B型肝炎ウイルス検査

Similar documents
B型肝炎ウイルス検査

針刺し切創発生時の対応

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

2 参考 検体投入部遠心機開栓機感染症検査装置 感染症検査装置 (CL4800)

< はじめに > 目的 本マニュアルは 県内の医療従事者等が安心して診療できる体制を推進することを目的とし 埼玉県内における医療機関 歯科医療機関や衛生検査所等で従事する医療従事者等が 万が一 針刺し切創などで血液 体液を曝露してしまった場合に緊急的に対応するための手順を示すものである マニュアルを

目次 contents 1. はじめに 3 2. 針刺しフローチャート ( 簡易版 ) 4 針刺しフローチャート ( 詳細版 ) 5 3.HIV 曝露フローチャート 6 4. 職業的曝露の実際 7 採血および感染症検査に関する同意書 8 5. 針刺し対応マニュアル HIV 編 < 患者が HIV 抗

42 HBs 抗原陽性で HBe 抗原陰性の変異株が感染を起こした場合は, 劇症肝炎を起こしやすいので,HBs 抗原陽性 HBe 抗原陰性血に対しても注意が必要である. なお, 透析患者では, 感染発症時にも比較的 AST(GOT),ALT(GPT) 値が低値をとること,HCV 抗体が出現しにくいこ

第 4 章感染患者への対策マニュアル ウイルス性肝炎の定義と届け出基準 1) 定義ウイルス感染が原因と考えられる急性肝炎 (B 型肝炎,C 型肝炎, その他のウイルス性肝炎 ) である. 慢性肝疾患, 無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない. したがって, 透析室では HBs

も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

, , & 18

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

約 60 分で 夜間 休日は迅速法により約 30 分で結果が出る 後日の診療のため 体制が許す限り 速やかに HIV 抗体 HBs 抗原 抗体 HCV 抗体の通常測定を行う 2. 各病原体への対応 1)HIV ヒト免疫不全ウイルス ( 図 2) 事故直後からの抗 HIV 薬服用が感染防止に有効である

B型肝炎ウイルス検査

<4D F736F F D B638E968A CF88F58F4390B394C5816A817A E F1816A8D8793AF88CF88F589EF5F F8CF6955C94C55F2E646F63>

(Microsoft Word - H271228\211\374\222\371\221\3462\217\315\221S)

日産婦誌58巻9号研修コーナー

(Microsoft Word - H29.1.4\211\374\222\371\221\3462\217\315 - HP\225\317\212\267\227p)

Transfusion-Transmitted Hepatitis Verified from Haemovigilance and Look-back Study

重症急性呼吸器症候群 (SARS) 削除. 新興感染症対策を Xに新設. 5. ウエストナイル熱 空気感染する可能性があり, かつパンデミッ これらは改定版 2 刷発行当時 (2004 年 ), クになった際の透析施設の対応を Xに移行. 新興 再興感染症として問題とされてい 4. ウ

(案の2)

平成20 年9月平成 20 年 ₉ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 509 号付録 ) その結果がまとめられたことから 同月 17 日付けで 輸血療法の実施に関する指針 の一 部改正を行い通知しています 輸血前後の感染症マーカー検査の必要性 ( 指針改正箇所を抜粋 ) 本症は早ければ輸血

実践!輸血ポケットマニュアル

試 プロゲステロン IVF-プロゲステロン 低値の特異性が向上し 交差反応が低減される改良試薬へ変更いたします ( 試薬は販売中止となります ) 併せてプロゲステロンの基準値を再設定させていただきます (IVF- プロゲステロンは基準値を設定しており

遡及調査にて77日前の献血時のHBVウイルス血症が確認できた急性B型肝炎の一例

両面印刷推奨 <4 種ウイルス疾患 ( 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ) フローチャート> 医療機関の記録または母子手帳でワクチンを接種したことが A B C 2 回確認できる 1 回確認できる 全く確認できない D または E のどちらかを選ぶ D E 前回接種より少なくとも 1 ヶ月以上あけ

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

, , & 18

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

Microsoft PowerPoint - 指導者全国会議Nagai( ).ppt

<4D F736F F D F78F4390B394C5817A916B8B7992B28DB8834B B91CC94BD896694C5816A2E646F63>

免疫学的検査 >> 5F. ウイルス感染症検査 >> 5F560. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時

<4D F736F F D204E AB38ED2976C90E096BE A8C9F8DB88A B7982D1928D88D38E968D >

検査項目情報 水痘. 帯状ヘルペスウイルス抗体 IgG [EIA] [ 髄液 ] varicella-zoster virus, viral antibody IgG 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5F

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E301. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 イ ヘパリンナトリウム ( 緑 ) 血液 5 ml 全血 検体ラベル ( 単項目オー

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

医療安全対策 医療安全のため 高血圧と歯科診療上の注意 必要な問診事項について確認を行った 下記についてすぐ対応できるか確認した 1 血圧測定など 2 緊急時の対処 3 必要な薬剤の準備 4 その他 患者さんへの歯科診療上の注意事項 特に外科処置時

検査項目情報 6475 ヒト TARC 一次サンプル採取マニュアル 5. 免疫学的検査 >> 5J. サイトカイン >> 5J228. ヒトTARC Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital Ver.6 thymus a

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

Microsoft Word - <原文>.doc

耐性菌届出基準

B型肝炎ウイルスのキャリアで免疫抑制・化学療法を受ける患者さんへ

全な生殖補助医療を含めて, それぞれの選択肢を示す必要がある. 3 種類の HIV 感染カップルの組み合わせとそれぞれの対応 1. 男性が HIV 陽性で女性が陰性の場合 体外受精この場合, もっとも考慮しなければいけないことは女性への感染予防である. 上記のように陽性である男性がすでに治療を受けて

院内感染対策マニュアル

<4D F736F F F696E74202D208B678FCB8E9B D C982A882AF82E98AB490F5975C966891CE8DF482CC8A B8CDD8AB B83685D>

第 88 回日本感染症学会学術講演会第 62 回日本化学療法学会総会合同学会採択演題一覧 ( 一般演題ポスター ) 登録番号 発表形式 セッション名 日にち 時間 部屋名 NO. 発表順 一般演題 ( ポスター ) 尿路 骨盤 性器感染症 1 6 月 18 日 14:10-14:50 ア

Title

医療事故防止対策に関するワーキング・グループにおいて、下記の点につき協議検討する

変更一覧表 変更内容新現備考 Peak 50~60 Trough 4 未満 Peak 20.0~30.0 Trough 8.0 以下 アミカシン 静注投与後 1 時間 Trough 1 未満 Peak 4.0~9.0 Trough 2.0 以下 トブラマイシン 静注投与後

Microsoft Word _ソリリス点滴静注300mg 同意説明文書 aHUS-ICF-1712.docx

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

検査項目情報 P-ANCA Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G552.P-ANCA Ver.7 perinucl

名称未設定

情報提供の例

2016 年 12 月 7 日放送 HTLV-1 母子感染予防に関する最近の話題 富山大学産科婦人科教授齋藤滋はじめにヒト T リンパ向性ウイルスⅠ 型 (Human T-lymphotropic virus type 1) いわゆる HTLV-1 は T リンパ球に感染するレトロウイルスで 感染者

透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

Microsoft Word - ③中牟田誠先生.docx

インフルエンザ(成人)

B型平成28年ガイドライン[5].ppt

Ⅱ 症候性胎内 CMV 感染症 妊娠初期の CMV 初感染の場合 症候性胎内 CMV 感染症が発生するリスクが高い 再感染例でも異なる CMV 株に感染すると症候性胎内 CMV 感染症が発生する可能性 があると考えられている CMV が胎内で感染する頻度は 全出生の 0.4~1% であり そのうち

<4D F736F F F696E74202D20819F B92935F C982A882AF82E98C8C897491CC C98AD682B782E98E7B9

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

審査結果 平成 26 年 2 月 7 日 [ 販売名 ] 1 ヘプタバックス-Ⅱ 2 ビームゲン 同注 0.25mL 同注 0.5mL [ 一般名 ] 組換え沈降 B 型肝炎ワクチン ( 酵母由来 ) [ 申請者名 ] 1 MSD 株式会社 2 一般財団法人化学及血清療法研究所 [ 申請年月日 ]

検査項目情報 1171 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090. トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブユニット ) トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブ

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 5. 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G010. 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク

資料1-1 HTLV-1母子感染対策事業における妊婦健康診査とフォローアップ等の状況について


1. ウイルス性肝炎とは ウイルス性肝炎とは 肝炎ウイルスに感染して 肝臓の細胞が壊れていく病気です ウイルスの中で特に肝臓に感染して肝臓の病気を起こすウイルスを肝炎ウイルスとよび 主な肝炎ウイルスには A 型 B 型 C 型 D 型 E 型の 5 種類があります これらのウイルスに感染すると肝細胞

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

PowerPoint Presentation

検査項目情報 抗 SS-A 抗体 [CLEIA] anti Sjogren syndrome-a antibody 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5G076 分析物 抗 SS-A 抗体 Departme

医療機関における診断のための検査ガイドライン

詳細 下記項目におきまして 所要日数を変更させていただきます 一部の項目では ご依頼曜日により所要日数が延長となりますが ご了承ください その他の検査内容に変更はありません β- トロンボグロブリン (β-tg) 2~6( 日 ) 2~4( 日 ) 血小板第 4 因子 (PF

妊婦甲状腺機能検査の実施成績 東京都予防医学協会母子保健検査部 はじめに て乾燥させたろ紙血液を検体とする 検体は本会の 妊婦の甲状腺機能異常による甲状腺ホルモンの 過不足は 妊娠の転帰に影響を与えるばかりでなく 代謝異常検査センターに郵送される 2 検査項目と検査目的および判定基準 生まれてくる子

No28023

国立感染症研究所血液 安全性研究部 HBV-DNA 国内標準品及び HIV-RNA 国内標準品の力価の再評価のための共同研究 1. 背景と目的血液製剤のウイルス安全性の確保対策として実施されている原料血漿と輸血用血液のウイルス核酸増幅試験 (NAT) のための HCV HBV 及び HIV の国内標

医療廃棄物処理について ー勉強会-

AIDS IS NOT OVER -エイズはまだ終わっていない- 日本の HIV 流行の状況 2016 年の新規 HIV 感染者 エイズ患者報告数は 1,440 件で 過去 9 位となりました 2015 年と比べて 新規 HIV 感染者報告数はやや減少 新規エイズ患者報告数は増加しました 感染経路と

<4D F736F F D D D4F914F8E7388E38E7489EF20906A8E6882B591CE899E837D836A B E646F6378>

スライド 1

検査のタイミング ご自分の生理 ( 月経 ) 周期から換算して 次の生理 ( 月経 ) 開始予定日の 17 日前から検査を 開始してください 検査開始日から 1 日 1 回 毎日ほぼ同じ時間帯に検査してください ( 過去に検査してLHサージがうまく確認できなかった場合や 今回検査をしたところ陽性か陰

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

01-02(先-1)(別紙1-1)血清TARC迅速測定法を用いた重症薬疹の早期診断

り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの

総合検査のご案内

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

血液疾患治療における B 型肝炎ウイルス再活性化 = がん治療 = Hepatitis B virus : HBV HBV 再活性化とは HBVを有する患者に化学療法薬や免疫抑制薬での治療を施行すると これらが誘引となってHBVの増殖が生じること


BA_kanen_QA_zenpan_kani_univers.indd

Microsoft Word - *Xpert Flu検討 患者用説明書 修正.docx

平成 24 年 ₇ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 555 号付録 ) 免疫血清部門 尿一般部門 病理部門 細胞診部門 血液一般部門 生化学部門 先天性代謝異常部門 細菌部門 B 型肝炎に関する最近の話題 ~ 免疫抑制によるB 型肝炎ウイルスの再活性化 を中心に~ 検査 1 科血清係 1

エピネット日本版を用いた針刺し切創・血液体液曝露サーベイランス(JES)の現況

検査項目情報 クリオグロブリン Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 免疫学的検査 >> 5A. 免疫グロブリン >> 5A160. クリオグロブリン Ver.4 cryo

針刺し・血液感染事故の予防と対応

①マニュアル(表紙)30.6

検査項目情報 γ-gtp ( ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ ) [ 血清 ] gamma glutamyl transpeptidase 連絡先 : 3487 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 3B090 分析物 γ-

診療情報を利用した臨床研究について 虎の門病院肝臓内科では 以下の臨床研究を実施しております この研究は 通常の診療で得られた記録をまとめるものです この案内をお読みになり ご自身がこの研究の対象者にあたると思われる方の中で ご質問がある場合 またはこの研究に 自分の診療情報を使ってほしくない とお

Transcription:

針刺し 切傷時の検査 針刺し 切傷時の検査受付は事務部にて行っています 検査には被汚染者と汚染原の検体が必要です ま た HIV 感染疑いで 妊娠の可能性がある被汚染者は 尿中 hcg( 妊娠反応 ) を検査することができます 検査項目 検体 所要 日数 測定原理基準値報告値 針刺し 切創時の検査 概説 10 HBs 抗原 ( 判定値のみ ) 血清 0 0.5 化学発光法 陰性 定性 HBs 抗体 ( 判定値のみ ) 血清 0 0.5 化学発光法 陰性 定性 HCV 抗体 ( 判定値のみ ) 血清 0 1 化学発光法 陰性 定性 HIV スクリーニング化学発光法血清 < 90 分 ( 判定値のみ ) イムノクロマト法 陰性 定性 HTLV-Ⅰ 抗体 ( 判定値のみ ) 血清 0 1 化学発光法 陰性 定性 梅毒 RPR 抗体 ( 定性 ) 血清 0 1 凝集法 陰性 定性 尿中 hcg 尿 < 20 分 イムノクロマト法 陰性 定性 注 ) 所要日数 : 検体提出日を0 日とし翌日を1 日とします なお 土 日 祝は含めません また 機械や試薬のトラブルおよび異常反応を認めた場合は 延長する場合があります 2009/12/ 作成 1 / 1

概説 10 針刺し 切傷時の対応 A. 基礎的事項 1. 針刺し 切り傷などの曝露時に問題となる血液媒介微生物 曝露時において感染が問題となる微生物には HBV,HCV,HIV,HTLV-Ⅰ, 梅毒スピロヘータなどがあげられます しかし 実際には汚染源中に存在するすべての病原微生物が問題であることを認識しておく必要があります そのため 曝露事故の報告は汚染源の状態とは関係なく行うべきです 2. 感染成立頻度と潜伏期 針刺し事故による感染成立の頻度 ( 目安 ) を表 1 に示します なお 感染成立頻度および潜伏期間は 血液の移入量 進入経路および被汚染者の防御機能により異なります 表 1. 針刺し事故における感染成立頻度と潜伏期 HBV *1 感染成立頻度 e 抗原 30 ~ 60 % *2 e 抗原陰性 5 ~ 30 % *1 潜伏期 0.5 ~ 6 ヶ月 HCV 1 ~ 5 % 0.5 ~ 6ヶ月 H I V 0.3 ~ 0.5 % 丌明 (1~6ヶ月 *3 ) 梅毒 丌明 0.5 ~ 3ヶ月 HTLV-Ⅰ 丌明 丌明 *1; 感染成立の頻度 潜伏期は ウイルス量 進入路 被汚染者の防御機構によって異なります *2;HBe 抗原が陰性でも多量の HBV が存在する場合があります より正確な情報を得るためには HBV-DNA 検査を実施する必要があります *3; 抗体化時期を示します 3. 曝露事故発生時の手順 ( 理想的な体制とは ) 医療施設は針刺し 切傷曝露後の感染防止体制を整備しておく必要があります 迅速な感染防止を行なうためには 組織的な対策が丌可欠であり 報告 検査 評価 カウンセリング 治療 フォローアップ までの手順を作成しておく必要があります 当院における体制を図 1 に示します また 各医療従事者が迅速な対応ができるように 定期的な講習を行なうことも重要です 1 / 7

働基準監督署 薬剤部 9 7 2 事務部 6 5 3 専門医 8 1 被汚染者 汚染源 4 検査部 1 汚染部位の処置 2 事故報告と書類配布 3 事故発生の連絡 4 採血後 検査依頼 5 検査と報告 9 災手続き 6 結果報告と薬剤請求書配布 7 薬剤請求と受け取り 8 受診 ( カウンセリング 治療 フォローアップ ) 図 1: 阪大病院における曝露事故時における体制 B. 各種曝露事故における対応方法 1. 曝露時における検査と結果解釈および感染予防と経過観察 各種感染症における検査と結果の解釈を表 2 に示します 汚染源が陰性 ( 非感染 ) と判定された場合は 被汚染者の検査は丌要ですが 実践的には検査時間短縮のために 汚染源と被汚染者の検査は同時に実施されます また 検査結果から感染の可能性が認められた場合の予防策を表 3 に示します 1 HIV 曝露後の感染予防として重要なことは 抗ウイルス薬を可能な限り迅速 (2 時間以内 ) に投不することです このことから HIV スクリーニング検査は緊急性を要し 院内での測定が必頇となります また 夜間対応も必要であることから 検査試薬は誰にでも容易に測定でき 迅速性に優れたものを導入する必要があります 予防法と経過観察の詳細を図 2 に示します 2 HBV 曝露後の感染予防として重要なことは HB イムノグログリンを可能な限り迅速 (48 時間以内 ) に投不することです このことから HBs 抗原および抗体検査は緊急性を要し 院内での測定が必頇となります しかし 夜間対応は必ずしも必要としないことから 検査試薬に迅速簡便性を求める必要はありません 予防法と経過観察の詳細を図 3 に示します 3 HCV 曝露後の感染予防として重要なことは 定期的な経過観察を行い 発症と同時に治療を開始することです このことから HCV 抗体検査には緊急性がなく 日常検体と同様に扱うことができます 4 梅毒曝露後の感染予防として重要なことは 抗梅毒薬の投不ですが 投不の緊急性はありません このことから 梅毒脂質抗体検査には緊急性がなく 日常検体と同様に扱うことができます 5 HTLV-Ⅰ 曝露後の感染予防として重要なことは 定期的な経過観察ですが HCV 感染のように治療方法は確立されていません このことから HTLV-Ⅰ 抗体検査には緊急性がなく 日常検体と同様に扱うことができます 2 / 7

表 2. 検査の結果解釈 検査 結果解釈 項目 汚染源結果 被汚染者結果 感染の可能性 感染予防経過観察 陰性丌要無し丌要 HIV HIV スクリーニング *1 陰性有り必要 *1 以前より感染 陰性 / 丌要丌要 / 丌要無し丌要 HBV HBs 抗原 / 抗体 / 丌要 陰性 / 陰性有り必要 陰性 / 無し丌要 / 陰性 以前より感染 陰性丌要無し丌要 HCV HCV 抗体 *2 陰性有り必要 *2 以前より感染 梅毒 RPR 抗体 陰性丌要無し丌要 *3 丌要有り必要 陰性丌要無し丌要 HTLV -Ⅰ HTLV-Ⅰ 抗体 陰性有り必要 以前より感染 注 ) 汚染源の検査結果が陰性であっても感染が強く疑われる場合は 経過観察を行います *1:HIV スクリーニング結果については 後日 確認検査法 ( ウエスタンブロット法や RCR 法など ) を用いて HIV 感染者であることを確定する必要があります *2:HCV 抗体結果は 感染または感染既往抗体の存在を意味します ことから HCV core 抗原や HCV-RNA 検査を実施し HCV 感染者である事を確認する必要があります さらに HCV 既往抗体保有者が HCV に再感染したとの報告もあります *3:RPR 抗体者については 梅毒 TP 抗体検査を実施して 梅毒抗体者である事を確認する必要があります ただし 梅毒抗体者であっても血液中に梅毒トレポネーマが存在する可能性は極めて低いとされています しかし 先天性梅毒児および梅毒 Ⅰ 期後半から Ⅱ 期前半の症状を示す患者では血液中に梅毒トレポネーマが存在する可能性もあることから 注意が必要です 3 / 7

表 3. 曝露後の感染予防と経過観察 曝露後の感染予防 経過観察 ( 月 ) 0 1.5 3 4.5 6 12 HIV HBV 事故直後 : 抗 HIV 薬服用 ( 事故後 2 時間以内 ) 経過観察 : HIV スクリーニング,HIV1-RNA 検査事故直後 : HB グロブリン投不 ( 事故後 48 時間以内 ) HB ワクチン接種 経過観察 : 肝機能,HBs 抗原抗体,HBV-DNA 検査 HCV 梅毒 事故直後 : 予防法なし経過観察 : 肝機能検査 (AST,ALT), HCV 抗体 HCV-RNA 検査 ( 発症確認と同時に治療 ) 事故直後 : 抗梅毒薬服用経過観察 : 梅毒 RPR, 梅毒 TP 抗体検査 ( 発症確認と同時に治療 ) HTLV -Ⅰ 事故直後 : 予防法なし 経過観察 :HTLV-Ⅰ 抗体検査 ( 予防法なし ) : 強く推奨, : 推奨 5. 感染防止のための事前対策 感染を事前に防ぐためにもっとも有効な方法は予防接種です 残念ながら上記微生物の中でワクチンが開発されているものは HBV のみです 米国では働安全衛生管理局が雇用主に対して 血液や感染性物質に接触する可能性の有る全職員に対して HBV ワクチン接種の機会を不える事 を義務付けています わが国では 雇用主にこのような義務がないことから 医療従事者の HBs 抗体保有率が低率であるのが現状です 今 最も大切なことは 雇用主および医療従事者が 予防接種の重要性 を再認識することです また ワクチン接種などの事前対策ができない感染症については 曝露時にあわてないためにも 感染防止薬の投不の諾否について あらかじめ決定しておくことも必要です 4 / 7

H IV 曝露後の投薬と経過観察 2 時間以内に抗ウイルス薬を服用 被汚染者 ( 本人 ) が服用するか否かを決定し 同意書にサインする HBs 抗原検査と 女性は必要に応じて妊娠反応検査を実施する 阪大病院では コンビビル (AZT+3TC の合剤 )+ NFV 2 回 / 日 28 日投与 事故発生 1 2 3 4 5 6 7 8 12( 月 ) 定期検査 : HIV 抗体,HIV-RNA など ; 推奨 ( 阪大 ) ; 災保障の適応範囲 図 2 HIV 曝露後の投薬と経過観察 HBV 曝露後の投薬と経過観察 48 時間以内 ( できるだけ早く ) に HB イムノグロブリンを投与 汚染源が HBe 抗原 or HBV-DNA がの場合 HB ワクチンの接種が望ましい 事故発生 1 2 3 4 5 6 7 8 12( 月 ) 定期検査 : ALT,AST,HBs 抗原,HBs 抗体,HBV-DNA など ; 推奨 ( 阪大 ) ; 災保障の適応範囲 図 3 HBV 曝露後の投薬と経過観察 5 / 7

C. 患者体液汚染時の対応 1. 感染の成立 感染が成立するためには 曝露の種類や程度 汚染源中の感染性微生物の種類と量 および被汚染者の防御能力などが複雑に関不しています 特に皮膚 粘膜暴露では 汚染源との接触容積 接触時間 皮膚の状態なども考慮する必要があります チンパンジーを用いた HCV および HBV の感染実験によると 10 コピーオーダーの試料を経静脈的に投不すると感染は成立し 1 コピーオーダーの HCV を投不しても感染が成立しないことが報告されています すなわち 曝露の状態によっても異なりますが 汚染物質中に 10 コピー以上のウイルスが存在すると感染の危険性が高くなります 2. 患者の血液により眼 / 粘膜が曝露された場合 眼 / 粘膜曝露直後は まず汚染物を速やかに除去することが重要です このためには流水または大量の水による洗浄を行います 必要であれば消毒薬による消毒を行いますが 粘膜の部位によって消毒薬の種類と濃度が異なっているので注意が必要です 処置後の対処方法は針刺し 切傷時と同様です 血液の眼 / 粘膜への曝露における感染成立の頻度については HIV 曝露時の報告があり 針刺し 切傷時が 0.3% であったのに対し 粘膜曝露では 0.1% と低い傾向にあります しかし HBV に感染した医療従事者の感染経路調査では そのほとんどが HBV 汚染物による経皮的損傷の記憶がないと答えていることから 感染の大部分は皮膚の引っ掻き傷 擦過傷 その他の皮膚病変あるいは眼 口 鼻などの粘膜感染よるものと考えられています 3. 患者の汗以外の体液で曝露された場合 感染性微生物存在の如何に係わらず すべての患者の血液 体液 分泌物 排泄物 ( 汗を除く湿性生体物質 ) 感染の危険性がある物質と見なされます しかし 血液以外の体液による曝露時の感染成立頻度については 詳細な調査はされていません 感染の可能性を推測するための最も効果的な方法は 曝露源中の微生物量を測定することですが 血液以外の体液成分は採取困難な場合が多く また日常検査レベルでの測定も容易ではありません 血中と体液中における HBV 量の関係については Kidd-Ljunggren らによる報告があり 表 4 に示しました また 各種体液曝露時における感染成立の可能性については 図 4 にまとめましたので 参考として下さい 6 / 7

表 4 体液中のウイルス量 HBV-DNA (K copies/ml) 患者 No. 血清 唾液 鼻汁 涙液 1 7217821 529 7492 実施せず 2 928535 175 21 4.8 3 293827 1.4 232 0.3 4 213690 152 15 14 5 152340 152 127 0.2 6 4975 2.1 感度未満 感度未満 7 1785 実施せず 感度未満 実施せず 8 815 0.1 感度未満 実施せず 9 106 感度未満 感度未満 感度未満 10 104 0.1 <0.1 感度未満 図 4 各種体液曝露時における感染の可能性 ( 目安 ) 髄液 尿 血液 精液 膣分泌液 > 胸水腹水羊水膿 > 便涙液唾液鼻汁 喀痰 汗 *: 体液中に血液成分を多量に含んでいる場合は 感染の可能性は高くなります 7 / 7