生の 0.39% となっており 255 人に1 人が不登校児童であることが示されている ( 文部科学省,2015) また 不登校やいじめなどの問題が深刻化する中で その予防的対応に関するニーズは非常に高くなっている これらの学校不適応の問題の背景には 家庭 個人 学校 友人関係など様々な要因が想定さ

Similar documents
(Microsoft Word

.A...ren

(Microsoft Word \227F\210\344\226\203\227R\216q\227v\216|9\214\216\221\262.doc)

(Microsoft Word - \222\206\220\354\221\361\227v\216|)

学力向上のための取り組み

Microsoft Word - 209J4009.doc


フトを用いて 質問項目間の相関関係に着目し 分析することにした 2 研究目的 全国学力 学習状況調査結果の分析を通して 本県の児童生徒の国語及び算数 数学の学習 に対する関心 意欲の傾向を考察する 3 研究方法平成 25 年度全国学力 学習状況調査の児童生徒質問紙のうち 国語及び算数 数学の学習に対

2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

<4D F736F F D F4B875488C097A790E690B C78AAE90AC838C837C815B FC92E889FC92E894C5>

論文内容の要旨

修士論文 ( 要旨 ) 2017 年 1 月 攻撃行動に対する表出形態を考慮した心理的ストレッサーと攻撃性の関連 指導小関俊祐先生 心理学研究科臨床心理学専攻 215J4010 立花美紀

小学生の英語学習に関する調査

Water Sunshine

教育工学会研究会原稿見本

家庭における教育

Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

< F C18D E93788EF38D7590B B CC8F578C76834F E786C73>

(Microsoft Word - \211\211\217K\207T\225\361\215\220\217\221[1].doc)

<4D F736F F D E93785F8A7789C895CA5F8A778F438E9E8AD481458D7393AE814588D3977E5F8C8B89CA322E646F6378>

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

2.Q-U によるアセスメントのポイント Q-U によるアセスメントのポイント (1) プロット図と意欲プロフィールの両方をよく見る (2) 回答一覧表を見て生徒個々の質問項目への回答をつかむ (3) 学級満足度尺度と学校生活意欲尺度の結果を照らし合わせてみていく (4) Q-U の結果と担当教員か

論文題目 大学生のお金に対する信念が家計管理と社会参加に果たす役割 氏名 渡辺伸子 論文概要本論文では, お金に対する態度の中でも認知的な面での個人差を お金に対する信念 と呼び, お金に対する信念が家計管理および社会参加の領域でどのような役割を果たしているか明らかにすることを目指した つまり, お

p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

研究組織 研究代表者西山哲成 日本体育大学身体動作学研究室 共同研究者野村一路 日本体育大学レクリエーション学研究室 菅伸江 日本体育大学レクリエーション学研究室 佐藤孝之 日本体育大学身体動作学研究室 大石健二 日本体育大学大学院後期博士課程院生

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

(4) 在日米国人心理学者による逆翻訳 (5) 在米米国人心理学者による内容の検査と確認 (6) 予備調査 本調査の対象東京都 千葉県の小児科クリニック 市役所 子育て支援事業に来所した 12~35 か月 30 日齢の健康な乳幼児とその養育者 537 組を対象とした 本調査の内容本調査の質問紙には

4 身体活動量カロリズム内に記憶されているデータを表計算ソフトに入力し, 身体活動量の分析を行った 身体活動量の測定結果から, 連続した 7 日間の平均, 学校に通っている平日平均, 学校が休みである土日平均について, 総エネルギー消費量, 活動エネルギー量, 歩数, エクササイズ量から分析を行った

< A778F4B8A4A94AD8A778CA48B86815B967B95B E696E6464>

Microsoft Word - manuscript_kiire_summary.docx

調査結果概要

報道関係各位 2012 年 1 月 25 日 株式会社ベネッセコーポレーション 代表取締役社長福島保 高校受験調査 ~ 高校 1 年生は自らの高校受験をどのように振り返っているのか ~ 高校受験を通じて やればできると自信がついた 71% 一方で もっと勉強しておけばよかった 65% 株式会社ベネッ

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

中学生における「スクールカースト」とコミュニケーション・スキル及び学校適応感の関係 : 教室内における個人の地位と集団の地位という視点から

H

回答結果については 回答校 36 校の過去 3 年間の卒業生に占める大学 短大進学者率 現役 浪人含む 及び就職希望者率の平均値をもとに 進学校 中堅校 就職多数校 それぞれ 12 校ずつに分類し 全体の結果とともにまとめた ここでは 生徒対象質問紙のうち 授業外の学習時間 に関連する回答結果のみ掲

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

発達研究第 25 巻 問題と目的 一般に, 授業の中でよく手を挙げるなどの授業に積極的に参加している児童は授業への動機づけが高いと考えられている ( 江村 大久保,2011) したがって, 教師は授業に積極的に参加している児童の行動を児童の関心 意欲の現われと考えるのである 授業場面における児童の積

目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

表紙.indd

Microsoft Word 今村三千代(論文要旨).docx

<4D F736F F F696E74202D ED089EF959F8E838A7789EF C835B BB82CC A332090DD92758EE591CC8F4390B38CE3205

件法 (1: 中学卒業 ~5: 大学院卒業 ) で 収入については 父親 母親それぞれについて 12 件法 (0: わからない 収入なし~ 11:1200 万以上 ) でたずねた 本稿では 3 時点目の両親の収入を分析に用いた 表出語彙種類数幼児期の言語的発達の状態を測定するために 3 時点目でマッ

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

Exploring the Art of Vocabulary Learning Strategies: A Closer Look at Japanese EFL University Students A Dissertation Submitted t

現課程の高校生の実態

中カテゴリー 77 小カテゴリーが抽出された この6 大カテゴリーを 地域包括支援センター保健師のコンピテンシーの構成概念とした Ⅲ. 地域包括支援センター保健師のコンピテンシーリストの開発 ( 研究 2) 1. 研究目的研究 1の構成概念をもとに 地域包括支援センター保健師のコンピテンシーリストを

調査結果の概要

①H28公表資料p.1~2

平成 26 年度生徒アンケート 浦和北高校へ入学してよかったと感じている 1: 当てはまる 2: だいたい当てはまる 3: あまり当てはまらない 4: 当てはまらない 5: 分からない 私の進路や興味に応じた科目を選択でき

平成 27 年度全国体力 運動能力 運動習慣等調査愛媛県の結果概要 ( 公立学校 ) 調査期間 : 調査対象 : 平成 27 年 4 月 ~7 月小学校第 5 学年 ( 悉皆 ) 中学校第 2 学年 ( 悉皆 ) 男子 5,909 人男子 5,922 人 女子 5,808 人女子 5,763 人 本

の間で動いています 今年度は特に中学校の数学 A 区分 ( 知識 に関する問題 ) の平均正答率が全 国の平均正答率より 2.4 ポイント上回り 高い正答率となっています <H9 年度からの平均正答率の経年変化を表すグラフ > * 平成 22 年度は抽出調査のためデータがありません 平

因子分析

関西大学人間活動理論研究センター Technical Reports No.7 2 キャリア教育の効果と意義に関する研究 - 中学校における効果測定の試み - 関西大学人間活動理論研究センター 川﨑 友嗣 Center for Human Activity Theory, Kansai Univer

小学校の結果は 国語 B 算数 A で全国平均正答率を上回っており 改善傾向が見られる しかし 国語 A 算数 B では依然として全国平均正答率を下回っており 課題が残る 中学校の結果は 国語 B 以外の教科で全国平均正答率を上回った ア平成 26 年度全国学力 学習状況調査における宇部市の平均正答

国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント

研究成果報告書

1 家庭生活について 朝食及び就寝時刻 早寝早起き朝ごはん の生活リズムが向上している ( 対象 : 青少年 ) 朝食を食べている 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1.2 今回 (H27) 経年 1.7 前回 (H22)

(3) 生活習慣を改善するために

解禁日時新聞平成 30 年 8 月 1 日朝刊テレビ ラジオ インターネット平成 30 年 7 月 31 日午後 5 時以降 報道資料 年月日 平成 30 年 7 月 31 日 ( 火 ) 担当課 学校教育課 担当者 義務教育係 垣内 宏志 富倉 勇 TEL 直通 内線 5

2 調査結果 (1) 教科に関する調査結果 全体の平均正答率では, 小 5, 中 2の全ての教科で 全国的期待値 ( 参考値 ) ( 以下 全国値 という ) との5ポイント以上の有意差は見られなかった 基礎 基本 については,5ポイント以上の有意差は見られなかったものの, 小 5 中 2ともに,


スライド 1

必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

本調査では 学習時間を十分に取っている子どもほど学業成績がよいという結果が明らかになりました 学習の 量 と 成績 は ある程度比例します この意味で 一定の学習時間を確保することは 学力を高めるのに重要な要素といえます しかし一方で 相対的に短い学習時間でも 学習方法の工夫によって成果を上げること

岐阜市における「医薬品の正しい使い方」に関する調査アンケート結果

<4D F736F F D A89898F4B4494C792F990B394C5>

PowerPoint プレゼンテーション

自己愛人格目録は 以下 7 因子が抽出された 誇大感 (α=.877) 自己愛憤怒 (α=.867) 他者支配欲求 (α=.768) 賞賛欲求 (α=.702) 他者回避 (α=.789) 他者評価への恐れ (α=.843) 対人過敏 (α=.782) 情動的共感性は 以下 5 因子が抽出された 感

平成 30 年度全国学力 学習状況調査の結果について ( 速報 ) 1. 調査の概要 実施日平成 30 年 4 月 17 日 ( 火 ) 調査内容 1 教科に関する調査 ( 国語 A 国語 B 算数 数学 A 算数 数学 B 理科 (3 年に 1 回 )) A 問題 : 主として知識に関する問題 B

平成 25 年度学力定着状況確認問題の結果について 概要版 山口県教育庁義務教育課 平成 2 6 年 1 月 1 実施概要 (1) 目 的 児童生徒の客観的な学力状況の経年的な把握と分析を通して 課題解決に向けた 指導の工夫改善等の取組の充実を図る全県的な検証改善サイクルを確立し 県内す べての児童

IbarakiChristianUniversityLibrary 青年期の過剰適応と大学適応感の関連茨城キリスト教大学紀要第 52 号社会科学 p.93~ 青年期の過剰適応と大学適応感の関連 岩﨑眞和 五十嵐透子 要約本研究では青年期の過剰適応状態への臨床心理学的援助とその予防に向けた

資料1 団体ヒアリング資料(ベネッセ教育総合研究所)

高田 : 発達障害傾向のある児童を担任する小学校教師の支援 そこで本研究では, 発達障害傾向児担任教師の支援のため, 小学校教師の発達障害傾向児の認知, メンタルヘルスの指標であるバーンアウト傾向, 職場環境ストレッサー及び自己効力感との関連を検討することを目的とした なお, 本研究では高田 (20

ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

スライド 1

資料6 「コミュニケーション能力」に関する指摘・調査等

かたがみ79PDF用

うどん屋巡りで授業遅刻

Kobe University Repository : Kernel タイトル Title 著者 Author(s) 掲載誌 巻号 ページ Citation 刊行日 Issue date 資源タイプ Resource Type 版区分 Resource Version 権利 Rights DOI

tokusyu.pdf

ンバーは問題を解決し継続的な努力を通じて活動を改善できるという集団の効力感に関する感覚が存在する ことを示唆していると述べ 個人レベルにおける自己効力感と活動結果の関係は 集団レベルにおいても適用できるとし 教師同士の協働的関係を通して教師集団の力量を向上させることについて報告している また 近年学

( 続紙 1) 京都大学博士 ( 教育学 ) 氏名田村綾菜 論文題目 児童の謝罪と罪悪感の認知に関する発達的研究 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 児童 ( 小学生 ) の対人葛藤場面における謝罪の認知について 罪悪感との関連を中心に 加害者と被害者という2つの立場から発達的変化を検討した 本論文は

平成20年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果(概要)

(2) 不登校児童生徒の状況について ( 児童生徒調査より ) 不登校児童生徒は, 中学 2 年生が最も多く 867 人, 次いで中学 3 年生が 786 人となっている 不登校になった学年は, 中学 1 年からが 970 人であり, 不登校児童生徒全体の約 34.8% を占める 依然として中学 1

Taro-① 平成30年度全国学力・学習状況調査の結果の概要について

2 各教科の領域別結果および状況 小学校 国語 A 書くこと 伝統的言語文化と国語の特質に関する事項 の2 領域は おおむね満足できると考えられる 話すこと 聞くこと 読むこと の2 領域は 一部課題がある 国語 B 書くこと 読むこと の領域は 一定身についているがさらに伸ばしたい 短答式はおおむ

領域別正答率 Zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz んんんんんんんんんんんんん 小学校 中学校ともに 国語 A B 算数( 数学 )A B のほとんどの領域において 奈良県 全国を上回っています 小学校国語 書く B において 奈良県 全国を大きく上回っています しかし 質問紙調査では 自分

(2) 学習指導要領の領域別の平均正答率 1 小学校国語 A (%) 学習指導要領の領域 領 域 話すこと 聞くこと 66.6(69.2) 77.0(79.2) 書くこと 61.8(60.6) 69.3(72.8) 読むこと 69.9(70.2) 77.4(78.5) 伝統的な言語文化等 78.3(

研究報告用MS-Wordテンプレートファイル

調査結果概要 ( 旭川市の傾向 ) 健康状態等 子どもを病院に受診させなかった ( できなかった ) 経験のある人が 18.8% いる 参考 : 北海道 ( 注 ) 17.8% 経済状況 家計について, 生活のため貯金を取り崩している世帯は 13.3%, 借金をしている世帯は 7.8% となっており

Microsoft Word 年度入学時調査報告.docx

第 4 章大学生活および経済 生活支援とキャリア行動 キャリア意識との関連 本章では 学生の大学生活や経済 生活支援の利用状況をふまえて キャリア行動やキャリア意識に違いが見られるかについて検討する 1 節では 大学生活とキャリア支援の利用との関連を示し どのような大学生活を送る学生がキャリア支援を

p 札幌市小学校).xls

KONNO PRINT

調査の目的この報告書は, 第 1 に,2011 年から 2012 年にかけての 4 回の調査の結果をもとに, サポーツ京田辺の生徒の皆さんの学習意欲の状態を複数の側面から把握した結果を報告することを目的としています また第 2 に, 生徒の皆さんの勉強の仕方に関する考え方や実際の勉強の仕方を知り,

世の中の人は信頼できる と回答した子どもは約 4 割 社会には違う考え方の人がいるほうがよい の比率は どの学年でも 8 割台と高い 一方で 自分の都合 よりみんなの都合を優先させるべきだ は 中 1 生から高 3 生にかけて約 15 ポイント低下して 5 割台にな り 世の中の人は信頼できる も

Microsoft Word - 05出力帳票詳細

PowerPoint プレゼンテーション

Transcription:

\[ & Sw^R The Development of the Scale of School Adjustment for Elementary School Children [ ~< ~ fiq > Æ ~ ƒlx Toyokazu YAMAGUCHI, Mai SHIMOMURA, Miku TAKAHASHI Natsuko OKUDA,Kumiko MATSUZAKI 要旨本研究の目的は 小学生の学校適応感を測定するための尺度を作成し信頼性と妥当性を検討することであった 小学生の児童 608 名を対象に質問紙調査を実施し 有効回答者 525 名を対象に 因子分析による尺度の検討を行った その結果 第 Ⅰ 因子 心理 社会 5 項目 第 Ⅱ 因子 学習 進路 4 項目 第 Ⅲ 因子 先生との関係 2 項目 第 Ⅳ 因子 心身健康 2 項目の4 因子から構成されていることがわかった よって以上 4 因子 13 項目を以て小学生版学校適応感尺度とした 小学生版学校適応感尺度の信頼性を検討するため Cronbach のα 係数を算出した その結果 各下位尺度のα 係数は 心理 社会.76 学習 進路.70 先生との関係.84 心身健康.65 であった 以上より 一定の内的一貫性が示された 次に 妥当性を検討するため 小学生版学校適応感尺度と Q-U におけるピアソンの積率相関係数を算出した その結果 小学生版学校適応感尺度下位尺度得点と Q-U 下位尺度得点の間に r=.20~.71(p<.001) の有意な相関関係がみられた 以上より各下位尺度の基準関連妥当性が示された キーワード : 小学生 学校適応感 Q-U Ⅰ. 問題 目的 近年 学校現場における不登校 いじめなどの問題は年々増加傾向にあり 社会的にも大きな問題 として取り上げられている 平成 26 年度の小学校の不登校児童数は 25,866 名で その割合は全小学 111

生の 0.39% となっており 255 人に1 人が不登校児童であることが示されている ( 文部科学省,2015) また 不登校やいじめなどの問題が深刻化する中で その予防的対応に関するニーズは非常に高くなっている これらの学校不適応の問題の背景には 家庭 個人 学校 友人関係など様々な要因が想定され 多くの研究が進められている さらに これらの問題行動に対して生徒が学校環境において適応感を持つか否かが 予防の上で重要とされている ( 大重 渡辺,2008) しかし 学校適応感に関する研究の対象は 中 高等学校の生徒が多く 小学校の児童を対象とした研究は多くない また 学校適応感尺度については 中 高等学校用は作成されている ( 池田ら,2012) が 小学生版は作成されていない また 小学生版学校適応感尺度の作成にあたり 中 高等学校と異なる点として 小学生の学校適応感には教師との関わりが関連していることなどが考えられる ( 中井 庄司,2008; 河野,1988) よって 小学生用の学校適応感尺度の作成は 小学生の学校適応感を測定し 予防的対応をするためにも必要であり その作成は喫緊の課題であるといえる そこで 小学生版学校適応感尺度の作成を本研究の目的とする Ⅱ. 方法 (1) 調査協力者 関東地方の公立小学校 5 校に在籍する小学 4~6 年生の 608 名に調査を実施した (2) 調査時期 2015 年 6 月 ~7 月 (3) 調査手続き 研究協力に同意を得た関東地方の小学校 5 校にて質問紙調査を実施した 調査の概要を管理職に 説明し 同意の得られた小学校に調査用紙を郵送し 実施後返送してもらった (4) 質問項目 1フェイスシート学年 性別を尋ねた 2 小学生の学校適応感に関する質問紙山口 水野 石隈 (2004) の中学生の悩みと深刻度尺度を参考に 臨床心理学を専攻する大学院 112

小学生版学校適応感尺度の作成 生 3 名 指導教員 1 名により検討をし 作成した 20 項目を採用した まったくあてはまらない ~ とてもよくあてはまる の 4 件法を用いて回答を求めた 参考にした中学生の悩みと深刻度尺 度 20 項目を以下に示す ( 表 1) 表 1 中学生の悩みと深刻度尺度 ( 山口ら,2004) 1 先生に対して不満があるとき 2 教科の先生の接し方や教え方に不満があるとき 3 自分の性格や体格で気になることがあるとき 4 部活動がうまくいかないとき 5 異性との交際のことで悩みがあるとき 6 友だちとのつき合いが上手くいかなかったり 友だちがいないとき 7 自分の家庭のことで心配や悩みがあるとき 8 自分に合った勉強方法がわからないとき 9 授業の内容がわからないとき 10 何となく意欲がわかず 勉強する気になれないとき 11 勉強しても成績が伸びないとき 12 成績や勉強のことで親の期待が重荷のとき 13 将来の自分の進路について心配があるとき 14 進路や就職のことに真剣に取り組めないとき 15 進路選択において 自分の希望が親や先生の意見と一致しないとき 16 自分の適性がわからないとき 17 学校に行くのがつらくなったり 行きたくなくなったりしたとき 18 学校あるいは学級になじめないとき 19 一日中 眠かったり 身体がだるくなったりしたとき 20 頭痛 腹痛などが起こるとき 3 楽しい学校生活を送るためのアンケート Q-U 小学校 4~6 年生用 ( 河村,1998) 学級集団をアセスメントし より適切な支援をするための尺度 学校生活意欲尺度 9 項目と 学級満足度尺度 12 項目から構成される 全 21 項目 4 件法 小学生版学校適応感尺度との基準関連妥当性を検証するために用いる尺度である なお これは小学生版学校適応感尺度との間に正の相関が想定される 113

(5) 倫理的配慮質問用紙の冒頭では 回答は任意であること 研究以外の目的には使用しないこと 個人が特定されないこと等が説明されている また 調査用紙への回答をもって調査協力への同意とみなした Ⅲ. 結果 (1) 調査対象者 質問紙を配布し 608 名より回答が得られた 回収された質問紙のうち 空欄や不備のなか った 525 名のデータを分析対象とした ( 有効回答率 86.35%) (2) 小学生の学校適応感に関する質問紙の因子分析小学生の学校適応感に関する質問紙の 20 項目に対し因子分析を行った 質問紙の 20 項目を以下に示す ( 表 2) まず 記述統計を算出し天井効果 フロア効果の検討を行った その結果 9 項目について天井効果が見られた そのため臨床心理学を専攻に学ぶ大学院生 2 名と指導教員 1 名で質問項目の検討を行った その結果 分析において必要な項目であると判断し 全項目を含む 20 項目を分析対象とした 次に 全 20 項目について主因子法 プロマックス回転による因子分析を行った スクリープロット因子解釈可能性から4 因子構造が妥当であると考えられた そこで 再度 4 因子を仮定して因子分析を行った その結果 因子負荷量が.40 未満であった 3. 自分の性格や体格が気になる 7. 家族のことで心配や悩みはない 10. なんとなくやる気がおきず 勉強する気になれない 11. 勉強しても 成績があがらない 12. 成績や勉強のことで 親に注意される 15. 自分のやりたいことを 親や先生が応援してくれる 16. 自分の得意なことや 苦手なことがわかる の 7 項目を分析から除外し 再度因子分析を行った結果 最終的に 13 項目となった ( 表 3) 114

小学生版学校適応感尺度の作成 表 2 小学生の学校適応感に関する質問紙の質問項目 1 先生にまんぞくしている 2 先生との関係や 先生の教えかたにまんぞくしている 3 自分の性格や体格が気になる 4 クラスでうまくいっている 5 男の子は女の子と 女の子は男の子と なかよくできている 6 友だちとなかよくできている 7 家族のことで心配や悩みはない 8 自分にあった勉強方法がわかる 9 じゅぎょうの内容がわかる 10 なんとなくやる気がおきず 勉強する気になれない 11 勉強しても 成績があがらない 12 成績や勉強のことで 親に注意される 13 将来の夢がある 14 勉強やクラスの活動に まじめに取り組むことができている 15 自分のやりたいことを 親や先生が応援してくれる 16 自分の得意なことや 苦手なことがわかる 17 学校に行くのが楽しい 18 学校やクラスになじんでいる 19 一日中 ねむかったり 体がだるくなったりする 20 よく頭が痛くなったり お腹が痛くなったりする 第 Ⅰ 因子は 6. 友だちとなかよくできている 18. 学校やクラスになじんでいる など 周囲の生徒とうまくいっている内容に関する5 項目で構成されており 心理 社会 因子と命名した 第 Ⅱ 因子は 9. じゅぎょうの内容がわかる 14. 勉強やクラスの活動に まじめに取り組むことができている など 学習や進路に関する 4 項目で構成されており 学習 進路 因子と命名された 第 Ⅲ 因子は 1. 先生にまんぞくしている 2. 先生との関係や 教えかたにまんぞくしている など 先生との関係に関する2 項目で構成されており 先生との関係 因子と命名された 第 Ⅳ 因子は 19. 一日中 ねむかったり 体がだるくなったりする 20. よく頭が痛くなったり お腹が痛くなったりする など 体調に関する 2 項目で構成されており 心身健康 因子と命名された 各因子間の相関は 心理 社会 と 学習 進路 において r=.66 心理 社会 と 先生との関係 において r=.54 学習 進路 と 先生との関係 において r=.61 であり 比較的強い正の相 115

関がみられた ( 表 3) 心理 社会 と 心身健康 において r=.29 学習 進路 と 心身健康 において r=.28 であり 弱い正の相関がみられた 先生との関係 と 心身健康 において r=.18 であり ほとんど相関がみられなかった 以上より この 13 項目をもって 小学生版学校適応感尺度 とする 表 3 小学生版学校適応感尺度の因子分析 (Promax 回転後の因子パターン ) < 心理 社会 (α =.76)> Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 6. 友だちとなかよくできている.77 -.05 -.09.01 18. 学校やクラスになじんでいる.66.05.04 -.02 4. クラスでうまくいっている.65.03 -.02.05 17. 学校に行くのが楽しい.46.09.19 -.04 5. 男の子は女の子と 女の子は男の子と仲良くできている.46.04.02 -.01 < 学習 進路 (α =.70)> 9. じゅぎょうの内容がわかる -.04.73.03.07 14. 勉強やクラスの活動に まじめに取り組むことができている.04.73 -.04 -.06 8. 自分に合った勉強方法がわかる.03.59 -.02.07 13. 将来の夢がある.05.43.00 -.09 < 先生との関係 (α =.84)> 1. 先生にまんぞくしている.02 -.08.88.02 2. 先生との関係や 教えかたにまんぞくしている -.03.08.85 -.01 < 心身健康 (α =.65)> 19. 一日中 ねむかったり 体がだるくなったりする -.04.04.04.71 20. よく頭が痛くなったり お腹が痛くなったりする.05 -.06 -.03.70 因子間相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ -.66.54.29 Ⅱ -.61.28 Ⅲ -.18 Ⅳ - (3) 信頼性の検討内部一貫性による信頼性を検討すると 各因子の Cronbach のα 係数は 第 Ⅰ 因子 心理 社会 は5 項目でα=.76, 第 Ⅱ 因子 学習 進路 は4 項目でα=.70, 第 Ⅲ 因子 先生との関係 は2 項目で α=.84, 第 Ⅳ 因子 心身健康 は2 項目でα=.65 であった 116

小学生版学校適応感尺度の作成 したがって各因子に十分な内的一貫性が示された (4) 基準関連妥当性の検討次に基準関連妥当性の検討のために 小学生版学校適応感尺度と Q-U との相関係数を算出した ( 表 4) その結果 小学生版学校適応感尺度下位尺度得点と Q-U 下位尺度得点の間に r=.20~r=.71 (p<.001) の有意な正の相関関係がみられた したがって一定の基準関連妥当性があることが示された 表 4 学校適応感尺度とQ-Uの下位尺度間相関, 平均値,SD N=525 心理 社会 学習 進路 先生との関係 心身健康 M 3.36 3.38 3.45 2.81 SD.55.54.66.90 やる気 (Q-U).41 **.60 **.30 **.30 ** 居心地 (Q-U).62 **.71 **.50 **.20 ** ** p <.001 Ⅳ. 考察 (1) 小学生版学校適応感尺度の作成に関して本研究の目的は 小学生の学校適応感を測定する尺度を作成し 信頼性と妥当性を検討することであった 本尺度を作成するにあたり 山口ら (2004) を参考に 内容を児童向けに改め小学生の学校適応感に関する項目を設定した その結果 小学生版学校適応感尺度から 心理 社会 学習 進路 先生との関係 心身健康 の4 因子が抽出された また 十分な信頼性と妥当性が示されたことから小学生版学校適応感尺度を 4 因子とすることが適切であると確認された これら4 因子のうち 心理 社会 学習 進路 心身健康 は山口ら(2004) の先行研究と同様の因子が抽出された なお 学習 と 進路 の因子が本尺度では一つの因子に統合されたことから 小学生は中学生と比較して学習 進路の関連の強さが示唆された また 今回新たに 先生との関係 が抽出された 質問項目の内容から推察すると 学校適応感を高めるためには先生との関係が重要であることが示唆された 中井 庄司 (2008) は 教師の行動と児童の学校適応感の関連を指摘しており 河野 (1988) は 教師との関係が生徒の学校適応や人格形成にまで影響を及ぼすことを指摘している よって この結果は 従来の先行研究と一致するもので 117

あった さらに 小学校は中学校とは異なり学級担任制であり 先生との関連がより重要なのであろう 本研究の結果により 小学生の学校適応感における先生との関係の重要性が確認されたといえる さらに 信頼性を検討するため Cronbach のα 係数を算出した その結果 各下位尺度のα 係数は 心理 社会.76 学習 進路.70 先生との関係.84 心身健康.65 であった 以上より 一定の内的一貫性が示された 次に 妥当性を検討するため 小学生版学校適応感尺度と Q-U におけるピアソンの積率相関係数を算出した その結果 小学生版学校適応感尺度下位尺度得点と Q-U 下位尺度得点の間に r=.20~.71(p<.001) の有意な正の相関関係がみられた 以上より尺度の基準関連妥当性が示された (2) 今後の課題本研究から 小学生版学校適応感尺度 の信頼性 基準関連妥当性は確認された しかし 因子分析の結果 先生との関係 心身健康 の2 因子が2 項目からの構成となった そのため 再度小学生版学校適応感尺度を検討する必要がある また 本研究は尺度作成にとどまり 小学生の学校適応感を検討するまでに至らなかった 今後は 性差 学年差 さらにそれを促進したり阻害したりする要因についても検討することが課題となる なお この研究は 平成 27 年度跡見学園特別研究助成費を受けた ;~ Y 池田正博 日高美咲 松沼風子 小杉考司 (2012). 新学校適応感尺度 FIT 高校生版の開発, 日本教育心理学会総会発表論文集,54,198. 河村茂雄 (1998). たのしい学校生活を送るためのアンケート Q-U 実施 解釈ハンドブック( 小学館編 ), 図書文化. 河野義章 (1988). 教師の親和的手がかりが子どもの学習に及ぼす効果, 教育心理学研究,36,161-165. 文部科学省 (2015). 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査, http://www.e-stat.go.jp/sg1/estat/list.do?bid=000001062614&cycode=0 2015 年 11 月 18 日閲覧中井大介 庄司一子 (2008). 中学生の教師に対する信頼感と学校適応感との関連, 発達心理学研究,19,57-68. 大重啓 渡辺弥生 (2008). 親の養育態度が子どもの友人関係および学校適応感に及ぼす影響, 日本教育心理学会総会発表論文集,50,333. 山口豊一 水野治久 石隈利紀 (2004). 中学生の悩みの経験 深刻度と被援助志向性の関連 学校心理学の視点を生かした実践のために, カウンセリング研究,37,241-249. 118