今月の話題 アドバイザーが知っておきたい すまい給付金 のポイント 消費増税後に住宅を購入した人に現金給付をする すまい給付金 制度 来年 4 月の消費税率 8% 引上げに対する住宅取得支援は 住宅ローン減税の拡充とすまい給付金の 2 本建てだが 前者は従来からある制度の拡充であるのに対して 後者はまったくの新制度 収入要件や業者の代理受領の手続などポイントを解説した 一般社団法人金融検定協会試験部藤井耕一 2 本立ての住宅取得支援策 消費税率は 2014 年 4 月に 8% 2015 年 10 月に 10% へと 2 段階で引き上げられる予定となっている 高額消費である住宅については 増税の影響が大きいために 減税措置と給付金で増税の負担を軽減することが決まっている 減税措置の中心となるのが 毎年末の住宅ローン残高の1% が 10 年間にわたって所得税の額から控除する 住宅ローン減税 ( 図表 1 参照 ) の拡充である この住宅ローン減税制度は 2014 年 4 月からの消費税率 8% 引上げにあわせて 図表 2 のように大幅に拡充される 現行の住宅ローンの控除対象限度額は 2,000 万円なので 10 年間で最大 200 万円まで控除されるが 消費税が 8% または 10% が適用された場合は 住宅ローンの控除対象限度額は 4,000 万円まで拡大されるので 10 年間で最大 400 万円まで控除されることになる ただし 住宅ローン減税は所得税の納税額が限度となることから 所得税から控除しきれない場合は 翌年の住民税からも控除できることになっている こちらも 消費税が8% または 10% が適用された場合は 控除枠を拡大することになっている ( 最高で年間 9.75 万円 13.65 万円 ) 図表 1 住宅ローン減税の主な要件 1 自らが居住する住宅である ( 引渡しから 6 カ月以内 ) 2 床面積が 50 m2 3 年収が 3,000 万円以下 4 住宅ローンの借入期間が 10 年以上など 1
図表 2 住宅ローン減税の拡充 消費税率が 5% の場合 消費税率が 8% または 10% の 場合 適用期間 ~2014 年 3 月 2014 年 4 月 ~2017 年末 最大控除額 (10 年間合計 ) 200 万円 (20 万円 10 年間 ) 400 万円 (40 万円 10 年間 ) 控除率 控除期間 1% 10 年間 1% 10 年間 住民税からの控除上限額 9.75 万円 ( 前年課税所得 5%) 13.65 万円 ( 前年課税所得 7%) : 長期優良住宅 低炭素住宅の場合は 300 万円 (~2014 年 3 月 ) 500 万円 (2014 年 4 月 ~ 2017 年末 ) となる すまい給付金 とは しかし 住宅ローン減税は 支払っている所得税や住民税から控除する仕組みであるため 納税額の少ない収入の低い人ほど税額控除額を使い切れず消費増税による負担増を補えないことになる このため 住宅ローン減税の拡充による負担軽減効果が及ばない収入層に対して 住宅ローン減税とあわせて消費税率引上げによる負担の軽減をはかるものとして 今回 すまい給付金 という現金給付措置が設けられることになった すまい給付金 は こうした趣旨であるため 後述するように対象者の収入に上限があるほか 収入によって給付額が変わる仕組みになっている 対象となる住宅 すまい給付金 の対象となる住宅は 図表 3 のとおりである 1 住宅取得にあたって住宅ローンを利用しているか 利用していないか 2 取得する住宅が新築住宅であるか 中古住宅であるかにより それぞれ異なる要件となっている いずれの場合も (a) 住宅ローン減税の対象となる住宅の要件及び (b) すまい給付金独自の要件が設定されている (a) の要件として新築住宅 中古住宅いずれも 自らが居住する 床面積が 50m² 以上 (b) の要件として 第三者の検査によって一定の品質が確認された住宅であることが条件となる また ここでいう新築住宅とは 人の居住の用に供したことのない住宅であって 工事完了から 1 年以内のもの をいう 例えば 売れ残りなどで工事完了から 1 年以上経過した後の住宅は 中古住宅の要件を満たせば給付を受けることができる 中古住宅の場合は 売主が宅地建物取引業者であることが条件であり また 売り主が事業者ではない個人の中古住宅のような個人間売買の場合は消費税は非課税となる点に留意が必要だ また 住宅ローンを借りない現金取得者の場合は これらの要件に加えさらに追加要件が必要となる 住宅を引き渡された年の 12 月 31 日時点で 50 歳以上 収入の目安が 650 万円以下 ( 都道府県民税の所得割額が 13.30 万円以下 ) などの条件がある また 新築住 2
宅では フラット 35Sの基準 ( 耐震性 ( 免震住宅 ) 省エネルギー性 バリアフリー性 耐久性 可変性のいずれかに優れた住宅 ) を満たすことも必要となる 図表 3 対象となる住宅 住宅ローン利用者の条件 現金取得者の追加要件 新築住宅 自らが居住する 床面積が 50 m2以上 施行中の検査 : 施行中等に第三者の現場検査を受け一定の品質が確認された次の住宅 1 住宅瑕疵責任保険に加入 2 建設住宅性能表示制度を利用 3 住宅瑕疵担保責任保険法人により保険と同等の検査が実施上記の住宅ローン利用者の要件に加えて フラット 35Sの基準を満たす 50 歳以上 ( 住宅を引き渡された年の 12 月 31 日時点 ) 収入額の目安が 650 万円以下 ( 都道府県民税の所得割額が 13.30 万円以下 ) 中古住宅 売主が宅地建物取引業者である 自らが居住する 床面積が 50 m2以上 売買等の検査 : 売買時等に第三者の現場検査を受け現行の耐震基準及び一定の品質が確認された次の住宅 1 既存住宅売買瑕疵保険に加入 2 既存住宅性能表示制度を利用 ( 耐震等級 1 以上に限る ) 3 建設後 10 年以内で 新築時に住宅瑕疵担保責任保険に加入 ( または建設住宅性能表示制度を利用 ) 上記の住宅ローン利用者の要件に加えて 50 歳以上 ( 住宅を引き渡された年の 12 月 31 日時点 ) 収入額の目安が 650 万円以下 ( 都道府県民税の所得割額が 13.30 万円以下 ) 収入に応じて決まる給付額 すまい給付金 は 前述したように 住宅ローン減税の拡充による負担軽減効果が十分に及ばない収入層に対し負担軽減をはかる制度であるため 収入が一定以下の方が対象になり 給付額も収入に応じて決まる しかし 収入はあくまでも目安であり 実際には 都道府県民税の所得割額 によって決まる すなわち 収入 ( 所得 ) を全国一律に把握することが難しいため 収入に代わり 3
収入に応じて決まる都道府県民税の所得割額 ( 注 ) を基準として用いることになった したがって 市区町村が発行する住民税の課税証明書で 都道府県民税の所得割額を個別に確認する必要がある 給付額は図表 4のように 消費税率が 8% の時 10% の時それぞれにおいて異なる 消費税率が 8% の場合は 収入の目安が 510 万円以下 ( 都道府県民税の所得割額 9.38 万円以下 ) の方が対象 消費税率が 10% の場合は 収入の目安が 775 万円以下 ( 都道府県民税の所得割額 17.26 万円以下 ) の方が対象となる 消費税率 10% の場合は 収入の目安が 450 万円以下 ( 都道府県民税の所得割額 7.60 万円以下 ) であれば 給付基礎額が最大の 50 万円となる ( 注 ) 住民税には 所得に応じて課税される所得割と一律に課税される均等割がある 図表 4 給付基礎額 [ 消費税率 8% 時 ] ( 参考 ) 収入額の目安 1 都道府県民税の所得割額給付基礎額 ( ) 内は神奈川県内の市区町村で課税証明を受けた場合 2 425 万円以下 6.89 万円以下 (6.93 万円以下 ) 30 万円 425 万円超 475 万円以下 6.89 万円超 (6.93 万円超 ) 20 万円 8.39 万円以下 (8.44 万円以下 ) 475 万円超 510 万円以下 8.39 万円超 (8.44 万円超 ) 10 万円 9.38 万円以下 (9.43 万円以下 ) [ 消費税率 10% 時 ] ( 参考 ) 収入額の目安 1 都道府県民税の所得割額 給付基礎額 ( ) 内は神奈川県内の市区町村で課税証明を受けた場合 2 450 万円以下 7.60 万円以下 (7.64 万円以下 ) 50 万円 450 万円超 525 万円以下 7.60 万円超 (7.64 万円超 ) 40 万円 9.79 万円以下 (9.85 万円以下 ) 525 万円超 600 万円以下 9.79 万円超 (9.85 万円超 ) 30 万円 11.90 万円以下 (11.97 万円以下 ) 600 万円超 675 万円以下 11.90 万円超 (11.97 万円超 ) 20 万円 14.06 万円以下 (14.14 万円以下 ) 675 万円超 775 万円以下 14.06 万円超 (14.14 万円超 ) 17.26 万円以下 (17.36 万円以下 ) 10 万円 1: 夫婦 ( 妻は収入なし ) 及び中学生以下の子供が 2 人のモデル世帯において住宅取得する場合の夫の 収入額の目安である 実際の給付額は 中欄の都道府県民税の所得割額に基づき決定する 2: 神奈川県は 県民税率が他の都道府県と異なるために設定するものだが 対象としている所得額は 他の都道府県と同じである 4
取得住宅の持分割合 さらに 給付金は 取得住宅の持分割合に応じて計算される 給付額 = 給付基礎額 持分割合 図表 5の ( 例 1) のように 持分保有者が夫 1 人なら 給付基礎額の全額をもらうことがでる しかし ( 例 2) のように夫の持分割合が 2 分の 1 であれば 給付基礎額の 2 分の 1 同様に持分割合が1/4の妻の場合は給付基礎額の1/4となり 祖父のように居住しない場合は 給付の対象外となる 図表 5 持分割合と給付額の試算例 ( 例 1: 持分保有者が 1 人の場合 [ 税率 10% 時 ]) 住宅取得者 都道府県民税の 持分割合 居住 / 非居住 給付額 所得割額 夫 9.5 万円 1/1 居住 40 万円 ( 給付基礎額 [40 万円 ] 持分割合 [1/1]) ( 例 2: 持分保有者が複数の場合 [ 税率 10% 時 ]) 住宅取得者 都道府県民税の 持分割合 居住 / 非居住 給付額 所得割額 夫 9.5 万円 1/2 居住 20 万円 ( 給付基礎額 [40 万円 ] 持分割合 [1/2]) 妻 5.0 万円 1/4 居住 12.5 万円 ( 給付基礎額 [50 万円 ] 持分割合 [1/4]) 祖父 4.0 万円 1/4 非居住 給付対象外 ( 居住していないため ) 申請方法と受領方法すまい給付金の申請は 住宅を取得した本人が申請書を作成する また 工務店 ハウスメーカーや親族などが申請手続を代行することができる 申請方法としては すまい給付金申請窓口に書類を持参する窓口申請と すまい給付金事務局に書類を郵送する郵送申請の いずれでも申請可能である 主な必要書類としては 1 住民票の写し ( 引越し後の市区町村 ) 2 個人住民税の課税証明書 ( 引越し前の市区町村 ) 3 建物の登記事項証明書 謄本 ( 法務局 ) 5
4 住宅の不動産売買契約書または工事請負契約書また 住宅ローンを利用した場合 5 金銭消費貸借契約書などが挙げられる また すまい給付金は住宅を取得する人が申請するのが原則だが 工務店やハウスメーカーが代わりに給付金の受領までを行う 代理受領 も可能である 代理受領した場合 その受領金を相殺することで住宅代金の一部として充てることもできる なお 代理受領とする場合 住宅の売買契約 請負契約の際に 給付金事務局指定の代理受領特約を締結することが必要となる 6