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岐阜県多文化共生推進基本方針 ( 案 ) に対するパブリックコメントとそれに対する県の考え方 ( パブリックコメント結果 ) ページ番ご意見 ( 概要 ) 号 年毎に見直しをされるようですが 大きな社会情勢などの変化があれば見直しをする必要があると思います 基本は5 年で良いと思いますが

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第4113 第 1 章で示したように 我が国全体として外国人住民 外国人旅行者が増加する中 多摩 島しょ地域においても外国人住民数は年々増加しており 平成 29(2017) 年には総人口の約 3.8% を占めている 各国の経済状況の変遷等により 様々な国籍の外国人住民が地域に居住するようになってきて

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3 地域コミュニティ活動について 地域コミュニティ活動 への参加について よく参加している 時々参加している とい う回答は 55.4% となりました また 参加したことはない と回答された方以外を対象に 地域コミュニティ団体の課題と 思うもの を尋ねたところ 回答が多かったものは 以下のとおりです

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3 参加しやすい工夫 ( 効果的な周知や会議運営 ( 開催時間 委員の構成等 ) の工夫 ) 4 名柳田委員 猪瀬委員 庄司委員 小橋委員 2 名関口副会長 高柴委員 1 名櫻井委員 関口副会長 パブリックの後の説明会 意見交換会の開催検討の方向性は 担当課の工夫がある 高柴委員 このバスを望んでい

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3-2 学びの機会 グループワークやプレゼンテーション ディスカッションを取り入れた授業が 8 年間で大きく増加 この8 年間で グループワークなどの協同作業をする授業 ( よく+ある程度あった ) と回答した比率は18.1ポイント プレゼンテーションの機会を取り入れた授業 ( 同 ) は 16.0

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( ウ ) 年齢別 年齢が高くなるほど 十分に反映されている まあまあ反映されている の割合が高くなる傾向があり 2 0 歳代 では 十分に反映されている まあまあ反映されている の合計が17.3% ですが 70 歳以上 では40.6% となっています

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080623takaaraa 高荒あかり 多文化共生に対する宇都宮市の取り組み はじめに 近年グローバル化の影響や 1990 年の入国管理法の改正により 海外から日本に移住する人々が増加してきている また 日本に一時的な滞在を考えてきた人たちも永住する傾向になってきている 今日 日本に住む外国人の人

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1) 3 層構造による進捗管理の仕組みを理解しているか 持続可能な開発に向けた意欲目標としての 17 のゴール より具体的な行動目標としての 169 のターゲット 達成度を計測する評価するインディケーターに基づく進捗管理 2) 目標の設定と管理 優先的に取り組む目標( マテリアリティ ) の設定のプ

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エボランティアとしてふさわしくない行為があったとき 5 医療通訳ボランティア養成講座 ステップアップ講座 (1) 医療通訳ボランティア養成講座ア目的通訳に必要な心構え 医療制度 病院のしくみ 医療に関する基礎的な知識や医療現場などで必要な通訳スキルを習得させ 医療現場で通訳できる人材を養成する イ受

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3-1. 新学習指導要領実施後の変化 新学習指導要領の実施により で言語活動が増加 新学習指導要領の実施によるでの教育活動の変化についてたずねた 新学習指導要領で提唱されている活動の中でも 増えた ( かなり増えた + 少し増えた ) との回答が最も多かったのは 言語活動 の 64.8% であった

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Transcription:

地方自治体による外国人支援 埼玉県を事例に 国際学部国際社会学科矢内美由紀 1. 今 外国人行政を考えること日本は現在 少子高齢化社会であると言われており 今後もそれが進行していくであろうことが見込まれている 高齢化社会になるにつれて 危惧されているのは労働力の不足である 今後なんらかの少子化対策をしない限り 労働力の不足が起こるのは確実であろう そしてその時 鍵となるのは外国人ではないだろうか 現在日本には様々な外国人労働者が滞在しているが 国はどれほど彼らに対して支援をしているのであろうか 日本国憲法においては その権利を享受するのは国民だけであるとする見解が強く 外国人は原則的に排除されてしまっている そんな中 地方自治体は国とは別個の国際政策を展開できる可能性を指摘されている 1 それは地方自治法が憲法とは明確に異なった立場に立っているからであり 保持されるべき住民の中に外国人も入るとされている そこで今回は 私の地元である埼玉県に的を絞り 外国人に対する政策がどのように行われているのか調査していきたい 2. 埼玉県における外国人の現状現在 日本には 2,033,656 人の在留外国人がいる 2 その中で埼玉県は 2012 年末に法務省から出された在留外国人の統計を見ると 東京都 393,585 人 大阪府 203,288 人 愛知県 195,970 人 神奈川県 162,142 人 次いで埼玉県 117,845 人と 全国で 5 番目の外国人数になっている 3 これは県人口の約 1.7% を占めており 県民の約 58 人に 1 人が外国人ということになる また 埼玉県内で見ると県南の川口市が最も多く 21,588 人 次いでさいたま市が 16,785 人と 2 市で圧倒的な数となっている 4 県内に在住する外国人の出身国については 国の数は 149 か国と幅広く 国籍別では中国が 48419 人 (39.3%) と最も多く 次いで韓国 朝鮮が 19473 人 (15.8%) フィリピンが 16675 人 (13.5%) ブラジルが 10462 人 (8.5%) ペルー 4371 人 (3.5%) となっている 5 このような現状の県内の外国人への政策として 埼玉県は 埼玉県多文化共生推進プラン というものを推進している 3. 埼玉県多文化共生推進プランそもそも埼玉県多文化共生推進プランは法務省による外国人統計の結果と それに伴い出された国際化への取り組みの提唱がきっかけとなって作られている 当時全国における外国人登録者は 2004 年末で約 200 万人と 10 年間で 1.5 倍となっていた この状況を踏まえ 総務省は これまでの 国際交流 と 国際協力 を柱とした国際化の取組に加え 多文化共生 を第 3の柱とした国際化の取組を提唱した また 2006 年 3 月には 地域における多文化共生推進プラン を策定し 各自治体に対し多文化共生を計画的 総合的に進めるための計画の策定を呼びかけた 6 こういった経緯から埼玉県多文 1

化共生推進プランは 2012 年に基本計画として策定された 期間は平成 24 年から平成 28 年の 5 年とされ 言葉 制度 こころという 3 つの壁を解消するということを重要な課題としている その中で特に重要視されていると考えられるのは制度の壁である これは 3 つの課題に対して考えられたそれぞれの施策数 取組数から判断でき 言葉については施策数が 2 取組数が 4 であり 制度については施策数 14 取組数 43 そして最後のこころに関して行われている自立への施策数は 9 取組数は 16 となっている (1) 外国人住民が求めていること外国人に対してどのような施策を展開していくべきなのか それを考えるためには まず当事者となる外国人のニーズを 知らなければならないだろう そこで今回は 多文化共生推進プラン ( 全体版 ) と埼玉県が平成 23 年 4 月 25 日から 7 月 8 日の期間で行った 多文化共生社会づくりのための外国人住民実態調査報告書 からこれを見ていこうと思う (2) 行政手続きに関わること平成 22 年度に外国人総合相談センター埼玉に寄せられた相談件数は 5,283 件に上っている 7 相談内容は 在留資格 帰化など 出入国や国籍に関する相談が 43.1% と最も多く 次いで 仕事又は労働が 12.2% 医療 福祉又は年金が 8.8% となっている 8 (3) 言葉の支援しかし制度に関わることだけが求められているわけではない 平成 23 年に行われた 多文化共生社会づくりのための外国人住民実態調査報告書 には それが如実に表れている このアンケートの調査対象は 埼玉県内に在住する外国人 ( 日本人と積極的な付き合いのない 日本の地域社会と距離を置き生活している方 ) とされている これは多文化共生キーパーソンという 外国人住民と地域や行政の橋渡し役として 地域で外国人住民を支援している日本人が依頼を受け 聞き取りで調査を行ったものである 9 よってこの対象とされる日本人と積極的な付き合いのない外国人というのには明確な基準はなく 多文化共生キーパーソン個人での判断に任されている 質問は大きな問いが 4 つで 1 現在一番困っていることは何か 2 日本人とどのように付き合っているか 3 地域活動に参加したことがあるか 4 困りごとを相談する人がいるか となっている 項目によってはさらに深く問いかけているものもあった 本来であれば すべての項目についてみていきたいが 今回は外国人のニーズを知るため 1 現在一番困っていることは何かということに絞ってみていこうと思う 1の項目に対して最も多かったのは日本語関係という回答で 50.4% であった 二番目に多いのが子供関係で 23.2% 次いで仕事関係 17.1% 医療関係 9.3% であった また2~4の項目でも 日本語がわからないゆえに生じる問題についてのコメントも多く寄せられている そのことから日本語が不自由なために生活 仕事において日本人とのコミュニケーションに弊害が起こっていると考えられる 3. 埼玉県における対応策の特徴上記で見てきたような外国人のニーズに対して 埼玉県はどのように対応をしてきており またしていこうとしているのか 言語や日本人との交流という点に関して 県は支援を行うボランティアで これに対応しようとして 2

いる 10 具体的にはボランティアや国際交流 協力ネットワーク加盟団体数を増やしていこうと明確に数値を定めている そして制度においては県主体で説明会などを開いたり 多言語に対応できる相談センターを開いたりして対応を図ってきている 一見適切に対応できているように思えるが いくつかの疑問点が生じた まずボランティアの登録数を平成 22 年度末の 4697 人から平成 28 年度末には 6700 人に増やし 彩の国さいたま国際交流 協力ネットワーク加盟団体数も 194 団体から 314 団体にするとしているが 単純にボランティアの登録数を増やしたところでそれが外国人への支援になるのであろうか おそらく登録しただけで 実際に活動をあまり行わない人もいるだろうし それは団体についても同じであろうと思われる ただ数値だけを明確にし 目標を達成したというだけだというのならば それは支援をしているとは言えないのではないだろうか 外国人に対しての支援は行政だけでなく市民の協力も不可欠であろうと思う 行政はいかに市民を 特に主体的にボランティアに参加するなど外国人に対して比較的友好な市民だけでなく 一般市民の協力を得ていくのかということに課題があるのではないだろうか これらの疑問を解消するため 筆者は 2013 年 7 月 3 日に 埼玉県庁県民生活部国際課に取材を行った まず ボランティアの数を増やすことを目指すというものであるが そもそも政策を実施していく以上なんらかの数値目標を作らなくてはならないのだという そして実際に ボランティアを行わない登録者も存在し その場合には登録を解除するという対処をとっている 現在 実際に活動を行っているボランティア団体への財政的支援は行っていない 以前は日本語教室を希望する人々に対して 日本語指導の講座を行ったりもしていたが 現在はそういった支援もないという 財政的支援を行わない理由について 当取材の担当者は そういった支援をする時代ではない という回答をしている これは 先の郵政民営化などに見るように 最近は行政の仕事を民間に移行するということが頻繁に行われていることから 財政的な支援を行っていないのだという そして 県が財政的に圧迫されているため 外国人支援に回す予算がないということも 理由の 1 つのようだ これはなにも 外国人 支援だからという理由ではなく 単に市民の要望の高いものから予算を振っていくため そこに予算が回らないという理由であるようだ では 現在行政はボランティア団体にどのような支援を行っているのか 基本は情報提供という形での支援となっている これは外国人に対する支援ともつながっているのであるが 例えば日本語を学びたいという外国人が訪れた場合 その外国人が居住している自治体またはその付近で活動している日本語教室を紹介しているという また 先ほどボランティア団体への財政的支援はないと言ったが 実際には仕事を委託するという形で資金を提供していることもあるという 例えば 埼玉県には埼玉県国際交流協会というものが存在するのだが そこに外国人児童のための高校進学ガイダンスを開く資金を与えるなどのことはしているという これは高校進学ガイダンスが 外国人への支援のためにやらなくてはならないことであり 県がやるよりも効果が高いと考えられる NGO へ委託する方がよいという判断であるようだ 行政というのは 数年ごとにローテーションで人事が変わってしまう そのためノウハウが蓄積されないという欠点がある また 普段直接外国人と触れ合っているわけではないため 現場の様子がわからない こうい 3

った欠点を克服しているのが NGO NPO 団体であるという認識はもっているということがわかる このように 普段外国人と直接交流している NGO NPO へと使用目的が明確な資金で 委託という 形をとり 協力体制はとっている 4. 多文化共生社会は果たして可能なのか埼玉県多文化共生推進プランの読み込みと 埼玉県庁県民生活部国際課への取材を通して 埼玉県の外国人にたいする支援を見てきた 県としての支援は 適切であるように思われた ノウハウが蓄積されていかないという欠点と 現場がわからない欠点を補うため 少ない予算で委託という形で支援を行っている ここで問題にしなければならないのは 行政というよりも我々日本人の市民の意識であるように思われた 行政というものは 基本的に住民の希望に沿って行動を決められてしまう そのため 市民が望まないことは強く行っていけないという側面を持っている つまり 外国人に対する支援をしっかりと行えない理由としては 市民がそれを望んでいないからである これは外国人が 日本人の市民の意識の中で未だ社会構成員として認められていないという意識があるということである このような意識を変えるということは容易なことではないだろう つまり外国人を自国の構成員として考えるようにするのは非常に困難であるということである なぜならそれは 現在の国民国家が自国民とそれ以外を明確にして成り立つ国家だからである これは 多文化共生社会が果たして可能なのか という疑問を投げかけているように思われる しかしこのような外国人を取り巻く日本人の意識ばかりを指摘していても 何も始まりはしないのが事実である 意識を変えていくためには 外国人との直接の接触を増やし 彼らを知っていくということが必要だ そこで行政の果たすことになってくる役割は大きいのではないだろうか ここで注目されていくべきは 上記の埼玉県多文化共生推進プランで掲げられていた 3 つの壁のうち こころの壁 である つまり これまで私は言語 制度の面にばかり注目していたが 実際にはこのこころの壁が重要になってくるのだと思われる 現在 埼玉県ではこの壁に対して主に 2 つの側面から取り組みをしようとしている それは外国人住民と地域参加支援と 多文化パワーの活用という 2 つの方法だ 11 ここでいう多文化パワーとは 高度な技術を持つ外国人の人材を生かしていったり 外国人のキーパーソンを増やし 地域づくりに生かしていこうというものである 12 たしかにこういったことは 地域に外国人を投入していくことで 日本人が外国人に接触する機会の一つにはなってくるだろう しかし 高度な技術を持つ外国人や キーパーソンとなれる外国人はおそらくごく僅かであり 彼らは日本社会に大いに理解を示し 適応してくれているはずだ 接触する機会を持つ外国人が 日本に適応している外国人ばかりでは 現状と何も変わりはしないのではないだろうか 多くの外国人は日本に出稼ぎに来ている人たちであるため そういった人々とかかわっていく必要があると考えられる それでは どこで外国人との接触を増やしていくべきなのであろうか 私は学校という場を活用することが良いと考える まずは子ども同士での関わりを持たせ 子どもを通じて親を関わらせていく おそらく大きな負担が学校側にはかかることになるだろう だからこそ 行政はここに支援を行っていくべきではないだろうか 4

しかしここで問題となるのは子供をもたない外国人をどう地域とかかわらせていくかということである 平成 18 年に行われた 多文化共生社会づくりのための調査において あなたには 日本に 18 歳以下の子どもがいますか という問いに 63.1% の人が いない と回答している 13 こういった人々はおそらく 会社との関わりがポイントになってくるのではないかと思われる 企業に対して なんらかの協力を要請していくことも必要ではないだろうか 最後に 今回は 外国人に直接支援する立場であるボランティア団体への取材は行うことができなかった 行政から見た支援 ボランティア団体から見た支援 そしてできれば外国人から見た支援という双方向的な支援について今後考えていきたい 1 駒井洋 渡戸一郎 自治体の外国人政策 内なる国際化への取り組み 明石書店 1997 16,17 頁 2 埼玉県 埼玉県多文化共生推進プラン ( 全体版 )6 頁 2013.7.7 閲覧 3 埼玉県 埼玉県多文化共生推進プラン ( 全体版 )6 頁 2013.7.7 閲覧 4 埼玉県 埼玉県多文化共生推進プラン ( 全体版 )8 頁 2013.7.7 閲覧 5 埼玉県 埼玉県多文化共生推進プラン ( 全体版 )6 頁 2013.7.7 閲覧 6 埼玉県 埼玉県多文化共生推進プラン ( 全体版 )6 頁 2013.7.7 閲覧 7 埼玉県 埼玉県多文化共生推進プラン ( 全体版 )14 頁 2013.6.16 閲覧 8 埼玉県 埼玉県多文化共生推進プラン ( 全体版 )14 頁 2013.6.16 閲覧 9 埼玉県 多文化共生社会づくりのための外国人住民実態調査 2013.7.7 閲覧 http://www.pref.saitama.lg.jp/site/keikakutoukei/tabunkachosa23.html 10 埼玉県 埼玉県多文化共生推進プラン ( 全体版 )22 頁 2013.6.16 閲覧 11 埼玉県 埼玉県多文化共生推進プラン ( 全体版 )17 頁 2013.6.16 閲覧 12 2013 年 7 月 3 日に行った埼玉県庁県民生活部国際課への取材より 13 埼玉県 多文化共生社会づくりのための調査 12 頁 2013.7.7 閲覧 http://www.pref.saitama.lg.jp/uploaded/attachment/371513.pdf 5