平成 3 年台風 1 号 北海道胆振東部地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げますとともに 被災地の一日も早い復旧 復興を祈念いたします 豪ドル : 中国経済の懸念が重し対ドルで 1 年安値が意識される展開も No.17 18 年 9 月 日作成 要旨 豪州経済は緩やかな成長続く 豪州経済は緩やかな拡大が続くもインフレは低く 乏しい利上げ観測 上値重い豪ドル相場とその背景 1 金利はITバブル期以来の 米国 > 豪州 で投資魅力に欠ける 中国経済の先行き懸念 中国株市場が下落豪州経済は緩やかな拡大が続いている ~ 月期の実質 GDP( 国内総生産 ) 成長率は前期比 +.9% 前年同期比 +3.% となった 資源関連を除いた設備投資 公共投資 資源輸出が牽引している 但し GDPの半分以上を占める消費については 回復基調ながらもRBA( 豪準備銀行 ) は 不透明感が残る と懸念している 所得の伸びが緩やかなうえ 住宅価格の上昇で家計債務が積み上がっていることが不安視されている ( 図 1) 豪州 実質 GDP 成長率豪州 実質 GDP 成長率. (%) 1.5 1..5..9% 3.% ~ 月期. (%) 5.. 3.. -.5 前期比 ( 左目盛 ) 前年同期比 ( 右目盛 ) -1. 7 8 9 1 11 1 13 1 15 1 17 18 19 1.. ( 図 ) 豪州 失業率と賃金上昇率豪州 失業率 賃金上昇率 (%) 5. 豪州 : 賃金コスト指数 ( 前年同期比 左目盛 ) (%) 7. 参考 : 米国 : 平均時給 ( 前年同月比 左目盛 ).5 豪州 失業率 ( 右目盛 ).5. 3.5 3..5 18/8 5.3%.9%. 5.5 5.. 1.5.1% ~ 月期.5. 國方智子 : シニア投資ストラテジスト 1. 7 8 9 1 11 1 13 1 15 1 17 18 19 ( 出所 )Bloomberg RBA のデータをもとに MUMSS 作成 3.5 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが その正確性 完全性を保証するものではありません また お客様への情報提供のみを目的としたものであり 特定の有価証券の売買 あるいは特定の証券取引の勧誘を目的としたものではありません 本資料で直接あるいは間接的に取り上げられている株式 外国株式 債券は 値動きのある商品であるため 元本が保証されておらず 経営 財務状況の変化およびそれらに関する外部環境の変化 金利 為替の変動などにより 投資元本を割り込むリスクがあります 加えてこの資料で取り上げられている外国証券は 我が国の金融商品取引法に基づく企業内容の開示は行われておりません 当該外国証券の開示情報は 主要取引所の所在する国の開示基準に基づいています 本資料の利用に際しては お客様御自身でご判断くださいますようお願い申し上げます
低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年同期比 +.1% と 鈍い状態にある RBAは 経済の改善で中期的には上昇が見込まれるとの見解を示しているが それでも緩やかなペースに留まろうとも付け加えている 米国の8 月の時間当たり賃金が前年同月比 +.9% だったことと比べると 出遅れ感は否めない 低い賃金上昇は物価を抑制している RBAは 来年 再来年に向けて物価は現状よりは上昇するとの見方だが 8 月に公表した 金融政策報告 では 一時的な要因としながらも18 年末のインフレ率予想を下方修正した ( 従来は前年同期比 +.5% 今回は同 +1.75%) 表 1にあるように 消費者物価指数 (CPI) のインフレ予想は 年末でもインフレ ターゲット (~3%) の下限を若干上回る程度に過ぎない RBAは 9 月の会合でも 低金利が経済を支えようと述べ 過去最低水準の政策金利を容認する姿勢にある 表 にあるように 市場参加者の金利先高観も乏しい 現在の米国の FF 金利は 1.75~.% 豪州の政策金利は 1.5% と ( 図 3) 政策金利とインフレ率豪州 政策金利とインフレ率 8 (%) 7 政策金利 消費者物価指数 ( 前年同期比 ) 5 3 1 RBA のインフレ ターゲットは ~3%.1% ~ 月期 1.5% 7 8 9 1 11 1 13 1 15 1 17 18 19 ( 表 1)RBA の経済見通し RBAの経済見通し (18 年 8 月時点 ) 18/ 予 18/1 予 19/ 予 19/1 予 / 予 /1 予 GDP 成長率 3. 3¼ 3¼ 3¼ 3. 3. 失業率 5.5 5½ 5¼ 5¼ 5¼ 5. インフレ率 (CPI).1 1¾. ¼ ¼ ¼ ( 単位 )% ( 出所 )RBA 金融政策報告 18/8 をもとに MUMSS 作成
米国が豪州を上回っている この様な状態は 豪州経済がアジア危機の 影響を受けた一方で 米国で IT バブルが盛り上がった 年前後以来と なる これは豪ドルの重しと考えられよう ( 表 ) 政策金利の確立金利先物に見る豪州の政策金利の確率 (9/19) 政策決定会合日程 注 : シャドウ部分が現状 政策金利 1.5% 1.75% %.5%.5% 1/ 99.5%.5%.%.%.% 11/ 98.% 1.%.%.%.% 1/ 95.8%.1%.%.%.% 19//5 93.1%.8%.%.%.% 3/5 85.% 1.1%.7%.%.% / 77.%.9%.%.1%.% 5/7 77.%.9%.%.1%.% / 7.%.% 3.7%.3%.% ( 図 ) 豪州 米国の政策金利豪州と米国の政策金利 (%) 8 7 豪州政策金利 米 FF 金利 5 3 1 9 98 8 1 1 1 1 18 ( 図 5) 金利差 豪ドル相場豪州と米国の金利差 ドル / 豪ドル相場 1. (%) ドル / 豪ドル ( 右目盛 ) 1 年債金利差 ( 豪 - 米 左目盛 ) 豪ドル高 8. 政策金利差 ( 豪 - 米 左目盛 ) 豪ドル安.... -. 9 98 8 1 1 1 1 18 ( 出所 )BloombergのデータをもとにMUMSS 作成 ( 1. ト ル / 1.1 1..9.8.7..5..3 3
豪ドル 中国経済懸念で下落 従来豪ドルは 最大の輸出品目である鉄鉱石価格との連動傾向が見られた しかし足元はこのトレンドが崩れている むしろ中国の上海総合指数との連動傾向が見られる 中国経済の景気の先行き懸念が強く意識されていると捉えられる 尚 中国経済の不透明感が商品市況に影響を与えていないわけではない 商品市況のインデックスのひとつであるCRB 工業原材料価格指数 ( 銅やスクラップ鉄など ) は中国株と連動して下げている ( 図 7 8) 豪ドル 中国株 商品市況豪ドル 鉄鉱石 上海総合指数 CRB 工業原材料価格指数 ( ト ル.85 /.83.81.79.77.75.73.71 ドル / 豪ドル ( 左目盛 ).9 鉄鉱石 ( 右目盛 ).7 15/1 1/1 17/1 18/1 19/1 ( ト ル.85 /.83.81.79.77.75.73.71.9 豪ドル高 豪ドル安 豪ドル高 豪ドル安.7 15/1 1/1 17/1 18/1 19/1 ( ホ イント 58) 5 5 5 5 8 ドル / 豪ドル ( 左目盛 ) 上海総合指数 ( 右目盛 ) CRB 産業資材指数 ( 左目盛 ) 上海総合指数 ( 右目盛 ) 38 15/1 1/1 17/1 18/1 19/1 1 ( ト ル / トン ) 9 8 7 5 3 5 ( ホ イント ) 3 1 39 37 35 33 31 9 7 5 ( 5 ホ イント ) 3 1 39 37 35 33 31 9 7 5
鉄鉱石価格は 中国の大気汚染対策がサポートとなってきた しかし 中 国政府が電炉を重視していること またより純度の高いブラジル産鉄鉱石 へのシフトも生じており 豪州産鉄鉱石価格の上値は重くなりつつある 中国経済の減速は鮮明に 中国経済は減速が鮮明となっている 貿易戦争の影響を受ける輸出 低迷が長期化する消費など 中国経済の下支え役はインフラを中心とする投資のみといった状態にある それでも固定資産投資は鈍化している 習近平政権は インフラ投資に注力せざるをえないが 経済全般を引っぱるほどの力はない 豪ドルの目途 従来から 18 年下期の豪ドル相場については ドルに対して.8~.8 ドルとし 1 年の安値 (.87 ドル 1/1/15) が意識される展開を予 想してきた 足元の豪ドルは.7 ドル近辺で 1 年安値を ( 図 9) 中国の経済指標中国 実質 GDP 成長率 固定資産投資 ( 前年同期 月比 ) (%) (%) 1 5 1 1 3.7% ~ 月期 1 8 1 固定資産投資 ( 左目盛 ) 実質 GDP 成長率 ( 右目盛 ) 5.3% 18/8 1 3 5 7 8 9 1 11 1 13 1 15 1 17 18 19 ( 図 1) 豪ドル相場 ( 対円 対ドル ) 豪ドル相場 ( 対円 対ドル ) 11 ( 円 / 豪 $) 1 9 8 豪ドル高 豪ドル安 1. ($/ 豪 $) 1.1 1..9.8 7 円 / 豪ドル ( 左目盛 ) ドル / 豪ドル ( 右目盛 ) 円 / 豪ドル相場 = 円 / ドル相場 ドル / 豪ドル相場 5 8 9 1 11 1 13 1 15 1 17 18 19 ( 出所 )BloombergのデータをもとにMUMSS 作成.7..5 5
上回っているが 上海総合指数は既に1 年の安値に接近しつつあり 豪ドルの調整リスクは増している これらの点を踏まえ 当面の円 / 豪ドル相場について 71~87 円での推移を予想する 米国の利上げにもかかわらず 円 / ドル相場の膠着感が強いことも 円 / 豪ドル相場での豪ドルの重しとして働こう 短期的には米中間選挙後に トランプ政権が保護主義姿勢を緩和し 中国経済の先行き懸念が後退した場合は 豪ドルの反発につながると見る しかし 年に大統領選挙を控えるトランプ政権が態度を緩めるかどうかは余談を許さない そして中期的な豪ドル相場の持ち直しには 豪州経済の持ち直しで金利先高観が浮上することや 米利上げに一巡感が生じることも必要と考える ( 図 11) 円 / 豪ドル相場見通し豪ドル相場見通し ( 対円 ) ( 円 11 / 1 9 17.87 (7/1/31) 15.3 (13//11) 9.37 (17/9/1) 8 7 71.9 7. (1/5/1) (11/1/) 豪ドル高 7.533 (1//) 5 55.13(8/1/) 豪ドル安 7 8 9 1 11 1 13 1 15 1 17 18 19
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