エネルギー代謝に関する調査研究

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新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

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平成14年度研究報告

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Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

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計画研究 年度 定量的一塩基多型解析技術の開発と医療への応用 田平 知子 1) 久木田 洋児 2) 堀内 孝彦 3) 1) 九州大学生体防御医学研究所 林 健志 1) 2) 大阪府立成人病センター研究所 研究の目的と進め方 3) 九州大学病院 研究期間の成果 ポストシークエンシン

犬の糖尿病は治療に一生涯のインスリン投与を必要とする ヒトでは 1 型に分類されている糖尿病である しかし ヒトでは肥満が原因となり 相対的にインスリン作用が不足する 2 型糖尿病が主体であり 犬とヒトとでは糖尿病発症メカニズムが大きく異なっていると考えられている そこで 本研究ではインスリン抵抗性

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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第12回 代謝統合の破綻 (糖尿病と肥満)

スライド 1

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

2011年度版アンチエイジング01.ppt

作成要領・記載例

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

平成24年7月x日

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

1. 背景 NAFLD は非飲酒者 ( エタノール換算で男性一日 30g 女性で 20g 以下 ) で肝炎ウイルス感染など他の要因がなく 肝臓に脂肪が蓄積する病気の総称であり 国内に約 1,000~1,500 万人の患者が存在すると推定されています NAFLD には良性の経過をたどる単純性脂肪肝と

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PowerPoint プレゼンテーション

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

32 小野啓, 他 は変化を認めなかった (LacZ: 5.1 ± 0.1% vs. LKB1: 5.1 ± 0.1)( 図 6). また, 糖新生の律速酵素である PEPCK, G6Pase, PGC1 α の mrna 量が LKB1 群で有意に減少しており ( それぞれ 0.5 倍,0.8 倍

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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(Microsoft Word \203v\203\214\203X\203\212\203\212\201[\203X\216\221\227\2772.doc)

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

心房細動1章[ ].indd

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

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ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

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報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

2015 年度 SFC 研究所プロジェクト補助 和食に特徴的な植物性 動物性蛋白質の健康予防効果 研究成果報告書 平成 28 年 2 月 29 日 研究代表者 : 渡辺光博 ( 政策 メディア研究科教授 ) 1

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脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

Q2 はどのような構造ですか? A2 LDL の主要構造蛋白はアポ B であり LDL1 粒子につき1 分子存在します 一方 (sd LDL) の構造上の特徴はコレステロール含有量の減少です 粒子径を規定する脂質のコレステロールが少ないため小さく また1 分子のアポ B に対してコレステロールが相対

53巻6号/TNB06‐10(委員会報告)

特定健康診査等実施計画 ( 第 2 期 ) ベルシステム 24 健康保険組合 平成 25 年 3 月 1 日

4. 発表内容 : [ 研究の背景 ] 1 型糖尿病 ( 注 1) は 主に 免疫系の細胞 (T 細胞 ) が膵臓の β 細胞 ( インスリンを産生する細胞 ) に対して免疫応答を起こすことによって発症します 特定の HLA 遺伝子型を持つと 1 型糖尿病の発症率が高くなることが 日本人 欧米人 ア

平成17年度研究報告

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( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

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山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

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図 1 マイクロ RNA の標的遺伝 への結合の仕 antimir はマイクロ RNA に対するデコイ! antimirとは マイクロRNAと相補的なオリゴヌクレオチドである マイクロRNAに対するデコイとして働くことにより 標的遺伝 とマイクロRNAの結合を競合的に阻害する このためには 標的遺伝

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高齢者の筋肉内への脂肪蓄積はサルコペニアと運動機能低下に関係する ポイント 高齢者の筋肉内に霜降り状に蓄積する脂肪 ( 筋内脂肪 ) を超音波画像を使って計測し, 高齢者の運動機能や体組成などの因子と関係するのかについて検討しました 高齢男性の筋内脂肪は,1) 筋肉の量,2) 脚の筋力指標となる椅子

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

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医療法人将優会 将優会 クリニックうしたに

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生活習慣病の増加が懸念される日本において 疾病の一次予防はますます重要性を増し 生理機能調節作用を有する食品への期待や関心が高まっている 日常の食生活を通して 健康の維持および生活習慣病予防に努めることは 医療費抑制の観点からも重要である 種々の食品機能成分の効果について数多くの先行研究がおこなわれ

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平成 29 年度外部評価委員会委員コメント身体活動研究部栄養代謝研究部 我が国の身体活動研究のリーダー的な存在になっている 栄養素と生活習慣病の関連についての動物実験が確実に と言える できている 長期追跡を行っていることによって可能な研究成果が得られている 二重標識水による身体活動の妥当性研究によ

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糖尿病予備群は症状がないから からだはなんともないの 糖尿病予備群と言われた事のある方のなかには まだ糖尿病になったわけじゃないから 今は食生活を改善したり 運動をしたりする必要はない と思っている人がいるかもしれません 糖尿病予備群の段階ではなんの症状もないので そう考えるのも無理はないです しか

日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

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第6号-2/8)最前線(大矢)

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

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血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

Transcription:

平成 20 年度独立行政法人国立健康 栄養研究所プログラム / センター報告 プログラム名 臨床栄養プログラム プロジェクト名 メタボリックシンドロームプロジェクト 平成 21 年 3 月 18 日 中期目標 計画における主要事項 数値目標等 1 重点調査研究に関する事項 のア 生活習慣病予防のための運動と食事の併用効果に関する研究 に対応し 運動 身体活動による生活習慣病の一次予防 食事と遺伝的因子の相互作用の解明並びに運動と食事とによるテーラーメード予防法に関して ヒトを対象とした試験 動物や細胞等を用いた研究を行う 近年 我が国において糖尿病患者は増加の一途をたどり 罹患者数は約 890 万人を数えるに到っている 糖尿病は高齢者における主要な疾患であり 糖尿病に肥満 高脂血症 高血圧が合併するメタボリックシンドロームは動脈硬化を促進し 心筋梗塞 脳卒中のリスク増大を介して日本人の健康寿命を短縮する最大の原因となっている 糖尿病などの生活習慣病は 複数の遺伝因子に加えて環境要因が組み合わさって発症する多因子病であり その 1 つ 1 つの因子は単独では生活習慣病を発症させる効果は弱いが 複数の因子が組み合わさって生活習慣病を発症させると考えられている また近年の我が国における糖尿病患者数の急増については 日本人が欧米人に比し膵 β 細胞のインスリン分泌能が低い ( 遺伝的素因 ) ために 高脂肪食などの食事内容の欧米化や運動量の低下といった変化 ( 生活習慣要因 ) による肥満 インスリン抵抗性状態に対して 膵 β 細胞がこれを十分に代償できないことがその一因と考えられている そしてこの急増する肥満 インスリン抵抗性 糖尿病が 我が国の死因の第一を占める動脈硬化性疾患 ( 心筋梗塞 脳梗塞など ) の原因となっていると考えられる このような生活習慣病の特性を踏まえて 本プログラムでは糖尿病や動脈硬化症の発症 進展の遺伝的要因 環境要因並びにその分子メカニズムを解明することを目標とする 本プログラムでは 日本人におけるインスリン分泌低下の感受性遺伝子を明らかにし 既に同定したインスリン抵抗性関連遺伝子と食習慣など環境因子との相互作用を解明する 更に メタボリックシンドローム 糖尿病の発症に最もインパクトを与えている インスリン分泌低下とインスリン抵抗性の遺伝素因の組み合わせを同定する 本プログラムで得られる情報は どの様な対象者にどの様な生活習慣介入を行なえば効果的なメタボリックシンドローム 糖尿病の一次予防につながるかを示す極めて重要な情報となることが期待される 中期目標 計画には個々に明示されていないが 研究所の本来業務として重要な研究及び業務等 生活習慣病を効果的に予防するためには 生活習慣病の根本的な分子病態に立脚した生活習慣への介入が必須である メタボリックシンドロームは内臓脂肪の蓄積が第一義的な原因であるが 近年の内外の研究により脂肪細胞で産生 分泌されるアディポカイン ( 特にアディポネクチン ) が内臓脂肪の蓄積によって質的 量的に変化することがインスリン抵抗性や糖尿病を引き起こしていることが明らかになってきている そこで 食事療法 運動療法のアディポカインに対する影響を検討し 生活習慣病の予防の観点から最も食事 運動療法によってメリットがある対象者をスクリーニングする方法の開発や 最適な食事 運動療法プログラム テーラーメード食事 運動療法を開発していくことも本来の業務として重要な研究であると考える また 近年の我が国における糖尿病患者数の急増については 高脂肪食に代表される食習慣の欧米化や車の普及などによる運動不足といった生活習慣に基因する肥満 そしてそれによって引き起こされるインスリン抵抗性に加え 日本人が欧米人に比し膵 β 細胞のインスリン分泌能が低いという遺伝的素因をベースとして 肥満 インスリン抵抗性状態に対して 膵 β 細胞がこれを十分に代償できないことがその一因と考えられている 従って 低インスリン分泌能と高脂肪食誘導性のインスリン抵抗性との相互作用を分子レベルにおいて解明することが求められており モデル動物を用いた詳細な検討が重要であると考える

平成 20 年度計画 (1) 各栄養素摂取量と遺伝子多型の相互作用の検討これまで罹患同胞対法を用いた全ゲノム解析と候補遺伝子アプローチを組み合わせた統合的解析によって PPARγ 遺伝子 アディポネクチン遺伝子 PGC-1 遺伝子 AMP キナーゼα2サブユニット遺伝子 HNF4α 遺伝子が日本人におけるインスリン抵抗性や2 型糖尿病の感受性遺伝子であることを明らかにしている しかしながら 糖尿病をはじめとする生活習慣病は遺伝素因に環境因子の影響が組み合わさって発症する多因子病であり 個々人の易罹患性を予測するためには 個々の遺伝素因と環境因子に加えて遺伝素因 環境因子の相互作用を考慮に入れた解析を行いそのデータに立脚した易罹患性予測式を構築する必要がある これまでアディポネクチン遺伝子多型は肥満者でより強く血中アディポネクチン値に影響を与えていることを明らかにしているが 本プロジェクトでは これまでに明らかにしたインスリン抵抗性やインスリン分泌 2 型糖尿病に関与する遺伝子多型 各栄養素摂取量 身体活動量 それらの相互作用項を説明因子として 肥満度 血糖値 糖尿病の有無などの従属変数をどのように説明しうるかをロジスティック解析によって検討する コホートの対象者についてアディポネクチン遺伝子 アディポネクチン受容体 1および2 遺伝子 AMPKα2 サブユニット遺伝子 レジスチン遺伝子 HNF-4α 遺伝子 PPARγ2 遺伝子 β3 アドレナリン受容体遺伝子 PGC-1 遺伝子に加えて 欧米で報告され日本人でも2 型糖尿病感受性遺伝子であることを確認した TCF7L2 遺伝子多型 HHEX 遺伝子多型のタイピングを行い ロジスティック解析によってインスリン抵抗性 2 型糖尿病発症に関与する遺伝素因と環境因子の組み合わせを抽出する (2) 遺伝素因の機能解析これまでに2 型糖尿病を発症させやすくしていることが遺伝子多型を利用した患者対照相関解析によって明らかにした遺伝子で その機能が未知のものについては 遺伝子欠損マウスの解析を行う 実際に糖尿病を発症するかどうか高脂肪食などの環境因子を負荷して表現型を解析し栄養と遺伝子多型の相互作用について検討を行う (1) 糖尿病の研究 ( インスリン分泌を中心に ) 2 型糖尿病モデル動物 肥満モデル動物に高脂肪食を負荷して膵 β 細胞に関して in vivo の系で解析を行うとともに 遺伝子操作動物の膵 β 細胞株を樹立して in vitro でも解析可能な系を確立することにより 膵 β 細胞増殖機構の分子メカニズムをさらに詳細に検討する (2) メタボリックシンドロームの研究 ( インスリン抵抗性を中心に ) 高脂肪食は 肝臓や骨格筋の中性脂肪含量を増加させ 肝臓や骨格筋のインスリンシグナルを様々な分子メカニズムにより障害することで インスリン抵抗性を惹起すると考えられるが 我々は最近 高脂肪食を負荷した生活習慣病モデル動物では 血管や血管内皮におけるインスリンシグナルが低下しており このことが骨格筋のインスリン抵抗性ならびに動脈硬化の進展に関与している可能性があるという興味深い知見を得た そこで本プロジェクトでは 血管内皮をターゲットにした遺伝子操作動物を作出しその解析を行うことで 血管内皮におけるインスリンシグナルが全身のインスリン抵抗性や動脈硬化の進展に果たす役割を検討する 平成 20 年度における進捗状況及び成果 (A) 各栄養素摂取量と遺伝子多型の相互作用の検討これまで罹患同胞対法を用いた全ゲノム解析と候補遺伝子アプローチを組み合わせた統合的解析によって PPARγ 遺伝子 アディポネクチン遺伝子 PGC-1 遺伝子 AMPKα2サブユニット遺伝子 HNF4α 遺伝子 TCF7L2 遺伝子多型と HHEX 遺伝子多型が日本人におけるインスリン抵抗性や2 型糖尿病の感受性遺伝子であることを明らかにした さらに平成 20 年度は Whole Genome Association Study による解析から 6 回膜貫通型の電位依存性カリウムチャンネルである KCNQ1 が日本人の 2 型糖尿病感受性遺伝子であることを明らかにした 本遺伝子のリスクアリル頻度は 0.4~0.6 で また糖尿病発症のオッズ比が 1.3~1.4 と非常に高く 今まで明らかにされた日本人の 2 型糖尿病感受性遺伝子の中でも最も主要な遺伝子の一つであると考えられた さらに KCNQ1 遺伝子多型はアジア人においても日本人と同様に 2 型糖尿病感受性遺伝子であることが確認された その機能については リスクアリル保持者ではインスリン抵抗性の指標である HOMA-IR とは相関が認められなかったが インスリン分泌能の指標である HOMA-βが有意に低下していたことから KCNQ1 はインスリン分泌に関わっている可能性が示唆された (B) 基礎代謝に影響を与える遺伝素因の研究これまでに2 型糖尿病を発症させやすくしていることが遺伝子多型を利用した患者対照相関解析によっ

て明らかになった遺伝子で その機能が未知のものについて 遺伝子欠損マウスを作製し解析を行った 当該遺伝子欠損マウスに対してインスリン負荷試験と糖負荷試験を行ったところ インスリン抵抗性は認めず インスリン分泌低下に伴う耐糖能異常を呈していることが明らかになった インスリン分泌低下のメカニズムを明らかにするために 膵島の面積を検討したところコントロールマウスと差を認めなかったが 当該遺伝子欠損マウスから単離した膵島では グルコース刺激後の細胞内 Ca 濃度が有意に低下しており 当該遺伝子はグルコース応答性インスリン分泌機構において重要な役割を果たしている可能性が示唆された また 当該遺伝子 SNP17 の 2 型糖尿病リスクアリル保持者は非保持者に比べて遺伝子発現が低下していることを確認した (A) 糖尿病の研究 ( インスリン分泌を中心に ) これまでに 2 型糖尿病モデル動物 肥満モデル動物を用いた検討から 高脂肪食誘導性のインスリン抵抗性に対する代償性インスリン分泌亢進において膵 β 細胞の代償性過形成が生じていること その代償性過形成にインスリン受容体基質 (IRS)-2 が重要な役割を果たしていることを明らかにした 平成 20 年度は その分子メカニズムをさらに解析するために まず IRS-2 欠損膵 β 細胞株の樹立を試みた これまでに樹立した IRS-2flox/flox 膵 β 細胞株に Adeno-Cre を感染させると Adeno-Cre 濃度依存的にゲノムレベルで IRS-2 が欠失し さらに mrna レベルや蛋白レベルでも IRS-2 の発現は 90% 近く抑制された 一方同じファミリーである IRS-1 の発現には影響は認められず IRS-2 だけ欠損した膵 β 細胞株の樹立に成功した この IRS-2 欠損膵 β 細胞株を用いてグルコース応答性インスリン分泌について検討を行ったところ Adeno-LacZ を感染させたコントロール株とほぼ同程度に保たれていた 一方 細胞の増殖についてはコントロール群に比し IRS-2 を欠損した膵 β 細胞株では増殖が有意に障害されており IRS-2 が膵 β 細胞の機能ではなくむしろ増殖に関与していることが示唆された (B) メタボリックシンドロームの研究 ( インスリン抵抗性を中心に ) これまで 我々は血管内皮細胞において主要な IRS である IRS-2 に着目し インスリン抵抗性と血管内皮機能について 血管内皮細胞特異的 IRS-2 欠損マウス (ETIRS2KO マウス ) および高脂肪食誘導性肥満モデル動物を用いて検討を行った その結果 血管内皮細胞のインスリンシグナル障害による血管内皮機能障害の結果 骨格筋の間質へのインスリンの移行が低下し 骨格筋の糖取り込みが低下するというメカニズムが存在することが示唆された そこで平成 20 年度は 血管内皮改善薬を ETIRS2KO マウスと高脂肪食誘導性肥満モデル動物投与し 骨格筋のインスリン抵抗性が改善するかどうかについて検討した ETIRS2KO に血管内皮改善薬を投与すると enos の mrna と蛋白レベルがコントロールマウスの約 2 倍に増加した また ETIRS2KO で認めたインスリン刺激後の enos のリン酸化の低下は コントロールマウスとほぼ同程度まで増加し 血管内皮機能が改善した さらに ETIRS2KO で認めた骨格筋の間質のインスリン低下は 血管内皮改善薬投与によりコントロールマウスとほぼ同程度まで増加し 骨格筋のインスリン抵抗性が改善した 同様に高脂肪食誘導性肥満モデル動物に血管内皮改善薬を投与したところ 高脂肪食誘導性肥満モデル動物で認めた血管内皮機能障害が改善し 骨格筋の間質のインスリン濃度がコントロールマウスと同程度まで増加し 骨格筋のインスリン抵抗性が改善した 以上の結果から 血管内皮機能が骨格筋インスリン感受性調節に重要な役割を果たしていることが明らかとなった 研究成果 学術的業績 ( 著書 ) 和文 : 2 編 ( 原著論文 ) 欧文 :22 編 ( その他論文 ( 総説 )) 和文 :57 編 ( シンポジウム 教育講演 ) 国内 :61 件国外 : 8 件 社会 行政的貢献等 ( 関連学術団体等への貢献 ) 理事等の役員 16 件 雑誌編集員 17 件 ( 併任 非常勤講師等 ) 大学の客員教授等 5 件 ( 研究所外での講義 講演等 ) 大学 研究機関における特別講義等 9 件 大学研究所における研究セミナー等 2 件 地方自治体 栄養士会等主催の講演会等 3 件 新聞 雑誌報道等 30 件

研究費 交付金予算 ( 執行額 ) 研究 業務経費メタボリックシンドロームプロジェクト栄養療法プロジェクト ( 総額 )8.6 百万円 8.1 百万円 0.5 百万円 受託収入等 ( 総額 ) 0.4 百万円 1) 大石由美子 研究助成プログラム アストラゼネカ リサーチ グラント 2006 採択研究テーマ Molecular mechanisms of pathogenesis of metabolic syndrome に関する研究助成 寄付金アストラゼネカ株式会社 平成 21 年度計画 (A) 遺伝子多型と各栄養素摂取量 身体活動量 基礎代謝量の相互作用の検討糖尿病をはじめとする生活習慣病は 遺伝素因に環境因子の影響が組み合わさって発症する多因子病であり 個々人の易罹患性を予測するためには 個々の遺伝素因と環境因子に加えて遺伝素因 環境因子の相互作用を考慮に入れた解析を行い そのデータに立脚した易罹患性予測式を構築する必要がある 平成 21 年度は これまで罹患同胞対法を用いた全ゲノム解析と候補遺伝子アプローチを組み合わせた統合的解析 また Whole Genome Association Study によって明らかにした糖尿病感受性遺伝子の遺伝子型と食事 運動習慣の相互作用を考慮に入れた解析を行う 具体的には PPARγ 遺伝子 アディポネクチン遺伝子 PGC-1 遺伝子 AMPKα2サブユニット遺伝子 HNF4α 遺伝子 TCF7L2 遺伝子 HHEX 遺伝子 KCNQ1 遺伝子の遺伝子多型を効率的 正確にタイピングできる方法を最適化するとともに これらの遺伝子多型について新発田市の700 名のコホート対象者のほぼ全員について タイピングを終了させる予定である その上で 2 型糖尿病に関与する遺伝子多型 各栄養素摂取量 身体活動量 それらの相互作用項を説明因子として 肥満度 血糖値 糖尿病の有無などの従属変数をどのように説明しうるかを統計解析ソフト JMP(SAS インスティチュート ) を使用したロジスティック解析によって検討する コホート対象者については各栄養素摂取量並びに身体活動量についての情報は既に収集済みである さらに 罹患同胞対法を用いた全ゲノム解析で2 型糖尿病感受性領域としてマップしたものの遺伝子自体の同定には至っていない領域 すなわち染色体 2 番 (2q34),6 番 (6p23), 7 番 (7p22-p21),9 番 (9p) について国際 HAPMAP project によるハプロタイプブロック ハプロタイプ標識 SNP の情報を利用した解析を行って 2 型糖尿病感受性遺伝子そのものを同定する 同定された遺伝子についてはその情報を順次 前述のロジスティック解析に含めることとする (B) 日本人における 2 型糖尿病感受性遺伝子の機能解析遺伝統計学的に2 型糖尿病と相関してもその機能が未知のものについては 個体レベルでの機能解析を行い 日本人 2 型糖尿病感受性遺伝子としての意義を明らかにする必要がある 昨年度に引き続き 染色体 11 番の領域 11p13-p12 に同定された 機能が全く未知の遺伝子の欠損マウスの解析を行う 昨年度 本遺伝子がインスリン分泌に関与していることが明らかになったため 本年度は膵島の大きさや増殖 アポトーシス 膵島におけるインスリン含量 グルコース応答性のインスリン分泌などについて検討し 当該遺伝子のインスリン分泌における役割をさらに解明する また同様に日本人において 2 型糖尿病感受性遺伝子として同定されたが その機能が未知である TCF7L2 遺伝子についても遺伝子操作マウスを作製し 個体レベルにおける生理的 病態生理的役割について検討する (A) 糖尿病の研究 ( インスリン分泌を中心に ) これまでに インスリン受容体基質 (IRS)-2 が高脂肪食誘導性インスリン抵抗性に対する膵 β 細胞の代償性過形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした そして その分子メカニズムを詳細に解明するため IRS-2 欠損膵 β 細胞株を樹立し IRS-2 が生理的な膵 β 細胞増殖に重要な役割を果たしていることを明らかにした 平成 21 年度は 引き続き樹立した IRS-2 欠損膵 β 細胞株を用いてその形態 インスリン分泌能 増殖能 アポトーシスに関して詳細に検討を行い IRS-2 の細胞増殖における役割を検討する さらに肥満モデル動物 高脂肪食負荷モデル動物 遺伝子操作動物などを用いて インスリン抵抗性状態における膵 β 細胞 IRS-2 の発現調節メカニズムについて その分子機構を検討する

(B) メタボリックシンドロームの研究 ( インスリン抵抗性を中心に ) 我々はこれまでに血管内皮細胞特異的 IRS-2 欠損マウス (ETIRS2KO マウス ) ならびに高脂肪食誘導性肥満モデル動物を用いた検討 さらに血管内皮機能改善薬の投与実験から 血管内皮細胞のインスリンシグナル障害による血管内皮機能障害は 骨格筋間質へのインスリン移行低下を引き起こし 骨格筋の糖取り込み障害を惹起するというメカニズムが存在することを明らかにした そこで 平成 21 年度は血管内皮機能がどのような分子メカニズムで間質へのインスリンの移行を調節しているかを解明するため ETIRS2KO マウスならびに高脂肪食誘導性肥満モデル動物における毛細血管拡張能に着目し検討を行う さらに血管内皮機能改善薬が 毛細血管拡張能や骨格筋のインスリン感受性に及ぼす影響についても検討する また ETIRS2KO マウスと ApoE 欠損マウスを掛け合わせたモデル動物を作製し 血管内皮細胞におけるインスリンシグナルが動脈硬化の進展に果たす役割について検討する