2013/11/05 人材ビジネス業界関連ニュース 技術者の新しい働き方 技術者派遣 について考える 得意分野を生かせる会社で働きたい 技術者を目指す学生の多くはそう考え 会社を選 ぶ しかし最近 自分の技術力を磨き 安定した雇用のために 派遣 を目指す技術者が増え ているという 技術者派遣とはどのような世界なのか ちょっとのぞいてみよう 派遣 される技術者たち [ 今藤弘一,Business Media 誠 ] 派遣 という言葉を聞くと 総務や経理など一般事務系の仕事を思い浮かべるのが普 通だろう しかし今回取り上げる 技術者派遣 は それとは就業する形態が異なる いわゆる 派遣さん の場合 派遣として働きたい人は派遣会社 ( 派遣元 ) に登録をし そ こから紹介された企業で就業する 賃金は派遣元から払われるのだが 派遣元との契約は 仕事ごとに異なり 派遣先の企業から提示された就業期間が終われば業務も終了 また新 たな派遣先企業が見つかるまで待機となるが その間もちろん給与は支払われない ところが技術者派遣業界では これとは異なるケースがある 技術者は派遣元の企業に 正 社員 として雇用され 派遣元の企業から提示された企業に派遣されて働く プロジェクト が終了したら派遣業務が終わるという流れは同じだが 正社員なので次の仕事が決まるま でも雇用が確保されており 給与が支給される これは大きな違いだ
一般派遣 と 特定派遣 なぜこのように待遇が違うのかというと 前に上げた例は 一般派遣 ( 登録型派遣 ) 技術者の例は 特定派遣 ( 常用型派遣 ) で 派遣の形態が異なるからだ 一般派遣はい わゆる 非正規雇用 だが 特定派遣の場合は正社員として雇用されているので 有給休暇も あればボーナスもあるし 定年もあり 退職金も支払われる さて 一般派遣と特定派遣が それぞれどれくらいの市場規模なのか見ていこう 技術 者派遣の業界団体である 日本エンジニアリングアウトソーシング協会 が 2013 年 6 月 に発表した資料によると 2010 年度の厚生労働省統計における人材派遣市場はおよそ 5.3 兆円 この内の 2 割が技術者派遣市場であり その規模は約 1 兆 1331 億円と推定される そうだ これには一般派遣で働いている技術者の数字も含まれるが 技術者派遣の市場規 模を考える上では参考になる では特定派遣として働く技術者の現状は どのようになっているのだろうか? 以下 技 術者派遣業界大手のテクノプロ ホールディングス常務執行役員 嶋岡学氏への取材を元 に考えていきたい
新卒で入社する人もいる 派遣として働く技術者というと キャリアの長いエンジニアで これまで開発した案件 も多く いわゆる 職人肌 というか 身につけた技術を生かしていろいろな会社を渡り歩く といったイメージを持つかもしれない ところが現実は異なり 大学卒の新入社員と して技術者派遣を選び 入社してくる人もいる テクノプロ グループの例で言うと 1 万人超の従業員数に対して 多いときは 500~ 600 人 2013 年は約 260 人の新卒を採用したという テクノプロ グループに在籍して いる社員たちは 自社にある研修施設でスキルを身につけるとともに これまで培ってき た知識をブラッシュアップさせる そして全国のさまざまな会社に派遣されて働くことに なる プロジェクトが終了したあとも研修を受け 次の職場に備えて 各研修所でスキル アップを図っていくことになる では 技術者はどのようなスキルを身に付けることが重要なのだろうか 派遣元各社に はそれぞれの強みがあるのだろうが テクノプロ グループの場合は 3 次元 CAD 組み 込みソフトウェア技術 それと解析としての CAE インバータ 高周波回路の 5 種類と考 えている ( 嶋岡氏 ) この 5 分野のテクノロジーを持つ人に絞って技術者の育成に力を 入れているという
派遣先企業での就業期間は ソフトウェアなどの IT 系だと 120 日 ~ 半年 電気や機械系 の仕事となると 4 年程度と 長期にわたってプロジェクトに関わるそうだ 技術者が派遣として働くメリット デメリット 一般的に 派遣で働く というと 一般派遣のイメージが強い いつ切られるか分からな い 不安定な仕事 という感覚だろう このイメージを引っ張るわけではないが たと え特定派遣だから 派遣元に雇われる正社員だからといっても 働く期限は決まっている わけだし 次から次へ職場を変えていかなければならないなんて 自分のアイデンティテ ィを失ってしまいそうに思える しかし先ほども述べたように 派遣として働く技術者は派遣業界全体の 2 割もいる 技 術者が派遣として働くメリットは どこにあるのだろうか やはり大きいのは リストラにあわないこと 例えば近年も ある半導体メーカーが業 績不振となり 500 人規模のリストラを敢行したことがあった この時代 次の仕事を決 めるのは大変だ テクノプロ グループの場合 その会社に 80 人ほど派遣していたが 彼 らはみな すぐにまた別の職場でそれぞれ働き出したそうだ こういう話を聞くと 実は 特定派遣は不安定ということもなく むしろ安定して給与を得られる手段のようにも見え てくる
また いろいろな職場で働けるのもメリットだという 1 つの会社の社員として研究開発 を担当したとしても 必ずしもやりたいテーマにめぐり合えるわけではないし 会社の方 針が変わることもあるだろう しかも前述の通り リストラにあってしまえば元も子もな い 特定派遣で働いていれば 教育研修で最先端の知識を学べるし またそれを生かせる 会社に派遣してもらうことも可能だ とはいえやはりデメリットはある たとえ思い通り のメーカーに配属されたとしても 身分はあくまでも派遣社員 開発のキーとなる部分は ブラックボックス化され その会社の正社員しか触れることはできず 与えられた仕事は 雑用ばかり というケースもあるようだ また 1 つのところでじっくりと仕事ができる わけではないので 頭を素早く切り替える必要がある そして技術者としてのスキルを常 に高めることが必要だ それができなければ雇用ニーズに乗れず 待機時間が長くなって しまい 最悪の場合は退職してしまうケースもあるという エンジニア冬の時代? これまで 派遣社員としての技術者 について見てきたわけだが こうした競争にさらされ るのは派遣社員だけではない メーカーの正社員も同様だ 日本は現在人口減少傾向にあ り 就業人口も減りつつある それに加えて各メーカーは工場を海外に移転させているし 国内の工場でもリストラをするという話は後を絶たない 国内で技術者の働く場所はどん どんと減っているのだ こうなってくると 今後は海外で働くケースが増えることも想定
される これをやりたいからこの会社に入りたい と 夢を持って入社するのもいい そこで何らかの技術を手に入れるまで 意地でも同じ会社で働くのも 1 つの手だ しかし 優秀な技術者であれば それとは異なる選択肢として 特定派遣という働き方もいいかも しれない 理系離れ と言われて久しいが そもそも理系出身者が専門性を生かして働け る職はきちんとあるのか 働き始めてから専門性を身につけた文系エンジニアも事情は同 じだ 現代のエンジニア そしてエンジニア志望者は 大局を見据えて自分の生きる道を 考える必要があるだろう