なぜ日本はODAを行うのか

Similar documents
なぜ日本はODAを行うのか

Microsoft PowerPoint - 1_MOFA_rev_【再セット】160120外務省中野講演資料(COP21報告) .pptx

COP21合意と今後の課題

れまでの交渉経緯という一連のCOP/CMP 決定が採択された こQ1. 今年のカタール ドーハでの COP18 の焦点は何ですか? 今年のカタール ドーハでの COP18 では, 昨年の COP17 で合意されたダーバン合意を着実に前に進めることが重要であり,1 ダーバンプラットフォーム特別作業部会

間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

参考資料 1 約束草案関連資料 中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会 産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合事務局 平成 27 年 4 月 30 日

Microsoft Word - (基本計画)民間主導による低炭素技術普及促進事業(set)

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

国際連携の基本的方針 年 1 月に 国際連携に関する省内連絡会議 を設置 関係課室が連携して環境外交に取り組む体制を構築 関係部局へのヒアリングを踏まえ 省内の国際連携事業を評価 分析し 資料 年 3 月に 国際連携事業の概観と平成 27 年度以降の実施指針 を策定 関連

これま2005 年京都議定書発効(Q1. 今年の南アフリカ ダーバンでの COP17 の焦点は何ですか? (A) 先進国( 米国除く ) が温室効果ガスの排出削減義務を負っている京都議定書第 1 約束期間が来年 (2012 年 ) 末で終了します その後の2013 年以降の新たな法的枠組みをどうする

二国間クレジット制度について

スライド 1

スライド 1

Microsoft PowerPoint - 4_林野庁_rev._GISPRI_IGES_COP21_林野庁_発表用.pptx

国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) とパリ協定の関係について 国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) (1992 年採択 1994 年発効 日本は 1993 年に締結 ) 全国連加盟国 (197ヶ国 地域) が締結 参加 大気中の温室効果ガス濃度の安定化が究極の目的 全締約国の義務 温室効果ガス

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - NIES

<4D F736F F F696E74202D F43444D838D815B D B988C493E089F090E08F91816A5F8CF68EAE94C5>

<4D F736F F F696E74202D E9197BF A8DC58BDF82CC926E8B8589B BB91CE8DF482CC8FF38BB582C982C282A282C E >

Microsoft Word - funding-carbon-capture-storage-developing-countries-japanese

Monitoring National Greenhouse Gases

資料1 美しい星へのいざない「Invitation to 『Cool Earth 50』」~3つの提案、3つの原則~」

スライド 1

仮訳 日本と ASEAN 各国との二国間金融協力について 2013 年 5 月 3 日 ( 於 : インド デリー ) 日本は ASEAN+3 財務大臣 中央銀行総裁プロセスの下 チェンマイ イニシアティブやアジア債券市場育成イニシアティブ等の地域金融協力を推進してきました また 日本は中国や韓国を

平成 21 年度資源エネルギー関連概算要求について 21 年度概算要求の考え方 1. 資源 エネルギー政策の重要性の加速度的高まり 2. 歳出 歳入一体改革の推進 予算の効率化と重点化の徹底 エネルギー安全保障の強化 資源の安定供給確保 低炭素社会の実現 Cool Earth -1-


第2回ADPを前に これまでの温暖化の国際交渉について

地球温暖化対策計画について 地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため 政府が地球温暖化対策推進法に基づいて策定する 我が国唯一の地球温暖化に関する総合計画 温室効果ガスの排出抑制及び吸収の目標 事業者 国民等が講ずべき措置に関する基本的事項 目標達成のために国 地方公共団体が講ずべき施策等に

援 GHGインベントリ策定にかかる技術移転等 気候変動対策を推し進めるための包括的な支援を実施した 同プロジェクトの成果として 国家気候変動緩和行動計画 (RAN-GRK) に基づき州気候変動緩和行動計画 (RAD-GRK) の策定が進められるとともに 国家気候変動適応行動計画 (RAN-API)

なぜ日本はODAを行うのか

<4D F736F F D F AC28BAB8FC8926E8B858BC788C C5F4A BA689EF8E8F5F91E631328D865F93C18F E8B8589B BB91CE8DF48C7689E681762E646F6378>

国連の気候変動に関するこれまでの交渉について

背景と経緯

ン ノートとしてまとめる予定に くりのスケジュールに合意するこ させ パリ協定が発効するという なっています 今回のAPAセッ とでした 流れが想定されていました とこ ションで決定文書案としてCOPに もともとパリ協定は2020年か ろがパリ協定が記録的短期間で発 送られたのは 議題番号8 b で

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - 2_koakutsu_final_rev.pptx

環境省の新たなミッション

Microsoft PowerPoint 鹿毛先生プレゼンFINAL_0111.pptx

Slide 1

フォレストカーボンセミナー_石内資料

①180612_G7シャルルボワサミット結果報告(循環部会用セット)

参考資料3(第1回検討会資料3)

日本の気候変動対策支援イニシアティブ2018(日本語)

Microsoft PowerPoint - 04_COP18_山ノ下麻木乃.pptx

緒論 : 電気事業者による地球温暖化対策への考え方 産業界における地球温暖化対策については 事業実態を把握している事業者自身が 技術動向その他の経営判断の要素を総合的に勘案して 費用対効果の高い対策を自ら立案 実施する自主的取り組みが最も有効であると考えており 電気事業者としても 平成 28 年 2

Microsoft Word SB48andAPA1-5.docx

政策目標 5-2: 多角的自由貿易体制の維持 強化及び経済連携の推進並びに税関分野における貿易円滑化の推進 1. 政策目標の内容自由貿易の推進は我が国の対外経済政策の柱であり 力強い経済成長を実現するためには 自由貿易体制を強化し 諸外国の活力を我が国の成長に取り込む必要があるというのが 政府全体と

フォレストカーボンセミナー2019発表資料(中野)

問題意識 民生部門 ( 業務部門と家庭部門 ) の温室効果ガス排出量削減が喫緊の課題 民生部門対策が進まなければ 他部門の対策強化や 海外からの排出クレジット取得に頼らざるを得ない 民生部門対策において IT の重要性が増大 ( 利用拡大に伴う排出量増加と省エネポテンシャル ) IT を有効に活用し

COP15 日本政府の交渉とこれからの課題

気候変動と森林 IPCC 第 5 次評価報告書 (AR5) から 2014 年 8 月 29 日 東京 第 3 回森林分野における国際的な動向等に関する報告会 林野庁森林利用課 佐藤雄一

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

Microsoft PowerPoint - S-PLUS発表(改).pptx

Microsoft PowerPoint - 2_Tamura_神奈川県_田村rev2.pptx

<4D F736F F F696E74202D F43444D838D815B D B988C493E089F090E08F91816A5F8CF68EAE94C5>

<4D F736F F F696E74202D E8D8291BA976C817A8B438CF3836C F815B834E D83938B4B90A B8CDD8AB7838

京都メカニズムの仕組み

弱な他の国々が 強靱で完全に競争的なエネルギー システムを追及することに対しても 支援する 6. 我々は 国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) の締約国が第 21 回締約国会議 (COP21) において 産業革命以前と比べ 世界の平均気温上昇を 2 よりも十分低く保持すること 及び世界の平均気温上

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF C F926E93798FEB8B7A8EFB8CB9>

報告書テンプレート

PDF目次

IPCC「1.5度特別報告書」の背景にある脆弱国の危機感

新興国市場開拓事業平成 27 年度概算要求額 15.0 億円 (15.0 億円 ) うち優先課題推進枠 15.0 億円 通商政策局国際経済課 商務情報政策局生活文化創造産業課 /1750 事業の内容 事業の概要 目的 急速に拡大する世界市場を獲得するためには 対象となる国 地

資料 3 ー 1 環境貢献型商品開発 販売促進支援事業 環境省市場メカニズム室

日本のエネルギー・環境戦略

IPCC第48回総会に際しての勉強会資料

IPCC 第 5 次報告書における排出ガスの抑制シナリオ 最新の IPCC 第 5 次報告書 (AR5) では 温室効果ガス濃度の推移の違いによる 4 つの RCP シナリオが用意されている パリ協定における将来の気温上昇を 2 以下に抑えるという目標に相当する排出量の最も低い RCP2.6 や最大

政策体系における政策目的の位置付け エネルギー基本計画 ( 平成 22 年 6 月 18 日閣議決定 ) において 一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を 2020 年までに 10% とすることを目指す と記載 地球温暖化対策基本法案 ( 平成 22 年 10 月 8 日閣議決定 )

<4D F736F F F696E74202D E9197BF A A C5816A CE97CD82CC90A28A458E738FEA2E B8CDD8AB B83685D>

<4D F736F F D F967B95D281698DC58F4988C4816A B815B834F838C815B816989E6919C8F6B8FAC94C5816A2E646F63>

(1) 国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議 (COP21) について (2) 気候変動と安全保障 1

<4D F736F F F696E74202D20938A A957A8BD68E7E5F434F C A8BA692E88EC08E7B8E77906A5F F834

参考資料 5 ( 平成 26 年 10 月 24 日合同専門家会合第 1 回資料 4-1 より抜粋 データを最新のものに更新 ) 温室効果ガス排出量の現状等について 平成 27 年 1 月 23 日

ドーハ ラウンド交渉の一分野である貿易円滑化については 平成 26 年 11 月のWTO 一般理事会において 貿易円滑化協定に関する改正議定書 が採択され 今後 3 分の2 以上の加盟国が受諾した時点で本協定は発効することになりました 各 WTO 加盟国がこの協定を実施することにより 貿易規則の透明

取組概要 ( 申請書からの転記 ) 全 般 排 出 量 の 認 識 取組名称 認証取得者名取組の概要 適用したカーボン オフセット第三者認証基準のバージョン認証の有効期間オフセット主体認証ラベルの使途 認証対象活動 認証番号 :CO 有効期間満了報告書受領済み 持続可能な島嶼社会の発展に

Rodrigo Domingues UNDP Borja Santos Porras/UNDP Ecuador UNDP Kazakhstan 2

<4D F736F F F696E74202D D8D7495BD90AB5F8DC58F F78F4390B3816A205B8CDD8AB B83685D>

1 3: 気候変動については 環境と経済成長との好循環を実現する好機として G7 が世界の脱炭素化を牽引することが重要であり 我が国としても脱炭素化に向けた骨太な長期戦略を創り上げていく 2: 資源循環については 先進事例の共有を国内外で進めることが重要であり 我が国としては世界循環経済フォーラム

Beyond2010の国際貢献

RIETI Highlight Vol.66

2017 年訪日外客数 ( 総数 ) 出典 : 日本政府観光局 (JNTO) 総数 2,295, ,035, ,205, ,578, ,294, ,346, ,681, ,477

IPCC 第 5 次評価報告書に向けた将来シナリオの検討日本からの貢献とその意義環境研究総合推進費 A 1103 統合評価モデルを用いた世界の温暖化対策を考慮したわが国の温暖化政策の効果と影響 藤森真一郎 国立環境研究所 社会環境システム研究センター 環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト一般公開

企画書タイトル - 企画書サブタイトル -

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

平成19年6月  日

資料 2 平成 27 年度の政策対話等の実施実績及び予定について ( 未定稿 ) 1. 概要 平成 27 年度は 以下の取組につき 各国の状況に応じ組み合わせて実施 (1) 各国との政策対話の実施 (2) 対話の場を活用した 我が国食関連産業と先方政府 先方民間企業のとの情報共有 マッチングの促進

地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会 (UNCE-GGIM) 報告 2012 年 8 月ニューヨークで第 2 回の地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会 (UN Committee of Experts on Global Geospatial Information Ma

Microsoft Word - 7.第3章3節.doc

G7 ICT マルチステークホルダー会議からの成果を歓迎する 6. 我々は 2016 年 6 月 21 日から 23 日にかけてメキシコのカンクンで開催される イノベーション 成長及び社会の繁栄をテーマとした デジタル経済に関する OECD 閣僚級会合の成果に期待する 7. 我々は デジタル連結世界


COP20Lima-briefingnote pub

⑴ 政策目的本件は, 我が国において開発資金のための国際連帯税 ( 国際貢献税 ) を導入し, 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ 等, 国際的な開発目標の達成に対応 貢献するために, 世界の開発需要に対応し得る幅広い開発資金を調達するもの これは, 外務省政策評価, 基本目標 Ⅵ 経済協

特集 IPCC 第 5 次評価報告書 (AR5) 第 3 作業部会 (WG3) 報告書について RITE Today 2015 IPCC 第 5 次評価報告書 (AR5) 第 3 作業部会 (WG3) 報告書について システム研究グループリーダー秋元圭吾 1. はじめに 気候変動に関する政府間パネル

お知らせ

スライド 1

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

CASALetter97v16w.indd

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

地球温暖化対策シンポジウム 2014 二国間クレジット制度 (JCM) に関する環境省の取組 地球温暖化対策シンポジウム 2014 環境省地球環境局地球温暖化対策課市場メカニズム室 2014 年 2 月 25 日 JCM の基本概念 優れた低炭素技術 製品 システム サービス インフラの普及や緩和活

Transcription:

国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議 (COP21) の成果と今後の展望 2016 年 1 月 21 日外務省国際協力局気候変動課長中野潤也 2020 年以降の国際枠組みに向けた国際交渉 京都議定書採択時と比べ 世界のエネルギー起源 CO2 排出量における途上国のシェアが急速に拡大 2010 年時点において 京都議定書第一約束期間参加国の CO2 排出量のシェアは約 25% 第二約束期間参加国のシェアは約 16% に過ぎず 削減規模という点で十分でない 日本は こうした国際社会の変化を踏まえ 全ての国が参加する公平かつ実効的な新たな国際枠組みの構築を主張 世界のエネルギー起源 CO 2 排出量 (2010 年 ) と京都議定書採択時の CO 2 排出量 43.1% ( 米国含む ) 55.9% 出典 : 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会第 2 回会合 ( 平成 25 年 8 月 ) 配布資料 1 1

気候変動に関する国際枠組み ( 枠組条約 京都議定書 パリ協定 ) 国連気候変動枠組条約 目的 : 大気中の温室効果ガス (CO 2 メタンなど ) の濃度安定化 1992 年 5 月に作成 1994 年 3 月に発効 締約国数 :195 か国 機関 先進国 途上国の取扱いを区別 ( 共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力 ) 附属書 Ⅰ 国 = 温室効果ガス削減目標に言及のある国 ( 先進国及び市場経済移行国 ) ( 注 : 削減義務そのものはない ) 非附属書 Ⅰ 国 = 温室効果ガス削減目標に言及のない途上国 附属書 Ⅱ 国 = 非附属書 Ⅰ 国による条約上の義務履行のため資金協力を行う義務のある国 ( 先進国 ) 附属書 Ⅰ 国の義務を強化 ( ベルリンマンデート ) 京都議定書 (2020 年までの枠組み ) 排出削減義務 附属書 Ⅰ 国に対し 温室効果ガス排出を1990 年比で 2008 年から5 年間で一定数値削減することを義務付け ( 附属書 B) 非附属書 Ⅰ 国 ( 途上国 ) には削減義務を課さず 第一約束期間 (2008~2012 年 ): 日本 -6% 米国-7% EU-8% 第二約束期間 (2013~2020 年 ):EU-20% 日本は参加せず 1997 年 12 月に京都で作成 2005 年 2 月に発効 締約国数 :192か国 機関 米国は 署名はしたものの未締結 ( カナダは2012 年 12 月に脱退 ) パリ協定 (2020 年以降の枠組み ) 2015 年 12 月の COP21 において 史上初めて すべての国が参加する枠組みとして パリ協定 が採択 2 経緯 気候変動枠組交渉の経緯 1992 年 気候変動枠組条約 (UNFCCC) 採択 (1994 年発効 ) 1997 年 京都議定書 採択 (COP3)(2005 年発効 ) 米国未批准 2009 年 コペンハーゲン合意 (COP15) 先進国 途上国の削減目標 行動をリスト化すること等に留意 (COP 決定に至らず ) 2010 年 カンクン合意 (COP16) 各国が提出した削減目標等を国連文書に整理 2011 年 ダーバン合意 (COP17) 全ての国が参加する新たな枠組み構築に向けた作業部会 (ADP) の設置 2012 年 ドーハ気候ゲートウェイ (COP18) 京都議定書第 2 約束期間の設定 2013 年ワルシャワ決定 ( COP19) 約束提出時期等が定められた 2014 年 気候行動のためのリマ声明 (Lima Call for Climate Action) (COP20) 約束草案 (International Nationally Determined Contributions) を提出する際に示す情報 ( 事前情報 ) 2015 年合意の交渉テキストの要素案等が定められた 2015 年 パリ協定 (Paris Agreement) 採択 ( COP21 ) 2020 年以降の枠組みとして 史上初めてすべての国が参加する制度構築に合意 3 2

2020 年以降の枠組み : パリ協定 ( 概要 ) COP21(2015 年 11 月 30 日 ~12 月 13 日 於 : フランス パリ ) において パリ協定 (Paris Agreement) が採択 京都議定書に代わる 2020 年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組み 歴史上はじめて すべての国が参加する公平な合意 安倍総理が首脳会合に出席 2020 年に現状の 1.3 倍となる約 1.3 兆円の資金支援を発表 2020 年に 1000 億ドルという目標の達成に貢献し 合意に向けた交渉を後押し パリ協定には 以下の要素が盛り込まれた 世界共通の長期目標として 2 目標の設定 1.5 に抑える努力を追求することに言及 主要排出国を含むすべての国が削減目標を 5 年ごとに提出 更新 すべての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告し レビューを受けること 適応の長期目標の設定 各国の適応計画プロセスや行動の実施 適応報告書の提出と定期的更新 イノベーションの重要性の位置付け 5 年ごとに世界全体の実施状況を確認する仕組み ( グローバル ストックテイク ) 先進国が資金の提供を継続するだけでなく 途上国も自主的に資金を提供 我が国提案の二国間クレジット制度 (JCM) も含めた市場メカニズムの活用を位置付け 発効要件に国数及び排出量を用いること 4 開会式出席等 パリ協定妥結への日本の取り組み1 安倍総理のCOP21 首脳会合出席 (2015 年 11 月 30 日 ) 安倍総理は 議長国主催で開催された首脳会合開会式に出席 オランド大統領主催昼食会に参加し 気候変動を初めとする国際社会の課題 二国間関係等について 意見交換を実施 首脳会合における安倍総理のスピーチ 今こそ先進国 途上国が共に参画する温室効果ガス削減のための新たな枠組みを築くべき時 パリ合意には 長期目標の設定や 削減目標の見直しに関する共通プロセスの創設を盛り込みたい日本は 先に提出した志の高い約束草案や適応計画を着実に実施していく 今般 途上国支援 イノベーションからなる貢献策 美しい星への行動 2.0 を発表 第一の柱である途上国支援については 2020 年に現在の 1.3 倍 官民あわせて年間約 1.3 兆円の気候変動対策支援を実施 今回の日本による増額分で 年間 1,000 億ドルとの COP15 での約束を達成する道筋がつくと考える 第二の柱であるイノベーションについては 気候変動対策と経済成長両立の鍵は 革新的技術の開発である エネルギー 環境イノベーション戦略 を 2016 年春までにまとめ 集中すべき有望分野を特定し 研究開発を強化していく 二国間クレジット制度などを駆使し 途上国の負担を下げながら 画期的な低炭素技術を普及 今こそ新たな枠組みへの合意を成し遂げるべき等を表明した ミッション イノベーション 立ち上げ式参加 クリーン エネルギー関連の研究開発強化に係る国際イニシアティブ ミッション イノベーション の立ち上げ式に参加 ( オランド仏大統領 オバマ米大統領 モディ印首相 ビル ゲイツ氏等が参加 ) 安倍総理は この直後に行われた首脳会合におけるスピーチの中で 我が国がこれまで一貫して取り組んできたことと軌を一にするものとして本イニシアティブへの賛同を表明 5 3

パリ協定妥結への日本の取り組み 2 美しい星への行動 2.0 (Actions for Cool Earth: ACE2.0) 理念 = 途上国支援とイノベーションからなる二つの貢献 COP21 での温室効果ガス削減のための新たな枠組みへの途上国の参画を促すためには 先進国からの支援が鍵 (2020 年までに年間 1000 億ト ルを供与する既存のコミットメントあり ) また 世界レベルでの抜本的な排出削減のためには 技術革新が不可欠 先進国第二の経済規模 温室効果ガス排出量を持つ日本として 途上国に手を差し伸べることこそ 世界の気候変動対策の進展 COP21 成功への貢献 イノベーション先駆者である日本として 革新的技術の開発を更に強化し 世界をリードすることこそ 抜本的な排出削減への国際貢献 途上国支援 我が国の途上国支援を 2020 年に 官民合わせて約 1 兆 3 千億円 現在の1.3 倍にすることを表明 ( 上記 1000 億ト ルコミットに対応 ) 地熱発電 都市鉄道 防災インフラ 水確保など日本の得意分野で貢献 その他 アジア 太平洋島嶼国における早期警戒システム構築や都市間連携 人材育成も推進 イノベーション 革新的エネルギー 環境技術の開発強化に向け エネルギー 環境イノベーション戦略 を策定 二国間クレジット制度(JCM) 等を通じた優れた低炭素技術の普及を推進 7 6 パリ協定で定められたタイムライン 2016 年 2015 年 12 月パリ協定採択 2016 年 4 月 22 日パリ協定署名式 (COP21 決定パラ 3) 2016 年 5 月 2 日統合報告書の改訂版公表 (COP21 決定パラ 19) 2016 年 5 月パリ協定作業部会 (APA) 発足 (COP21 決定パラ 11) 2016 年 11 月 (COP22) 実施に関する促進的対話 (COP21 決定パラ 116) 2017~2019 年 2018 年緩和に関する全体努力の促進的対話 (COP21 決定パラ 20) 2020 年以降 2018 年 1.5 に関する IPCC 特別報告書 (COP21 決定パラ 21) 2020 年までに 2025 年目標の国は新しい目標を提出 2030 年目標の国は目標の更新 (COP21 決定パラ 23 24) 2020 年までに長期低排出発展戦略の提出 (COP21 決定パラ 36) 2023 年から 5 年おきにグローバルストックテイク ( 協定第 14 条 2) 2025 年より前に資金に関する新たな定量的な全体の目標を設定 (COP21 決定パラ 54) 7 4

( 参考 ) 気候変動に関する日本の取り組み 1 約束草案 :2030 年度の温室効果ガス排出削減目標 日本の約束草案 2020 年以降の温室効果ガス削減に向けた我が国の約束草案は エネルギーミックスと整合的なものとなるよう 技術的制約 コスト面の課題などを十分に考慮した裏付けのある対策 施策や技術の積み上げによる実現可能な削減目標として 国内の排出削減 吸収量の確保により 2030 年度に 2013 年度比 26.0%(2005 年度比 25.4%) の水準 ( 約 10 億 4,200 万 t-co 2 ) にすることとする 公平性 野心度 条約 2 条の目的達成に向けた貢献 明確性 透明性 理解促進のための情報等 GDP 当たり排出量を 4 割以上改善 一人当たり排出量を約 2 割改善することで 世界最高水準を維持するものであり 国際的にも遜色のない野心的な目標 日本の GDP 当たりエネルギー消費量は現時点でも他の G7 諸国の平均より約 3 割少なく 世界の最高水準にある そこからさらに 2030 年に向けて 35% のエネルギー効率の改善を目指す 上記エネルギーミックスでは 総発電電力量に占める再生可能エネルギーの比率を 22-24% 程度 原子力の比率を 22-20% 程度としている ( 足下から 太陽光は 7 倍 風力 地熱は 4 倍の発電電力量を見込んでいる ) IPCC 第 5 次評価報告書で示された 2 目標達成のための 2050 年までの長期的な温室効果ガス排出削減に向けた排出経路や 我が国が掲げる 2050 年世界半減 先進国全体 80% 減 との目標に整合的なもの JCMについては 温室効果ガス削減目標積み上げの基礎としていないが 日本として獲得した排出削減 吸収量を我が国の削減として適切にカウント 8 日本 米国 2020 年以降の約束草案 参考 カンクン合意に基づく 2020 年目標 行動 内容 2030 年に -26%(2013 年比 ) (2030 年に -25.4%(2005 年比 )) 2025 年に -26%~-28%(2005 年比 ) -28% に向けて最大限努力 提出時期 (2015 年 ) 削減目標 行動 7 月 17 日 -3.8%(2005 年比 ) 3 月 31 日 -17% 程度 (2005 年比 ) EU 2030 年に -40%(1990 年比 ) 3 月 6 日 -20%(1990 年比 ) ロシア 2030 年に -25%~-30%(1990 年比 ) 3 月 31 日 -15~-25%(1990 年比 ) カナダ 2030 年に -30%(2005 年比 ) 5 月 15 日 -17%(2005 年比 ) 豪州 2030 年に -26%~-28%(2005 年比 ) 8 月 11 日 -5%(2000 年比 ) スイス 2030 年に -50%(1990 年比 ) 2 月 28 日 -20%(1990 年比 ) ノルウェー 2030 年に -40%(1990 年比 ) 3 月 27 日 -30%(1990 年比 ) 中国 2030 年前後に CO2 排出量のピークを達成 また, ピークを早めるよう最善の取組を行う 2030 年に GDP 当たり CO2 排出量で -60~-65%(2005 年比 ) 6 月 30 日 インド 2030 年に GDP 当たり排出量で -33~-35%(2005 年比 ) 10 月 1 日 メキシコ ( 参考 ) 各国の約束草案 2030 年に -22%(BAU 比 ), 条件付きで 2030 年に -36%(BAU 比 ) GDP 当たり CO2 排出量で -40~-45%(2005 年比 ) GDP 当たり排出量で -20~- 25%(2005 年比 ) 3 月 30 日条件付きで -30%(BAU 比 ) 南ア 2025 年及び 2030 年までに -398~-614Mt(BAU 比 ) 9 月 25 日 -34%(BAU 比 ) ブラジル 2025 年に -37%(2005 年比 ),2030 年に -43%(2005 年比 ) 9 月 28 日 -36.1~-38.9%(BAU 比 ) 9 5

( 参考 )GDP 当たり温室効果ガス総排出量及び一人当たり温室効果ガス総排出量の推移 我が国において GDP 当たりの温室効果ガス排出量は 0.29kg/ 米ドル (2013 年 ) 人口一人当たりの排出量は 11t/ 人 (2013 年 ) であり いずれも既に先進国で最高水準にある 我が国は自らの排出削減に向けた取組をさらに進める結果 上記の指標についても 2030 年時点では 2 割から 4 割程度の改善が見込まれる kg/ 米ドル 0.5 GDP 当たり温室効果ガス総排出量 t/ 人 20 一人当たり温室効果ガス総排出量 0.4 0.3 0.2 0.39 0.29 0.16 15 10 15.6 11.1 8.9 0.1 5 0 G7 平均 * 日本日本 0 G7 平均 * 日本日本 2012 年 2013 年度 2030 年度 2012 年 2013 年度 2030 年度 * 日本を除く他の G7 諸国 * 日本を除く他の G7 諸国 出典 日本の約束草案 長期需給エネルギー見通し関連資料及び各国国連提出温室効果ガス排出 吸収目録 IEA 推計 国連推計をもとに作成 10 ( 参考 ) 気候変動に関する日本の取り組み2 二国間クレジット制度 (JCM ) Joint Crediting Mechanism 途上国への優れた低炭素技術等の普及を通じ 地球規模での温暖化対策に貢献するとともに 日本からの温室効果ガス排出削減等への貢献を適切に評価し 我が国の削減目標の達成に活用する COP21 において 安倍総理が 日本は 二国間クレジット制度などを駆使することで 途上国の負担を下げながら 画期的な低炭素技術を普及させていきます と演説する等 政府全体として JCM を推進 現在 インドネシア ベトナム等の 16 か国と署名済み その他の国とも署名に向けた協議を行っており パートナー国の増加に向けて取組中 JCM を推進するため JCM プロジェクトの組成に係る支援 ( 設備補助事業 JICA 等連携事業 ADB 拠出金 REDD+ 補助事業 NEDO 実証事業によるプロジェクト支援 実現可能性調査等 ) 及び JCM の手続に係る支援を実施 日本 優れた低炭素技術等の普及や排出削減活動等の実施 パートナー国 JCM プロジェクト 両国代表者からなる合同委員会で管理 運営 測定 報告 検証 日本の削減目標達成に活用 クレジット 温室効果ガスの排出削減 吸収量 11 6

( 参考 )JCM プロジェクトの具体例 産業用高効率空調 ( 荏原冷熱 / イント ネシア ) 高効率冷却器 ( 前川製作所 / イント ネシア ) サイト 1 高効率冷却器 ( 前川製作所 / イント ネシア ) サイト 2 太陽光発電 ( ハ シフィックコンサルタンツ / ハ ラオ ) 暖房用の高効率ホ イラー ( 数理計画 / モンコ ル ) サイト 1 暖房用の高効率ホ イラー ( 数理計画 / モンコ ル ) サイト 2 テ シ タルタコク ラフの導入 ( 日通 / ヘ トナム ) 高効率エアコン及び EMS ( 三菱電機 / ヘ トナム ) 12 ( 参考 ) 気候変動分野における日本の取り組み 3 緑の気候基金 (GCF) への拠出 概要 開発途上国の温室効果ガス削減と気候変動への適応を支援する基金 2010 年に開催された気候変動枠組条約第 16 回締約国会議にて設立が決定された資金メカニズム 支援内容 1 資金配分 : 温室効果ガス削減 ( 緩和 ) と気候変動の影響への対処 ( 適応 ) への支援に 50:50 の割合で配分 2 対象国 : 小島嶼国 (SIDS) や後発開発途上国 (LDC) 等の気候変動による影響に脆弱な国を重視 ( 適応への支援の半分は脆弱国に配分 ) 護岸壁の建設支援 ( 適応案件の例 ) 風力発電の導入支援 ( 緩和案件の例 ) 各国プレッジ額 ( 億ドル ) 総額約 102 億ドル スウェーデン, 5.8 独, 10 その他, 19 仏, 10 英, 12 (2014 年末現在 ) 米, 30 日 15 我が国の拠出と意義 2014 年 11 月の G20 サミットにて 安倍総理から 15 億ドルの拠出を表明 我が国は 拠出に伴う所要の措置を定めた法律の成立を踏まえ 2015 年 5 月に拠出を確定 これにより基金が稼働 2015 年 11 月の理事会でプロジェクト 8 件を採択 我が国が重視する島嶼国案件 防災分野の案件が含まれている 13 7

8