熱抽出ー GC/QMS による臭素系難燃剤分析 日本電子エンジニアリング ( 株 ) 2007 年 10 月 24 日 はじめに 現在 EU( 欧州連合 ) の WEEE や RoHS をはじめ 世界的に環境汚染を事前に防ぎ かつ資源の有効活用を目的とした画期的な法整備が進められている 特に RoHS 指令では 材料中の鉛 水銀 カドミウム 六価クロム PBB そして PBDE の 6 種類が規制物質 ( 閾値 :1000ppm) とされており 早急な分析法の確立が求められている 現在 IEC が中心となって 分析法の検討を進めており 溶媒抽出による前処理の後 GC/MS による測定方法が有力であるが 未だ確立の域には達していない 溶媒抽出における前処理の煩雑さとコスト また多検体処理に対応するためのスループット性を考慮すると より簡便なスクリーニング方法が必要である 1
4 x x PBBとPBDEの構造と規制理由 3 2 y x 5 6 6 5 PBBs PBDEs ( ポリ臭素化ビフェニル ) ( ポリ臭素化ジフェニルエーテル ) O 2 3 4 y ダイオキシンの一種である PBDFs O y 規制理由 ; 化学構造が 臭素化ダイオキシン類と酷似しているため 毒性を有する可能性があり さらに廃棄及びリサイクル過程において 臭素化ダイオキシン類を生成することが懸念されるため PBDE PBB 分析の構図 蛍光 X 線分析による 1 次スクリーニング ( 全臭素濃度の確認 ) 溶媒抽出 -GC/(HR)MS による精密定量分析 ( 高精度だが分析時間が長い ) PBDE PBB であるか否かの定性確認をハイスループットで行うことが効率的 2 次スクリーニングの必要性 IAMS 法 ( 精密分析の可能 ) 熱脱着 -GC/MS 法 一定濃度以上の PBDE 及び PBB が確認された試料に限定 2
分析方法の概要 ダブルショットパイロライザー 試料の昇温加熱により 試料中 PBDE を熱脱着によって取り出し GC へ導入する オートショットサンプラー 自動による連続測定が可能 更にスループット性が向上 Q1000GC ーカ スクロマトク ラフ 質量分析計 PBDE 成分を分離カラムによりクロマト分離させ MS によって検出する 正確な定性確認と簡易定量解析が可能 Jms-Q1000GC K9 JEOL GC 分析フロー 分離カラムの接続と MS のチューニング及びキャリブレーション トリアジン化合物の使用 試料カップの準備と試料のサンプリング 熱脱着 -GC/MS の測定条件の設定 ポイント : 熱脱着温度 各部温度設定スプリット比 分離カラム選択 標準試料と実試料の連続測定 各試料のクロマトグラム及びスペクトルデータの取得 定性解析及び簡易定量解析 3
測定条件の検討 Py 熱脱着温度 : 検討 -1 インタフェイス温度 :200 400 (Auto) GC 注入口温度 :340 注入モード : 検討 -2 分離カラム : 検討 -3 GCオーブン :50 (1.5 分 ) 毎分 20 320 (8 分保持 ) MS インターフェイス温度 :290 イオン源温度 :270 測定モード : スキャンモード ( マスレンジ :m/z240~970) 試料の加熱温度条件 樹脂自身の熱分解を抑え 試料中のPBDEを効率よく脱着するための温度条件が重要である <EGA-Direct MS 測定 > 試料 :ABS 樹脂 (1000ppm 含有 ) 熱分解生成物熱脱着温度 :150 毎分 10 600 TIC m/z960 の マスクロマトク ラム EGA-Direct MS による TIC と のマスクロマトク ラム 4
インターフェイス温度とスフ リット比 高沸点成分であるため Py からカラムへの効率の良い導入が必要 試料 :ABS 樹脂 (1000ppm 含有 ) Py 試料 :ABS 樹脂 (1000ppm 含有 ) 試料カッフ Py インターフェイス ブランク ( 高濃度試料測定直後 ) メモリーとしての GC 300 以上必要 注入口 ブランク ( 高濃度試料測定直後 ) スフ リット スフ リット比 =10:1 スフ リット比 =50:1 分離カラムのサイズ 1 高沸点且つ熱分解性が高いため 分離カラムの選択が重要 30mx0.25μm カラム ポイント 膜厚 :0.1μm 以下 長さ :15m 以内 無極性 高耐熱用 30mx0.10μm カラム 15mx0.10μm カラム 1ppm データの比較 5
分離カラムの長さ (7.5m と 15m) による TIC の比較 15m カラム MoBDE 04:57 DiBDE 05:53 TrBDE 06:59 TeBDE PeBDE HpBDE 08:31 HxBDE 09:21 11:04 10:38 OcBDE 12:15 NoBDE 13:03 RT:13:47 R.T 4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 7.5mカラム 4:23 5:55 3:03 3:40 7:03 6:46 7:49 8:20 8:48 RT:8:48 分離カラムの長さを短くすることによって をはじめとする高臭素化体の検出感度が向上し さらに分析時間も 15 分から 10 分と短縮できた R.T > 4:00 6:00 8:00 10:00 分離カラムの長さ (7.5m と 15m) による の検量線比較 15 m カラム 7.5m カラム 700000 600000 500000 400000 300000 200000 100000 15mカラムによるの検量線 y = 0.448x 2 + 137.32x + 369.52 ピ - ク面積値 6.E+07 5.E+07 4.E+07 3.E+07 2.E+07 1.E+07 熱抽出 -GC/MS 法による の検量線 y = 14474x -470295 R 2 = 0.9992 0 0 200 400 600 800 1000 の測定絶対量 (ng) 0.E+00 0.E+00 5.E+02 1.E+03 2.E+03 2.E+03 3.E+03 3.E+03 4.E+03 4.E+03 の測定絶対量 (ng) 15m では二次曲線となるのに対し 7.5m では相関係数で 0.999 以上の良好な直線性が得られた 6
測定条件の検討結果 1 サイクル :35 分程度 Py ( 熱脱着時間 :20 分程度 ) 熱脱着温度 :150 毎分 10 350 インタフェイス温度 :200 400 (Auto) GC ( 測定時間 :15 分程度 ) 注入口温度 :340 注入モード : スプリット ( スプリット比 =50:1) 分離カラム :DB-1HT( 長さ7m 内径 0.25mm 膜厚 0.05μm) GCオーブン :50 (1.5 分 ) 毎分 20 320 (8 分保持 ) MS インターフェイス温度 :290 イオン源温度 :270 測定モード : スキャンモード ( マスレンジ :m/z240~970) 標準試料と実試料のクロマトグラム 標準試料 ( 各 200ng) TetraBDE TriBDE PentaBDE HexaBDE HeptaBDE OctaBDE NonaBDE DiBDE MonoBDE DecaBDE ABS 樹脂 NonaBDE OctaBDE DecaBDE 7
PBDE のマススペクトル C:\NOVASPEC\DATA\ 松下 -PBDE_JO\ 追加測定 \070125-1-10BDE-STDMIX-200NG-NONCRYO-3.SPE 2007/01/25 19:56:00 コメント : New Method-Cryo OFF, 1-10BDE STD mix=200ng each(#2,10,30,47,88,1 OcBDE [ スヘ クトル ] 1827-1962,1858 BP = 642[4056376] TIC = 24588624 R.T = 15:15 4.0E+06 641.5 分子量関連イオン O 2.0E+06 561.6 532.6 721.4 0.0E+00 m/z--> 500 600 700 800 900 1000 NoBDE [ スヘ クトル ] 1972..1976-0 BP = 719[1424675] TIC = 12443654 R.T = 16:27..16:29 719.4 1.0E+06 5.0E+05 641.5 561.6 612.5 801.4 532.6 0.0E+00 m/z--> 500 600 700 800 900 1000 [ スヘ クトル ] 2222..2226-2251 BP = 799[898829] TIC = 7390476 R.T = 18:32..18:34 8.0E+05 O 6.0E+05 4.0E+05 O ヘ ースヒ ーク ( フラク メント ) 721.4 2.0E+05 639.5 959.3 532.6 881.3 690.5 561.6 612.5 0.0E+00 m/z--> 500 600 700 800 900 1000 801.4 ヘ ースヒ ーク ( フラク メント ) 799.4 879.3 分子量関連イオン ヘ ースヒ ーク ( フラク メント ) 分子量関連イオン 定量解析画面 試料 :ABS 樹脂 実試料における NoBDE のマスクロマトク ラムによる検出ヒ ークの面積計算例 検量線 マススヘ クトル 実試料 ライフ ラリー検索ホ タン 標準試料 8
マススペクトルとライブラリー検索 測定スペクトル 検索化合物の詳細情報 ライフ ラリースヘ クトル 定量解析結果 定量値結果 9
定量下限値と再現性 定量下限値 再現性 STD 量 (ng) S/N 定量下限値 (ppm) DiBDE 200 232.4 25.8 TrBDE 200 711.7 8.4 TeBDE 200 2553.9 2.3 PeBDE 200 964.3 6.2 HxBDE 200 764.2 7.9 HpBDE 200 861.8 7.0 OcBDE 200 1316 4.6 NoBDE 200 847.5 7.1 200 606.9 9.9 * 定量下限値 :STD テ ータの感度から S/N30 の時の検出絶対量を算出し それが試料量 1mg に含まれるとした場合の濃度 * 定量値 1000ppm 含有 ABS 樹脂 9600ppm 含有 ABS 樹脂 1 480.8 9505.5 2 513.6 10260.9 3 425.1 9858.1 4 503.9 8465.6 5 480.9 10011.9 標準偏差 39.6 769.2 平均 480.8 9522.5 %RSD 8.2 8.1 * ABS 樹脂の実試料の測定で検出された 10 臭素化体の定量値の再現性結果 まとめ 熱脱着 -GC/MS 法は マススペクトルによる正確な定性解析が可能 2 次スクリーニングレベルとして十分な定量精度 溶媒抽出法よりも極端に短時間での測定が可能であ り ハイスループットである ( サンフ リンク ;3 分 + 測定 ;37 分 サイクル ;40 分 / 検体 ) オートサンプラーの使用により 無人での連続測定が可能であり 多検体測定に有効 GC/MS として 溶媒抽出法での測定にも利用可能 10