CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

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[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2

に相当する金額を反映して分割対価が低くなっているはずですが 分割法人において移転する資産及び負債の譲渡損益は計上されませんので 分割法人において この退職給付債務に相当する金額を損金の額とする余地はないこととなります (2) 分割承継法人適格分割によって退職給付債務を移転する場合には 分割法人の負債

別表五(一) 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書

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「平成20年版 法人税申告書の記載の手引」別表五(一)

PG_第3期期末配当の取扱いに関するQA

第 9 章純資産の会計 問題 43 問題 43 資本剰余金の振替え 借方科目金額貸方科目金額 次の独立した取引の仕訳を示しなさい ⑴ 資本準備金 2,000,000 円とその他資本剰余金 800,000 円を資本金とすることを株主総会で決議し その効力が生じた ⑵ 資本金 500,000 円を資本準

実務特集1. 寄附修正 Ⅰ はじめに グループ法人税制 100% グループ内の法人間での譲渡損益の繰り延べ 100% グループ内の法人間の寄附 ( 以上 2010 年 11 月号 ) 100% グループ内の法人間の寄附 ( 寄附修正 ) 支配関係 完全支配関係の判定 100% グループ内の法人のステ

余金の額の減少に伴うものを除きます 以下同じです ) 若しくは利益の配当又はいわゆる中間配当 ( 資本剰余金 の額の減少に伴うものを除きます 以下同じです ) を した場合には その積立金の取崩額を 減 2 に記載するとともに 繰越損益金 26 の 増 3 の金額に含まれることになります なお この

【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

Q. 確定申告は必要ですか? A. 今回の配当によるみなし譲渡損益が特定口座の計算対象とならない場合 または源泉徴収の無い特定口座や一般口座でお取引いただいている場合につきましては 原則として確定申告が必要になります 申告不要制度の適用可否を含め 株主の皆様個々のご事情により対応が異なりますので 具

完全子会社同士の無対価合併 1. 会社法の規制 100% 子会社同士が合併する場合は 兄弟合併とも言われます 実務上は新設合併はマイナーで 法律上の許認可の関係で一方が存続する吸収合併が一般的です また 同一企業グループ内での組織再編成の場合は 無対価合併が一般的です 簡易合併に該当する場合は 存続

株主各位 証券コード 7022 平成 29 年 6 月 23 日 大阪市北区中之島三丁目 3 番 23 号 取締役社長上田 孝 第 6 期期末配当の税務上の取扱いに関するご説明 拝啓日頃より格別のご高配を賜り厚く御礼申しあげます さて 当社は 平成 29 年 6 月 23 日開催の第 6 期定時株主

とともに 繰越損益金 26 の 増 3 の金額に含まれることになります なお この場合に会社法第 445 条第 4 項の規定により積み立てた剰余金の配当に係る利益準備金の額は 利益準備金 1 の 増 3 に記載します ⑸ 平成 22 年 10 月 1 日以後に適格合併に該当しない合併により完全支配関

10 第 1 章 1 株式会社の設立 会社法 445 条 1 項 [ 株式会社の資本金の額 ] 株式会社の資本金の額は この法律 [ 会社法 ] に別段の定めがある場合を除き ( memo. ) 設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする 株式会社

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繰越損益金 26 欄記載要領注意事項 定により積み立てた剰余金の配当に係る利益準記載した金額を 当期の備金の額は 利益準備金 1 の 増 3 に記載増減 の 増 3 に 印します を付して記載します ( そ ⑷ 平成 22 年 10 月 1 日以後に適格合併に該当しの積立額は 翌期においない合併によ

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東京電力エナジーパートナー

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第1章 財務諸表

投資主の皆様へ 平成 29 年 3 月 マリモ地方創生リート投資法人 第 1 期分配金の税務上の取扱いに関するご説明 拝啓平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます さて 本投資法人は 平成 29 年 2 月 14 日開催の役員会において 第 1 期 ( 平成 28 年 12 月期 ) の (A)

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平成20年2月

貸借対照表 平成 28 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 資産の部 負債の部 流動資産 (63,628,517) 流動負債 (72,772,267) 現金及び預金 33,016,731 買掛金 379,893 売掛金 426,495 未払金 38,59

債務超過会社の吸収合併 1. 会社法の規制債務超過会社を消滅会社とする合併は 旧 商法では 資本充実の原則 に反するとして認められていませんでした つまり 合併登記が受理されませんでした このため実務上は 不動産や有価証券の含み益を計上するか営業権を認識して債務超過を解消する あるいは債務超過の子会

目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

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営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

財務諸表 金融商品取引法第 193 条の 2 第 1 項の規定に基づき 当社の貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書及び附属明細表については 有限責任あずさ監査法人の監査証明を受けております 貸借対照表 科目 ( 資産の部 ) 流動資産 2017 年度末 2018 年 3 月 31 日現在 (

野村アセットマネジメント株式会社 2019年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

営業報告書

企業会計の利益 法人税法上の所得金額 売上原価販売費一般管理費営業外費用特別損失 売上 営業外収益特別利益 損金の額原価費用損失の額 益金の額 ( 収益の額 ) 当期純利益所得の金額 2 益金の額に算入すべき金額とは何か益金の額に算入すべき金額とは 法人税法の規定や他の法令で 益金の額に算入する 又

第 151 回日商簿記 2 級解答解説 第 1 問 実教出版株式会社 解答 仕 訳 借方科目金額貸方科目金額 現 金 8,500,000 車両減価償却累計額 760,000 1 商 品 6,100,000 本 店 17,640,000 車 両 3,800,000 2 その他有価証券 2,000,00

科目 期別 損益計算書 平成 29 年 3 月期自平成 28 年 4 月 1 日至平成 29 年 3 月 31 日 平成 30 年 3 月期自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 ( 単位 : 百万円 ) 営業収益 35,918 39,599 収入保証料 35,765 3

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

【表紙】

BS_PL簡易版(平成28年度).xlsx

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自己株式とみなし配当 1. 自己株式取得の法務自己株式は 会計上は資本取引として認識し 純資産の部から取得価額を控除する形式で表示します ( 自己株式会計基準 7) 一方税務上では 発行法人の貸借対照表と自社株式の取引価額次第で みなし配当課税と所得税の源泉徴収が必要な場合があります 自己株式の取得

2019 年 8 月 22 日 各位 インフラファンド発行者名 東京インフラ エネルギー投資法人 代表者名 執行役員 杉本啓二 ( コード番号 9285) 管理会社名 東京インフラアセットマネジメント株式会社 代表者名 代表取締役社長 永森利彦 問合せ先 取締役管理本部長 真山秀睦 (TEL: 03

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. 減価償却の仕組みを理解する 60 定率法 定額法など減価償却の方法を理解しましょう. 有価証券の整理をする 68 有価証券一覧表に 購入売却のつど その取引内容を記載していくと 決算業務の際に便利です. 受取配当金を集計する 78 有価証券の整理後 受取配当金と源泉所得税を集計し 申告書作成の準

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計算書類 第 60 期 自至 平成 29 年 7 月 1 日平成 30 年 6 月 30 日 協和医科器械株式会社

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はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

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第 3 期決算公告 (2018 年 6 月 29 日開示 ) 東京都江東区木場一丁目 5 番 65 号 りそなアセットマネジメント株式会社 代表取締役西岡明彦 貸借対照表 (2018 年 3 月 31 日現在 ) 科目金額科目金額 ( 単位 : 円 ) 資産の部 流動資産 負債の部 流動負債 預金

第 36 期決算公告 浜松市中区常盤町 静岡エフエム放送株式会社代表取締役社長上野豊 貸借対照表 ( 平成 30 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 資産の部 負債の部 Ⅰ. 流 動 資 産 909,595 Ⅰ. 流 動 負 債 208,875 現金及び預金 508,

 

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

第 76 期 計算書類 自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 大泉物流株式会社

損金経理と積立金経理の違い ( 圧縮超過額がない場合の基本構造 ) 例 A 社は 50の国庫補助金を得て 100で機械を取得した なお A 社の経常利益は 100 である * 仕訳の違い ( 単位 : 百万円 ) 損金経理積立金経理 補助金受贈と機械取得時の仕訳 ( 両者とも同じ ) 現金預金 50

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

 

損益計算書 ( 自平成 27 年 4 月 1 日至平成 28 年 3 月 31 日 ) ( 単位 : 百万円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 2,491 営 業 費 用 2,418 営 業 利 益 72 営 業 外 収 益 受 取 利 息 1,047 固定資産賃貸収入 497 そ の 他 5 1

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第 13 章 財務諸表入力マニュアル 平成 30 年 4 月 2 日公開版

第一法基通改正7

計 算 書 類

平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

収益事業開始届出 ( 法人税法第 150 条第 1 項 第 2 項 第 3 項 ) 1 収益事業の概要を記載した書類 2 収益事業開始の日又は国内源泉所得のうち収益事業から生ずるものを有することとなった時における収益事業についての貸借対照表 3 定款 寄附行為 規則若しくは規約又はこれらに準ずるもの

2018年12月期.xls

サンプル集

プルータスセミナー 新株予約権の税務について 株式会社プルータス コンサルティング 平成 18 年 12 月 7 日

法人税 faq

貸借対照表 平成 27 年 3 月 31 日現在 会社名 : NHK 営業サービス株式会社 資産の部負債の部 ( 単位 : 千円 ) 科目金額科目金額 流動資産 8,930,928 流動負債 6,339,212 現金及び預金 2,615,847 買掛金 56 売掛金 5,927,917 短期借入金

① 事業報告書等改正通知(様式)

財務諸表 金融商品取引法第 193 条の 2 第 1 項の規定に基づき 当社の貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書及び附属明細表については 有限責任あずさ監査法人の監査証明を受けております 貸借対照表 科目 ( 資産の部 ) 流動資産 平成 27 年度末平成 28 年 3 月 31 日現在

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日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

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(1) 連結貸借対照表 ( 添付資料 16 ページ ) (3) 連結株主資本等変動計算書 ( 添付資料 28 ページ ) 6. 個別財務諸表 (1) 貸借対照表 ( 添付資料 31 ページ ) (3) 株主資本等変動計算書 以上 2

第4期 決算報告書

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Transcription:

はしがき 会社の純資産の部は 株主が会社に拠出した払込資本の部分と利益の内部留保の部分で構成されています 法人税においては 前者を 資本金等の額 後者を 利益積立金額 と定義するとともに 両者を厳格に区分 ( 峻別 ) しています 様々な理由で 会社が株主に金銭などを交付した際に 株主に対する課税を適正に行うためです 資本金等の額を減らすためには 会社から株主へ金銭などを交付しなければなりません そのため 減資 ( 無償減資 ) しただけでは 資本金の額は減少しますが 資本金等の額は減少しません そこで本書では 資本金等の額が どのような取引でどれだけ減少するかを中心に 資本金等の額に影響を及ぼす取引について 具体的な事例を用いて できるだけわかりやすく解説することにしました その際 資本金等の額が変動する取引のうち 資本の払戻しや自己株式の取得を解説の対象とし 合併 会社分割 株式交換 株式移転などのいわゆる組織再編に伴う資本金等の額の変動は説明の対象外としました また 住民税均等割額の判定基準は 従前は法人税で定義している資本金等の額とされていましたが 平成 27 年度税制改正で改正されました 改訂版の出版に際し これについては第 5 章を追加し 概説しました 本書が 1 純資産の部について 税務がどのような考え方で取扱いを整理しているか理解したい方 2 どのような取引で資本金等の額が増減するか知りたい方 3 資本金等の額の増減を検討している方などのお役に立てば幸いです

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定... 11 Q1-5 利益積立金額についての政令の規定... 14 第 2 章資本金の額は減少するが 資本金等の額と利益積立金額は減少しない取引 減資 ( その他資本剰余金の配当を伴わない減資取引 ) Q2-1 会社法で減資の何が変わったか... 17 Q2-2 資本金の額は減少するが 資本金等の額と利益積立金額は減少しない取引... 19 Q2-3 減資の別表調整... 21 Q2-4 減資による欠損填補と損失処理... 23 Q2-5 減資による欠損填補と損失処理の別表調整... 25 第 3 章資本金の額 資本金等の額 利益積立金額が減少する取引 減資 ( その他資本剰余金の配当を伴う減資取引 ) Q3-1 資本金の額も 資本金等の額も 利益積立金額も減少する取引... 29 Q3-2 その他資本剰余金を原資とした配当金... 32 Q3-3 資本の払戻し額の一部がなぜみなし配当になるか... 33 Q3-4 何を基準に資本の払戻し額は 2 つに区分するか... 34 Q3-5 資本の払戻し額の区分に関する法人税法施行令第 8 条 第 9 条の規定... 35 Q3-6 その他資本剰余金の配当を伴う減資取引と別表調整... 37 Q3-7 利益積立金額がゼロ又はマイナスの会社の資本の払戻し... 40 Q3-8 その他資本剰余金が原資の配当金を受け取った会社の会計処理と税務処理... 41 第 4 章資本金の額は減少しないが 資本金等の額と利益積立金額が減少する取引 自己株式の取得 Q4-1 資本金の額は減少しないが 資本金等の額と利益積立金額が減少する取引... 44 Q4-2 自己株式の取得対価の区分に関する法人税法施行令第 8 条 第 9 条の規定... 46 Q4-3 自己株式の取得と別表調整... 47 Q4-4 自己株式の消却... 50 Q4-5 自己株式の処分... 53 Q4-6 自己株式の取得 消却 減資... 55 Q4-7 株式の発行会社に株式を売却した会社の会計処理と税務処理... 56 Q4-8 自己株式取得の税務処理 ( 原則的処理と特例的処理 )... 58 Q4-9 いわゆるグループ法人税制が適用される場合... 59 第 5 章法人税における資本金等の額と住民税における資本金等の額の相違点 Q5-1 住民税における資本金等の額... 62 Q5-2 住民税均等割額の判定基準... 64

第 1 章 法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分 Q 法人税では 純資産の部をどのような目的で どのように区分していますか A 株主からの出資額と利益の留保額に峻別するため 1 資本金等の額 と 2 利益積立金額 の2つに 厳格に区分しています 1 資本金等の額と利益積立金額 法人税では 資本金等の額 について 法人が株主から出資を受けた金額として政令で定める金額 と定義し 具体的には 法人税法施行令第 8 条第 1 項で規定しています また 利益積立金額 について 法人の所得の金額で留保している金額として政令で定める金額 と定義し 具体的には 法人税法施行令第 9 条第 1 項で規定しています 2 資本と利益の峻別会社は 株主から出資を受けるだけではなく 様々の理由で株主に金銭などを交付します その際 株主に対する課税を適正に行うには 株主から出資を受けた部分の還流なのか それとも利益の留保額の還元なのかを 正しく判定することが重要です なぜなら 出資を受けた部分の還流は 株主からすれば投下資本の回収です それに対して 利益留保額の還元は 配当所得となります そのため 純資産の部を 資本金等の額 ( 株主の出資部分 ) と利益積立金額 ( 利益の留保部分 ) に峻別しておくことが必要となります 3 別表五 ( 一 ) 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書 資本金等の額と利益積立金額を峻別するため 法人税の申告様式に別表五 ( 一 ) が用意されています 別表五 ( 一 ) は 2 つの表から構成されています 1 上半分が Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書 2 下半分が Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書 です Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書 では 利益積立金額の期中の増減額のベースとなる金額が別表四の留保額で把握されることを前提に 別表四の留保額と連動する方式で 期末の利益積立金額が集計できるよう工夫されています 2

第 1 章 法人税における純資産の部の取扱い Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書 では 資本金の額と資本金等の額が集計できるよう工夫されています ( 別表五 ( 一 )) 区 分 利益準備金 1 Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書期首現在当期の増減差引翌期首現在利益積立金額減増利益積立金額 1 2 3 4 繰越損益金 26 差引合計額 31 区 分 資本金 32 資本準備金 33 Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書期首現在当期の増減差引翌期首現在資本金等の額減増資本金等の額 1 2 3 4 差引合計額 36 3

Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い ) 会計は 純資産の部を資本金 資本剰余金 利益剰余金の3つに区分してい Q ます 会計の区分と法人税の区分は どのように対応していますか A 基本的には 次の関係が成立します 資本金と資本剰余金の合計額 = 資本金等の額利益剰余金 = 利益積立金額しかし 上記の関係が成立しないケースがあります 次の2 つのケースです 1 B/Sに計上されている資産 負債の帳簿価額と税務における資産 負債の帳簿価額が一致しないケース 2 会計と税務で資産 負債の帳簿価額は一致しているが 株主資本の内訳に対する考え方が会計と税務で一致しないケース Ⅰ Ⅰ 上記 1 のケース 基本的には B/Sに計上されている利益剰余金の合計額と利益積立金額は一致します ただし B/Sに計上されている資産や負債の帳簿価額と税務における資産や負債の帳簿価額とが一致しない場合は 利益剰余金の合計額と利益積立金額とは一致しません 事例 X 社は 決算で減価償却費を 15 計上した結果 B/S 上の機械の帳簿価額は 85 に減少した ただし 税務における償却限度額は 10 で 税務上の機械の帳簿価額は 90 で 会計と税務で帳簿価額が一致しなくなった 会計上の B/S 税務上の B/S 機械 85 資本金 10 機械 90 資本金等の額 10 その他資産 915 利益剰余金 990 その他資産 915 利益積立金額 995 合計 1,000 合計 1,000 合計 1,005 合計 1,005 税務上の機械の帳簿価額は 90 となります その結果 利益積立金額は 995 となります 利益積立金額 (995)= 利益剰余金の合計額 (990)+ 償却超過額 (5) 4

第 1 章 法人税における純資産の部の取扱い 事例 X 社は 確定申告で納付すべき税金 100 を B/S に未払法人税等で計上した ( 内訳 法人税 70 住民税 15 事業税 15) 税務では 事業税の未払計上は認められない 会計上の B/S 税務上のB/S 未払法人税等 100 未払法人税等 85 資産 1,000 資 本 金 10 資産 1,000 資本金等の額 10 利益剰余金 890 利益積立金額 905 合計 1,000 合 計 1,000 合計 1,000 合 計 1,000 法人税では 法人税と住民税を未払計上して利益積立金額を算出します 事業税の未払計上は認められません 事業税は納税義務が確定した時点 ( 申告書提出時 ) で損金の額に算入します 税務上の負債 ( 未払法人税等 ) の帳簿価額は 85 となります その結果 利益積立金額 905 となります 利益積立金額 (905)= 利益剰余金の合計額 (890)+ 事業税の未払計上額 (15) Ⅰ Ⅱ 上記 2 のケース 事例 X 社は 株主総会の決議を経て 繰越利益剰余金 100 を資本金に組み入れ 資本金を 300 とした ( いわゆる 利益の資本組入れによる無償増資を行った ) 1 会計処理 会計では 増資の効力が発生した日に 次のように処理します ( 借 ) 繰越利益剰余金 100 ( 貸 ) 資本金 100 X 社のB/Sは 次のように変化します 増資前 B/S 増資後 B/S 1. 資本金 200 1. 資本金 300 2. 資本剰余金 0 2. 資本剰余金 0 資産合計 1,000 3. 利益剰余金 資産合計 1,000 3. 利益剰余金 利益準備金 50 利益準備金 50 繰越利益剰余金 750 繰越利益剰余金 650 5