( おさらい ) 自動運転とは レベルレベル1 レベル2 レベル3 レベル4 定義 加速 操舵 制動のいずれかの操作をシステムが行う 加速 操舵 制動のうち複数の操作を一度にシステムが行う ( 自動運転中であっても 運転責任はドライバーにある ) 加速 操舵 制動をすべてシステムが行い システムが要

Similar documents
自動走行と民事責任

自動運転の法的課題について 2016 年 6 月 一般社団法人日本損害保険協会 ニューリスク PT

03 【資料1】自動走行をめぐる最近の動向と今後の調査検討事項

自動車事故に関する現行の法律の整理 交通事故時の法的責任およびその根拠法責任を負う個人 / 法人製品等責任責任根拠 自動車運転死傷行為処罰法刑事責任刑法運転者 - 道路交通法行政処分道路交通法 民法 事業者 運行供用者 - 運行供用者責任自動車損害賠償保障法 使用者 - 使用者責任民法 損害保険会社

「自動運転車」に関する意識調査(アンケート調査)~「自動運転技術」に対する認知度はドイツの消費者の方が高いことが判明~_損保ジャパン日本興亜

1 趣旨このガイドラインは 日本国内の公道 ( 道路交通法 ( 昭和 35 年法律第 105 号 ) 第 2 条第 1 項第 1 号に規定する 道路 をいう 以下同じ ) において 自動走行システム ( 加速 操舵 制動のうち複数の操作を一度に行い 又はその全てを行うシステムをいう 以下同じ ) を

職員の私有車の公務使用に関する要綱 ( 目的 ) 第 1 条この要綱は, 地方公務員法 ( 昭和 25 年法律第 261 号 ) 第 3 条第 2 項に規定する一般職の職員 ( 期限付教員以外の臨時的任用職員を除く ) および同条第 3 項第 3 号に規定する特別職 ( 以下 職員 という ) が私

本章では 衝突被害軽減ブレーキ 車線逸脱警報 装置 等の自動車に備えられている運転支援装置の特性 Ⅻ. 運転支援装置を 備えるトラックの 適切な運転方法 と使い方を理解した運転の重要性について整理しています 指導においては 装置を過信し 事故に至るケースがあることを理解させましょう また 運転支援装

Microsoft Word - HPN-2534

いても使用者責任が認められることがあります 他方 交通事故の原因が相手方の一方的な過失によるものであるなど 被用者に不法行為責任が発生しない場合には 使用者責任も発生しません イ 2 使用関係被用者との使用関係については 実質的な指揮監督関係があれば足りるとして広く解されており 正社員 アルバイト

自動運転に対する保険-自動車保険の補償はどのように変わるのか?

第1回 オリエンテーション

目次 1. 自動運転と自動車損害賠償保障法 自動運転を巡る状況と自動運転における損害賠償責任に関する研究会 本研究会における議論の概要 自賠法に基づく損害賠償責任と自動運転における課題 論点整理 本研究会における

<4D F736F F D E817A899E977095D22D979A97F082C882B >

PowerPoint プレゼンテーション

見出しタイトル

自動運転への対応状況 自動運転の分類 運転支援型自動運転 : 緊急時は運転者が操作 ( 運転者がいることを前提とした自動運転 ) 完全自動運転 : 緊急時もシステムが操作 ( 運転者が不要な自動運転 ) 自動車メーカーの開発状況 運転支援の高度化を目指す 当面目標とはしておらず 試験走行の予定もない

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

mame_ittpan_H1-4_cs6

Microsoft Word - 資料4(修正).docx

【生産性革命プロジェクト】 産業界における気象情報利活用

問 2 自転車を乗っているときに事故を起こした場合 どのような責任を負います か? 自転車だから大丈夫 事故を起こしたとしても大事にはならない そんな軽はずみな気持ちが 死傷者を出す重大な事故につながります 道路交通法上 自転車も車両の一種( 軽車両 ) です 法律違反をして事故を起こすと 自転車利

STAMP/STPA を用いた 自動運転システムのリスク分析 - 高速道路での合流 - 堀雅年 * 伊藤信行 梶克彦 * 内藤克浩 * 水野忠則 * 中條直也 * * 愛知工業大学 三菱電機エンジニアリング 1

1. 調査の背景 目的 (1) 本調査の背景 1 自動走行システムに関する技術開発が活発化する中 自動走行システムの機能や性能限界等に関する消費者の認識状況 自動走行システムの普及に必要な社会的受容性への正しい理解など 解消すべき不安 ( リスク ) についての事前調査および議論が広範かつ十分に深ま

図 1 運転者 ( 原付以上 ) の法令違反別事故件数 (2015 年 ) 出典 : 警察庁 平成 27 年度における交通事故発生状況 表 1 自動運転のレベル出典 : 自動走行ビジネス検討会資料を基に JAEF 作成 加速 ( アクセル ) の自動化 =クルーズコントロール ( アクセルペダルを踏

資料 5 論点 2 CMR に求められる善管注意義務等の範囲 論点 3 CM 賠償責任保険制度のあり方 論点 2 CMR に求められる善管注意義務等の範囲 建築事業をベースに CMR の各段階に応じた業務内容 目的ならびに善管注意義務のポイントを整理 CM 契約における債務不履行責任において 善管注

1. 調査の背景 目的 (1) 本調査の背景 1 自動運転システムに関する技術開発が日進月歩で進化する中 自動運転システムの機能や性能限界等に関する消費者の認識状況 自動運転システムの普及に必要な社会的受容性への正しい理解等 解消すべき不安 ( リスク ) についての事前調査および議論がまだ広範かつ

損害保険商品の比較ガイドライン(自動車保険)

別紙 1 地方税法第 314 条の 7 第 1 項第 4 号に掲げる寄附金を受け入れる 特定非営利活動法人を指定するための基準 手続等に関する条例 新旧対照表 改正案 ( 欠格事由 ) 第 6 条第 4 条第 1 項の規定にかかわらず 市長は 次のいずれかに該当する特定非営利活動法人について 指定の

第12回 保険システムの利用-賠償責任保険の利用と社会政策目的の強制保険システム

Microsoft PowerPoint - day1-l05.pptx

速度規制の目的と現状 警察庁交通局 1

自動運転に係る国際基準の動向

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

PowerPoint プレゼンテーション

セーフティツーリング

険者以外の者に限ります ( 注 2 ) 自損事故条項 無保険車傷害条項または搭乗者傷害条項における被保険者に限ります ( 注 3 ) 無保険車傷害条項においては 被保険者の父母 配偶者または子に生じた損害を含みます ( 3 )( 1 ) または ( 2 ) の規定による解除が損害または傷害の発生した

<4D F736F F D20926E95FB8CF696B188F58DD08A5195E28F9E5F F8F4390B38DC58F4994C5>

ETCスルーカード規定

平成 28 年度第 2 回車両安全対策検討会平成 28 年 12 月 9 日 安全 - 資料 9 自動運転に係る国際基準の検討状況

<4D F736F F F696E74202D20895E935D8E D BB8C7689E68A C4816A72332E >

平成 30 年度 自動車局税制改正要望の概要 平成 29 年 8 月 国土交通省自動車局

48

原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案(新旧対照表)

例規標準書式スタイル

スライド 1

第 2 条ガイアは 関係法令等及びこれに基づく告示 命令によるほか業務要領に従い 公正 中立の立場で厳正かつ適正に 適合審査業務を行わなければならない 2 ガイアは 引受承諾書に定められた期日までに住宅性能証明書又は増改築等工事証明書 ( 以下 証明書等 という ) を交付し 又は証明書等を交付でき

Microsoft Word - 資料6(修正).docx

Microsoft Word - 【最終】高度化PTPS参加規約

Microsoft PowerPoint - ②車社会の光と影.pptx

Y. Nakagawa CHUKYO LAWYER 図 1 自動運転のレベル (SAE) レベル名称定義 運転者が運転環境を監視 0 自動運転なし 1 運転支援 2 部分自動運転 自動運転システムが運転環境を監視 3 条件付き自動運転 4 高度な自動運転 5 完全自動運転 操舵及び加減速 運転環境の

「犯罪被害者等の安全・安心の確保」への取組状況及び今後の方針

1 日本再興戦略 2016 改革 2020 隊列走行の実現 隊列走行活用事業モデルの明確化ニーズの明確化 ( 実施場所 事業性等 ) 技術開発 実証 制度 事業環境検討プロジェクト工程表技高齢者等の移動手段の確保 ( ラストワンマイル自動走行 ) 事業モデルの明確化 ( 実施主体 場所 事業性等 )

資料 7-1 特殊車両の通行に関する指導取締要領の一部改正について 国土交通省関東地方整備局道路部交通対策課 1 (1) 特殊車両通行許可制度 2

(3) 父又は母が規則で定める程度の障害の状態にある児童 (4) 父又は母の生死が明らかでない児童 (5) その他前各号に準ずる状態にある児童で規則で定めるもの 3 この条例において 養育者 とは 次に掲げる児童と同居して これを監護し かつ その生計を維持する者であって その児童の父母及び児童福祉

目次 1. 中国における商業秘密の定義およびその要件について 商業秘密保護について 商業秘密保護の具体的な管理方法について 法的責任... 4

消防業務賠償責任保険に関する Q&A 1 主契約について Q1 1: 再燃火災による事故も対象になるのですか? A1 1: 対象となります 但し あくまでも消防本部側に過失または重過失があり 賠償責任を負担するケースとなります 消防本部の過失認定は 極めて難しい判断を伴いますので 過去の判例や裁判所

<4D F736F F F696E74202D CC8ED48ED48AD492CA904D82CC8EE D918CF08FC88E9197BF816A2E B8CDD8AB B8

1 ガイドライン策定の目的防犯カメラについては テレビや新聞で報道されているように 犯罪の解決や犯罪の抑止につながることなど その効果は社会的に認められており さまざまな施設に防犯カメラが設置されております しかし その効果が認知される一方で 防犯カメラにより個人のプライバシーなどの人権が侵害される

事業者が行うべき措置については 匿名加工情報の作成に携わる者 ( 以下 作成従事者 という ) を限定するなどの社内規定の策定 作成従事者等の監督体制の整備 個人情報から削除した事項及び加工方法に関する情報へのアクセス制御 不正アクセス対策等を行うことが考えられるが 規定ぶりについて今後具体的に検討

01

1-1 交通死亡事故全体の推移 10 年前と比較し の死者は 40.7% 65 歳以上の死者は 24.0% それぞれ減少 死者に占める 65 歳以上の割合は 24 年以降増加 27 年中死者の半数以上 (54.6%) を 65 歳以上が占める 10 年前と比較し 人口当たり死者数は 65 歳以上のい

ドライブレコーダーにより記録すべき情報及びドライブレコーダーの性能要件を定める告示 ( 平成 28 年 11 月 17 日国土交通省告示 1346 号 ) ( 総則 ) 第一条一般貸切旅客自動車運送事業者が 旅客自動車運送事業運輸規則 ( 昭和 31 年運輸省令第 44 号 ) 第 38 条第 1

自動車環境基準の審査

パーソナル自動車保険 は はじめて自動車 を取得した方が安心してカーライフをお送り 補償とロードアシスタンスサービスを備えた 安心 1 保険に入る方専用の自動車保険です はじめてお車 いただけるよう お客さまをお守りする基本となる シンプルでわかりやすい自動車保険です お客さまをお守りする基本となる

6 テストドライバーに関連する自動走行システムの要件 実験車両 7 公道実証実験中の実験車両に係る各種データ等の記録 保存 8 交通事故の場合の措置 事故対応 9 賠償能力の確保 10 関係機関に対する事前連絡 外部連携 出典 : 自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン をもとに弊

( 支給対象者等 ) 第 3 条医療費の支給の対象となる者 ( 以下 支給対象者 という ) は 次の各号に該当する母子家庭の母 父子家庭の父及びこれらの者に扶養されている児童並びに養育者に扶養されている父母のない児童とする (1) 本市に住所 ( 配偶者からの暴力を受けること等により本市への住所の

第 32 回 1 級 ( 特許専門業務 ) 実技試験 一般財団法人知的財産研究教育財団知的財産教育協会 ( はじめに ) すべての問題文の条件設定において, 特に断りのない限り, 他に特殊な事情がないものとします また, 各問題の選択枝における条件設定は独立したものと考え, 同一問題内における他の選

PowerPoint Presentation

湯河原町訓令第  号

目 次 1 交通事故の発生状況 1 2 死傷者の状況 (1) 齢層別の状況 3 (2) 状態別の状況 5 (3) 齢層別 状態別の状況 7 (4) 損傷部位別の状況 12 (5) 昼夜別の状況 14 3 交通事故の状況 (1) 齢層別の状況 17 (2) 法令違反別の状況 19 (3) 飲酒別の状況

運転者 項目 使用車両及び権原 損害賠償措置 運行管理の責任者の選任 整備管理の責任者の選任 安全運転管理者の選任 要件 第二種運転免許を受けている者 第一種運転免許を受けており 国土交通大臣が認定する講習を修了している者 運行主体が使用権原 ( 使用できる権利 ) を有するもの 車両は原則として貨

<4D F736F F D2090AC89CA95A887458F8A974C8ED282AA95A CC8FEA8D8782CC97AA8EAE91E38EB78D732E646F6378>

目 次 第 1 はじめに 2 1 ガイドライン策定の目的 2 2 ガイドラインの対象となる防犯カメラ 2 3 防犯カメラで撮影された個人の画像の性格 2 第 2 防犯カメラの設置及び運用に当たって配慮すべき事項 3 1 設置目的の設定と目的外利用の禁止 3 2 設置場所 撮影範囲 照明設備 3 3

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

第三者行為による傷病届 ( 交通事故 ) 保険証の記号番号 記号 番号 被保険者氏名 提出日年月日 印 会社名 所属 被保険者記入欄 ( 該当する に ) 連絡先 事故にあった人 事故発生日時 事故発生場所 事故の形態 事故発生時 届出警察署 受診した医療機関 自宅 TEL( ) - 携帯 TEL(

1 策定の目的 この手引書は 茅ヶ崎市地域防犯カメラ ( 以下 地域防犯カメラ という ) の設置及び運用について配慮すべき事項を定めることにより 地域防犯カメラの有用性とプライバシー保護等との調和を図り 地域防犯カメラを適切かつ効果的に活用し 茅ヶ崎市の安心して安全に暮らせるまちづくりを推進するこ

Microsoft Word - 02_プレス資料(別紙).doc

<4D F736F F D E817A8AEE916295D22D979A97F082C882B >

改正犯罪収益移転防止法_パンフ.indd

軽井沢スキーバス事故対策検討委員会について

に該当する者については 同項の規定にかかわらず受給資格者とする 3 病院等に入院等したことにより 本市の区域内に住所を変更したと認められる第 1 項各号に該当する者については 同項の規定にかかわらず受給資格者としない 4 第 1 項及び第 2 項の規定にかかわらず 次の各号のいずれかに該当する者は


五有価証券 ( 証券取引法第二条第一項に規定する有価証券又は同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利をいう ) を取得させる行為 ( 代理又は媒介に該当するもの並びに同条第十七項に規定する有価証券先物取引 ( 第十号において 有価証券先物取引 という ) 及び同条第二十一項に規定する有価証券先

金融商品取引法の改正 ~ インサイダー取引規制に係る見直しについて 1. はじめに 2013 年 4 月 16 日に 金融商品取引法等の一部を改正する法律案 が第 183 回国会に提出され 同年 6 月 12 日に成立 同月 19 日に公布されました ( 平成 25 年法律第 45 号 以下 改正法

2 前項第一号に該当する自動車に係る自動車税の減免すべき税額は 災害の発生した日 の属する年度の自動車税額に次の表の上欄に掲げる当該自動車に係る修繕費の区分に応 じ それぞれ当該下欄に掲げる率を乗じて得た額に相当する額とする 修繕費 軽減率 自動車の取得価額の十分の三以上十分の四未満 自動車の取得価

<4D F736F F F696E74202D E F EF816A8E9197BF A082E895FB82C982C282A282C4>

と事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を 配偶者 には 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を 婚姻 には 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含むものとする 5 この条例において 医療保険各法 とは 国民健康保険法 ( 昭和 33 年法律第 192

国土技術政策総合研究所 研究資料

資料2-1 「個人情報の保護に関する法律」説明資料

Microsoft Word - 927・電動アシスト自転車貸出要綱.doc

個人情報保護法の3年ごと見直しに向けて

沿革施行 : 平成 19 年 8 月 1 日 改正 : 平成 22 年 4 月 1 日 私有車輌業務使用規程 株式会社宮城登米広域介護サービス

< F2D8CA48B8689EF8E9197BF31352E6A7464>

〔問 1〕 A所有の土地が,AからB,BからCへと売り渡され,移転登記も完了している

総論 Q1 民間事業者はどのような場面でマイナンバーを扱うのですか A1 民間事業者でも 従業員やその扶養家族のマイナンバーを取得し 給与所得の源泉徴収や社会保険の被保険者資格取得届などに記載し 行政機関などに提出する必要があります 原稿料の支払調書などの税の手続では原稿料を支払う相手などのマイナン

Microsoft Word - g

1 基本的な整備内容 道路標識 専用通行帯 (327 の 4) の設置 ( 架空標識の場合の例 ) 自 転 車 ピクトグラム ( 自転車マーク等 ) の設置 始点部および中間部 道路標示 専用通行帯 (109 の 6) の設置 ( 過度な表示は行わない ) 専 用 道路標示 車両通行帯 (109)


目次 はじめに第 1 章 : 休職 復職における実務第 2 章 : メンタルヘルス不調者と使用者責任第 3 章 : 近年の裁判例おわりに 社会保険労務士法人大野事務所 2

Transcription:

自動運転と損害賠償 ~ 自動運転者事故の責任は誰が負うべきか ~ 2016 年 12 月 16 日一般社団法人日本損害保険協会大坪護

( おさらい ) 自動運転とは レベルレベル1 レベル2 レベル3 レベル4 定義 加速 操舵 制動のいずれかの操作をシステムが行う 加速 操舵 制動のうち複数の操作を一度にシステムが行う ( 自動運転中であっても 運転責任はドライバーにある ) 加速 操舵 制動をすべてシステムが行い システムが要請したときのみドライバーが対応する ( 自動運転中の運転責任はシステムにあるが ドライバーはいつでも運転に介入することができ ドライバーが介入したときは手動運転に切り替わる ) 加速 操舵 制動をすべてシステムが行い ドライバーが全く関与しない ( 無人運転を含む ) ( ) 官民 ITS ロードマップ 2016 に基づき作成 1

技術の現状 1 米国 テスラ社 の自動車を走行中 ( オートパイロット機能作動中 ) に事故が発生し ドライバーが死亡 (2016 年 5 月米国フロリダ州 ) 直進中の車両が 対向車線から左折してきたトレーラーを認知できずに衝突 強い逆光のためトレーラーを認知できず ( テスラ社コメント ) ドライバーは DVD 鑑賞していた?( 自動運転を過信?) 国土交通省は 現在実用化されている 自動運転 機能は 運転者が責任を持って安全運転を行うことを前提とした 運転支援技術 であり 運転者に代わって車が責任を持って安全運転を行う 完全な自動運転ではありません とのコメントを発表 (2016 年 7 月 ) 2

技術の現状 2 日産 セレナ に自動運転技術 ( プロパイロット ) を搭載 高速道路の単一車線にて 渋滞走行や長時間 巡航走行時に アクセル ブレーキ ステアリングのすべてを自動的に制御し ドライバーの負担を軽減 プロパイロットはドライバーの運転操作を支援するためのシステムであり 自動運転システムではありません 安全運転を行う責任はドライバーにあります ( 日産自動車 ) 3

技術の現状 3 DeNA が 無人運転バス の運用開始 2016 年 8 月に千葉市の豊砂公園敷地内で 隣接するショッピングモールの顧客向けに運用を開始 フランスの EasyMile 社が開発した車両を利用 ( 最高速度 40km/h 乗車定員 12 名 ) 20km/h 程度での走行を想定 あらかじめ設定されたルートをカメラ センサー GPS を使って走行 障害物を検知した場合は自動的に減速 停止し事故を回避 4

自動車事故の法的責任 刑事責任 ( 自動車運転死傷行為処罰法 ) 運転者 懲役 罰金 行政責任 ( 道路交通法 ) 運転者 反則金 免許取消 停止 減点 民事責任 ( 自動車損害賠償保障法 民法 ) 運行供用者 ( 保有者 ) 被害者に対する損害賠償 5

自動運転の法的課題 ~ 報告書 報告書概要 2016 年 6 月 9 日に 自動運転の法的課題について ( 報告書 ) を公表 http://www.sonpo.or.jp/news/release/2016/1606_05.html 自動運転車の事故と損害賠償責任の考え方を整理 報告書 ( 全 9 ページ ) 6

自動運転の法的課題現行法における損害賠償責任 ( 対人事故 )1 民法第 709 条 ( 基本原則 ) 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は これによって生じた損害を賠償する責任を負う ( 過失責任 ) 自動車の対人事故に関しては 被害者救済を目的として 自動車損害賠償保障法 ( 自賠法 ) により修正 自賠法は 1955( 昭和 30) 年に公布 施行 7

自動運転の法的課題現行法における損害賠償責任 ( 対人事故 )2 自賠法第 3 条 ( 本文 ) 自己のために自動車を運行の用に供する者は その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる ポイント1 損害賠償責任主体は 自己のために自動車の運行の用に供するもの ( 運行供用者 ) = 運行供用者責任 8

自動運転の法的課題現行法における損害賠償責任 ( 対人事故 )3 運行供用者 通常は 保有者 すなわち 自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で 自己のために自動車を運行の用に供するもの ( 自賠法第 2 条第 3 項 ) 判例により 自動車の使用についての支配権を有し かつ その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味する として 運行支配 し かつ 運行利益 を得ている者と解されている 9

自動運転の法的課題現行法における損害賠償責任 ( 対人事故 )4 自賠法第 3 条 ( ただし書き ) 免責 3 要件 ただし 1 自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと 2 被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに 3 自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは この限りでない ポイント 2 運行供用者に無過失責任に近い損害賠償責任を課す ( 免責 3 要件の証明は極めて困難 ) 10

自動運転の法的課題現行法における損害賠償責任 ( 対人事故 ) まとめ 自賠法によれば 交通事故の責任主体は 運行供用者 であり 運行供用者とは運行を支配し 運行利益を享受している者 この者が ( 一定の挙証ができない限り ) 無過失責任を負う 11

自動運転の法的課題自動運転と損害賠償責任の考え方 ( レベル 3)1 システム責任による自動運転となり 道路交通法上もドライバーの運転責任が一定免除されることも想定される ドライバーの運転責任が免除されている自動運転中に発生した事故の損害賠償責任を誰が負うべきか? 12

自動運転の法的課題自動運転と損害賠償責任の考え方 ( レベル 3)2 レベル 3 における運行供用者 ( 運行支配 し かつ 運行利益 を得ている者 ) の考え方 運行利益 を得ている者は ドライバーや当該自動車を事業のために使用している事業者等である ( 現行と同じ ) 運行支配 については システム責任による自動運転であるので システムが 運行支配 しているとも考えられるが システムの機能限界時などは システムからドライバーに運転責任が移譲されること 自動運転中であっても ドライバーはいつでも運転に介入できることから ドライバー等が 運行支配 していると解することが可能と考えられる 13

自動運転の法的課題自動運転と損害賠償責任の考え方 ( レベル 3) まとめ レベル3であっても自賠法の 運行供用者責任 の考え方を適用することは可能 自動運転であってもドライバー等の運行支配可能 よって免責 3 要件に該当しない限り 自動運転以外と同様の者が責任を負う 仮に自動車に構造上の欠陥があったとすればそれをもって免責要件に該当しないことになるというジレンマ 14

自動運転の法的課題自動運転と損害賠償責任の考え方 ( レベル 4)1 レベル 4 が Driverless Car だとすれば ドライバーは運転に全く関与せず すべてシステムによって運転される よってレベル 4 において ドライバー という概念はない であれば ドライバーによる運行支配もない となれば レベル 4 に自賠法をそのまま準拠させることは難しい 自動車安全基準 利用者義務 免許制度 刑事責任のあり方など 自動車に関する法令等の全体の見直しの中で議論する必要がある 15

自動運転の法的課題自動運転と損害賠償責任の考え方 ( レベル 4)2 見直しにあたっては 以下の観点から検討が必要である 自動運転に関する国際的な議論の動向 新たなリスクとして 誰が責任を負うべきか 新たな社会的コンセンサスが必要 さらに一般交通下において 自動運転車と従来型の自動車が協調して円滑な交通社会を実現するための制度のあり方も検討を要する 16

諸外国での議論 ドライバレスはイリーガル ドライバーが関与する限り現行法制を変えるべきではない ドライバレスになれば PL 対応 問題は関与する誰が責任を負うべきか ( メーカー ソフト 道路 ) 17

自動運転の法的課題 1 事故原因の分析 人 が原因か システム が原因か? システム の欠陥か 機能限界 ( 不可避 ) か? 2 製造物責任 自動車メーカーの責任は?( 欠陥の範囲 予見可能性 ) 被害者の負担大 ( 挙証責任は被害者に ) 3 サイバーリスク 誰が責任を負うのか?( 相手が特定できない ) 18

自動運転の法的課題 ( 民事以外 ) 刑事責任のあり方 誰が責任をとるのか? 免許制度のあり方 自動運転 ( レベル 4) に運転免許は必要か? 運転者の義務のあり方 事故回避義務は?( 道路交通法第 70 条 ) セカンドタスク ( 例 : スマホ操作 ) は許容されるのか? 19

自動運転と保険のあり方 ( 議論 ) < レベル 3 まで > 対人 : 自賠法に基づく補償 対物 車両 : 民法に基づく 自動車保険で補償できるか? < レベル 4> 対人 : 自賠法で補償可能か? 対物 車両 : 民法に基づく 自動車保険では補償できない? 20

自動車保険に関する最近の話題 大手損害保険会社が 被害者救済費用等補償特約 を開発 2017 年 4 月以降 自動車保険契約に自動セット ( 追加保険料なし ) 事故発生時に 事故原因がわからない 誰が責任を負うべきなのか確定しない といったケースで 被害者への損害賠償に時間を要するようなケースにおいても 本特約において 被保険者が被害者の損害を負担する 被保険者に賠償責任がある場合は 通常の自動車保険で補償される 本特約で保険金を支払った場合は 損害保険会社が賠償義務者に対する損害賠償権を取得する 21