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平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

(イ係)

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

平成  年(オ)第  号

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

1 審査会の結論 平成 28 年度市民税 県民税の賦課決定処分 に係る審査請求は棄却する べきであるとの審査庁の判断は妥当である 2 事案概要南区長 ( 以下 処分庁 という ) は 地方税法 ( 昭和 25 年法律第 226 号 以下 法 という ) 第 24 条及び第 294 条並びに横浜市市税

4 処分行政庁が平成 25 年 3 月 5 日付けでした控訴人に対する平成 20 年 10 月 1 日から平成 21 年 9 月 30 日までの事業年度の法人税の再更正処分のうち翌期へ繰り越す欠損金 4 億 万 6054 円を下回る部分を取り消す 5 処分行政庁が平成 25 年 3 月

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

企業会計の利益 法人税法上の所得金額 売上原価販売費一般管理費営業外費用特別損失 売上 営業外収益特別利益 損金の額原価費用損失の額 益金の額 ( 収益の額 ) 当期純利益所得の金額 2 益金の額に算入すべき金額とは何か益金の額に算入すべき金額とは 法人税法の規定や他の法令で 益金の額に算入する 又

税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

平成  年(オ)第  号

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

保険業務に係る情報提供料は 請求人の事業に基づいた収入であるとは いえない 第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項によ り 棄却すべきである 第 5 調査審議の経過 審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日 審議経過 平成 30

式会社 (A) の債務に係る保証債務及び清算人を務める株式会社 (B) の債務の履行にそれぞれ充てた控訴人が 上記各債務の履行に伴って生じた求償権を一部行使することができなくなったとして これに相当する金額につき 譲渡所得の金額の計算上なかったものとみなす所得税法 ( 法 )64 条 2 項の規定を

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

11総法不審第120号

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

が成立するが 本件処分日は平成 29 年 3 月 3 日であるから 平成 24 年 3 月 3 日以降 審査請求人に支給した保護費について返還を求めることは可能であ る 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件処分に係る生活保護

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は, 亡 AとBとの間の子である 原告は, 所得税法 16 条 2 項の規定により, その営む事業に係る事業場の所在地である渋谷区を納税地としている イ亡 Aは, 平成 年 月 日に死亡し, 原告は, 渋谷区 α 番地 1ほか所在の区分所有建物及

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

民事訴訟法

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

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市町村合併の推進状況について

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

ら退去を迫られやむを得ず転居したのであるから本件転居費用について保護費が支給されるべきであると主張して 本件処分の取消しを求めている 2 処分庁の主張 (1) 生活保護問答集について ( 平成 21 年 3 月 31 日厚生労働省社会援護局保護課長事務連絡 以下 問答集 という ) の問 13の2の

収益事業開始届出 ( 法人税法第 150 条第 1 項 第 2 項 第 3 項 ) 1 収益事業の概要を記載した書類 2 収益事業開始の日又は国内源泉所得のうち収益事業から生ずるものを有することとなった時における収益事業についての貸借対照表 3 定款 寄附行為 規則若しくは規約又はこれらに準ずるもの

賦課決定 ( 以下 本件賦課決定 といい, 本件更正と併せて 本件更正等 という ) を受けたため, 本件更正は措置法 64 条 1 項が定める圧縮限度額の計算を誤った違法なものであると主張して, 処分行政庁の所属する国に対し, 本件更正等の一部取消し等を求める事案である 原審は, 控訴人の請求をい

 

平成  年(あ)第  号

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平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

2(1) 所得税法 34 条 2 項は, 一時所得の金額は, その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額 ( その収入を生じた行為をするため, 又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る ) の合計額を控除し, その残額から所定の特別控除額を控除した金額とす

平成  年(行ツ)第  号

第 1 民法第 536 条第 1 項の削除の是非民法第 536 条第 1 項については 同項を削除するという案が示されているが ( 中間試案第 12 1) 同項を維持すべきであるという考え方もある ( 中間試案第 12 1 の ( 注 ) 参照 ) 同項の削除の是非について どのように考えるか 中間

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

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という ) 開始に係る各相続税 ( 以下 本件各相続税 という ) の申告をしたところ, 処分行政庁から本件各相続税の各更正及びこれらに係る重加算税の各賦課決定を受け, 裁決行政庁からこれらに係る原告らの審査請求を却下する旨の各裁決を受けたのに対し, 上記各更正のうち原告らが主張する納付すべき税額を

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に相当する金額を反映して分割対価が低くなっているはずですが 分割法人において移転する資産及び負債の譲渡損益は計上されませんので 分割法人において この退職給付債務に相当する金額を損金の額とする余地はないこととなります (2) 分割承継法人適格分割によって退職給付債務を移転する場合には 分割法人の負債

取得に対しては 分割前の当該共有物に係る持分割合を超える部分の取得を除いて 不動産取得税を課することができないとするだけであって 分割の方法に制約を設けているものではないから 共有する土地が隣接している場合と隣接していない場合を区別し 隣接していない土地を一体として分割する場合に非課税が適用されない

審決取消判決の拘束力

滞納処分によって財産の差押えを受け 被告がその売却代金等の配当を受けたことについて 本件各申告の一部は錯誤に基づく無効なものであり これを前提としてされた滞納処分も無効であるから 被告は法律上の原因なく配当を受けているとして 不当利得返還請求権に基づき 前記第 1の請求記載の各金員の支払を求めている

役員の債務保証料 1. 概要オーナー社長の場合は 自社の銀行借入金に代表者個人が連帯債務保証をしている場合があります このような場合は 法人からオーナー個人に債務保証料 ( 信用保証料 ) を支払うことが出来ます 当然 会社では法人税の計算上で損金計上することが出来ます 2. 注意点 (1) 債務保

第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項に より いずれも棄却すべきである 第 5 調査審議の経過審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日審議経過 平成 30 年 3 月 6 日 諮問 平成 30 年 4 月 26 日審議 ( 第

【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

株式等に係る譲渡損失の額を控訴人申告に係る3196 万 8863 円から813 万 9478 円と更正したため 控訴人が 処分行政庁の属する国に対し 本件更正処分のうち上記更正に係る部分が違法であると主張してその取消しを求める事案である 原判決は 控訴人の請求を棄却したため 控訴人が控訴した 1 法

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取っていないため課税されるべき所得はなく 川越税務署長が平成 24 年 8 月 24 日付けで原告に対して行った平成 19 年分 平成 22 年分及び平成 23 年分の所得税の各決定処分 ( 以下 本件決定処分 という ) 並びに平成 22 年分及び平成 23 年分の無申告加算説の各賦課決定処分 (

粉飾決算と過年度損益修正 1. 概要 経営上の諸般の事情により やむを得ず粉飾して架空売上や架空在庫を計上する場合があります 前期以前の 過年度の決算が間違っていた場合は 会計上は当期の期首で修正できます ただし 過年度の損失を当期に損金算入すれば その事業年度に損金計上すべきであり 過年度の損失は

このため 法人税法の取扱いでは 収益の計上時期について各法人の任意の取扱いに委ねるのではなく 課税の公平の観点からこれを統一的に取扱うこととしている すなわち 法人が商品等を販売した場合には それによる収益は商品等の 引渡しがあった日 に収益に計上することとしている つまり 商品等の買主への引渡しと

第 5 章国税の還付及び還付加算金 第 5 章国税の還付及び還付加算金 第 1 節国税の還付 学習のポイント 1 国税の還付金等とはどのようなものか 2 充当とはどのようなものか 1 還付金等の種類国税の還付には 還付金の還付と過誤納金の還付の二種類があり 還付金と過誤納金を併せて還付金等という (

併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

適用時期 5. 本実務対応報告は 公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する ただし 平成 28 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には 当該事業年度に本実務対応報告を適用することができる 議決 6. 本実務対応報告は 第 338 回企業会計

作成する申告書 還付請求書等の様式名と作成の順序 ( 単体申告分 ) 申告及び還付請求を行うに当たり作成することとなる順に その様式を示しています 災害損失の繰戻しによる法人税 額の還付 ( 法人税法 805) 仮決算の中間申告による所得税 額の還付 ( 法人税法 ) 1 災害損失特別勘

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

平成 26 年 5 月に 顧客との契約から生じる収益 (IASB においては IFRS 第 15 号 ( 平成 30 年 1 月 1 日 以後開始事業年度から適用 ) FASB においては Topic606( 平成 29 年 12 月 15 日後開始事業年度から適 用 )) を公表しました これらの

(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

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処分済み

48

プルータスセミナー 新株予約権の税務について 株式会社プルータス コンサルティング 平成 18 年 12 月 7 日

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11総法不審第120号

については証拠上必ずしも明らかではなく 見舞金未計上額を益金に算入せず 競走馬の帳簿価額から直接減価することが上記のような意味で重要性に乏しかったものと解することは困難であるのみならず そもそも損金経理のこのような趣旨からすれば 情報利用者の意思決定にとって重要ではないとの理由のみによってこれを省略

スライド 1

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は 控訴人に対し 427 万 5200 円及びこれに対する平成 4 年 8 月 7 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 訴訟費用は 第 1 2 審とも 被控訴人の負担とする 4 仮執行宣言第 2 事案の概要等 1

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

金の各金額に応じて按分した本件還付加算金に対応する金額 ( 以下 前訴弁護士費用按分額 という ) は必要経費に当たると主張して, 本件通知処分 ( 原告主張の総所得金額及び納付すべき税額を超える部分 ) の取消しを求める事案である 1 関係法令の定め (1) 所得税法の定めア雑所得 ( ア ) 雑

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11総法不審第120号

11総法不審第120号

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

日本基準基礎講座 有形固定資産

処分済み

元勤務先の不法行為によって支出を余儀なくされた弁護士費用賠償金に係る遅延賠償金を非課税所得とした事例 ( 平成 22 年 4 月 22 日裁決裁決事例集 79) 税理士大渕浩 はじめに本事案は 賃金格差を理由に勤務先から受け取った損害賠償金が非課税になるかどうかの事案である 所得税法における所得の意

198 第 3 章 減価償却資産の取得価額 キーワード ソフトウエアに係る取得価額購入したソフトウエアの取得価額は 1 当該資産の購入の代価と 2 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用との合計額とされています 引取運賃 荷役費 運送保険料 購入手数料 関税 その他の当該資産の購入のために要

MJS/ 第 79 回租税判例研究会 ( ) MJS 判例研究会 平成 30 年 8 月 9 日 報告者西野道之助 更正の請求/ 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除 平成 28 年 7 月 8 日 東京地裁 ( 棄却 )( 控訴 ) 平成 29 年 1 月 26 日

Unit1 権利能力等, 制限行為能力者 ( 未成年 ) 1 未成年者が婚姻をしたときは, その未成年者は, 婚姻後にした法律行為を未成年であることを理由として取り消すことはできない (H エ ) 2 未成年者が法定代理人の同意を得ないで贈与を受けた場合において, その贈与契約が負担付の

⑵ 過誤納金還付金が各税法の定めに基づいて発生するのに対して 過誤納金は 法律上 国税として納付すべき原因がないのに納付された金額で 国の一種の不当利得に係る返還金である なお この過誤納金は 次の二つに分かれる イ過納金過納金は 納付時には納付すべき確定した国税があったが 減額更正や不服審査の裁決

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主文 1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 請求被告が原告に対して平成 14 年 4 月 26 日付けでした平成 12 年 8 月 1 日から平成 13 年 7 月 31 日までの事業年度に係る法人税の更正処分のうち所得金額 211 万 0221 円, 納付税額 41 万 6700 円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す 第 2 事案の概要 1 本件は, 原告が, 平成 13 年 9 月 19 日, 平成 12 年 8 月 1 日から平成 13 年 7 月 31 日までの事業年度 ( 以下 平成 13 年 7 月期 という ) の法人税の確定申告をしたが, 被告が平成 14 年 4 月 26 日付けで更正処分 ( 以下 本件更正処分 という ) 及び過少申告加算税の賦課決定処分 ( 以下 本件賦課決定処分 といい, 両処分を合わせて 本件各処分 という ) を行ったため, 本件更正処分のうち原告が申告した所得金額及び納付税額を超える部分及び本件賦課決定処分の取消しを求めている事案である 2 争いのない事実等 (1) 原告は, 海洋機器, 一般機械, 文房具, 装身具, 日用雑貨の輸出入及び国内販売等を目的とする会社である (2) 原告は, 住友海上火災保険株式会社 ( 以下 住友海上 という ) との間で平成 12 年 8 月 30 日を始期とする自家用自動車総合保険契約を締結していたが, 同年 11 月 20 日, 住友海上との間で, 上記保険契約を変更して, 所有しているメルセデスベンツ ( 登録番号大阪 302 そ 5000)( 以下 本件車両 という ) を被保険自動車とし, 以下の保険内容とする旨の変更合意をした ( 以下, 変更後の契約を 本件保険契約 という 乙 5) 契約期間平成 13 年 8 月 30 日まで車両保険金額 ( 協定保険価額 ) 950 万円 (3) 原告は, 平成 13 年 7 月 22 日, 本件車両が盗難に遭ったため, 同年 8 月 29 日, 住友海上に対し, 本件保険契約に基づき, 車両保険金の支払を請求した 住友海上は, 同年 8 月 31 日, 原告に対し,969 万円 ( 全損盗難 950 万円, 臨時費用 10 万円及び盗難代車費用 9 万円 ) の保険金を支払う旨の通知をした ( 甲 9, 乙 6) 住友海上は, 同年 9 月 4 日までに上記保険金を原告口座に振込送金した ( 乙 6, 弁論の全趣旨 ) (4) 確定申告原告は, 別表課税の経緯 ( 法人税 ) 記載のとおり, 本件車両の盗難損失 937 万 6000 円を, 平成 13 年 7 月期の損金に計上し ( ただし, 住友海上からの保険金の支払については同期の益金に計上しなかった ), 同年 9 月 19 日, 同期の法人税の確定申告をした ( 甲 1) なお, 原告は, 住友海上から支払われた保険金 969 万円を平成 14 年 7 月期の益金に計上した (5) 本件各処分被告は, 平成 14 年 4 月 26 日, 原告に対し, 本件車両の盗難損失は平成 13 年 7 月期の損金に含まれず, 別途本件車両の減価償却費として損金算入される 224 万 3208 円との差額 713 万 2792 円は損金の額に算入されないとして, 本件各処分を行い, これを原告に通知した ( 甲 2) (6) 不服申立て及び本案訴訟の提起原告は, 別表課税の経緯 ( 法人税 ) 記載のとおり, 本件各処分を不服として, 平成 14 年 6 月 25 日に被告に対して異議申立てを行ったところ ( 甲 3), 被告は, 同年 7 月 25 日, これを理由のないものとして棄却した ( 甲 4) 原告は, 同年 8 月 23 日に国税不服審判所長に対し, 本件各処分について審査請求をしたが ( 甲 5), 国税不服審判所長は, 平成 15 年 2 月 6 日, 平成 13 年 7 月期に本件車両の盗難損失及び保険金収入を同時に算入すべきであるとし, 本件更正処分に係る所得金額が裁決における認定額を下回るため, 結果として本件更正処分は適法であるとして, 審査請求を棄却する旨の裁決をし, 平成 15 年 2 月 17 日, 裁決書謄本が原告に送達された ( 甲 7) 原告は, これを不服として, 同年 5 月 14 日, 本件訴訟を提起した

(7) 法人税法基本通達 2-1-43( 以下 本件通達 という ) の定め本件通達には, 以下の定めがある 他の者から支払を受ける損害賠償金 ( 債務の履行遅滞による損害金を含む ) の額は, その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが, 法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には, これを認める ( 注 ) 当該損害賠償金の請求の基因となった損害に係る損失の額は, 保険金又は共済金により補てんされる部分の金額を除き, その損害の発生した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる 第 3 争点及び当事者の主張 1 本件の争点は, 原告の本件車両盗難による損失及びこれに対する保険金収入を計上すべき時期である 2 原告の主張 (1) 車両盗難による損失は, 本件車両が盗難にあった日である平成 13 年 7 月 22 日の属する平成 13 年 7 月期の損金に算入すべきであり, これに対する保険金収入は, 住友海上から保険金の支払通知のあった日である同年 8 月 31 日の属する平成 14 年 7 月期の益金に算入すべきである (2) 本件車両盗難による損失及びこれに対する保険金収入の計上時期については, 異時両建説が相当である 法人税法 ( 以下 法 という )22 条は, 益金又は損金の額に算入すべき金額は, それぞれ単独でその金額を確定することを予定している また, 盗難損失の場合には, 盗難損失の金額から保険金等で補てんされる金額を控除する旨の 別段の定め は設けられていない したがって, 盗難損失と保険金収入は独立して計上されるべきものである 最高裁判所昭和 60 年 3 月 14 日判決 ( 税務訴訟資料 144 号 546 頁 以下 昭和 60 年判決 という ) も, 原審である東京高等裁判所昭和 54 年 10 月 3 0 日判決 ( 税務訴訟資料 109 号 127 頁 ) が 所得金額の計算に当たって, 同一原因により収益と損失とが発生しその両者の額が互いに時を隔てることなく確定するような場合に, 便宜上右両者の額を相殺勘定にして残額につき単に収益若しくは損失として計上することは実務上許されるとしても, 益金, 損金のそれぞれの項目につき金額を明らかにして計上すべきものとしている制度本来の趣旨からすれば, 収益及び損失はそれが同一原因によって生ずるものであっても, 各個独立に確定すべきことを原則とし, したがって, 両者互いに他方の確定を待たなければ当該事業年度における確定を妨げるという関係に立つものではない と判示し, 異時両建説を採用した判断を支持している したがって, 同時両建説を採用した最高裁判所昭和 43 年 10 月 17 日判決 ( 税務訴訟資料 53 号 659 頁 以下 昭和 43 年判決 という ) は, 昭和 60 年判決によって変更されたのであり, 異時両建説によるべきである 本件では, 保険金収入の計上時期が問題となるところ, 保険金収入を益金として計上するには,1 保険金の請求に係る原因が適法であるか否か,2 保険金の請求手続が適式であるか否か,3 保険金の支払の有無及びその金額について, 保険会社が調査 確認する必要があり, 本件の保険金収入は, 住友海上から支払通知のあった平成 13 年 8 月 31 日に保険金収入が確定したというべきであり, 同日が属する平成 14 年 7 月期に計上すべきである (3) 被告は, 保険金収入の計上時期も, 不法行為による損害賠償金の計上時期と同様に解するべきであると主張するが, 損害賠償金は損害による損失を補てんするものであるのに対し, 保険金は保険契約に定められた事由による損失を広く補てんするものであり, その支払の基因となる事由の範囲が異なる また, 保険金を支払う者は, その原因 ( 事故, 傷害, 災害, 盗難その他の事由 ) の当事者ではなく, 保険会社であるのに対し, 損害賠償金を支払う者は, その損害の原因を生じさせた当事者である さらに, 損害賠償金の額は, 損害額と同額であるのに対し, 保険金の額は契約で定められた金額であり, 必ずしも損害額と同額ではない また, 被告は, 本件通達が保険金の場合にも適用されると主張するが, 本件通達の注書は, 損害賠償金と保険金とで異なる扱いをすることを予定しており, 本件通達は保険金の場合に適用される余地はない さらに, 被告は, 保険事故による損失の発生した事業年度に収入する保険金の額が確定しないような場合には, その生じた損失の額は保険金の確定時まで未決算として処理するか ( 以下 処理 1 という ), 将来収入する保険金の額を適正に見

積って計上すること ( 以下 処理 2 という ) により損益が生じないこととするのが通常である ( 乙 3) と主張するが, 車両に盗難保険が付されている場合と付されていない場合において, 盗難損失の計上時期が異なることになり妥当でない また, 処理 1 と処理 2 については何ら法的根拠がない (4) 以上のとおり, 本件更正処分は違法であり, それを前提とした本件賦課決定処分も違法であるから, 取り消されるべきである 3 被告の主張 (1) 本件車両の盗難損失及び保険金収入は, 平成 13 年 7 月期の損金及び益金に計上すべきである 仮に, 保険金収入が平成 13 年 7 月期に確定していなかったとするならば, 盗難損失とともに平成 14 年 7 月期に計上すべきである (2) 不法行為による損害及びこれに基づく損害賠償請求権の計上時期については,1 当該損害に係る損失の計上と同時に, これに対応して損害賠償請求権を収益計上すべきであるという同時両建説,2 不法行為による損害は加害者に求償し得るから, その求償不能のときに損失が確定したとして損失に計上すべきであるという損失確定説, 及び 3 損失は損失としてその発生時点で計上し, 損害賠償金はこれと切り離してその支払を受けるべきことが確定した時点で収益計上すれば足りるとする異時両建説がある 昭和 43 年判決は, 横領行為によって法人の被った損害が, その法人の資産を減少せしめたものとして, 右損害を生じた事業年度における損金を構成することは明らかであり, 他面, 横領者に対して法人がその被った損害に相当する金額の損害賠償請求権を取得するものである以上, それが法人の資産を増加させたものとして, 同じ事業年度における益金を構成するものであることも疑ない, 犯罪行為のために被った損害の賠償請求権でもその法人の有する通常の金銭債権と特に異なる取扱いをなすべき理由はないから, 横領行為のために被った損害額を損金に計上するとともに右損害賠償請求権を益金に計上したうえ, それが債務者の無資力その他の事由によってその実現不能が明白となったときにおいて損金となすべき旨の原判示は, 犯罪行為のために被った損害を損害賠償請求権の実現不能による損害に置き換えることになるものであるが, 犯罪行為に基づき法人に損害賠償請求権の取得が認められる以上, その経理上の処理方法として十分首肯しうるものといわなければならない として, 同時両建説を採っている 同時両建説は, 損失とそれを補てんする収入とが発生の原因を共通にし, 密接不可分の関係にあることから, これらを同一時期に計上しようとするものであり, この考え方は盗難損失と保険金収入にも妥当する また, 本件通達の注書は, 損失の全部又は一部が損害保険契約に基づく保険金等によって補てんされるときは, 費用収益対応の原則に立ち返り, 損失と保険金収入との対応関係を要求しているのであり, 保険金の予測可能性及び支払の確実性から同時両建説を前提としている したがって, 盗難損失及び保険金収入は同一時期に計上すべきであり, 保険事故が発生した事業年度に収入する保険金の額が確定しない場合は, その生じた損失の額は保険金の確定時まで未決算として処理するか, 将来収入する保険金の額を適正に見積って計上すべきである 本件においても, 原告は, 本件保険契約で協定保険価額を 950 万円とする車両価額協定保険特約を締結していた ( 甲 8, 乙 5) そして, 同契約を締結している場合, 車両の全損の場合に保険会社が支払う保険金額は, 協定保険価額であると定められている したがって, 本件の保険金収入の発生及びその額は盗難被害の発生と同時に確定しているというべきである よって, 本件車両の盗難損失及び保険金収入は平成 13 年 7 月期の損金及び益金に計上すべきである (3) 原告は, 昭和 60 年判決を根拠に異時両建説が妥当であると主張するが, 同時両建説を採用した昭和 43 年判決が昭和 60 年判決によって変更されたものとはいえず, 現在も判例は同時両建説を採用している すなわち, 最高裁判所が判例を変更する場合は, 大法廷で裁判をしなければならないとされているところ ( 裁判所法 10 条 3 号 ), 昭和 60 年判決は, 第一小法廷において裁判がされている また, 昭和 60 年判決は, 原審の確定した事実関係の下において, 被上告人が被った本件損害は本件事業年度における法人税額の算定上損金の額に算入することができるとした原審の判断は, 結局正当であって, 所論引用の判例 ( 注 : 昭和 43 年判決 ) に反するものでもない と判示しており, 昭和 43 年判決の示した法理を是認しこれを前提としつつ, 原審の下した結論を正当としたものであることは明らかである さらに, 昭和 60 年判決以後の下級審裁判例も, 昭和 43 年判決が判例であるとの理解に基づき, 同判決を引用して同時両建説を採用している よって, 昭

和 60 年判決を根拠に異時両建説が妥当であるとする原告の主張は失当である また, 原告は異時両建説を前提とし, 保険金の支払の有無及びその額が確定するのは, 保険会社が調査 確認を行った後であると主張する しかし, 本件保険契約上, 保険金が支払われない場合とは, 車両条項 2 条から 4 条まで及び車両価額協定保険特約 6 条に該当する場合であるが, 本件車両盗難において, 上記各規定に該当する事情はなく, 現に保険金は支払われているのであるから, 盗難発生と同時に保険金収入が確定していたといえる 仮に, 保険金が支払われない極めて低い可能性をもって, 支払通知を受けるまでは保険金収入が確定していないとするならば, 本件盗難損失は盗難発生と同時に確定しているとはいえず, 本件車両が発見されないことが確定した時期, すなわち, 本件車両の発見に要する合理的期間が経過した時期に確定することになる この場合は本件事業年度の翌事業年度に盗難損失及び保険金収入を計上すべきである 第 4 当裁判所の判断 1 本件車両の盗難損失及びこれに対する保険金収入の計上時期について (1) 盗難による損害は, 法 22 条 3 項 3 号の損失に該当し, その事実が生じた時点で被害者である法人の資産を減少させるものであり, その時点で損失を認識することができるから, その損害額は, 基本的には, 盗難の事実があった日の属する事業年度の損金の額に算入すべきことになる 一方, 法人がその資産について損壊 消滅等の保険事故による損害を補てんするために損害保険を付している場合は, その資産が損壊 消滅したときに, それを原因として保険金が支払われることになる この場合の保険金は, 資産の消滅等を原因として, その事実に基づいて支払われるものであって, 資産の消滅等による対価ともみられるので, 保険事故の発生も資産の譲渡に準じて考えることができ, 保険金請求権を行使することによって取得すべき保険金額は, 同条 2 項の資本等取引以外の取引に係る収益の額に該当するものと解され, かつ, 適正な期間損益の算定という観点からは, 費用収益対応の原則に準じて, 盗難損失との間に収支対応の関係を認めることができる (2) 法 22 条は, 益金の額に算入すべき金額は, 別段の定めがあるものを除き, 資産の販売, 有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供, 無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とするものとし ( 同条 2 項 ), 当該事業年度の収益の額及び損金の額は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算すべきものと定めている ( 同条 4 項 ) 企業会計原則においては, すべての費用及び収益は,( 中略 ) その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない ただし, 未実現収益は, 原則として, 当期の損益計算に計上してはならない ( 第 2 損益計算書原則 1 の A) とされており, 現金主義に対する意味における発生主義の原則が定められるとともに, 未実現収益の計上が禁止されている また, 法 22 条 3 項 2 号は, 費用について, 当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除くとしている したがって, 法人税に関し収益を計上すべき事業年度については, 所得税法と同様, 収入すべき権利が確定した時の属する事業年度の益金の額に算入すべきものと考えられる ( いわゆる権利確定主義 最高裁判所平成 5 年 11 月 25 日第一小法廷判決 民集 47 巻 9 号 5278 頁参照 ) そして, 権利の確定とは, 権利の発生に加え, 権利の実現の可能性が客観的に認識し得る状況になることを意味し, 取引の経済的実態から合理的な収益計上基準を是認する余地はあるものの, 基本的には, 法律上権利の行使が可能となった時点をいうものと解される 損失と収益とが同一原因によって生ずるものである場合にも, それぞれ独立して確定すること自体は否定されないとしても, 盗難による損害発生を原因とする保険金収入については, その損害発生時に法人は保険金請求権を取得する上, 本件のような自動車損害保険契約において, 保険金請求権を行使することができるのは保険事故発生の時からであること, 保険金支払額は保険契約によって定められていること, 真実盗難による損失が発生した場合であれば, 保険会社が保険金支払債務を履行しない, 又は履行できない可能性はほとんど考えられないことからすると, 一般的には, 保険金請求権は盗難発生と同時に発生し, 権利の実現の可能性が客観的に認識し得る状況になったということができる したがって, 一般的には, 保険金請求権は, 盗難発生時に直ちに確定したものとして, 盗難損失を計上すべき事業年度に同時に益金として計上すべきものである この点, 不法行為に基づく損害賠償請求権は, 責任の有無及びその賠償額について当事者の合意又は裁判の確定を待つことが必要な場合があり, その履行について

も不法行為者の賠償能力等不確定な要素が多く, 権利の確定に時間を要する場合が少なくない そのことから, 本件通達は, 損害賠償金について, 原則としてその支払を受けることが確定した時の収益とするが, 法人がこれについて実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には, これを認めることとしているのである これに対し, 前記のとおり, 保険金請求権は保険契約によってその発生及び内容が定められていること, 保険金支払債務の履行の可能性が極めて高いことから, あらかじめ保険金収入を予測することが可能であり, 原則として, 盗難発生と同時に権利内容の確定した保険金請求権が発生し, 行使が可能になったものと解されるから, 保険金収入を盗難損失と同一事業年度の益金として計上すべきである 本件通達も, その ( 注 ) において, 損害に係る損失と損害賠償金収入との対応関係を切断することができるとする一方, その損失が損害保険契約に基づく保険金等によって補てんされることとなっているときは, その補てんされる部分については保険金収入等との対応関係を要求しており, その損失を損害の発生した日の属する事業年度の損金の額に算入するときは, 保険金収入の額も同一事業年度に計上して, これを控除することを前提としている これも, 保険金が契約に基づいて給付されるものであって, 一般にあらかじめ予想することが可能であるし, 支払を受け得ないことの方がむしろ稀であろうということを考慮した取扱いであると考えられる ( 乙 1) 以上によれば, 原則として, 損失及び保険金収入は同一事業年度に計上するのが相当である (3) 本件においては, 平成 13 年 7 月 22 日に本件車両が盗難に遭ったのであるから, その時点で原告には車両相当額の損失が生じたといえる 他方, 保険金収入については, 本件保険契約上, 保険金請求権を行使することができるのは盗難事故発生の時からであり ( 一般条項 20 条 1 項 5 号 甲 8), また, 本件保険契約には保険金が支払われない場合として車両条項 2 条ないし 4 条及び車両価額協定保険特約 6 条等が定められているが, これらは保険契約者等の故意や地震等, いずれも盗難発生時に判断可能な事情であるところ, 本件車両の盗難にはこれらに該当する事情は存在しなかったのであるから, 盗難時に保険金が支払われることは確定していたといえる また, 保険金額についても, 本件保険契約の車両価額協定保険特約 4 条 1 号及び 5 条 1 号 ( 甲 8) により, 被保険自動車の損傷を修理することができない場合は, 協定保険価額をもって支払保険金額としており, 同特約 2 条により, その協定保険価額は契約締結時に被保険自動車と同一の用途 車種 車名 型式 仕様 初年度登録年月の自動車の市場販売価格相当額をもって定められているところ, 本件車両は盗難により消滅したのであるから修理することができない損傷に該当し, 本件車両の協定保険価額である 950 万円が保険金額となるから, 保険金額も盗難時に確定していたものといえる したがって, 本件の保険金請求権は, 盗難時に発生し, 権利内容も確定しており, 権利実現の可能性を客観的に認識し得る状態になっていたというべきであるから, 保険金収入は盗難損失と同一時期に計上すべきである 原告は, 昭和 60 年判決を根拠に, 損失及び収益はそれぞれ確定した事業年度に計上すべきであるとして, 盗難損失については平成 13 年 7 月期に, 保険金収入については平成 14 年 7 月期に計上すべきであると主張する しかし, 昭和 60 年判決の原審は, 損失及び収益が同一原因によって生ずるものであっても, 各個独立に確定すべきであることを原則とする旨判示したものであり, 損失及び収益が同一時期に確定した場合に, 損失及び収益を同一事業年度に計上することを否定するものではない 本件の場合, 仮に, 原告が主張する異時両建説を前提としたとしても, 保険金請求権が盗難発生時に権利内容の確定したものとして発生している以上, 盗難損失と同一時期に計上すべきであるから, 原告の主張は採用できない (4) 以上のとおり, 本件車両の盗難損失及びこれに対する保険金収入は, 共に盗難時に確定していたのであるから, その損失及び収益を盗難発生時である平成 1 3 年 7 月 22 日が属する平成 13 年 7 月期に同時に算入すべきである 2 本件更正処分の適法性被告は, 本件盗難損失が保険金収入によって補てんされることが明らかであるとして, 本件盗難損失の損金算入を認めず, 原告の申告所得金額に本件車両の取得価額 937 万 6000 円を加算し, 本件車両の減価償却費 224 万 3208 円を減算し, これを原告の所得金額として平成 13 年 7 月期の法人税の更正処分を行った 前記のとおり, 本件車両の盗難損失及び保険金収入は平成 13 年 7 月期に計上す

べきものであるから, 原告の所得金額として本件車両の盗難損失が損金として計上され, 他方, 保険金収入が益金に計上されることになり, 平成 13 年 7 月期の原告の所得金額は 1161 万 0221 円となるべきところ, 本件更正処分による所得金額は 924 万 3013 円であり, これを下回るものであるから, 本件更正処分は, 上記所得金額の範囲内でされたものとして, 適法である 3 本件賦課決定処分の適法性前記のとおり, 本件更正処分が適法である以上, これを前提とした本件賦課決定処分も適法である 4 以上によれば, 原告の請求は理由がないから棄却することとし, 訴訟費用について行政事件訴訟法 7 条, 民事訴訟法 61 条を適用して, 主文のとおり判決する 大阪地方裁判所第 7 民事部裁判長裁判官川神裕裁判官山田明裁判官芥川朋子