2018.7.18 @ Watanabe Hospital 脂質異常症について ~ 脂質の種類と合併症 ~ 医療法人瑞心会渡辺病院 統括部長 中村了
脂質の種類は? 血液中の脂質の状態を知ろう!
コレステロール : 細胞の膜を構成したり胆汁やホルモンの原料になったりいわば体を構成するための材料となるような脂質 LDL-C:LDLの中に含まれているコレステロールのこと ( 通称 悪玉コレステロール ) HDL-C:HDLの中に含まれているコレステロールのこと ( 通称 善玉コレステロール ) 悪玉コレステロールも善玉コレステロールもどちらも 同じ コレステロール 体の中での存在の仕方の違いで善玉と悪玉に区別される
中性脂肪 : 体がはたらくための燃料となるようなもの 遊離脂肪酸は すぐに使える燃料 これをグリセリンとよばれる物質で3 分子束ねたものが中性脂肪であり 燃料を蓄える役割 遊離脂肪酸 遊離脂肪酸 遊離脂肪酸 遊離脂肪酸 グリセリン 遊離脂肪酸 グリセリン 遊離脂肪酸 遊離脂肪酸 + グリセリン 中性脂肪
脂質異常症とは? 脂質異常症 って あまり耳にしないけど?
LDL-C( など ) の管理目標 管理区分 一次予防脂質管理目標 ( mg /dl) LDL-C non HDL-C 低リスク <160 <190 中リスク <140 <170 高リスク <120 <150 冠動脈疾患の既往 <100 (<70) <130 (<100) 一次予防とは 冠動脈疾患の既往がない人が対象 二次予防とは 冠動脈疾患の既往がある人が対象 家族性高コレステロール血症は二次予防と同様に治療 後期高齢者 (75 歳以上 ) では治療管理目標値を個別に考慮する必要がある
TG や HDL-C の管理目標値 HDL コレステロール トリグリセライド ( 中性脂肪 TG) 40 mg /dl 以上 150 mg /dl 以下 TG の管理目標値 ぶっちゃけ 虚血性心疾患などの家族歴がなくて動脈硬化の進行も無ければ TG<1000 mg /dl でもいいのでは? (TG 1000 mg /dl では 急性膵炎が増えるので )
脂質異常症は なぜ問題? べつに なにも症状がないのに
脂質異常症は なぜ問題になる? 血管に悪影響をおよぼす! 症状が現れるのは突然! 他の生活習慣病 ( 糖尿病 内臓脂肪症候群 喫煙など ) と一緒になると とても悪い!!
総コレステロールが高いほど 血管合併症 ( 動脈硬化 ) のリスクが増加します 総コレステロール値別の虚血性心疾患合併率 10 合併率 ( % ) 5 0 ~200 ~240 ~280 ~320 ~360 ~400 400~ (mg/dl) 血清総コレステロール値 厚生省特定疾患 原発性高脂血症 研究班会議昭和 61 年度報告
総コレステロールは 低ければ低いほど良い?!?!? コレステロールが低いから死ぬのか もともと重症の病気があるから コレステロールが低いのか それが問題だ 虚血性心疾患
動脈硬化 : 進行のプロセス プラークの破綻 プラーク 酸化型 LDL 酸化型 LDL 酸化型 LDL 酸化型 LDL 酸化型 LDL 酸化型 LDL Phase I: 初期 Phase II: 進展 Phase III: 発症 動脈硬化の進展 Libby P: Circulation 104: 365-372, 2001 より改変
じゃ 中性脂肪の意味あいは? 中性脂肪も動脈硬化の危険因子である 中性脂肪そのものが直接血管にたまるわけではない 高中性脂肪において 超悪玉コレステロール (sd-ldl) が増加する 高中性脂肪において HDL ー C が減少する 中性脂肪は高値になることによって 動脈硬化が発生しやすい体内環境になっていることを知らせるアラームのようなもの
動脈硬化が起こす病気とは? 心臓狭心症 心筋梗塞 脳脳梗塞脳出血 その他閉塞性動脈硬化症 大動脈瘤 動脈硬化を検知する検査 CAVI MRA 頸動脈エコー 冠動脈 CT 血管造影検査
まとめ かつては高脂血症 今は脂質異常症と呼ぶ コレステロールは 体を構成する材料 中性脂肪は燃料 脂質異常症には 高 LDL-C 血症 低 HDL-C 血症 高中性脂肪血症がある 脂質異常症は 自覚症状で気づくことはできない 人間は ほとんどが 癌か動脈硬化で死に至る 脂質異常症は 各種動脈硬化による病気を引き起こす 脂質異常症 ( とくにLDL-C) は ほかの生活習慣病と一緒になって悪影響をおよぼす 脂質異常症によって引き起こされる動脈硬化は PWV 頸動脈エコー MRA(MRI) などの検査によって状態が把握できる
動脈硬化の検査について 7 月 18 日健康講座臨床検査科藤田佑奈
動脈硬化とは? 動脈の壁が厚くなったり 硬くなったりして本来の構造が壊れ 働きがわるくなる病変 の総称
動脈硬化が引き起こす病気 〇脳卒中脳梗塞や脳出血など脳の血管障害による病気のこと〇虚血性心疾患狭心症や心筋梗塞のこと〇大動脈瘤〇腎硬化症〇閉塞性動脈硬化症
動脈硬化の原因 (3 大危険因子 ) 〇高血圧〇脂質異常症 ( 高 LDL) 〇喫煙〇肥満〇糖尿病
高 LDL コレステロール高血圧 喫煙耐糖能異常 ( 糖尿病 ) さらに心電図異常 ( 左室肥大 ) が加わるにつれ 心筋梗塞や狭心症などの疾患の発症確率が高くなる 米 マサチューセッツ州のフラミンガムでの疫学調査
実際に模型で血管の硬さの 違いを触って比べてみましょう
検査の種類 1 血液検査 2 脈波伝播速 (CAVI) 3 エコー
検査の種類 1 血液検査 2 脈波伝播速 (CAVI) 3 エコ
動脈硬化の原因として 加齢 高血圧 糖尿病喫煙などがありますが一番の元凶と言われているのが脂質異常症!! 血液中の脂質の量を調べることによって脂質異常症かどうか調べることができます!!
HDL コレステロール 善玉コレステロールのことです 体内 ( 細胞 ) に蓄積された古いコレステロールを回収し 肝臓に送る働きがあります HDL コレステロールが多いと動脈の壁にコレステロールがたまりにくい!
LDL コレステロール 悪玉コレステロールのことです コレステロールを体中の細胞へ運ぶという働きをしています LDL コレステロールそのものは 決して悪いものではありません 必要以上に多くなってしまうと 細胞や血液の中にコレステロールがたまって酸化してしまい 動脈硬化などの原因に
中性脂肪 (TG) の役割 エネルギー源となる 体温を保つ外からの衝撃を吸収するなど 食事を食べたときにその時点では必要としない余分なエネルギーを 食事がとれない空腹状態に備えて蓄えておくための脂肪!!
高 LDL コレステロールとなる値は? 180mg/dl 以上 2110mg/dl 以上 3140mg/dl 以上
高 LDL コレステロールとなる値は 180mg/dl 以上 2110mg/dl 以上 3140mg/dl 以上
脂質異常症の診断基準 高 LDLコレステロール血症低 HDLコレステロール血症高 TG( 中性脂肪 ) 血症 140mg/dl 以上 40mg/dl 未満 150mg/dl 以上 LDL コレステロール値が 129~139mg/dl は境界域高コレステロール血症 最近では non HDL コレステロールが指標として取り入れられています
2 脈波伝播速 (CAVI)
CAVI 検査とは? CAVI 検査 ( 脈波伝播速度 ) は 心臓の拍動 ( 脈波 ) が動脈を通じて手や足にまで届く速度のことです 動脈壁が厚くなったり 硬くなったりすると 動脈壁の弾力性がなくなり脈波が伝わる速度が速くなります つまり脈波伝播速が早い = 動脈硬化が強い! 基準値は 1400 cm/ 秒以下であり 1000-1400 の方は注意が必要です 一緒に ABI( 足関節上腕血圧比 ) を測定していることもあります
ABI( 足関節上腕血圧比 ) とは? 足首と上腕の血圧を測定し その比率 ( 足首収縮期血圧 上腕収縮期血圧 ) を計算したものです 動脈の内膜にコレステロールを主成分とする脂質が沈着して内膜が厚くなり 粥状硬化ができて血管の内腔が狭くなる アテローム動脈硬化 の進行程度 血管の狭窄や閉塞などが推定できます 基準値 :0.9~1.3
検査の種類 1 血液検査 2 脈波伝播速 (CAVI) 3エコー
頸動脈のエコー 観察項目 1 動脈硬化の有無 2 プラークの観察 3 つまり具合の観察
1 動脈硬化の有無 第 1 層と第 2 層を内中膜複合体 (IMC) と呼び その厚さを計ります IMC の厚さは通常 1.1mm 未満です 1.1mm を超えると動脈硬化が示唆されます
2 プラークの確認 プラークのことを 粥腫 ( じゅくしゅ ) アテローム とも呼ばれ 粥状動脈硬化 アテローム硬化 の原因となります 1mm を超える限局性の壁隆起をプラークと呼び プラークの破綻が脳梗塞などを引き起こす可能性があります
3 つまり具合の観察 頸動脈の血管腔を観察します 総頸動脈の血管径は通常 5~9mm です 動脈硬化があると 血管がつまったり 狭小化したりします エコーで観察し 治療方針などを検討します
ご清聴ありがとうございました