第 2 章 住生活をとりまく現状と課題 8
2-1 住生活をとりまく現状 (1) 人口 世帯の状況名古屋市では 親となる若年層の人口減少等を背景に少子高齢化の傾向が続いており 近い将来 市内の総人口は減少に転ずると見込まれています 少子高齢化の進行で 生産年齢人口が減少する一方 高齢者人口の割合は急速に増加し 平成 32 年には 4 人に 1 人以上が 65 歳以上になると見込まれています 出生数 45, 4, 35, 3, 25, 2, 15, 1, 5, 昭和 45 図表 1 出生数 出生率の推移 5 55 6 平成 2 出生数 7 12 17 22 合計特殊出生率 合計特殊出生率 2. 1.38 1.5 1..5. 資料 : 名古屋市総合計画 218 世帯数は 世帯規模の小型化に伴い増加傾向が継続しますが 平成 37 年 ( 低位推計 ) から平成 42 年 ( 高位推計 ) にかけてピークを迎え その後は減少局面に入ると見込まれています 家族類型別で見ると 核家族世帯は平成 27 年以降減少局面に入る一方 高齢単身世帯などの単独世帯は増加傾向が継続するなど 世帯構成の多様化の進行が見込まれます 万人 25 2 15 1 5 図表 2 年齢別人口の推移と将来推計 % 3. 25. 2. 15. 1. 5.. 平成 2 7 12 17 22 27 32 37 42 ~14 歳 15~64 歳 65~74 歳 75 歳以上 75 歳以上割合 65 歳以上割合資料 : 名古屋市総合計画 218 図表 3 世帯数 世帯人員の推移と将来推計 図表 4 家族類型別の世帯数の推移と将来推計 万世帯 12 11 1 9 8 7 6 昭和 5 55 6 平成 2 7 12 17 22 27 32 37 42 世帯数 ( 高位推計 ) 世帯数 ( 低位推計 ) 1 世帯あたり人員 人 4.5 4. 3.5 3. 2.5 2. 1.5 万世帯 6 5 4 3 2 1 高齢夫婦世帯高齢単身世帯核家族世帯単独世帯その他 平成 12 17 22 27 32 37 42 資料 : 名古屋市総合計画 218 資料 : 名古屋市総合計画 218 9
また 市営住宅居住者の高齢化は 全市の状況を上回って進行しており 高齢者のいる 世帯は既に総世帯数の 6% を超えています また ひとり親世帯や外国人居住者の割合 も高い状況にあります 図表 5 市営住宅における高齢化等の状況 区分市営住宅名古屋市 入居者数 総人口 113,614 人 2,228,769 人 総世帯数 54,662 世帯 1,19,381 世帯 高齢者のいる世帯 63.7% 31.6% うち高齢者夫婦世帯 17.5% 7.4% 単身世帯 35.8% 4.7% うち高齢単身世帯 28.% 9.7% 障害者を含む世帯 17.5% うち障害者単身世帯 4.7% 母子世帯 父子世帯 7.1% 1.5% うち母子世帯 6.8% 1.3% うち父子世帯.3%.1% 外国人人口 7.6% 2.3% 注 1 市営住宅は 平成 28 年 3 月 31 日現在の数値 2 名古屋市は 平成 22 年国勢調査の数値 3 世帯 人口の割合は 総世帯数 総人口に対する割合 4 母子世帯 父子世帯は 親とその未婚の 18 歳以下 ( 名古屋市の場合は 2 歳未満 ) の子供のみからなる世帯 (2) 住宅のストックとフローの状況名古屋市では 住宅数は長期的には世帯数を上回る速度で増加しており 平成 25 年の住宅数と世帯数の差は約 17 万戸に達しています うち空き家は約 16 万 8 千戸となっていますが 住宅総数に占める空き家の割合は この 1 年間ほぼ横ばいの 13.2% となっています 図表 6 住宅数 空き家率の推移 ( 名古屋市 ) 住宅数 ( 戸 ) 世帯数 ( 世帯 ) 1,4, 1,274,48 35% 1,2, 1,54,36 1,117,7 1,15,85 3% 829,23 896,79 972,29 969,42 1,, 96,15 25% 841,74 765,38 792,5 8, 726,3 672,37 2% 6, 15% 4, 2, 11.4% 11.7% 1.7% 12.6% 13.7% 13.2% 13.2% 1% 5% 昭和 58 63 平成 5 1 15 2 25 総住宅数総世帯数空き家率 % 1
住宅の建て方については 共同住宅が増加し 平成 25 年には約 72 万戸と住宅総数の 65.5% に達しています 昭和 55 年以前に建築された旧耐震基準の住宅は順次減少し 平成 25 年には住宅総数の 25.5% となっています 住宅の所有関係については 持ち家 民営借家ともに増加しており 平成 25 年でそれぞれ約 5 万戸 約 41 万戸となっています 特に 民営借家の供給量が増加しているため 持ち家率は若干減少しています 住宅に居住する世帯の家族類型と住宅の所有関係については 夫婦と子ども 3 世代 夫婦と親 及び 高齢夫婦 世帯は持ち家の割合が高く 単身 ( 高齢者を除く ) 世帯は民営借家の割合が非常に高くなっています また 高齢夫婦 高齢単身 及び ひとり親と子ども 世帯は 公営の借家が占める割合が比較的高くなっています 図表 7 住宅の建て方別住宅数と昭和 55 年以前建築住宅の割合の推移 ( 名古屋市 ) 住宅数 ( 戸 ) 1,2, 959,8 1,, 897,7 833,2 783,7 8, 716,42 66,25 6, 4, 2, 昭和 58 63 平成 5 1 15 2 25.% 昭和 58 63 平成 5 1 15 2 25 総数 共同住宅 木造住宅 S55 年以前建築住宅の割合 図表 8 所有関係別住宅数の推移 ( 名古屋市 ) 2, 4, 6, 8, 1,, 戸 44.7% 44.9% 42.3% 43.5% 45.4% 45.7% 1,96,8 718,8 1.% 8.% 6.% 4.% 25.5% 2.% % は持ち家率 45.5% 499,2 78,7 3,5 412,7 32,3 43,42 持ち家公営の借家都市再生機構 公社の借家民営借家給与住宅不詳 図表 9 家族類型と住宅の所有関係別住宅数 ( 名古屋市 ) % 2% 4% 6% 8% 1% 単身 ( 高齢者を除く ) 69.5% 夫婦 ( 高齢者を除く ) 夫婦と子ども 68.4% 3 世代夫婦と親高齢夫婦 94.% 91.1% 76.6% 11.8% 高齢単身ひとり親と子どもその他 15.6% 17.2% 持ち家公営の借家都市再生機構 公社の借家民営借家給与住宅 11
被保護世帯 人員 住宅扶助人員護率2-2 住まい まちづくりの課題 (1) 住宅に困窮する様々な世帯に対する住まいの確保 全国における世帯年収の中長期的な動 向を見ると 年収 2 万円未満や 35 図表 1 所得が 2 万円未満 35 万円未満の世帯割合の推移 ( 全国 ) 万円未満の世帯の割合が増加傾向にあり 世帯類型別では 高齢者世帯や母子世帯において低額所得者世帯の割合が高い傾向にあります また 民営借家に居住する勤労者世帯の実収入に対する家賃支出の割合が上昇 傾向にある中で 持ち家の一次取得層と なる 3 歳代の勤労者の平均年収は減少 傾向にあります さらに 生活保護法に 資料 : 国民生活基礎調査 図表 11 3 歳代男性の平均年収推移 ( 全国 ) 基づく保護を受けている被保護世帯数は増加傾向にあり それに伴って住宅扶助に要する費用も増加しています 一方 平成 22 年に名古屋市が東海 3 県の民間賃貸住宅所有者に対して実施したアンケート調査によれば 入居者を制限している賃貸住宅所有者の割合は 外国人が 59.% 単身の高齢者が 44.6% 平成 資料 : 民間給与実態統計調査 生活保護受給世帯と解雇等による住居退去者が 33.8% 高齢者のみの世帯が 29.4% などとなっており 入居を制限している主な理由は 単身の高齢者の場合 居室内での死亡事故 66.2% 病気 火事等の不慮のトラブル 65.6% 設備 運営の整備不足 4.5% 保証人 身元引受人 38.2% などとされています 6, 5, 図表 12 生活保護被保護世帯数と住宅扶助人員の推移 ( 名古屋市 ) 3. 2.5 保平成 12 15 18 21 24 4, 2. 3, 1.5 2, 1. 1,.5. 被保護世帯数うち住宅扶助人員 年度 被保護実人員保護率 12
このように適切な住宅を自力で確保することが困難な世帯が多様化する中で これらの 世帯が生活の基盤となる住まいを確保し 安心して居住を継続することができる住まい まちづくりが求められています 図表 13 入居拒否の状況 % 1% 2% 3% 4% 5% 6% 図表 14 入居拒否の理由 ( 単身の高齢者 ) % 1% 2% 3% 4% 5% 6% 7% 外国人 単身の高齢者 59.% 44.6% 居室内の死亡事故 66.2% 生活保護受給世帯 33.8% 病気 火事等の不慮のトラブル 65.6% 解雇等による住居退去者 33.8% 高齢のみ世帯 29.4% 設備 運営の整備不足 4.5% 低額所得者 28.% 障害者のいる世帯 23.7% 保証人 身元引受人 38.2% 乳幼児など小さな子どものいる世帯一人親世帯 1.3% 1.3% 家賃支払い 28.6% 資料 : 住宅セーフティネットアンケート ( 平成 22 年度に名古屋市が東海 3 県の民間賃貸住宅の所有者向けに実施したアンケート調査 : 有効回答者数 1,9 名 ) (2) 安心 安全な居住環境の形成名古屋市では 過去に伊勢湾台風や東海豪雨などの自然災害により大きな被害が発生しており 今後も 南海トラフを震源とする大規模な地震の発生による人的被害 建物被害など大きな被害が想定されています 平成 25 年の居住世帯のある住宅ストックで 新耐震基準施行前の昭和 55 年以前に建築された 26 万戸のうち 約 13 万戸は耐震性がないものと推計しており これらの住宅の耐震改修や老朽住宅の建替により 耐震化の促進を図ることが求められています さらに 老朽化した住宅が密集している市街地では 地震時に建物の倒壊等により避難や救助が阻まれたり 延焼による大規模火災が発生したりするおそれがあり 防災性能の向上が課題となっています 13
図表 15 住宅の耐震化の状況 ( 名古屋市 ) 区分 新耐震建築物 A 新耐震以前建築物 耐震性あり B 耐震性なし C 合計 D= A+B+C 耐震性あり E=A+B 耐震化率 F=E/D 木造住宅非木造住宅 26,4 16,5 97,3 32,2 222,9 69.6% 556,4 113,3 33,9 73,6 669,7 95.2% 合計 762,8 129,8 131,2 1,23,8 892,6 87.2% 注平成 25 年住宅 土地統計調査から推計し 人口動向調査に基づき住宅数を補正した ( 平成 25 年 1 月 1 日現在 ) また 市民の価値観やライフスタイルが多様化する中 高齢単身世帯や高齢者のみの世帯が増加するなど 日常生活上の支援や地域の見守り 安否確認が求められる世帯が増加しています 町内会 自治会への加入率が低下し 地域活動の担い手が固定化 高齢化するなどの課題がある一方で 災害時の助け合いや高齢者 子どもの見守り活動などを行う上での地域とのつながりの必要性は市民に広く認識されています 地域活動に対する市民の関心を高め 参加を促していくとともに NPO 法人やボランティア活動団体など多様な主体と連携しながら 安心 安全な居住環境の形成を図ることが求められています 図表 16 地域活動の現状 課題 ( 名古屋市 ) 市民アンケート 学区アンケート 地域のつながりやまとまりの必要性 町内会 自治会を必要と思う観点 町内会 自治会の加入率 町内会 自治会の加入率が減少している要因 そう思う 45.8% どちらかといえばそう思う どちらかといえばそう思わない 44.2% 3.2% そう思わない 2.5% 災害時に助け合うため 79.1% ほとんど変わらない 45.2% 新たなマンション等転入者の加入率が低い 58.3% 高齢者の見守り活動を行うため 58.9% 減少している 33.3% 住民の高齢化 57.1% 子どもの見守り活動を行うため 58.7% 増加している 19.% 単身世帯の増加 54.8% 交通安全 防犯活動を行うため 55.2% 地域で情報を共有するため 53.9% 資料 : 平成 26 年度地域コミュニティ活性化に関する調査 14
(3) 住宅ストックの質の向上と既存住宅ストックの有効活用 名古屋市内の空き家は その約 75% が賃貸用 売却用の住宅です 残り 25% がその他の住宅の空き家ですが 適正な管理が行われていない空家等のうち 周辺に著しい危険や悪影響を及ぼしている特定空家等については除却を促進するとともに 耐震性など一定の質を有する 図表 17 空き家の種類別内訳 ( 名古屋市 ) 一戸建 ( 非木造 ), 2,, 1.2% 一戸建 ( 木造 ), 2,1, 12.% 売却用の住宅, 8,1, 4.8% 共同住宅 ( 木造 ), 2,4, 1.4% 長屋建, 2,8, 1.7% 共同住宅 ( 非木造 ), 14,, 8.3% その他の住宅, 24.7% 空き家総数 167,7 戸 その他, 2,.1% 二次的住宅, 2,5, 1.5% 賃貸用の住宅, 115,8, 69.% 空き家については その利活用の促 進を図るなどの対策が求められています また 居住世帯のある住宅について 高齢者のための設備の設置状況を見ると 持ち家においては手すりの設置などのバリアフリー化が進んでいますが 借家においてはその割合が低い状況です 実施されたリフォームの工事内容を見ても 内装の模様替えなどが多く バリアフリー化や断熱工事など住宅の機能 性能の向上に関するリフォームは必ずしも進んでいない状況です 名古屋市内の住宅ストックのうち分譲マンションについては 平成 25 年までに約 5,5 棟 19 万戸が供給され 住宅ストック全体の約 17% に達していますが 今後 建築後 3 年を経過する分譲マンションが急増します これらの住宅につ 図表 18 高齢者のための設備の設置状況 ( 名古屋市 ) 高齢者等のための設備がある 手すりがある 段差のない屋内 車いす通行可能な廊下幅 1 2 3 4 5 6 7% 18.8% 35.2% 22.1% 32.1% 15.5% 17.7% 22.% 15.6% 33.4% 48.5% 56.3% 69.6% 全体持ち家借家 図表 19 リフォームの工事内容 ( 名古屋市 ) 増築 間取りの変更 収納の改善 増加 台所 トイレ 浴室 洗面所の改修 天井 壁 床などの内装の改修 屋根 外壁などの改修 壁 柱 基礎などの補強 窓 壁などの断熱 結露防止工事 冷暖房 給湯 電気設備 太陽熱利用の温水機器 階段や廊下の手すりの設置 屋内の段差の解消 その他 % 2% 4% 6% 15.2% 26.6% 22.8% 2.6% 4.8% 13.4% 9.% 5.2% 13.1%.1% 1.9% 13.7% 5.9% 1.6% 34.4% 32.7% 58.3% 46.2% 平成 25 年平成 2 年 資料 : 住生活総合調査 ( 平成 25 年 ) 15
いて 管理組合による適切な維持管理や計画的な修繕を促すとともに 老朽化したものについては円滑な建替を促進していくことが求められます 市営住宅等についても 昭和 45 年から昭和 55 年頃までの間に建設時期が集中しており 市営住宅ストック全体の急速な老朽化の要因 図表 2 着工年次別分譲マンション戸数 棟数 戸 6, 5, 4, 3, 2, 1, 昭和 45 ~49 昭和 47 ~56 昭和 57 ~ 平成 3 平成 4 ~13 平成 14 ~25 戸数 6,614 41,361 45,846 5,529 43,976 棟数 221 1,15 1,585 1,593 915 棟 1,8 1,5 1,2 9 6 3 となっています これら既存の住宅ストックを最大限活用していくため 適切な維持管理を実施するとともに 計画的 効率的な改修や建替等を進めていく必要があります 住宅は 建設時や使用時に大量の資源やエネルギーを消費し 解体時には廃棄物が発生することから 建設から解体までのライフサイクルを見据えた 地球環境に負荷をかけ 戸 3,5 3, 2,5 2, 1,5 1, 5 昭和 31 図表 21 市営住宅の建設年度別管理戸数 昭和 55 年以前建設のストックが約 6 割 36 41 46 51 56 61 平成 3 8 13 18 23 ( 平成 28 年 3 月 31 日現在 ) ない住まい まちづくりが求められます しかしながら 我が国の住宅の寿命は 3 年程度と欧米に比べて短く 家庭におけるエネルギー消費による CO 2 排出量は増加傾向にあります これまでの 住宅を作っては壊す 住生活から いいものを作って きちんと手入れし 長く大切に使う 住生活への移行を促す必要があります [ 万トン CO2] 市民図表 22 部門別温室効果ガス排出量の推移 ( 実排出量 : 名古屋市 ) 合計 1,739 263 137 合計 1,587 <199 年度比 > 354 268 152 マイカー 家庭事287 CO2 198 385 656 CO2 以外の 442 129 温室効果ガス 57 199 年度 213 年度 ( 基準年度 ) CO2 以外の温室効果ガス 工場 その他 オフィス 店舗等 業務用車 業者+34.7% +11.% 25.9% +34.1% 32.7% 56.1% 16
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