間柱 ) 溝形鋼ブレース 150 75 が使用されている 宅地の地盤変状が生じている 1 階に傾斜が生じている ブレースはほぼ無損傷である 柱脚部にベースモルタルの破損 アンカーボルトの伸びが生じている 柱頭部に損傷が生じている可能性があるが 状況は不明である 1 階のブレースの配置に平面的な偏りがあり 地震時にねじれが生じたことで ブレースの無い入口側の柱脚の損傷や柱の残留傾斜角が相対的に大きくなったと思われる また 宅地の地盤変状が建築物の傾斜等に何らかの影響を及ぼした可能性がある 13

写真 5.15.1 写真 5.15.3 写真 5.15.2 ブレースの状況 ほぼ無損傷 写真 5.15.4 柱脚部の損傷状況 宅地の地盤変状 16 建築物 16 建設年 2003-2008 年 本建築物は 2 階建ての店舗である 角形鋼管柱 150 角 100 角 間柱 が使用されてい る 1 階が大きく傾いており 柱の残留傾斜角は 5 度である 柱に局部座屈 2 階プレハブ の柱脚部でボルト破断が生じている 写真 5.16.1 写真 5.16.2 14 柱の傾斜

写真 5.16.3 柱の局部座屈写真 5.16.4 柱脚部ボルト破断 6. まとめ本報告は 平成 28 年 (2016 年 ) 熊本地震で震度 7 を観測した益城町宮園観測点近傍の安永 宮園 木山 辻の城 寺迫地区における鉄骨造建築物の被害調査結果を速報としてまとめたものである 調査した鉄骨造建築物の総数は 96 棟である 調査の結果 倒壊又はした鉄骨造建築物の総数は 16 棟 ( 倒壊 1 棟 15 棟 ) その割合は 17% であった また 倒壊又はした鉄骨造建築物は 次の特徴のいずれかを有するものであった 特徴 1) 建設年が 1980 年以前と推定されるもの又は古いタイプの部材を用いたもの 特徴 2) 隣の倒壊した建築物による力の作用 宅地擁壁部分の崩壊等の当該建築物以外の周辺状況による何らかの影響があったと推定されるもの 特徴 3) 溶接部等で破断が生じていたものなお 倒壊又はした建築物と特徴 1),2),3) との対応関係は表 6.1 のとおりであった ここで 建築物の番号に * 印が付いているものは 建設年が新耐震基準以降 (1981 年以降 ) と判明している建築物である 表 6.1 倒壊又はした建築物と特徴 1),2),3) との対応関係建築物 01* 02 03 04 05* 06* 07 08 09* 10* 11* 12* 13* 14* 15* 16* 特徴 1) 特徴 2) 特徴 3) おわりに 本地震で亡くなられた方及びそのご遺族に対し 深く哀悼の意を表します また 被災 された方々に心からお見舞いを申し上げるとともに 一刻も早い復興を祈念いたします 参考文献 1) 震災建築物の被災度区分判定基準及び復旧技術指針改訂委員会 : 震災建築物の被災度区分判定基準および復旧技術指針 ( 一財 ) 日本建築防災協会 2015 15

< 更新履歴 > 1) 8 月 24 日に 4. 調査建築物と被害概要 及び 6. まとめ において 構造種別の確定作業の結果を踏まえた棟数の変更 並びに 4. 調査建築物と被害概要 及び 5. 倒壊又はした鉄骨造建築物の被害調査結果 において 建設時期の確定作業の結果を踏まえた建設年の変更を行いました 16