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ダムの運用改善の対応状況 資料 5-1 近畿地方整備局 平成 24 年度の取り組み 風屋ダム 池原ダム 電源開発 ( 株 ) は 学識者及び河川管理者からなる ダム操作に関する技術検討会 を設置し ダム運用の改善策を検討 平成 9 年に設定した目安水位 ( 自主運用 ) の低下を図り ダムの空き容量

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利水補給

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現行計画 ( 淀川水系河川整備計画 ): 川上ダム案 治水計画の概要 事業中の川上ダムを完成させて 戦後最大の洪水を 中下流部では ( 大臣管理区間 ) 島ヶ原地点の流量 3,000m 3 /s に対して 川上ダムで 200m 3 /s を調節し 調節後の 2,800m 3 /s を上野遊水地や河道

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

図 -3.1 試験湛水実績図 平成 28 年度に既設堤体と新設堤体が接合された抱土ゾーンにおいて調査ボーリングを実施し 接合面の調査を行った 図 -2.2に示すように 調査ボーリングのコア観察結果からは 新旧堤体接合面における 材料の分離 は認められなかった また 境界面を含む透水試験結果により得ら

目次 1. はじめに 1 2. 協議会の構成 2 3. 目的 3 4. 概ね5 年間で実施する取組 4 5. フォローアップ 8

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の洪水調節計画は 河川整備基本方針レベルの洪水から決められており ダムによる洪水調節効果を発揮する 遊水地案 は 遊水地の洪水調節計画は大戸川の河川整備計画レベルの洪水から決めることを想定しており 遊水地による洪水調節効果が完全には発揮されないことがある 瀬田川新堰案 は 瀬田川新堰の洪水調節計画は

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

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(1) 洪水調節サンルダムの建設される地点における計画高水流量 700m 3 /s のうち 610m 3 /s の洪水調節 を行う (2) 流水の正常な機能の維持下流の河川環境の保全や既得用水の補給等 流水の正常な機能の維持と増進を図る (3) 水道名寄市の水道用水として 名寄市真勲別地点において新

水防法改正の概要 (H 公布 H 一部施行 ) 国土交通省 HP 1

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22年2月 目次 .indd

五名再評価委員会資料

平成 29 年 7 月 20 日滝川タイムライン検討会気象台資料 気象庁札幌管区気象台 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 大雨警報 ( 浸水害 ) 洪水警報の基準改正 表面雨量指数の活用による大雨警報 ( 浸水害 )

図 -3 ダム標準断面図 ( コンクリートダム部 ) 図 -4 ダム標準断面図 ( フィルダム部 ) 表 -2 忠別ダム防災操作一覧表 年度 回数 月 日 最大最大最高流入量放流量貯水位 1 6 月 9 日 月 1 日

避難を促す緊急行動 被災した場合に大きな被害が想定される国管理河川において 以下を実施 1. 首長を支援する緊急行動 ~ 市町村長が避難の時期 区域を適切に判断するための支援 ~ できるだけ早期に実施 トップセミナー等の開催 水害対応チェックリストの作成 周知 洪水に対しリスクが高い区間の共同点検

避難開始基準の把握 1 水害時の避難開始基準 釧路川では 水位観測所を設けて リアルタイム水位を公表しています 水位観測所では 災害発生の危険度に応じた基準水位が設定されています ( 基準となる水位観測所 : 標茶水位観測所 ) レベル水位 水位の意味 5 4 ( 危険 ) 3 ( 警戒 ) 2 (

東日本大震災における施設の被災 3 東北地方太平洋沖地震の浸水範囲とハザードマップの比較 4

あおぞら彩時記 2017 第 5 号今号の話題 トリオ : 地方勤務の先輩記者からの質問です 気象庁は今年度 (H 29 年度 )7 月 4 日から これまで発表していた土砂災害警戒判定メッシュ情報に加え 浸水害や洪水害の危険度の高まりが一目で分かる 危険度分布 の提供を開始したというのは本当ですか

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長安口ダムの概要 2号号堤高 85.5m 1堤頂長 2.7m 654号号号3号ダム天端 EL 昭和 31 年建設時 平成 27 年 8 月現在 昭和 31 年徳島県が建設 平成 19 年国土交通省に移管 治水 利水 ( 農業 工業用水 ) 発電( 一般家庭約 5 万世帯分 ) 河川環境の

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淀川水系流域委員会第 71 回委員会 (H20.1 審議参考資料 1-2 河川管理者提供資料

たり 80mm 以上の雨 ) となり, 佐賀では 14:26 までの 1 時間に観測史上第 2 位の 91mm を記録した ( 図 9.2). 白石では 14:39 までの 1 時間に 72mm と 7 月の観測史上最大を記録した. その後, 全域で雨はいったん弱まったが, 夜遅くに再び南部を中心と

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台風 18 号豪雨における淀川水系ダム群の治水効果について 平成 25 年 9 月 18 日近畿地方整備局 ( 独 ) 水資源機構関西支社 9 月 15 日から16 日にかけて近畿地方に接近した台風 18 号により 淀川水系では 大規模な出水となりました 国土交通省及び ( 独 ) 水資源機構が管理

鬼怒川緊急対策プロジェクト 鬼怒川下流域 茨城県区間 において 水防災意識社会 の再構築を目指し 国 茨城県 常総市など 7市町が主体となり ハードとソフトが一体となった緊急対策プロジェクトを実施 ハード対策 事業費合計 約600億円 ソフト対策 円滑な避難の支援 住民の避難を促すためのソフト対策を

4. 堆砂

琵琶湖周辺に対する効果再開発事業の背景と目的 1: 治水 琵琶湖周辺や宇治川では これまで浸水被害が度々発生しています 再開発事業により 洪水調節機能の強化を図ります 背景 ( 過去の洪水被害 ) 発生年月起因被害状況 昭和 28 年 9 月 台風 13 号 死者 ( 不明者含 )178 人 負傷者

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InterRisk Report Form(2010.7改定)

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~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

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淀川河川整備計画案に関する知事への意見照会について

浸水深 自宅の状況による避難基準 河川沿いの家屋平屋建て 2 階建て以上 浸水深 3m 以上 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 浸水深 50 cm ~3m 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難上階に垂直避難 浸水深 50 cm未満 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 自宅に待

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宮城県災害時気象資料平成 30 年台風第 24 号による暴風と大雨 ( 平成 30 年 9 月 29 日 ~10 月 1 日 ) 平成 30 年 10 月 3 日仙台管区気象台 < 概況 > 9 月 21 日 21 時にマリアナ諸島で発生した台風第 24 号は 25 日 00 時にはフィリピンの東で

資料4 検討対象水域の水質予測結果について

目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

Taro-40-11[15号p86-84]気候変動

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再開発事業の目的 目的横山ダムのある揖斐川上流域は 比較的脆弱な地質が多くみられることに加え 1 年間の降雨量が 3,mm を超える多雨地域のため 豪雨により大量の土砂が貯水池内に流れ込んでいる このため 平成 11 年時点で すでに計画堆砂量の 1.13 倍に達した 再開発事業は こうした湖内に貯

米原市における開発に伴う雤水排水計画基準

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H26.6.11

2008

目次 < 平成 29 年 7 月九州北部豪雨の概要 > 平成 29 年 7 月九州北部豪雨の概要 ( 気象 )1 1 平成 29 年 7 月九州北部豪雨の概要 ( 気象 )2 2 平成 29 年 7 月九州北部豪雨の概要 ( 被災状況 ) 3 < 水資源機構の支援の状況 > 被災地域へリエゾン 支援

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学識経験者による評価の反映客観性を確保するために 学識経験者から学術的な観点からの評価をいただき これを反映する 評価は 中立性を確保するために日本学術会議に依頼した 詳細は別紙 -2 のとおり : 現時点の検証の進め方であり 検証作業が進む中で変更することがあり得る - 2 -

                         平成19年6月  日

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新都市社会技術融合創造研究会研究プロジェクト 事前道路通行規制区間の解除のあり方に関する研究

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目 次 最上小国川 赤倉地区の 2015 年 9 月洪水の実態から 被害防止には河道改 修が最も効果的であることが あらためて明らかになった 1,2015 年 9 月 10 日赤倉雨量は1/50 年確率に近い豪雨であったが 洪水流量は1/11 年確率流量だった 2, 赤倉地区では外水被害と内水被害が

試行の概要 試行の目的石狩川滝川地区水害タイムライン ( 試行用完成版 ) を試行的に運用することにより 対応行動や実施手順を確認するとともに 運用結果を検証し 同タイムラインを精査することを目的とする 試行の概要 実施時期 : 平成 29 年出水期 (8 月 ~10 月ごろ ) 実施場所 : 各主

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めに年間 1,426GWh の発電を行うことが期待されている この電気エネルギーは石油の輸入を節約することによって外貨を保護することが可能である Cirata 貯水池は西ジャワの北部地方の灌漑のための調整用水を供給する このことによりこの地域の灌漑量が増え 米生産量が増加した このダムは下流地域が洪

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試行の概要 試行の目的石狩川滝川地区水害タイムライン ( 試行用完成版 ) を試行的に運用することにより 対応行動や実施手順を確認するとともに 運用結果を検証し 同タイムラインを精査することを目的とする 試行の概要 実施時期 : 平成 30 年出水期 (8 月 ~10 月ごろ ) 実施場所 : 各主

PowerPoint プレゼンテーション

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資料6 (気象庁提出資料)

気象庁 札幌管区気象台 資料 -6 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 平成 29 年度防災気象情報の改善 5 日先までの 警報級の可能性 について 危険度を色分けした時系列で分かりやすく提供 大雨警報 ( 浸水害 )

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埼玉県版 川の防災情報 はじめに 埼玉県ホームページを開きましょう URL 埼玉県ホームページトップ 彩の国の安心安全 ① ① 埼玉県HPの 彩の国の安心安全 を ② ② 現在の埼玉県状況 雨量水位 を 2

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2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある

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重ねるハザードマップ 大雨が降ったときに危険な場所を知る 浸水のおそれがある場所 土砂災害の危険がある場所 通行止めになるおそれがある道路 が 1 つの地図上で 分かります 土石流による道路寸断のイメージ 事前通行規制区間のイメージ 道路冠水想定箇所のイメージ 浸水のイメージ 洪水時に浸水のおそれが

琵琶湖周辺に対する効果天ケ瀬ダム再開発事業の背景と目的 1: 治水 琵琶湖周辺や宇治川では これまで浸水被害が度々発生しています 天ケ瀬ダム再開発事業により 洪水調節機能の強化を図ります 背景 ( 過去の洪水被害 ) 発生年月起因被害状況 昭和 28 年 9 月 台風 13 号 死者 ( 不明者含

資料 -5 第 5 回岩木川魚がすみやすい川づくり検討委員会現地説明資料 平成 28 年 12 月 2 日 東北地方整備局青森河川国道事務所

5-2 居住誘導区域の設定 居住誘導の基本方針を踏まえ 以下の居住誘導区域の設定の考え方に基づき 居住誘導区域を設 定します 居住誘導区域の設定の考え方 (1) 居住誘導区域に含めるエリア 居住誘導区域に含めないエリア 居住誘導区域に含めるエリア 1 都市機能誘導区域 居住誘導区域に含めないエリア

平成29年7月九州北部豪雨の概要 7月5日から6日にかけて 停滞した梅雨前線に暖かく 湿った空気が流れ込んだ影響等により 線状降水帯 が形成 維持され 同じ場所に猛烈な雨を継続して 降らせたことから 九州北部地方で記録的な大雨と なった 朝倉では 降り始めから10数時間のうちに500ミリを 超える豪

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Transcription:

奄美地方における集中豪雨災害 時の大和ダムの効果 鹿児島県土木部河川課開発係. はじめに大和ダムのある奄美大島は, 鹿児島県の南方 8km, 沖縄県の北方 kmに位置し, 人口 6.7 万人, 面積 82km2の島である 島内には, 恐竜時代から現代まで生き残ったとされるヒカゲヘゴやソテツといった熱帯雨林が生い茂り, また, 本稿では, 近年の ダム不要論 や 脱ダム宣言, ダム事業の見直し 等が取り沙汰される中, 供用開始から4 年目にして, 平成 22 年 月の奄美地方における集中豪雨災害 において, 最大限の治水効果を発揮したことから, その効果や周囲からの評価について紹介する エメラルドグリーンに輝く海には珊瑚が広がり, さらに, 日本最大級のマングローブ原生林を有し, その山中には, 天然記念物に指定されているアマミノクロウサギやルリカケスなどの希少動植物が多数棲息することから 東洋のガラパゴス とも呼ばれる 大和ダムは, こういった自然に恵まれた奄美大島の大和村の二級河川大和川水系三田川上流に, 洪水調節及び河川環境の保全, 利水を目的として鹿児島県と大和村が共同で平成 9 年に建設した多目的ダムである 写真 - 大和ダム全景 大和川 三田川 大和ダム 図 - 位置図

2. ダムの概要 () 目的 洪水調節 年に 回の雨が降った時, ダム地点で最大 54m/sの洪水が流下するが, ダムにより42m/s 抑制し,2m/sの洪水を下流に流下させる (2) 全体事業費等 事業年度平成 2 年 ~ 平成 9 年 事業費 7,65 百万円 () 諸元 ダム諸元 型式重力式コンクリートダム ( ゲートレスダム ) 堤高 45.m 堤頂長 9.m 堤体積 49,m 図 -2 計画高水流量配分図 写真 -2 洪水氾濫状況 (H2.9.6) 河川環境の保全 河川環境を保全するために必要な水量を川に流し, 安定した川の姿を創出する 水道用水 水道用水として新たに75m/ 日の取水を可能にする 図 -4 標準断面図 貯水池諸元 集水面積 2.8km2 湛水面積.67km2 総貯水容量 784,m 有効貯水容量 72,m 洪水調節容量 57,m 図 - 大和ダムの目的 図 -5 貯水池容量配分図

. 気象状況平成 22 年 月 8 日から2 日にかけて前線が奄美地方に停滞し, 南シナ海にあった台風 号の東側で非常に湿った空気が前線付近に流れ込んだため, 大気の状態が不安定となり, 長時間, 大雨を降らせる状態が続いた 平成 22 年 月 2 日 : この豪雨により, 島内の二級河川では, 河川中 河川で外水及び内水氾濫により, 約, 戸に及ぶ浸水被害が発生し, また, 各地で 58 件の土砂災害が発生した 本災害に伴い, 死者 名の人的被害が発生したほか, 幹線道路の国道 58 号では9 箇所が全面通行止となり, その他水道, 電気, 電話回線などのライフラインが途絶するなど, 島内全域で広範囲且つ甚大な被害に見舞われた 鹿児島地方気象台提供 写真 - 気象衛星画像そのため, 奄美地方では連続雨量が8mmを超える箇所が多数あり記録的な大雨となった 日降水量では, 奄美市名瀬で2 日に622.mm となり, 明治 29 年の観測開始以来最大を記録した 住用町雨量観測局では, 時間雨量 mm/hr を超える降雨が2 時間連続で観測され, また, 時間雨量で54mmを記録し, 年確立規模の.8 倍の降雨に相当し, 未曾有の集中豪雨となった 表 - 平成 22 年 月 8 日からの降雨量 観測局名 市町村 雨量 (mm) 時間最大連続 その他 喜瀬 奄美市 88 556 大熊 75 5 大島支庁 7 769 西田 99 796 根瀬部 8 855 東城 9 669 住用町 968 54(mm/hr) 市 8 526 大金久 大和村 7 6 節子 瀬戸内町 25 556 長雲 龍郷町 87 9 大勝 8 9 鹿児島県河川情報システムによる観測局 (r>5mm) 写真 -4 浸水し, 泥水に浮かぶ車写真 -5 地すべりによる被災状況写真 -6 土砂災害により通行不能となったトンネル

4. 大和ダムの洪水調節状況 月 8 日 2 時頃から, ダム周辺で雨が降り始め,2 日間程度, 小康状態が続く 月 2 日 2 時頃から降雨量が増加し始め, 時 9 分には大雨洪水警報が発令されたことから, 事務所では, 洪水警戒体制を配備し, データ監視及び情報収集を開始 8 時頃から, 再び降雨量が増加し始める 時 分からさらに雨足が強まり,4 分に流入量が洪水量の 6m/s に達したため, 自然調節による洪水調節を開始した さらに, ダム地点での監視や警報吹鳴, パトロールを実施するため, 管理所へ職員を派遣した ( しかしながら, 道中の道路冠水や斜面崩壊のため, ダムへ到着できたのは 8 時過ぎであった ) 時 ~ 時にかけて,mm/hr を超える降雨が 2 時間連続で続き流入量が急激に増大 時時点で, 流入量はピーク (58.6m/s) を迎え降下し始めたものの, 放流量は, なおも上昇し続け, 非常用洪水吐きから越流のおそれがあったことから, 大和村に防災無線による下流域住民へ警報を依頼した 4 時 5 分には, 貯水位がサーチャージ水位に到達するも, 貯水位は依然として上昇を続け, 非常用洪水吐きから越流し始めた ダムを通過する水量も急激に増大し, 通過水量は,5 時 5 分までの 時間の間に 5.4m/s から2.4 倍の 6.6m/s(: 最大放流量 ) に増大し, 下流河川の計画高水流量 2m/s を大きく上回るものとなった ( 雨量観測局 : 大和村役場 ) 2 7 6 2 22 4 4 9 2 8 6 2 8 25 2 4 5 2 時 4 累 62 4 間 時間 8 74 計雨雨量 mm 8 6 5 858mm 雨量 累計 8 量 雨量 mm 2 (mm) 58.6m (mm) /s (5 時間 分 ) 6 5. 計画洪水流量 54m/s 49. サーチャーシ 水位 47.m 48. 5 47. 46. 流 4 6.6m /s 45. 量 44. 貯 4. 水 流入量 m/s 42. 位 (m /s) 放流量 m/s 4. 2 貯水位 m 4. 9. (m) 8. (2 時間 5 分 ) 洪水量 6m/s 7. 6. - 5. (47.4m/s /s カット ) : ( 流入量ヒ ーク ) 4:5 ( サーチャーシ 水位突破 ) 5:5 ( 放流量ヒ ーク ) 9:5 ( サーチャーシ 水位低下 ) 流入量 58.6m /s 流入量.2m /s 流入量 8.5m /s 流入量.8m /s 月 9 日 月 2 日 月 2 日 放流量 流入量 累計雨量 mm 時間雨量 mm 5: 6: 7: 8: 9: 2: 2: 22: 2: : : 2: : 4: 5: 6: 7: 8: 9: : : 2: : 4: 5: 6: 7: 8: 9: 2: 2: 22: 2: : : 2: : 4: 5: 6: 7: 8: 99 2 2 25 2 2 2 2 5 8 44 66 24 28 228 22 25 244 257 28 298 8 499 6 672 746 786 792 82 87 84 84 844 844 2 7 2 8 8 8 62 74 4 6 22 8 4 4 9 6 2 25 2 85 855 858 4 日時 貯水位 m /s m /s m.5.4.4.7.8.9.6.8.7.6.2.8 4. 27.9 2.6 5.4.8.6. 2.9 2.6 2.2.8.5.9.5.4.4. 2.2.9.8.8.5.5 24.5 7.8..6 8.7 7.5 7. 4. 4..9.5 2.5 7.9 7.9 7.9 8. 8. 8. 8. 8. 8. 8..6.6 8. 2. 5.4 8. 4..9 8.9 4..5 8.8.9. 8.8.8.8 8.8.9 4. 8.8 4.7.6 9. 8..2. 9.8 7.4 5.9 4.7 8.5 8.8 8.9 44.5 4. 58.6 44. 4.8 46. 6.2 47. 6. 5.6 47.5 47.4 47. 47. 47. 46.7 46.4 46. 45.5 45. 44.6 44. 4.6.4 2.9 4.2 9.9 9.4 8.9 2.8.2. 42.7 42.2 4.8 842 84 846 846 847 848 放流量.2m /s 放流量 5.4m /s 放流量 6.6m /s 放流量.8m /s 図 -6 平成 22 年 月 9~2 日におけるハイドロハイエト図

5 時 5 分時点で, 放流量が流入量とほぼ等しくなり, 以降, 放流量及び貯水位ともに降下し始めた (: 最大越流深 h=.6m) 平成 22 年 月 2 日 8:9 画高水流量を上回る6.6m/sの放流を記録した 幸いにも三田川沿川には人家が無く, また, 本川大和川においても, 洪水ピーク時から約 時間遅れていることから, 本川水位は既に降下しており, 何ら支障がなかった 壁立 三田川 k /4 7.8 ( 単位 : m) 大和ダムの効果により -.8m の水位低下 H.W.L (:2.) 堤防高 2.2 (:.5).2 写真 -7 非常用洪水吐きからの越流状況 平成 22 年 月 2 日 8:9 図 -7 平成 22 年 月 2 日 8:9 三田川での効果 写真 -8 常用洪水吐きからの放流状況 写真 -9 ダム直下 ( 三田川 ) の状況 9 時 5 分には, 貯水位がサーチャージ水位を下回り, ダムを通過する水量も 2m/s を下回った 2 時 分には流入量が洪水量を下回ったことから, 自然洪水調節を終了した 5. 大和ダムの効果今回の洪水調節については, 本川大和川がピーク流量を迎える 時 分時点において, 上流のダム地点で, ピーク流入量 58.6m/s をダムにより 47.4m/s 相当を貯留し, 下流へは.2m/s しか流さない洪水調節を行った そのことにより, 三田川において河川水位を.8m 下げる効果があり, また, 本川の大和川においても溢水寸前の河川水位を.4m 下げる効果が検証された ( 写真 -) しかし, 今回の豪雨は計画の確立規模 年を上回る想定以上の豪雨であったことから, 洪水調節容量の限界を超え, 貯水位がサーチャージ水位を突破し,5 時 5 分には, 支川三田川の計 壁立 大和川 k /2 H.W.L 大和ダムの効果により -.4m の水位低下 (:.) 2.5 (:.) 9.2 図 -8 平成 22 年 月 2 日 :(: タ ム流入量ヒ ーク時 ) 写真 - 大和川の状況.6 大和川での効果 ( 単位 : m).6 堤防高 (:2.)

6. 周囲の評価このような未曾有の大規模災害の中, 大和川沿川で人的被害が発生しなかったことは, 奇跡的であり, この危機的な状況の中, 被害を減災することが出来た要因のひとつとして, 大和ダムの洪水調節による効果があったと思われる このことについては, 日頃より鹿児島県のホームページにより, ダムの治水効果を公表してきたところであり, 今回, マスコミや地元誌に掲載され多大な評価が得られたことから, その一部について以下の記事について紹介する 7. おわりに今回の大和ダムの洪水調節の効果が十二分に発揮ができ, 今日の下流域の安全と河川環境の保全が保たれているのは, 建設に携わった学識経験者, 国土交通省, 県, 設計者, 施工者等の御尽力と, ダム事業に対する地元関係者の御理解と御協力, さらに, 供用開始以降の適切な管理運用によるものと感じております この場を借りて関係者の方々に厚く御礼申し上げます しかしながら, 警戒体制発令後, 速やかに管理所まで到達できていないことなど, 課題が明白となってきたことから, 今回の経験を踏まえ, 今後はこれに対応した管理運営を検討 実施するとともに, より質の高い管理がなされるよう取り組みたいと考えている ( 平成 2 年 2 月 日南海日日新聞 ) 図 -9 洪水調節の評価