市原市国民健康保険保健事業実施計画 ( データヘルス計画 ) 概要版 平成 28 年 3 月 市原市
Ⅰ. 事業目的等 1. 策定の趣旨 近年 特定健康診査の実施や診療報酬明細書等の電子化の進展 国保データベースシステム等の整備により 保険者が健康や医療に関する情報を活用して被保険者の健康課題の分析 保健事業の評価等を行う基盤整備が進んでいます 本市においては これまでも 統計資料等を活用することにより 市原市国民健康保険特定健康診査等実施計画 ( 以下 特定健診等実施計画 という ) の策定や見直し その他の保健事業を実施してきたところですが 今後は さらなる被保険者の健康の保持増進に努めるため 保有しているデータを活用しながら 被保険者をリスク別に分けてターゲットを絞った保健事業の展開などが求められています こうした背景を踏まえ 本市では 被保険者の健康寿命の延伸 QOLの向上 ひいては医療費適正化に資することを目的に 本計画を策定することとしました 2. 計画期間 計画期間は 保健事業実施指針において 特定健診等実施計画や健康増進計画との整合性を踏まえ 複数年とすること とされていること 保健事業の中核をなす特定健診 特定保健指導との整合を図る必要があることなどから 第 2 期の特定健診等実施計画の最終年度である平成 29 年度までの2 年間とします また 次期計画策定においては 特定健診等実施計画と一体的に策定することを検討します H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 データヘルス計画 次期計画 第 2 期特定健診等実施計画 改訂健康いちはら 21 1
3. 市原市の基本情報 (1) 基本情報 本市の平成 26 年度の人口は 271,839 人で 高齢化率 (65 歳以上 ) は 21.3% となっています 本市の高齢化 率は国 県 同規模市町村と比較するとやや低くなっています 国民健康保険被保険者数は 86,252 人で 市の人口に占める国保加入率は 31.7% となっています 国保被 保険者平均年齢は 50.4 歳で 県や国とほぼ同程度となっています 人口構成概要 (H26 年度 ) 人口 ( 人 ) 高齢化率 (65 歳以上 ) 出生率 死亡率 被保険者数 国保の状況 加入率 (%) 平均年齢 ( 歳 ) 市原市 271,839 21.3 7.7 8.7 86,252 31.7 50.4 県 5,975,492 21.8 8.6 8.4 1,765,330 29.5 50.8 同規模 200,991 22.1 8.7 8.7 53,242 26.4 51.2 国 124,852,975 23.2 8.6 9.6 32,318,324 28.8 50.3 (2) 医療費等の状況 本市の医療基礎情報を 国 県 同規模市町村と比較すると 外来 入院ともに1 件当たりの医療費 及び 1 日当たり医療費が高い傾向にあります 医療基礎情報 (H26 年度 ) 医療項目 市原市県同規模国 一件当たり医療費 ( 円 ) 34,230 34,260 34,130 34,740 一般 ( 円 ) 34,140 34,190 34,030 34,650 退職 ( 円 ) 36,400 36,060 36,200 36,580 外来 外来費用の割合 (%) 62.5 62.1 60.7 59.7 外来受診率 622.2 615.6 667.7 652.3 一件当たり医療費 ( 円 ) 21,900 21,810 21,250 21,320 一人当たり医療費 ( 円 ) 13,620 13,430 14,190 13,910 一日当たり医療費 ( 円 ) 13,700 13,890 13,250 13,210 一件当たり受診回数 1.6 1.6 1.6 1.6 入院 入院費用の割合 (%) 37.5 37.9 39.3 40.3 入院率 14.9 15.2 17.4 18.1 一件当たり医療費 ( 円 ) 548,580 538,180 527,720 517,930 一人当たり医療費 ( 円 ) 8,190 8,190 9,200 9,380 一日当たり医療費 ( 円 ) 37,730 36,080 33,550 32,530 一件当たり在院日数 14.5 14.9 15.7 15.9 2
4. 現状分析 (1) 特定健康診査の受診状況別の医療費特定健康診査の受診者と未受診者の医療費を比較すると 未受診者の方が一人当たりの医療費が約 1.7 倍高くなっています これは 健診を受診することで生活習慣病の早期発見ができ 重症化を防ぐことができている あるいは 未受診者は早期発見の機会がなく 重症化してから治療が始められるため 医療費が高額化しているのではないかと考えられます 生活習慣病罹患状況と医療費 罹患状況 ( 投薬のある患者 ) 患者数 ( 人 ) 医療費 ( 円 ) 一人当たり医療費 ( 円 ) 受診者未受診者受診者未受診者受診者未受診者 3 疾病併存患者 2 疾病併存患者 小計 481 1,645 277,644,690 1,271,611,800 577,224 773,016 糖尿病 高血圧症 364 1,415 160,914,610 1,147,980,310 442,073 811,294 糖尿病 脂質異常症 262 633 113,948,770 327,905,770 434,919 518,019 高血圧症 脂質異常症 2,168 3,085 790,966,320 1,675,289,520 364,837 543,044 1 疾病患者 小計 2,794 5,133 1,065,829,700 3,151,175,600 381,471 613,905 糖尿病 325 821 120,780,560 516,707,170 371,632 629,363 高血圧症 3,448 5,944 1,041,683,180 3,012,400,390 302,112 506,797 脂質異常症 1,811 1,514 448,745,030 653,510,420 247,789 431,645 小計 5,584 8,279 1,611,208,770 4,182,617,980 288,540 505,208 合計 8,859 15,057 2,954,683,160 8,605,405,380 333,523 571,522 データ化範囲 ( 分析対象 ) 医科 調剤の電子レセプトのみ 対象診療年月は平成 26 年 4 月 ~ 平成 27 年 3 月診療分 (12 か月分 ) データ化範囲 ( 分析対象 ) 健康診査データは平成 26 年 4 月 ~ 平成 27 年 3 月健診分 (12 か月分 ) 患者数 該当傷病名で投薬のある患者のみ集計 医療費 データ化範囲内における該当患者の医療費全体となり 生活習慣病に関する医療費に限らない 3
(2) 生活習慣病罹患者の医療費 生活習慣病罹患者の医療費は 総医療費の約 50.3% を占めています 基礎統計 月平均 A 被保険者 ( 人 ) 86,359 合計 生活習慣病を有する 者の医療費 B レセプト件数 ( 件 ) 入院外 54,309 651,703 入院 1,296 15,553 調剤 35,853 430,230 合計 91,457 1,097,486 C 医療費 ( 円 ) 1,913,762,654 22,965,151,850 11,560,088,540 D 患者数 ( 人 ) 40,084 481,002 23,916 C/D C/A C/B 患者一人当たりの医療費 ( 円 ) 被保険者一人当たりの医療費 ( 円 ) レセプト一件当たりの医療費 ( 円 ) 47,744 483,362 22,160 20,925 データ化範囲 ( 分析対象 ) 医科 調剤の電子レセプトのみ 対象診療年月は平成 26 年 4 月 ~ 平成 27 年 3 月診療分 (12 か月分 ) 医療費 医療機関もしくは保険薬局に受診されたレセプトに記載されている 保険の請求点数を集計し 金額にするために 10 倍にして表示 患者数 医療機関もしくは保険薬局に受診されたレセプトの人数を集計 同診療年月で一人の方に複数のレセプトが発行された場合は 一人として集計 生活習慣病を有する者の医療費 4
(3) 疾病別医療費統計 医療費 患者数 患者一人当たりの医療費 各項目の上位 10 疾病は以下のとおりとなっています 医療費及び患者数上位の 5 疾病中 3 疾病が生活習慣病となっています 医療費上位 10 疾病 ( 図 2 18) 生活習慣病に関わる疾病項目を網掛けで表示 順位中分類疾病項目医療費 ( 円 ) 構成比 (%) ( 医療費総計全体に対して占める割合 ) 患者数 ( 人 ) 1 腎不全 1,388,442,749 6.1 1,182 2 高血圧性疾患 1,336,831,501 5.9 23,974 3 その他の悪性新生物 1,211,010,107 5.3 6,928 4 糖尿病 1,178,893,843 5.2 21,485 5 統合失調症, 統合失調症型障害及び妄想性障害 944,002,626 4.1 1,933 6 その他の内分泌, 栄養及び代謝疾患 935,949,939 4.1 2,396 7 その他の消化器系の疾患 921,004,419 4.0 20,684 8 その他の心疾患 711,151,045 3.1 8,987 9 虚血性心疾患 620,935,326 2.7 6,898 10 その他の神経系の疾患 546,226,340 2.4 14,589 合計 9,794,447,895 42.9 129,056 患者数上位 10 疾病 ( 図 2 19) 順位 中分類疾病項目 医療費 ( 円 ) 構成比 (%) ( 医療費総計全体に対して占める割合 ) 患者数 ( 人 ) 1 高血圧性疾患 1,336,831,501 32.1 23,974 2 症状, 徴候及び異常臨床所見 異常検査所見で他に分類されないもの 429,120,369 30.1 22,487 3 その他の内分泌, 栄養及び代謝疾患 935,949,939 30.0 22,396 4 糖尿病 1,178,893,843 28.8 21,485 5 アレルギー性鼻炎 306,746,841 27.8 20,764 6 その他の消化器系の疾患 921,004,419 27.7 20,684 7 その他の急性上気道感染症 162,586,797 25.5 19,053 8 胃炎及び十二指腸炎 248,329,096 25.2 18,825 9 屈折及び調節の障害 79,028,498 25.0 18,683 10 皮膚炎及び湿疹 198,509,922 21.3 15,868 合計 5,797,001,225 204,219 患者一人当たりの医療費が高額な上位 10 疾病 ( 図 2 20) 順位 中分類疾病項目 医療費 ( 円 ) 患者数 ( 人 ) 患者一人当たりの医療費 ( 円 ) 1 腎不全 1,388,442,749 1,182 1,174,655 2 白血病 99,122,854 115 861,938 3 妊娠および胎児発育に関連する障害 61,395,014 78 787,116 4 統合失調症, 統合失調症型障害及び妄想性障害 944,002,626 1,933 488,361 5 直腸 S 状結腸移行部及び直腸の悪性新生物 213,627,890 461 463,401 6 悪性リンパ腫 131,533,885 382 344,330 7 気管, 気管支及び肺の悪性新生物 329,682,172 1,490 221,263 8 乳房の悪性新生物 289,032,456 1,443 200,300 9 脳内出血 176,094,181 910 193,510 10 パーキンソン病 117,506,074 623 188,613 合計 3,750,439,901 8,617 4,923,487 5
Ⅱ. 課題と目標設定 1. 課題と対策 データ分析の結果から 生活習慣病に関わる疾患が 患者数 医療費ともに多く 本市の健康課題となっているこ とがわかりました そこで 生活習慣病の予防 早期発見 重症化予防の観点から対策を検討しました 健康課題 対策 生活習慣病に関わる疾患が 患者数 医療費ともに多い 発症予防 早期発見 特定健診の受診率向上 重症化を予防する 腎臓病に絞った重症化予防 2. 目標設定 健康課題に対する実施事業と目標を設定しました 課題 特定健診の受診率向上 実施事業 特定健診不定期受診者への受診勧奨 ( 新規事業 ) 目標 指標現状 H28 H29 特定健診受診率 33.4% 36.4% 40.4% 生活習慣病への対応 重症化予防 糖尿病性腎症重症化予防事業 ( 新規事業 ) 慢性腎臓病 (CKD) 重症化予防事業 (H27~) 指導後に人工透析に移行した患者数 指導後に人工透析に移行した患者数 0 人 0 人 0 人 0 人 6
Ⅲ. 実施事業 1. 発症予防 早期発見 (1) 特定健康診査不定期受診者への受診勧奨 ( 新規事業 ) 特定健診の受診率向上対策として 不定期受診者を対象に受診勧奨します 過去の健診結果や問診票のデータを分析し 健康意識や運動習慣等により対象者を数パターンに分類し それぞれの特徴に合わせた文書で受診勧奨します 各年度 1 万人を勧奨対象とし 2 年間で4 千人の受診者増を目指します ( 期待される効果 ) 早期に生活習慣病の有病者又はその予備群を把握できる層が拡大 することによる 将来的な医療費抑制効果 2. 重症化予防 (1) 糖尿病性腎症重症化予防事業 ( 新規事業 ) 糖尿病性腎症の患者に対し かかりつけ医と連携しながら 保健師 栄養士等の専門職による 生活習慣改善のための保健指導を実施し 人工透析への移行を防止します 年 15 人程度に保健指導を行い 指導後の透析移行者 0 人を目指します (2) 慢性腎臓病 (CKD) 重症化予防事業 ( 継続事業 保健センター実施 ) 1 訪問指導事業医療機関未受診者に対し 訪問指導等により受診につなげ 重症化を予防します 年 100 人程度に訪問指導を行い 腎臓病の悪化を防止します 2 予防講座慢性腎臓病の予防に関する知識の普及啓発活動として 慢性腎臓病患者及び受講を希望する市民を対象に 医師 管理栄養士等の専門職による講演を行います 年 200 人程度を対象に講演を実施し 生活習慣改善への取組を促進します ( 期待される効果 ) 透析への移行を防ぐことで 年間約 500 万円 / 人の医療費抑制効果 Ⅳ. 進行管理 PDCA サイクルにより 各年度に事業評価を実施し 千葉県国民健康保険団体連合会に設置されている保健事 業支援 評価委員会及び 市原市国民健康保険運営協議会に実施状況の報告を行います 7