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平成 30 年 7 月 4 日 報道機関各位 東北大学大学院歯学研究科 喫煙者は交通事故死亡のリスクが高い傾向 発表のポイント これまで日本で喫煙と交通事故の関連についての検討はほとんどされておらず 本研究では喫煙と交通事故死亡の関連を調べた 男性ではたばこを 1 日 20 本以上吸うことは交通事故

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死亡率 我が国における疾病構造 生活習慣病は死亡割合の約 6 割を占めている 我が国の疾病構造は感染症から生活習慣病へと変化 死因別死亡割合 ( 平成 24 年 ) 生活習

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Q1.65 歳での健康寿命に 65 を足せば 0 歳での健康寿命になりますか A1. なりません 別途 健康寿命の算定プログラム 等を用いて 0 歳での健康寿命を算定する必要があります 例えば 健康寿命の算定方法の指針 の図 4-3 の男の算定結果を見ると 健康な期間の平均が 65 歳時点では 17

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2

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す しかし 日本での検討はいまだに少なく 比較的小規模の参加者での検討や 個別の要因との関連を報告したものが殆どでした 本研究では うつ病患者と対照者を含む 1 万人以上の日本人を対象とした大規模ウェブ調査で うつ病と体格 メタボリック症候群 生活習慣の関連について総合的に検討しました 研究の内容

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平成 21 年循環器疾患登録の年集計について 喫煙習慣の割合は 男性で約 4 割 女性で約 1 割である 週 1~2 回以上の運動習慣のある割合は1 割程度と 男女共に運動習慣のある者の割合が低い 平成 21 年における循環器疾患登録者数 ( 循環器疾患にかかった人のうち届出のあった人 ) について

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背景及び趣旨 我が国は国民皆保険のもと世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきた しかし 急速な少子高齢化や国民の意識変化などにより大きな環境変化に直面しており 医療制度を持続可能なものにするために その構造改革が急務となっている このような状況に対応するため 高齢者の医療の確保に関する法律

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図 1 職域における喫煙対策の 4 本柱 労働衛生管理作業環境管理 受動喫煙防止対策 健康管理 禁煙支援 啓発 防煙対策 受動喫煙防止対策 漏れない分煙 コストは最小限に 敷地内全面禁煙が最も望ましい 禁煙支援対策 禁煙したい方にしっかりサポート 快適職場形成 健康保持増進 啓発対策 正しい知識の普

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まず 内部精度管理については 健診機関で 検体の採取 輸送 保存 測定 検査結果の管理 安全 管理者の配置などについて常に管理して 検査値の精度を保証することが必要とされます 外部精度管理については 日本医師会 日本臨床検査技士会 全国労働衛生団体連合会などの外部精度管理事業を少なくとも一つは定期的

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第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

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また リハビリテーションの種類別では 理学療法はいずれの医療圏でも 60% 以上が実施したが 作業療法 言語療法は実施状況に医療圏による差があった 病型別では 脳梗塞の合計(59.9%) 脳内出血 (51.7%) が3 日以内にリハビリテーションを開始した (6) 発症時の合併症や生活習慣 高血圧を

平成 29 年 3 月改定 特定健康診査等実施計画 ( 第 2 期 ) 協和発酵キリン健康保険組合 平成 29 年 3 月


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秋植え花壇の楽しみ方

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厚生労働科学研究費補助金 ( 循環器疾患 糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業 ) 分担研究報告書 喫煙習慣に着目した保健指導の効果の検討 研究分担者中村正和大阪がん循環器病予防センター予防推進部長 研究協力者仲下祐美子千里金蘭大学看護学部 研究要旨喫煙習慣に着目して今後の保健指導のあり方を検討するための基礎資料を得ることを目的として 大阪府立健康科学センターで平成 20 年度に初回の特定保健指導を実施した 3 年後まで追跡調査を行い 減量に対する喫煙の影響を検討した 分析対象は 初回支援において国の階層化基準を満たした男性 585 人のうち 3 年後まで連続して健診を受診した者で 喫煙状況に変化のない 304 人とした その結果 特定保健指導実施の 1 年後は 非喫煙者は現在喫煙者に比べて 2.49 倍有意に減量を成功しやすい結果を得た しかし 2 年後 3 年後にはその差はみられなくなった その理由として 現在喫煙者において支援レベルが積極的支援かつ完了した者の割合が高いことによる影響が考えられた 初年度の支援時に禁煙 1 年以内であった者について ケーススタディとして特定保健指導の効果を検討した 初回指導の効果は禁煙後の体重が増加する時期に重なることもあり 十分にみられなかったものの 禁煙 2 年目以降は指導効果がみられる傾向にあった 今後 多施設の特定健診 特定保健指導データを用いた検討が望まれる A. 研究目的平成 20 年度より開始された特定健診 特定保健指導において 生活習慣病の改善と予防に重点をおいた保健指導が行われている 本研究は 喫煙習慣に着目して今後の保健指導のあり方を検討することを目的として 特定保健指導の効果の指標として減量を用い 減量に対する喫煙の影響を検討している これまでに 喫煙者は減量に成功しにくいという解析結果が 当センターの平成 20 年度のデータを用いた検討と 津下班でデータ登録を行っている愛知県 大阪府 福岡県 長野県 岡山県の 7 施設で登録された平成 20-21 年度のデータを用いた検討でも同様に得られた また 当センターのデータ解析では 減量に対する喫煙の影響は 初回支援から 6 ヵ月後および 1 年後の両時点で同様であったことを報告した しかし これまでの検討は 減量に対する喫煙の影響を比較的短期的に評価したものにとどまっている そこで今年度は 喫煙状況に関して禁煙者の特定や禁煙年数などの詳細情報を把握している当センターのデータを用いて 初回支援から 3 年後まで追跡期間を延長し 減量に対する喫煙の影響を検討した B. 研究方法分析対象は 特定保健指導を開始した平成 20 年度に当センターの所内および所外健康診断を受診し 国の階層化基準を満たした男性 585 人のうち 平成 23 年度まで連続して健診を受診した者で 喫煙状況に変化のない男性 304 人とした 除外された 281 人の内訳は 1 年後以降の健診未受診 228 人 ( 初回指導後の 3 年連続受診率 61.0%) 連続して健診受診したが初年度の支援後に禁煙した 35 人と再喫煙 11 人 初年度の支援時点で禁煙 1 年以内であった 7 人である 減量に及ぼす喫煙の影響を調べるため 臨床 1

検査値に改善効果がみられる 4% 以上の減量の有無 1) を目的変数として 平成 20 年度の時点での年齢 Body Mass Index( 以下 BMI) 減量に対する行動変容ステージ 保健指導終了時の血液検査告知の有無 飲酒の有無 特定保健指導の完了の有無 支援レベル 平成 21 年度以降に特定保健指導を実施した該当年度の数を調整因子として用い 多重ロジスティック回帰分析を行った なお 多変量解析において分析対象から除外した初年度の支援時点で禁煙 1 年以内であった者については ケーススタディとして 特定保健指導の効果を検討した 当センターの特定保健指導は 健康診断受診当日に初回支援を実施していることが特徴である プログラムについては 平成 21 年度に 積極的支援該当者には電話支援を追加したことにより 支援計画の総ポイント数が増加した ( コースによって異なるが 21%~56% の増 ) プログラムの詳細については平成 21 年度の報告書を参照されたい ( 倫理面への配慮 ) 本研究は大阪府立健康科学センター ( 平成 24 年 4 月 1 日より大阪がん予防検診センターと統合して組織名称が大阪がん循環器病予防センターに変更 ) における倫理委員会の承認を受けた データは 連結可能匿名化した状態で分析を行った C. 研究結果 1. 初回支援時の特性分析対象者全体のベースライン時の平均年齢は 49.4±6.0 歳 身長 171.1±6.1cm 体重 75.9±9.0kg BMI26.0±2.7kg/m 2 腹囲 91.1 ±6.5cm であった 喫煙状況は 現在喫煙者 過去喫煙者 非喫煙者の順に 105 人 ( 34.5%) 111 人 (36.5%) 88 人 (29.0%) であった 過去喫煙者の禁煙継続年数は 12.2±8.6 年であった 喫煙状況別にみたベースライン時の特性を 示した ( 表 1) 年齢と身体計測値( 身長 体重 BMI 腹囲) 減量に対する行動変容ステージは喫煙状況別に有意差はなかった 非飲酒率は 非喫煙者では 35.2% と最も高く 現在喫煙者 26.7 % 過去喫煙者 18.0% であった (p<0.05) 支援レベルが積極的支援であった割合は 現在喫煙者では 98.1% と最も高く 過去喫煙者 47.7% 非喫煙者 44.3% であった (p<0.05) 特定保健指導完了率は 全体および動機づけ支援においては喫煙状況別に有意差はなかったが 積極的支援においては現在喫煙者では 68.0% と最も低く 非喫煙者 74.4% 過去喫煙者 90.6% であった (p<0.05) さらに 支援レベルが積極的支援かつ完了した者の割合は 現在喫煙者では 66.7% と最も高く 過去喫煙者 43.2% 非喫煙者 33.0% であった (p<0.05) 2. 喫煙状況別にみた体重変化喫煙状況別にベースラインの体重と 1 年後 2 年後 3 年後を比較すると 1 年後と 2 年後は現在喫煙者 過去喫煙者 非喫煙者のいずれも有意な体重減少がみられ (p<0.05) 3 年後は現在喫煙者と非喫煙者では有意な減少がみられた (p<0.01)( 図 1) 4% 以上の減量成功者の割合は 1 年後は非喫煙者では 30.7% と最も高く 現在喫煙者 19.0% 過去喫煙者 15.3% であった (p<0.05) 2 年後は喫煙状況別に有意差はみとめられず 3 年後は現在喫煙者では 27.6% 非喫煙者 27.3% 過去喫煙者では 12.6% と最も低かった (p<0.01)( 図 2) 3. 減量に対する喫煙の影響の検討多重ロジスティック回帰分析による 4% 以上の減量に対する非喫煙の多変量調整オッズ比は 現在喫煙を基準とすると 1 年後では 2.49 (95% 信頼区間 : 1.17-5.31) であり 2 年後 1.68(95% 信頼区間 : 0.80-3.52) 3 年後 1.38 (95% 信頼区間 : 0.66-2.89) であり 1 年後のみ有意であった ( 図 3) 2

4. 禁煙 1 年以内の者に対する特定保健指導の効果 -ケーススタディ- 初年度の支援時点で禁煙 1 年以内であった 7 人のベースライン時の年齢と BMI 追跡期間中の支援レベルと体重変化を示した ( 図 4) ベースライン時の年齢は 年代別にみると 40 歳台 3 人 (40 歳 41 歳 47 歳 ) 50 歳台 4 人 (53 歳 54 歳 57 歳 59 歳 ) であった ベースライン時の平均体重は 78.5±9.0kg 1 年後 78.5±9.2kg 2 年後 75.9±7.3kg 3 年後 76.5±8.1kg であった ベースライン時との体重変化についてみると 1 年後 1.6kg 減少 ~ 1.2kg 増加 2 年後 5.2kg 減少 ~1.3kg 増加 3 年後 7.4kg 減少 ~3.4kg 増加であった 4% 以上の減量成功者の割合は 1 年後 0 人 ( 0.0%) 2 年後 4 人 (57.1%) 3 年後 3 人 (42.9%) であった D. 考察減量に対する喫煙の影響について 特定保健指導実施の 1 年後は 非喫煙者は現在喫煙者に比べて約 2.5 倍有意に 4% 以上の減量を成功しやすい結果を得た 現在喫煙者は支援レベルが積極的支援かつ完了した割合も高いにもかわらず 喫煙していると特定保健指導を受けても減量に成功しにくいことが示された 現在喫煙者が減量に成功しにくい背景として 喫煙者は身体活動不足や多量飲酒 食習慣の偏りを併せもつこと 2) や 健康意識の問題 3) に加えてニコチン依存症の影響が指摘されている また 喫煙行動を優先することが 食事や身体活動の改善の障壁となる可能性や 喫煙していると抑うつ傾向になるため 2) 活動的な生活を送らないことにつながる可能性も考えられる しかし 特定保健指導から 2 年後 3 年後には減量成功に対する非喫煙者と現在喫煙者の差はみられなくなった 追跡期間中の現在喫煙者の減量成功率は上昇傾向を示したが その理由として 現在喫煙者において積極的支援を受け かつ完了した者の割合が高いことによる影 響が考えられた 過去喫煙者の減量成功については 禁煙の平均期間が 10 年以上であったことから非喫煙者に類似した効果の大きさを予測したが 3 年間の追跡期間中 現在喫煙者と同等またはそれを下回る結果が得られた 過去喫煙者のベースライン時の生活習慣をみると 非喫煙者や現在喫煙者に比べて 朝食を欠食する者は少なく 減量ステージは実行期 準備期の割合が高い傾向がみられた これらのことから 禁煙後の体重増加に対して生活習慣を改善し 一定の取組みを行ったと考えていることが減量成功率の低さに関わっている可能性が考えられる 初年度の支援時点で禁煙 1 年以内であった 7 人において 追跡期間中の 4% 以上の減量成功率をみると 1 年後は 0.0% であったが 2 年目以降は 非喫煙者より上回る効果がみられた ( 禁煙者 非喫煙者の順に 2 年後 :57.1% 26.1% 3 年後 :42.9% 27.3%) 初回指導の効果は禁煙後の体重が増加する時期に重なることもあり 十分にみられなかったものの 禁煙 2 年目以降は指導効果がみられる傾向にあった このことから 禁煙して 1 年以内の者や一定の年数を経た者は減量しにくいが 禁煙後の年数があまり経過していない者では生活習慣の改善に余地があるため減量しやすいことが示唆された しかし 今回の解析は男性のみを分析対象としているため 今後 多施設の特定健診 特定保健指導のデータを用いて解析対象を増やした検討が必要である E. 結論初回支援から 3 年後まで追跡期間を延長し 減量に対する喫煙の影響の検討を行った 特定保健指導実施の 1 年後は 非喫煙者は現在喫煙者に比べて 2.49 倍有意に減量を成功しやすい結果を得た しかし 2 年後 3 年後にはその差はみられなくなった その理由として 現在喫煙者において支援レベルが積極的支援かつ完了した者の割合が高いことによる影響が考え 3

られた 初年度の支援時に禁煙 1 年以内であった者について 特定保健指導の効果を検討したところ 初回指導の効果は禁煙後の体重が増加する時期に重なることもあり 十分にみられなかったものの 禁煙 2 年目以降は指導効果がみられる傾向になった 今後 多施設の特定健診 特定保健指導データを用いた検討が望まれる 引用文献 1) 村本あき子, 山本直樹, 中村正和, 小池城司, 沼田健之, 玉腰暁子, 津下一代 : 特定健診 特定保健指導における積極的支援の効果検証と減量目標の妥当性についての検討. 肥満研究, 16(3):182-187, 2010. 2) Nakashita Y, Nakamura M, Kitamura A, Kiyama M, Yamano M, Ishikawa Y, and Mikami H: Relationship of cigarette smoking status with other unhealthy lifestyle habits in Japanese employees. Japanese Journal of Health Education and Promotion, 19(3): 204-216, 2011. 3) Nagaya T, Yoshida H, Takahashi H, Kawai M: Cigarette smoking weakens exercise habits in healthy men. Nicotine. Tob Res 2007; 9(10): 1027-1032. F. 研究発表 1. 論文発表 2. 学会発表 G. 知的財産権の出願 登録状況 ( 予定を含む ) 1. 特許取得なし 2. 実用新案登録なし 3. その他なし 4

表 1 喫煙状況別にみた初回支援時の特性比較 現在喫煙者 (N=105) 過去喫煙者 (N=111) 非喫煙者 (N=88) 群間比較 p value 年齢 ( 歳 ) 49.5±6.1 49.2±5.8 49.5±6.0 0.890 身長 (cm) 171.8±6.0 171.3±5.6 169.9±6.8 0.089 体重 (kg) 77.0±9.5 76.0±8.3 74.6±9.3 0.183 Body Mass Index(kg/m 2 ) 26.1±3.0 25.9±2.5 25.8±2.8 0.778 腹囲 (cm) 91.6±7.0 91.2±6.0 90.4±6.6 0.401 血圧高値者 44 (41.9%) 64 (57.7%) 43 (48.9%) 0.068 脂質異常者 64 (61.0%) 41 (36.9%) 35 (39.8%) 0.001 血糖高値者 81 (77.1%) 79 (71.2%) 69 (78.4%) 0.434 支援レベル : 積極的支援 103 (98.1%) 53 (47.7%) 39 (44.3%) 0.001 血液検査のあるコースを受診 21 (20.0%) 19 (17.1%) 8 (9.1%) 0.105 減量ステーシ : 無関心 関心期 44 (41.9%) 35 (31.5%) 41 (46.6%) 0.080 非飲酒 28 (26.7%) 20 (18.0%) 31 (35.2%) 0.022 初年度のみ特定保健指導実施 29 (27.6%) 24 (21.6%) 21 (23.9%) 0.586 特定保健指導完了 70 (66.7%) 87 (78.4%) 63 (71.6%) 0.154 支援レベル別 : 動機づけ支援 0 (0.0%) 39 (67.2%) 34 (69.4%) 0.123 支援レベル別 : 積極的支援 70 (68.0%) 48 (90.6%) 29 (74.4%) 0.008 注 ) 群間比較は Χ 2 検定と一元配置分散分析血圧高値 脂質異常 血糖高値は特定保健指導の階層化基準による減量ステージの無関心期は 6 ヵ月以内に減量しようと思っていない人 関心期は 6 ヵ月以内に改善しようと思っている人である特定保健指導完了は初年度の実施状況に基づく 図 1 喫煙状況 時期別にみた体重変化 kg 78.0 77.0 p=0.001 p=0.023 p=0.006 76.0 75.0 74.0 73.0 72.0 71.0 70.0 p=0.006 p=0.013 p=0.386 p=0.001 p=0.001 p=0.001 介入時 1 年後 2 年後 3 年後 現在喫煙者 (N=105) 過去喫煙者 (N=111) 非喫煙者 (N=88) 注 ) 体重は介入時との差 : 対応のある一元配置分散分析 喫煙状況別の差 : 一元配置分散分析 介入時 p=0.183 1 年後 p=0.048 ( 現在喫煙 vs 非喫煙 p=0.043) 2 年後 p=0.085 3 年後 p=0.121 5

図 2 喫煙状況別 時期別にみた 4% 以上の減量成功者の割合 50.0% 40.0% 30.0% 20.0% 10.0% 0.0% 30.7 26.1 27.6 27.3 19.0 22.9 19.8 15.3 12.6 1 年後 2 年後 3 年後 現在喫煙者 (N=105) 過去喫煙者 (N=111) 非喫煙者 (N=88) 注 ) 喫煙状況別の差 :Χ 2 検定 1 年後 p=0.025 2 年後 p=0.572 3 年後 p=0.001 図 3 特定保健指導による 4% 以上の減量成功に対する喫煙の影響 1 年後 2 年後 3 年後 年齢 1.01(0.96-1.06) 1.01(0.96-1.06) 0.98(0.94-1.03) BMI 0.99(0.89-1.11) 1.02(0.91-1.14) 0.99(0.89-1.12) 減量ステージ ( 無関心 関心期 / その他 ) 1.04(0.57-1.88) 1.32(0.75-2.32) 1.38(0.77-2.47) 飲酒なし / あり 1.58(0.86-2.93) 1.16(0.63-2.16) 1.19(0.63-2.24) 血液検査告知あり / なし 0.74(0.31-1.79) 1.23(0.55-2.75) 0.99(0.43-2.30) 完了あり / なし 1.32(0.67-2.54) 1.16(0.61-2.20) 1.45(0.75-2.84) 支援レベル ( 積極的 / 動機づけ ) 1.98(0.96-4.11) 1.91(0.92-3.95) 2.02(0.92-4.44) 特定保健指導回数 0.66(0.37-1.19) 0.75(0.51-1.11) 過去喫煙 / 現在喫煙 1.06(0.48-2.32) 1.21(0.58-2.52) 0.53(0.24-1.16) 非喫煙 / 現在喫煙 2.49(1.17-5.31) * 1.68(0.80-3.52) 1.38(0.66-2.89) 注 ) 減量ステージの無関心期 : 6 ヵ月以内に改善するつもりはない その他 : 関心期 6 ヵ月以内に改善しようと思う 準備期 1 ヵ月以内に改善しようと思う 実行期 すでにできてると思う 完了ありとは動機づけ支援では 6 ヵ月評価ができた者 積極的支援では支援ポイントが A160 以上 B20 以上を満たした者 特定保健指導回数とは初年度以降に特定保健指導を実施した該当年数 1 年後は全員同数のため未投入 2 年後は 1 回 N=130,2 回 N=174 3 年後は 1 回 N=115,2 回 N=107,3 回 N=82 である *p<0.05 6

図 4 禁煙 1 年以内の者に対する特定保健指導の効果 - ケーススタディ - 対象 : 初回の特定保健指導 (2008 年度 ) 時に禁煙 1 年以内であった者 (7 名 ) ケース 1 2 3 4 5 6 7 性男男男男男男男 年齢 57 54 47 41 40 53 59 BMI 26.4 24.8 27.2 31.1 25.5 25.7 24.2 支援レベル 初年度積積動動動動積 1 年後積動動積積動非 2 年後積情情積動積非 3 年後積非情動積積非 ( 注 ) 積 : 積極的支援 動 : 動機づけ支援 情 : 情報提供 非 : 非該当 kg 4.0 ケース6 2.0 ケース7 0.0 ケース5-2.0 ケース4 ケース1-4.0 ケース3-6.0 ケース2-8.0 初回指導 1 年後 2 年後 3 年後 7