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患者自身が申告する場合 患者が輸血拒否に関する 委任状 を携帯している場合および家族等が申告する場合で ある 2. 輸血療法とインフォームド コンセント患者および / またはその家族が理解できる言葉で 輸血療法にかかわる以下の項目 すなわち 1) 輸血療法の必要性 2) 使用する血液製剤の種類と使用量 3) 輸血に伴うリスク 4) 副作用 感染症救済制度と給付の条件 5) 自己血輸血の選択肢 6) 感染症検査と検体保管 7) 投与記録の保管と遡及調査時の使用 8) その他 輸血療法の注意点を十分説明する 3. 輸血の同意の努力上記を十分に説明し 患者本人より輸血の同意を得るよう最大限の努力を行う 一連の説明は文書として必ず記録し かつ録音しておく 家族等への電話にての説明の際も必ず録音しておく 時間的制限の中 最大限の努力を行っても通常の輸血の同意が得られない場合 本マニュアルを使用し対処する 4. 本マニュアルの手順および用語等の定義 1) 本マニュアルにおける種々の判断は 必ず複数の常勤医師により行う 2) 自己決定能力があるとは医療に対する適切な判断ができる状態を指す 当センターに搬入される救急症例はパニックに陥っているなどの精神的状態やショック状態等の身体的障害に起因する中枢神経障害により 基本的には自己決定能力はないものと判断する 3) 親権者とは未成年者 (20 歳未満の婚姻をしたことが無い者 ) に対し 親権を行う者を指す 通常は父母が親権者となるが 親権者がないときは未成年後見人がそれにあたる 4) 本マニュアルは当センターの緊急性を考慮したものである 緊急性がないあるいは低い場合や転送可能な症例では 5 学会合同委員会により作成された 宗教的輸血拒否に関するガイドライン に沿って転院勧告を可能とする 5) 本マニュアルの基準に該当しないなど判断に苦慮する場合は所長を議長とする緊急幹部会において判断するものとする 6) 免責証明書および輸血同意書の署名該当者と優先順位は 1 本人 2 配偶者 3 親権者 4 2 親等以内の親族の順とする 7) 全員とは 治療選択に時間的な制限がある場合 その時点で連絡がついた者すべてとする 8) 患者および家族への説明は可能な限り文書および録音にて保存する 電話にての説明の際も録音することとする 9) 成年後見人等 本マニュアルに記載のないものに対する対応は適宜行うものとする 2

Ⅲ. 判断の手順 1. 患者年齢が 20 歳以上かつ 1) 自己決定能力があり かつ患者本人は輸血を拒否した場合 患者本人による免責証明書の提出にて無輸血治療を実施 2) 自己決定能力なしかつ (1) 輸血拒否に関する 委任状 を携帯かつ 1 配偶者及び親族 (2 親等以内 ) 全員輸血拒否の場合全員の連名の免責証明書提出にて無輸血治療を実施 2 配偶者及び親族 (2 親等以内 ) の 1 人でも輸血同意の場合同意者により輸血同意書提出 なるべく無輸血 最終的に輸血 3 家族に連絡が取れない場合なるべく無輸血 最終的には輸血 (2) 輸血拒否に関する 委任状 を不携帯の場合家族の拒否に関わらず なるべく無輸血 最終的に輸血 2. 患者年齢が 18 歳以上 20 歳未満かつ 1) 自己決定能力がある場合 患者本人による免責証明書の提出にて無輸血治療を実施 2) 自己決定能力なしかつ (1) 親権者は輸血拒否の場合なるべく無輸血 最終的には輸血を実施 ( 親権喪失の裁判所への申し立てを行うとともに 必要に応じて輸血する ) (2) 親権者は輸血同意した場合親権者により輸血同意書提出 なるべく無輸血 最終的には輸血 3. 患者年齢が 15 歳以上 18 歳未満かつ 1) 自己決定能力ありかつ (1) 本人輸血拒否かつ 1 親権者は輸血拒否の場合本人および親権者により免責証明書提出後無輸血治療を実施 2 親権者は輸血同意の場合親権者により輸血同意書提出 なるべく無輸血 最終的には輸血 3

(2) 患者本人は輸血を承諾かつ 1 親権者は輸血拒否の場合本人により輸血同意書提出後輸血を実施 2 親権者も輸血を同意した場合本人および親権者により輸血同意書提出後輸血を実施 2) 自己決定能力なしかつ (1) 親権者は輸血拒否の場合なるべく無輸血, 最終的には輸血 ( 親権喪失の裁判所への申し立てを行うとともに 必要に応じて輸血する ) (2) 親権者は輸血同意の場合親権者により輸血同意書提出 なるべく無輸血 最終的には輸血 4. 患者年齢が 15 歳未満かつ (1) 親権者は輸血拒否の場合なるべく無輸血 最終的には輸血 ( 親権喪失の裁判所への申し立てを行うとともに 必要に応じて輸血する ) (2) 親権者は輸血を同意の場合親権者による輸血同意書提出 なるべく無輸血 最終的には輸血 以上の要点は宗教的輸血拒否患者フローチャート ( 別紙参照 ) に示す Ⅳ. 補足事項 1. さまざまな判断は必ず複数の常勤医師により行う 自己決定能力があるとは医療に対する適切な判断ができる状態 を指し 当センターに搬入される救急症例はパニック等に陥っているなどの 精神的状態やショック状態等の身体的 障害に起因する中枢神経障害により基本的には自己決定能力はないものと判断する 2. 本フローチャートには転院勧告が存在しない これは当センターの緊急性 特殊性を考慮したものであり 緊急性が ないあるいは低い場合や転送可能な症例では 5 学会合同委員会により作成された 宗教的輸血拒否に関するガイド ライン に沿って転院勧告を可能とする 3. 本フローチャートの基準に該当しないなど判断に苦慮する場合は所長を議長とする緊急幹部会において判断するも のとする 緊急幹部会招集が困難な場合は所長あるいは代行を含む幹部職員複数名で判断可能とする 4. 治療選択に時間的な制限があることから その時点で連絡がついた者すべてを全員とした 4

5. 20 歳以上の場合先に示したように 当センターへ救急搬入された症例は基本的には自己決定能力はないものとするものの 明らかに自己決定能力ありと判断される場合は存在すると考えられる このような場合は患者の意思を尊重し 免責証明書の提出により無輸血治療を行う 自己決定能力なしとした場合も輸血拒否カードを携帯していた場合は一定の条件下で輸血拒否に関する 委任状 を自己の意思として認定することとした すなわち配偶者及び親族 (2 親等以内 ) 全員が輸血拒否の場合である この場合 全員のサインを記した免責証明書を提出してもらう これら以外の場合は最終的に輸血治療を実施する 自己決定能力がなくかつ輸血拒否に関する 委任状 を携帯していない場合は配偶者および親族が拒否をしても本人の意思が不明であるため 救命のために輸血を実施する 6. 18 歳以上 20 歳未満 20 歳以上の場合と同様に明らかに自己決定能力ありと判断される場合 宗教的輸血拒否に関するガイドライン に準じて免責証明書提出の下 無輸血治療を行うこととする 自己決定能力なしとした場合 輸血拒否に関する 委任状 を携帯していた場合も 正式に輸血拒否の意思を確認できないことおよび未成年者保護の観点よりいずれの場合も最終的に輸血を実施する すなわち 親権者が輸血を拒否する場合は裁判所への親権喪失の申し立てを行うとともに 必要に応じて結果を待つことなく輸血を実施する 親権喪失の手続きには早くとも数時間を要するものと考えられる その間に最悪の事態となることを避けるため 結果を待たずに輸血を可能とした 7. 15 歳以上 18 歳未満 明らかに自己決定能力があり かつ親権者が輸血を拒否する場合にのみ無輸血治療を実施する 8. 15 歳未満 宗教的輸血拒否に関するガイドライン に準じ 何れの場合も最終的に輸血治療を実施する 親権者が輸血を拒否 する場合は裁判所へ親権喪失の申し立てを行うとともに 必要に応じ結果を待つことなく輸血を実施する 輸血拒否患者に対するマニュアル付記事項 1.2009 年 12 月 28 日作成 ( 大阪府三島救命救急センター倫理委員会承認 ) 2.2010 年 01 月 01 日施行 3.2010 年 06 月 29 日一部改訂 4.2010 年 07 月 08 日一部改訂 ( 大阪府三島救命救急センター倫理委員会承認 ) 5.2011 年 08 月 08 日一部改訂 ( 大阪府三島救命救急センター倫理委員会承認 ) 5

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