第6回 糖新生とグリコーゲン分解

Similar documents
第6回 糖新生とグリコーゲン分解

第4回 炭水化物の消化吸収と代謝(1)

次の 1~50 に対して最も適切なものを 1 つ (1)~(5) から選べ 1. 細胞内で 酸素と水素の反応によって水を生じさせる反応はどこで行われるか (1) 核 (2) 細胞質基質 (3) ミトコンドリア (4) 小胞体 (5) ゴルジ体 2. 脂溶性ビタミンはどれか (1) ビタミン B 1

第4回 炭水化物の消化吸収と代謝(1)

スライド 1

スライド 1

1. 電子伝達系では膜の内外の何の濃度差を利用してATPを合成するか?

第11回 肝、筋、脳、脂肪組織での代謝の統合

PowerPoint プレゼンテーション

解糖系でへ 解糖系でへ - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 AT AT リン酸化で細胞外に AT 出られなくなる 異性化して炭素数 AT の分子に分解される AT 2 ホスホエノール AT 2 1

第1回 生体内のエネルギー産生

第1回 生体内のエネルギー産生

<4D F736F F F696E74202D2093AE95A88DD C88A77824F DD CC91E38ED3205B8CDD8AB B83685D>

03飢餓と飽食15

スライド 1

スライド 1

スライド 1

スライド 1

PowerPoint プレゼンテーション

スライド 1

スライド 1

第 8 章代謝概論 8.1 はじめに 代謝 (metabolism): 栄養素 生体成分の構築 8.2 異化と同化 講義用補助資料 の獲得 異化 (catabolism): 外界から取り込んだ物質 ( 食物 ) を分解し, より簡単な化合物に変 え エネルギーを取り出す過程 発生するエネルギーで,A

シトリン欠損症説明簡単患者用

脂質の分解小腸 脂肪分解とカルニチン < 胆汁 > 脂肪の乳化 < 膵液 膵液リパーゼ ( ステアプシン )> 脂肪酸 グリセリン 小腸より吸収吸収された脂肪酸は エステル結合により中性脂肪として蓄積されます 脂肪酸は 体内で分解されエネルギーを産生したり 糖質や余剰のエネルギー産生物質から合成され

PowerPoint プレゼンテーション

EC No. 解糖系 エタノール発酵系酵素 基質 反応様式 反応 ph 生成物 反応温度 温度安定性 Alcohol dehydrogenase YK エナントアルデヒド ( アルデヒド ) 酸化還元反応 (NADPH) 1ヘプタノール ( アルコール ) ~85 85 で 1 時

1-1 栄養素の代謝と必要量 : 糖質 炭水化物 1 糖質の消化吸収 デンプンは唾液中のα アミラーゼの作用により加水分解され かなりの部分が消化を受ける ヒト の唾液中に存在するデンプン消化酵素は α アミラーゼがほとんどである 胃では糖質の消化酵素は 分泌されないが 食道から胃内に流入した食塊が

スライド 1

4 章エネルギーの流れと代謝

スライド 1

スライド 1

細胞の構造

スライド 1

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

第 Ⅳ 部細胞の内部構造 14 エネルキ ー変換 -ミトコント リアと葉緑体 ( 後半 )p 葉緑体 chloroplast と光合成 photosynthesis 4. ミトコント リアと色素体の遺伝子系 5. 電子伝達系 electron-transport chain の進

生化学平成 18 年度 (2006) 前期試験問題 2 年生本試験 + 再々試験 平成 18 年 7 月 26 日 ( 水 I 第一講義室 ) 解説 金 番号 X 氏名生化一郎点 問題 1 ( 初版 Essential 問題 7-19, 第 2 版 Essential 問題 7-1

第2回 栄養素

untitled

ドリル No.6 Class No. Name 6.1 タンパク質と核酸を構成するおもな元素について述べ, 比較しなさい 6.2 糖質と脂質を構成するおもな元素について, 比較しなさい 6.3 リン (P) の生体内での役割について述べなさい 6.4 生物には, 表 1 に記した微量元素の他に, ど

PowerPoint プレゼンテーション

2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

相模女子大学 2017( 平成 29) 年度第 3 年次編入学試験 学力試験問題 ( 食品学分野 栄養学分野 ) 栄養科学部健康栄養学科 2016 年 7 月 2 日 ( 土 )11 時 30 分 ~13 時 00 分 注意事項 1. 監督の指示があるまで 問題用紙を開いてはいけません 2. 開始の

スライド 1

講義資料2012

第8回 脂質代謝

細胞骨格を形成するタンパク質

スライド タイトルなし

生化学第3版.indb

生物有機化学

T目次_責了.indd

スライド 1

<4D F736F F D B695A8817A E93785F8D918E8E82CC82E282DC E646F63>

(2) 二 糖 類 二 糖 類 は, 単 糖 が2つグリコシド 結 合 したものである たとえば,マルトース( 麦 芽 糖 )は,グル コース+グルコース,スクロース(ショ 糖 )は,グルコース+フルクトース,ラクトース( 乳 糖 )は, グルコース+ガラクトースのグリコシド 結 合 によるものであ

< 研究の背景 > 運動に疲労はつきもので その原因や予防策は多くの研究者や競技者 そしてスポーツ愛好者の興味を引く古くて新しいテーマです 運動時の疲労は 必要な力を発揮できなくなった状態 と定義され 疲労の原因が起こる身体部位によって末梢性疲労と中枢性疲労に分けることができます 末梢性疲労の原因の

3 章酵素と代謝

日本食品成分表分析マニュアル第4章

犬の糖尿病は治療に一生涯のインスリン投与を必要とする ヒトでは 1 型に分類されている糖尿病である しかし ヒトでは肥満が原因となり 相対的にインスリン作用が不足する 2 型糖尿病が主体であり 犬とヒトとでは糖尿病発症メカニズムが大きく異なっていると考えられている そこで 本研究ではインスリン抵抗性

表 1 必須アミノ酸の種類とそれを多く含む食べ物 必須アミノ酸の名称 多く含む食べ物 ヒスチジン 鶏むね肉 チーズ かつお節 マグロなど フェニルアラニン 豚ヒレ肉 鶏卵 チーズ かつお節 するめなど トリプトファン 鶏むね肉 鶏卵 チーズ かずのこなど リジン 豚もも肉 鶏卵 チーズ 煮干しなど

細胞の構造

酵素

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

3. 生化学的検査 >> 3C. 低分子窒素化合物 >> 3C045. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料採取量測定材料ネ丸底プレイン ( 白 ) 尿 9 ml 注 外 N60 セイカ 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ

成人の人体に占める水の量 ( 重量 ) は細胞内液が 35%, 細胞外液が 25% を占める. 細胞外液は血漿, 組織間液, 消化液に分けられる. 血液は体重の ( 13 ) 分の 1 であり, 血漿は血液から血球 ( 赤血球, 白血球, 血小板 ) を除いたものである. 血液の ph は ( 7.

1~4 をうめよ 1 解糖系 2 クエン酸 細胞へ入った糖は 3 段階の異化を経て分解される (1 ) と (2 ) と回路 3 電子伝達系 (3 ) 1 は細胞質ゾルで 2 と 3 は (4 ) で行われる 4 ミトコンドリア 糖新生はグルコースの他にエネルギーの産生や消費をする反応である 注 )

保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

セリン OH 基は極性をもつ 親水的である トレオニン OH 基は極性をもつ 親水的である チロシン OH 基は極性をもつ 親水的である 解離してマイナスの電荷を帯びる 4 側鎖 アラニン 疎水的である グリシンの次に単純 グリシン もっとも単純な構造のアミノ酸 α 炭素が不斉炭素でないので唯一立体


2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

スライド 1

第12回 代謝統合の破綻 (糖尿病と肥満)

Microsoft PowerPoint - protein1.ppt [互換モード]

木村の有機化学小ネタ 糖の構造 単糖類の鎖状構造と環状構造 1.D と L について D-グルコースとか L-アラニンの D,L の意味について説明する 1953 年右旋性 ( 偏光面を右に曲げる ) をもつグリセルアルデヒドの立体配置が

生活設計レジメ

44 4 I (1) ( ) (10 15 ) ( 17 ) ( 3 1 ) (2)

I II III 28 29


豚.indd

第3回 糖類(炭水化物)

代 謝

生化学 ( 糖質と脂質の構造 ) 糖質に関する記述である 正しいのはどれか (1) ケトースは アルデヒド基を持つ (2) 天然の糖質は D 型よりも L 型の光学異性体が多い (3) セルロースは α-1,4- グリコシド結合を持つ (4) アミロースは α-1,6- グリコシド結合を

Microsoft PowerPoint マクロ生物学9

新技術説明会 様式例

実践正誤問題(解答・解説)

Microsoft PowerPoint - 後期授業10_2016Jan11

<4D F736F F D B B BB2D834A836F815B82D082C88C60202D B2E646F63>

Word Pro - matome_7_酸と塩基.lwp

PowerPoint プレゼンテーション

▲ アミノ酸・ペプチド・たんぱく質

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

グリーンパパイヤ最大の特長は 植物には大変珍しく三大栄養素を分解する酵素をすべて含 んでいるということです タンパク質分解酵素 ( プロテアーゼ ) 血管内で血小板が固まるのを抑制し 血栓ができるのを防ぐ 脂肪分解酵素 ( リパーゼ ) 血管内中性脂肪やコレステロールを分解する 糖質分解酵素 ( ア

ポイント 糖尿病性腎臓病の進展に関わる新しいメカニズムを解明! ~2 つのフルクトース代謝酵素の異なる役割 ~ 糖尿病性腎臓病の進展において 2 種の果糖 ( フルクトース ) の代謝酵素 ケトヘキソキナー ゼ (KHK-A KHK-C) の相反する役割を解明しました 糖尿病ではポリオール経路の活性

9.Ⅵ.低血糖症の概要・体質・原因

10 高分子化学 10.1 高分子序論炭素分子が共有結合で結びついていると 高分子化学物という 例えば ポリエチレンや PET ナイロン繊維などの人工物やセルロース たんぱく質などの生体化合物である 黒鉛は高分子に数えないのが普通である 多くの高分子は 小さな繰り返しの単位が 結びつき 高分子となっ

Untitled

平成20年度 神戸大学 大学院理学研究科 化学専攻 入学試験問題

Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

切に分類することが重要である. 炭水化物は,1 単糖,2 二糖とオリゴ糖,3でんぷん, 非でんぷん性多糖ならびにグリコーゲンなどの多糖に分類される. そのなかでも食物として重要なでんぷんとグリコーゲンならびにスクロースの消化の過程を 1 に示した. 1 単糖ヒトの食物として量的に重要であるのは,3

主要症状には繰り返す低血糖 人形様顔貌 低身長 発育障害 発達障 害 肝腫大 ( 腹部膨満 ) がある 1 I 型繰り返す低血糖 ( アシドーシスあり ) 人形様顔貌 発育障害 発達障害 肝腫大 筋萎縮 出血傾向( 鼻出血 ) Ib 型では易感染性を認めることがある 2III 型 IIIa 型低血糖

Concept -02-

Transcription:

第 6 回糖新生とグリコーゲン分解 日紫喜光良 基礎生化学講義 2018.5.15 1

主な項目 I. 糖新生と解糖系とで異なる酵素 II. 糖新生とグリコーゲン分解の調節 III. アミノ酸代謝と糖新生の関係 IV. 乳酸 脂質代謝と糖新生の関係 2

糖新生とは グルコースを新たに作るプロセス グルコースが栄養源として必要な臓器にグルコースを供給するため 脳 赤血球 腎髄質 レンズ 角膜 精巣 運動時の筋肉 グルコースは肝臓にグリコーゲンとして貯蔵されるが 炭水化物を摂取しないと 10-18 時間後には 不足するようになる 糖新生をおこなう臓器 : 肝臓 腎臓 3

食後時間と血糖源 摂取したグルコース 100g のグルコースを摂取した後 血糖がどこから来たかを調べた結果 グリコゲン 糖新生 グリコゲンはおよそ 24 時間で枯渇する イラストレーテッド生化学図 24.10 4

糖新生の原料 グリセロール 脂肪組織でトリアシルグリセロールが分解されてできる 肝臓に運ばれて糖新生の原料になる 乳酸 運動時の筋肉 赤血球など 肝臓に運ばれて糖新生の原料になる (Cori サイクル ) アミノ酸 体の組織をつくるタンパク質が分解されてできる 分解されてオキサロ酢酸あるいは α- ケトグルタル酸になる一部の種類のアミノ酸から糖新生が可能 5

I. 糖新生と解糖系とで異なる酵素 だいたい解糖系と同じ酵素の逆反応 専用の酵素 : ピルビン酸カルボキシラーゼ ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ フルクトース1,6-ビスホスファターゼ グルコース6-フォスファターゼ ( 肝臓と腎臓 ) 6

糖新生の中間代謝物 グルコース 6- リン酸 4 グルコース フルクトース 6- リン酸 3 フルクトース 1,6- ビスリン酸 グリセルアルデヒド 3- リン酸 デヒドロキシアセトンリン酸 1,3- ビスホスホグリセリン酸 3-ホスホグリセリン酸 2-ホスホグリセリン酸 1~4 は解糖系になく 糖新生に特有 2 ホスホエノールピルビン酸 CO2 ピルビン酸 1 オキサロ酢酸 乳酸 7

1 ピルビン酸のカルボキシル化 ピルビン酸 CO 2 ミトコンドリア内膜 ピルビン酸カルボキシラーゼ オキサロ酢酸 NADH + H + リンゴ酸デヒドロゲナーゼ NAD + リンゴ酸ミトコンドリア内 NADH + H + NAD + オキサロ酢酸 細胞質 リンゴ酸デヒドロゲナーゼ ( 細胞質 ) リンゴ酸 8

2 ホスホエノールピルビン酸の生成 オキサロ酢酸 ミトコンドリア GTP ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ GDP CO 2 ホスホエノールピルビン酸 (PEP) 細胞質 細胞質 9

1 2 ピルビン酸 PEP CO 2 の活性化と転移 CO 2 の転移 1 の反応 ピルビン酸 オキサロ酢酸 ビオチン リンゴ酸の生成 細胞質へ ホスホエノールピルビン酸 図 10.3 2 の反応 10

3 フルクトース 1,6- ビスリン酸の脱リン酸化 図 10.4 フルクトース 1,6- ビスリン酸 フルクトース 1,6- ビスフォスファターゼ フルクトース 6- リン酸 11

4 グルコース 6- リン酸の脱リン酸化 グルコース 図 10.6 グルコース 6- ホスファターゼ 肝臓と腎臓だけ 12

糖新生に必要なエネルギー グルコース 6- リン酸 グルコース 2NADH + 2H + 2 x 2 x フルクトース6-リン酸フルクトース1,6-ビスリン酸グリセルアルデヒド3-リン酸 1,3-ビスホスホグリセリン酸 3-ホスホグリセリン酸 2 ATP デヒドロキシアセトンリン酸 2 x 2-ホスホグリセリン酸 2 x ホスホエノールピルビン酸 図 10.7 2 GTP 2 x CO2 ピルビン酸 2 xオキサロ酢酸 2 ATP 13

II. 糖新生とグリコーゲン分解の調節 14

糖新生の中間代謝物 ( 再掲 ) グルコース 6- リン酸 4 グルコース フルクトース 6- リン酸 3 フルクトース 1,6- ビスリン酸 グリセルアルデヒド 3- リン酸 デヒドロキシアセトンリン酸 1,3- ビスホスホグリセリン酸 3-ホスホグリセリン酸 2-ホスホグリセリン酸 1~4 は解糖系になく 糖新生に特有 2 ホスホエノールピルビン酸 CO2 ピルビン酸 1 オキサロ酢酸 乳酸 15

3 フルクトース 1,6- ビスフォスファターゼ を調節する要因 エネルギーレベルの高低 AMP 増加 エネルギーレベル低 フルクトース 1,6 ビスリン酸を阻害 糖新生を阻害 フルクトース 2,6- ビスリン酸 解糖系の副産物 ( フルクトース 6- リン酸から ) フルクトース 2,6- ビスリン酸増加 フルクトース 1,6 ビスフォスファターゼを阻害 糖新生を阻害 逆に 濃度が減ると糖新生を促進 グルカゴン刺激により濃度低下 16

3 フルクトース 2,6- ビスリン酸による調節 ( 図 10.5 から作成 ) 解糖 フルクトース 6- リン酸 糖新生 ホスホフルクトキナーゼ -1 (PFK-1) 促進 PFK-2/FBP-2 複合体 フルクトース 2,6- ビスリン酸 抑制 フルクトース 1,6- ビスリン酸 フルクトースビスホスファターゼ -1 (FBP-1) フルクトースビスホスファターゼ-2 (FBP-2) の活性低下 フルクトース2,6-ビスリン酸の濃度低下 フルクトースビスホスファターゼ-1(FBP-1) の活性上昇 フルクトース1,6ビスリン酸からフルクトース6-リン酸への反応がすすむ 糖新生が亢進する 17

糖新生のホルモンによる調節 (1) インスリンレセプター グルカゴン / インスリン比の上昇 グルカゴンレセプター 糖新生 ATP アデニル酸シクラーゼ camp フルクトースビスホスファターゼ -1 の活性上昇 フルクトース 2,6- ビスリン酸の濃度低下 プロテインキナーゼ A を活性化 PFK-2/FBP-2 複合体をリン酸化 ( 不活性化 ) ( 図 10.5 から作成 ) 18

2ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの活性化 オキサロ酢酸の濃度が増加 ピルビン酸カルボキシラーゼの活性化 GTP の濃度が増加 クエン酸回路の活動 19

アセチル CoA による糖新生の促進 絶食時 過剰な脂肪分解 肝臓で脂肪酸の β 酸化亢進 -ピルビン酸カルボキシラーゼの活性化 -ピルビン酸デヒドロゲナーゼの抑制 ホスホエノールピルビン酸 (PEP) PEP カルボキシキナーゼ ピルビン酸キナーゼ オキサロ酢酸 ピルビン酸カルボキシラーゼ ピルビン酸 ピルビン酸デヒドロゲナーゼアセチルCoA 20

糖新生のホルモンによる調節 (2) ー 2 ピルビン酸からホスホエノールピルビン酸へ 解糖での ホスホエノールピルビン酸からピルビン酸への反応を阻害する必要がある ホスホエノールピルビン酸 (PEP) PEP カルボキシキナーゼ ピルビン酸キナーゼ オキサロ酢酸 ピルビン酸カルボキシラーゼ ピルビン酸 図 10.8 から作成 21

糖新生のホルモンによる調節 (2) ー 2 ピルビン酸からホスホエノールピルビン酸へ グルカゴン値の上昇 グルカゴンレセプター アデニル酸シクラーゼ ATP camp 糖新生 プロテインキナーゼ A を活性化 PEP の濃度増加 ピルビン酸キナーゼをリン酸化 ( 不活性化 ) 22

グリコーゲン代謝 血糖値の維持 : グリコーゲンをグルコースに分解して血中に放出 グリコーゲン貯蔵場所 : 肝と筋 肝 : およそ 100g 含有 血糖になる 筋 : およそ 400g 含有 エネルギー源 イラストレーテッド生化学図 11.2 23

グリコーゲン代謝パスウェイの概要 グリコーゲン UDP- グルコース グルコース 1- リン酸 グルコース 6- リン酸 グルコース 図 11.1 より作成 24

グリコーゲンの構造 分岐部 α(1 6) グリコシド結合 直線部 α(1 4) グリコシド結合 図 11.3 25

グリコーゲンの合成 1. UDP- グルコースの合成 グルコース 6- リン酸 グルコース 1,6- ビスリン酸 グルコース 1- リン酸 図 11.6 ホスホグルコムターゼによるグルコース 6- リン酸からグルコース 1- リン酸の生成 グルコースウリジン二リン酸図 11.4 グルコース1-リン酸とUTPから UDP-グルコースピロフォスファターゼによって UDP-グルコースを生成 26

図 11.5 2 1 3 4 5 5 4 1UDP- グルコース生成 2UDP- グルコースからグルコースを受け取るためのプライマーとして 既存のグリコーゲンまたはグリコゲニンタンパクを利用 3グリコゲニン自身によって最初の数分子のグルコース鎖延長がおこなわれる 4グリコーゲンシンターゼによるα(1 4) グリコシド結合による鎖の延長 5 分岐酵素 (4:6 トランスフェラーゼ ) によって鎖の末端が鎖の途中に α(1 6) 結合される 27

グリコーゲンの分解 グリコーゲン鎖 グリコーゲンフォスフォリラーゼ グルコース 1- リン酸 分岐部は分岐切断酵素 (debranching enzyme) によって切断され グルコースを生じる グルコース 1- リン酸はフォスフォグルコムターゼでグルコース 6- リン酸になる α(1 4) 結合の切断とグルコース1-リン酸の生成図 11.7 残りのグリコーゲン鎖 肝臓では グルコース6- リン酸はグルコース6-フォスファターゼによってグルコースになり 血中に放出される 28

グリコーゲン代謝パスウェイの酵素 グリコーゲングリコーゲンシンターゼなどグリコーゲンホスホ UDP-グルコースリラーゼ ホスホグルコムターゼ グルコース 1- リン酸 グルコース 6- リン酸 UDP- グルコースピロホスホリラーゼ グルコース 6- ホスファターゼ グルコース ヘキソキナーゼ / グルコキナーゼ 図 11.1 より作成 29

図 11.9 グリコーゲンの生成 分解の調節 (1) 肝臓筋 グリコーゲンフォスフォリラーゼ ( 分解酵素 ) を抑制 : グルコース ATP グルコース 6- リン酸 グリコーゲンシンターゼ ( 合成酵素 ) を促進 : グルコース 6- リン酸 グリコーゲンフォスフォリラーゼ ( 分解酵素 ) を抑制 :ATP グルコース 6- リン酸 グリコーゲンシンターゼ ( 合成酵素 ) を促進 : グルコース 6- リン酸 グリコーゲンフォスフォリラーゼ ( 分解酵素 ) を促進 : カルシウムイオン AMP 30

グリコーゲンの生成 分解の調節 (2) 筋肉でのカルシウムによるグリコーゲン分解の活性化 小胞体からカルシウムイオンが放出 カルモジュリンに結合 カルモジュリン -Ca 2+ 複合体 酵素に結合して活性化 ( 例 ) ホスホリラーゼキナーゼ 図 11.10 も参照 31

グリコーゲンの生成 分解の調節 (3) camp 依存性経路によるグリコーゲン分解の活性化 グルカゴンやアドレナリンが細胞膜のレセプターに結合 camp 依存性プロテインキナーゼの活性化 ホスホリラーゼキナーゼの活性化 グリコーゲンホスホリラーゼのリン酸化 活性化 グリコーゲンの分解 図 11.11 も参照 32

グリコーゲンの生成 分解の調節 (4) camp 依存性経路によるグリコーゲン合成の抑制 ( 途中まで前スライドと同じ ) グリコーゲンシンターゼのリン酸化 不活性化 グリコーゲン合成の抑制 図 11.12 も参照 33

III. アミノ酸代謝と糖新生 アミノ酸 アンモニアと炭素骨格 アンモニアは尿素回路で尿素になる 炭素骨格 あるものはクエン酸回路の中間代謝物に あるものはアセチル CoA になる 前者を糖原性 後者をケト原性という クエン酸回路に投入されたものは糖新生に利用できる アセチル CoA は糖新生に利用できない 34

アミノ酸代謝 : 代謝系の中での位置 図 20.1 35

アミノ酸の代謝 : クエン酸回路との関係 アミノ酸の炭素骨格はクエン酸回路で処理される 図 20.1 拡大 36

アミノ酸の分類 炭素骨格の処理のされかたからの分類 非必須アミノ酸 Glucogenic ( 糖原性 ): 糖新生の原料になるアミノ酸 必須アミノ酸 Ketogenic ( ケト原性 ): アセト酢酸またはアセチル CoA の原料になるアミノ酸 図 20.2 37

アミノ酸の分類 糖原性 糖原性かつ ケト原性 ケト原性 非必須 アラニン アルギニン チロシン アスパラギン アスパラギン酸 システイン グルタミン酸 グルタミン グリシン セリン 必須 ヒスチジン イソロイシン ロイシン メチオニン フェニルアラニン リシン トレオニン トリプトファン バリン 図 20.2 38

IV. 乳酸 脂質代謝と糖新生の関係 筋で乳酸発生 肝臓に運ばれる 糖新生 (Cori サイクル ) 脂肪組織にて脂肪 脂肪酸とグリセロール 肝臓に運ばれる グリセロールは糖新生の原料になる 脂肪酸はアセチル CoA になる 糖新生を促進する アセチル CoA そのものは糖新生に利用できない 39

Cori サイクル 肝臓 血液 乳酸 グルコース 筋肉 図 10.2 40

乳酸 ピルビン酸 ピルビン酸 NADH + H + NADH + H + 乳酸デヒドロゲナーゼ NAD + 乳酸 NAD + NADH/NAD + 比によって反応方向が変わる 活動中の筋肉 : 高い肝臓 : 低い 41