平成30年度国家公務員一般職(大卒程度)一般論文試験【行政区分】

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平成28年度企業主導型保育事業の助成決定について(第1回)

第 1 章調査の実施概要 1. 調査の目的 子ども 子育て支援事業計画策定に向けて 仕事と家庭の両立支援 に関し 民間事業者に対する意識啓発を含め 具体的施策の検討に資することを目的に 市内の事業所を対象とするアンケート調査を実施しました 2. 調査の方法 千歳商工会議所の協力を得て 4 月 21

参考 1 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに

希望をかなえるまちづくり 結婚 出産 子育て 結婚 出産 子育ての希望実現 1 結婚や出産に対する支援の充実 一人ひとりが結婚や出産について諦めることなく取 り組める環境をつくることによって まちに家族を持つこ との幸せをもたらします 結婚を希望する人の未婚率の改善 結婚や妊娠 出産に関するライフプ

4 子育てしやすいようにするための制度の導入 仕事内容への配慮子育て中の社員のため以下のような配慮がありますか? 短時間勤務ができる フレックスタイムによる勤務ができる 勤務時間等 始業 終業時刻の繰上げ 繰下げによる勤務ができる 残業などの所定外労働を制限することができる 育児サービスを受けるため

我が国の女性の活躍推進に向けて

ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)  レベル診断チェックシート

23 歳までの育児のための短時間勤務制度の制度普及率について 2012 年度実績の 58.4% に対し 2013 年度は 57.7% と普及率は 0.7 ポイント低下し 目標の 65% を達成することができなかった 事業所規模別では 30 人以上規模では8 割を超える措置率となっているものの 5~2

人 ) 195 年 1955 年 196 年 1965 年 197 年 1975 年 198 年 1985 年 199 年 1995 年 2 年 25 年 21 年 215 年 22 年 225 年 23 年 235 年 24 年 第 1 人口の現状分析 過去から現在に至る人口の推移を把握し その背


第第第ライフスタイルに対する国民の意識と求められるすがた50 また 働いていないが 今後働きたい と回答した人の割合は 男性では 7.4% であるのに対し て 女性は19.1% である さらに 女性の中では 30 代の割合が高く ( 図表 2-1-2) その中でも 特に三大都市圏で高い割合となってい

2. 女性の労働力率の上昇要因 М 字カーブがほぼ解消しつつあるものの 3 歳代の女性の労働力率が上昇した主な要因は非正規雇用の増加である 217 年の女性の年齢階級別の労働力率の内訳をみると の労働力率 ( 年齢階級別の人口に占めるの割合 ) は25~29 歳をピークに低下しており 4 歳代以降は

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長野県の少子化の現状と課題

改正要綱 第 1 国家公務員の育児休業等に関する法律に関する事項 育児休業等に係る職員が養育する子の範囲の拡大 1 職員が民法の規定による特別養子縁組の成立に係る監護を現に行う者 児童福祉法の規定により里親である職員に委託されている児童であって当該職員が養子縁組によって養親となることを希望しているも

女性が働きやすい環境を整え社会に活力を取り戻す

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従業員に占める女性の割合 7 割弱の企業が 40% 未満 と回答 一方 60% 以上 と回答した企業も 1 割以上 ある 66.8% 19.1% 14.1% 40% 未満 40~60% 未満 60% 以上 女性管理職比率 7 割の企業が 5% 未満 と回答 一方 30% 以上 と回答した企業も 1

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1 調査目的 今年度策定する 津山市総合戦略 で 子どもを産み 育てやすい環境づくりに 向けた取組みを進めるにあたり 出産 子育ての現状を把握するために実施した 2 調査内容の背景と設問設定理由国では 出生率を 2.07 まで高めることで 2060 年に現状の社会構造を維持できる人口 1 億人程度を

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働き方の現状と今後の課題

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14 日本 ( 社人研推計 ) 日本 ( 国連推計 ) 韓国中国イタリアドイツ英国フランススウェーデン 米国 図 1. 1 主要国の高齢化率の推移と将来推計 ( 国立社会保障 人口問題研究所 資料による ) 高齢者を支える

女性の活躍促進や仕事と子育て等の両立支援に取り組む企業に対するインセンティブ付与等 役員 管理職等への女性の登用促進 М 字カーブ問題の解消には企業の取組が不可欠 このため 企業の自主的な取組について 経済的に支援する 経営上のメリットにつなぐ 外部から見えるようにし当該取組の市場評価を高めるよう政

第 1 部 施策編 4

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第3節 重点的な取り組み

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

子ども・子育て会議(第7回) 次世代育成支援対策推進法の延長等の検討について

第28回介護福祉士国家試験 試験問題「社会の理解」

ダイバーシティ 年に向けた政策展開のポイント テレワークが当たり前になる社会 の実現に向け 多様な主体と連携した普及啓発や導入支援への取組を強化 地域での就労支援やマッチング強化により 女性や高齢者の就業を推進 働き方改革と併せて時差 Biz の定着に向けた取組を推進 強化した政策

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介護分野における ICT 活用 に関する提言 2013 年 12 月 17 日 社会福祉法人こうほうえん 理事長廣江研

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社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

流山市子ども・子育て会議

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

56_16133_ハーモニー表1

7 民法改正 : (13) 選択的夫婦別姓の実現 (14) 婚姻最低年齢 再婚禁止 (15) 婚外子相続分差別規定廃止 是正 8 性暴力 : (16) 性暴力禁止法 (17)DV 防止法 9 日本軍 慰安婦 : (18) 河野 村山談話 (19) 国家の謝罪と補償 10 性的健康 : (20) 刑法

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

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参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

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ふくい経済トピックス ( 就業編 ) 共働き率日本一の福井県 平成 2 2 年 1 0 月の国勢調査結果によると 福井県の共働き率は % と全国の % を 1 1 ポイント上回り 今回も福井県が 共働き率日本一 となりました しかし 2 0 年前の平成 2 年の共働き率は

を中心に待機児童が生じている 待機児童数は 平成 22 年度以降減少傾向にあったが 女性の就業が更に進んだことや 子ども 子育て支援新制度 の施行等により 保育所等の利用申込者数が増加したことから 平成 29 年 4 月 1 日時点の待機児童数は約 2 万 6 千人となった 政府は 待機児童の解消に

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Ⅲ コース等で区分した雇用管理を行うに当たって留意すべき事項 ( 指針 3) コース別雇用管理 とは?? 雇用する労働者について 労働者の職種 資格等に基づき複数のコースを設定し コースごとに異なる配置 昇進 教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいいます ( 例 ) 総合職や一般職等のコースを設定し

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2015年 「働き方や仕事と育児の両立」に関する意識(働き方と企業福祉に関する

若年者雇用実態調査

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( 事業所税の課税標準の特例 ) 第三十三条 ( 略 ) 2~5 ( 略 ) 6 平成二十九年四月一日から平成三十一年三月三十一日までの期間 ( 以下この項において 補助開始対象期間 という ) に政府の補助で総務省令で定めるものを受けた者が児童福祉法第六条の三第十二項に規定する業務を目的とする同法

施策の体系 本目標3 地域力と行政の連携がつくる人と地球に優しいまち179

地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第7次地方分権一括法)の概要

規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

第 3 章 雇用管理の動向と勤労者生活 ては 50 歳台まで上昇する賃金カーブを描いており 他の国々に比して その上昇テンポも大きい また 第 3 (3) 2 図により勤続年数階級別に賃金カーブをみても 男女ともに 上昇カーブを描いており 男性において特に その傾きは大きくなっている なお 女性につ

目次 要旨 1 Ⅰ. 通信 放送業界 3 1. 放送業界の歩み (1) 年表 3 (2) これまでの主なケーブルテレビの制度に関する改正状況 4 2. 通信 放送業界における環境変化とケーブルテレビの位置づけ (1) コンテンツ視聴環境の多様化 5 (2) 通信 放送業界の業績動向 6 (3) 国民

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愛知県アルコール健康障害対策推進計画 の概要 Ⅰ はじめに 1 計画策定の趣旨酒類は私たちの生活に豊かさと潤いを与える一方で 多量の飲酒 未成年者や妊婦の飲酒等の不適切な飲酒は アルコール健康障害の原因となる アルコール健康障害は 本人の健康問題だけでなく 家族への深刻な影響や飲酒運転 自殺等の重大

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主な論点 資料 4 1. ワーク ライフ バランスの推進 生産性向上等の観点から 働き方とともに休み方を見直すことの必要性 重要性 (1) 有給休暇取得状況と長時間労働の国際比較 (2) 休暇取得と生産性との関係 (3) 仕事と仕事以外の生活の充実 2. 秋の連休の大型化等を実現する上での課題 (1

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1. 職場愛着度 現在働いている勤務先にどの程度愛着を感じているかについて とても愛着がある を 10 点 どちらでもない を 5 点 まったく愛着がない を 0 点とすると 何点くらいになるか尋ねた 回答の分布は 5 点 ( どちらでもない ) と回答した人が 26.9% で最も多かった 次いで

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なお こども保険 は子どもを持っていない人も保険料を負担しながら給付を受けられないことから 保険原理とは相いれないとする批判がある しかし 1 民間保険と公的保険は自ずと性格が異なること 2 当保険の目的は ( 子どもが必要な保育 教育等を受けられないために ) 少子化が進行することで国民が不利益を

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生命保険商品には 終身保険のように長期にわたる契約があり このような契約では保険金 給付金をお受け取りいただく際に物価変動の影響を受ける可能性があります 当社は 円建の保険と外貨建の保険を組み合わせて持つことが 長期にわたり保険商品の資産価値をまもる解決策の一つだと考えます そしてそのことがお客さま

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Transcription:

平成 30 年度国家公務員一般職 ( 大卒程度 ) 一般論文試験 行政区分 我が国の生産年齢人口は 1990 年代をピークに減少を続けており 今後も減少が続くと推計されている この生産年齢人口の減少に伴う生産力の低下によって 我が国の社会経済に大きな影響を与えることが懸念されている このような状況に関して 以下の問いに答えなさい (1) 生産年齢人口の減少による生産力低下に影響されることなく 中長期的に経済成長を実現していくために解決すべきと考える課題を 以下の図 1 2を参考にしながら 二つ述べなさい (2) (1) で挙げた二つの課題を解決するためには それぞれどのような取組が必要となるか あなたの考えを具体的に述べなさい 1

2

< 解答例 > (1) 少子高齢化の進行により生産年齢人口の減少が生じているが これによる生産力低下に影響されることなく 中長期的に経済成長を実現していくために解決すべき課題として 私は女性が働きやすい社会をつくることと実質労働生産性を向上させていくことの二つに取り組まなければならないと考える これは 女性が輝く社会 働き方改革 を推進しようとしている日本社会全体の喫緊の政策課題であると同時に 生活に直接結びついた極めて身近な問題でもある まず 図 1にみられるように 我が国における年齢階級別労働力人口比率によれば 女性の場合 以前よりは底が浅くなったとはいえ 欧米諸国ではみられない M 字カーブを今なお描いており 妊娠 出産 育児によってキャリア中断することが多い我が国の女性の状況を如実に示しているといえる 実際 こうした女性の中で就業希望者は 300 万人を超えるとされ 我が国最大の潜在力を持つといわれている 労働力の確保という点では 高齢者と外国人労働力の活用も政策課題として取り組まれているが 女性労働力の活用を最優先に考えざるを得ないであろう なぜなら 婚外子が非常に少ない我が国においては 女性の社会進出に伴う晩婚化 未婚化が少子化に直結しており さらにこうした M 字カーブ社会の現状が 産みたくても産めない現実 を表していて 少子化を余儀なくしていると考えられるからである もちろん 結婚や出産は個人や家庭の価値観に属することであるから 行政がこれを積極的に奨励することはできないが そうしたいと願う人々に対して様々な支援を行うことは行政の責任といえるだろう そして 図 2にみられるように 先進国の中では決して高くない実質労働生産性の向上が必要不可欠である これは人口減少が必ずしも生産力減少につながらないことを考えてみても 重要な課題であることは間違いないといえる しかし 我が国では 今まで過重労働や人格否定などのパワハラによって健康を害したり 自殺に追い込まれるケースも多々あり 実質労働生産性向上の妨げとなっていた現状がある この背景には 残業代が貴重な収入源になっていたり 長年にわたり続く終身雇用と年功序列という日本型労働慣行が転職のしづらさや賃金の不均衡をもたらしたという現実も無視できないが 労働市場の変化や賃金体系の変化が生じている今 実質労働生産性の向上に本格的に取り組むべき時機が到来したと考えるべきだろう (2) 女性が働きやすい社会をつくるために 我が国ではすでに育児 介護休業法における所得保障の拡充 勤務時間の短縮化 弾力化 待機児童解消に向けた保育所用地の確保 認定こども園や企業内保育所の拡充など多様な保育サービスの充実 地域全体が多種多様に子育てに関わっていく体制づくりなどが取り組まれている 私はこれらの施策に加えて 公的インフラを活用した半官半民の大規模保育施設をつくり 災害シェルターも兼ねて 職住 育住近接型社会をつくることが必要だと考えている 公的インフラとは都道府県庁や市区役所 町村役場 公立病院 公立学校 図書館 公営住宅などの公的機関の持つ土地 建 3

物であり これらの高層化 地下化を進めて保育施設 防災拠点を確保するとともに 運営は民間に委託するということである そして そこではたらく公務員のみならず 近隣の人々も活用していけば 職住近接型社会は難しいまでも職育 育住近接型社会の実現となり 仕事と育児の両立がよりしやすくなるだろう さらに一定の容積以上の高層マンションに保育施設を作ることを推進し 住民及び近隣の人々の利用を可能にすれば 少子化対策としてはさらに強化されるだろう 保育施設の併設を地域貢献とみなしてマンションの固定資産税を減免するなどの措置も取ることができれば 需要の多い地域では 子どもをもたない世帯の人々の理解も得られやすい また 実質労働生産性の向上のためには 政府 企業によって残業の制限 セクハラ パワハラ防止 育児 介護における所得保障 賃金上昇などが真剣に取り組まれており これらの施策は人材の定着度を高める上でも重要である その一方で企業に最も重くのしかかるのが人件費であるという現実もあるため 人材の流動性を高める施策にも真剣に取り組まざるを得ないと私は考えている すなわち 兼業禁止規定の緩和と解雇要件の緩和である 現在でもすでに 届出制で会社や上司の許可のもとに兼業をしている人も少なからず存在する 今後 より広く残業を制限する以上 何らかの収入を確保する道を開く必要があろう 労働市場における人手不足が深刻になりつつある中 情報管理義務や守秘義務に対する罰則を徹底して 就業の多様化に道を開く必要があるといえるだろう また 終身雇用と年功序列という日本型労働慣行が崩れつつある中 一定の所得保障や職業訓練支援 教育支援を行った上で解雇要件を緩和することができれば 会社のリストラクチャリングもしやすくなり そこにセーフティネットとしての公的支援も加えれば 安心して離職 転職できる社会となるだろう より安全で健全な労働環境を選べるようにしていくことは行政の責任であると考える 4

< 解説 > 国家公務員一般職の論文試験では 平成 26 年度ではグローバル化 少子 高齢化などが進展する社会で活躍する人材育成に照準を当て 今日の社会の変化とその背景 と それに対応するため 育成を図るべき能力 及び そのような能力を培うために初等中等教育においてどのような取組が必要か を論じさせていた 平成 27 年度では 言葉や言葉の使い方に対する社会全体の関心 言葉や言葉の使い方に関する社会全体の知識や能力 が以前より低下していると思われる中 言葉の意味の変化 新しい言葉の出現 言葉の消滅が起こる原因及び影響 として考えられるものを挙げた上で 言葉の果たす役割 を踏まえ 言葉についての関心を喚起し 理解を深めるための施策 を論じさせていた 平成 28 年度では 20 歳代 ~30 歳代を中心とした若い世代の現在の食生活 の問題点 課題を踏まえた上で 若い世代が食育に興味を持つようになるための施策 を論じさせていた 平成 29 年度は 我が国が観光立国の実現を推進する必要性や意義 を踏まえた上で 観光立国の実現を推進するために我が国が行うべき施策 を具体的に述べさせるという出題であった こうした流れの中で 平成 30 年度では 生産年齢人口の減少による生産力低下に影響されることなく 中長期的に経済成長を実現していくために解決すべきと考える課題 を二つ挙げさせ それらを解決するためにはそれぞれどのような取組をしていくべきかを具体的に述べさせている いずれにしても 現代社会の変化や現状を踏まえ その分析をした上で こうした状況に対する取組や施策を論じさせるという基本的な構図は変わっていない しかも 今年度は 女性が輝く社会 働き方改革 を政府が強力に推し進めようとしている中での出題であり 今日の政策課題をどれだけ正確に理解し 当事者意識を伴った具体的な考えを持っているかが問われているといえよう 5