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40(3.5min) 50(6min) 55(8min) 95(17.5-30min) でグラジエント分析を行い 次の分析までは 10 分間平衡化した また 流速は 0.2 ml / min 試料注入量は 5μl とした (2) 質量分析装置アプライドバイオシステムズ社製 API2000 を用いた イオン化はエレクトロスプレー (ESI) によるポジティブ及び Compound Table1. Retention time and compound-specific ESI-MS/MS parameters. RT (min) Precursor ion (m/z) Product ion (m/z) DP 1 (V) CE 2 (V) LOD 3 アザメチホス Azamethiphos 10.55 324.9 112 66 51 0.8 アジンホスメチル Azinphos-methyl 14.4 318 136 41 33 0.8 アニロホス Anilofos 17.57 368 125 61 41 0.7 アバメクチン B1a AbamectinB1a 21.18 890.5 305 36 35 5 イソキサフルトール Isoxaflutole 19.57 359.8 261.9 91 21 0.6 イプロバリカルブ Iprobalicarb 16.41 320.9 119.1 56 23 0.9 イミダクロプリド Imidacloprid 15.44 256 91.3 66 43 5 インドキサカルブ Indoxacarb 18.5 527.9 150 76 31 5 オキシカルボキシン Oxycarboxin 7.88 267.9 175.2 61 19 2.4 オリザリン Oryzalin 16.69 344.81 77.8-91 -74 2.8 キザロホップエチル Quizalofop-ethyl 19.23 373 255 81 43 3.6 Cloquintocet-1-methyl-hexyl ester 19.57 335.9 179 (192) 51 47 0.4 クロチアニジン Clothianidin 6.06 248 58-61 -22 1.5 クロマフェノジド Chromafenozide 16.3 395 175.1 76 21 0.8 クロメプロップ Clomeprop 10.54 324.8 183 61 21 0.6 クロリダゾン Chloridazon 7.08 222 77 86 55 6 シフルフェナミド Cyflufenamid 18.03 413 91.2 81 55 3 シメコナゾール Simeconazole 16.63 294 70 61 39 1.7 ジメチリモール Dimethirimol 13.16 210.1 71.2 (140.1) 51 47 0.5 チアクロプリド Thiacloprid 7.94 253 126 81 27 0.9 チアベンダゾール Thiabendazole 9.62 202 175.1 101 35 0.9 チアメトキサム Thiamethoxam 5.13 292 181 71 33 7.5 トラルコキシジム Tralkoxydime 13.7 (16.2) 327.97 253.9-76 -36 0.6 ナプロアニリド Naproanilide 17.04 292 120 56 29 0.2 ピラゾレート Pyrazolate 18.22 439 91 91 55 1.5 ピリフタリド Pyriftalid 14.61 318.86 139.2 76 39 1.4 フェノキシカルブ Fenoxycarb 17.18 302 88 96 29 1.1 フェリムゾン (E) Ferimzone 15.28 255.014 132.2 46 29 0.1 フェリムゾン (Z) Ferimzone 15.29 255.014 91.2 41 45 0.8 フェンメディファム Phenmedipham 14.4 301 136 101 29 1.1 ブタフェナシル Butafenacil 16.31 492 180 21 59 0.5 フラチオカルブ Furathiocarb 19.25 382.9 167 (195) 76 35 1.8 ベンゾフェナップ Benzofenap 18.95 431 105 91 45 2.9 ミルベメクチン A3 MilbemectinA3 21.22 546.3 511 11 17 15 ミルベメクチン A4 MilbemectinA4 21.8 560.1 524.8 11 17 15 メトキシフェノジド Methoxyfenozide 15.8 369 149.1 76 21 2.4 ラクトフェン Lactofen 19.26 479 343.9 61 29 1.1 1: Declustering Potential, 2: Collision Energy 3: Limit of Detection (pg) 80

ネガティブイオン化法により行った ポジティブモードではイオンスプレー電圧は 5.0kv イオン源温度は 500 に設定し ネガティブモードではイオンスプレー電圧は- 4.5kv イオン源温度は 500 に設定した また標準溶液をメタノール : 5mmol/L 酢酸アンモニウム水溶液の (1:1) 溶液で希釈し 0.5~1.0ppm の濃度で各農薬のトランシジョンを検討した 3. 分析方法厚生労働省通知法 LC/MS による農薬等の一斉分析法 ( 農産物 ) 2) に準じて行った すなわち それぞれ均一化した試料 20g にアセトニトリル 50mL を加えホモジナイズした後 遠心分離 (2,500rpm, 5min) し上清を分取した 残った残渣に アセトニトリル 20mL を加え同様に操作した 得られた上清を合わせ アセトニトリルを加え正確に 100mL とした 抽出液 20mL を採り 塩化ナトリウム 10g 及び 0.5mol/L リン酸緩衝液 (ph7.0)20ml を加え 10min 振とうした 静置した後 分離した水層を捨てた 野菜 果実の場合は アセトニトリル層に無水硫酸ナトリウムを加え脱水し 無水硫酸ナトリウムはろ過で除き ろ液を 40 以下で濃縮 窒素気流下で溶媒を除去した 残留物はアセトニトリル : トルエン (3:1) 混液 2mL に溶かした あらかじめアセトニトリル : トルエン (3:1) 混液 10mL でコンディショニングした ENVI-Carb/LCNH2 に上記抽出液を負荷し さらにアセトニトリル : トルエン (3:1) 混液 20mL を負荷 全溶出液を 40 以下で濃縮した これにアセトン 10mL を加え 1mL 以下に濃縮し 再度アセトン 5mL を加えて濃縮 窒素気流下で溶媒を除去した 残留物はメタノールに溶かし 4mL に定容した これを試験溶液とし LC-MS/MS により測定した なお 検量線は 0.01~0.2ppm の範囲で作成した 6.0 10 4 (A)Pesticide 44 10ng/ml (positive mode) cps 17.53 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 Time, min 18.03 450 (B)Pesticide44 10ng/ml (negative mode) cps 6.0 8 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 Time, min Figure.1 The chromatogram of pesticides mixed standard in positive mode (A) and negative mode (B) by LC-MS/MS 81

4. 添加回収実験添加量は 2μg ( 最終試験液 :0.1μg/ml) とし 3の分析方法を用いて n=3 で回収実験を行った なお いずれも添加してから 30 分経過後分析を開始した 同時に各サンプルのブランク溶液に標準溶液を添加し マトリックス効果についても見当を行った 結果と考察 1. 分析条件の検討 (1) 液体クロマトグラフ条件の検討通知法において分析カラムは 3~3.5μm の ODS 系カラムが例として示されているため 第一選択としてこれに当てはまるカラムを検討したところ Mightysil RP-18GP (2.0mm i.d. 150mm 粒子径 3μm, 関東化学 ) がピーク形状及び分離も比較的良好であったためカラムは Mightysil RP-18 GP を選択した (Figure1) 移動相についてアセトニトリルとメタノールを検討したところ アセトニトリルではピーク形状は良かったが ミルベメクチン A3 とA4 ラクトフェンなどのピークが検出されなかった メタノールでは混合標準液に含まれる全ての成分が溶出されたので 移動相には 5mmol/L 酢酸アンモニウム水溶液と 5mmol/L 酢酸アンモニウム水溶液含有メタノールを用い 通知法に従ったグラジエントにより分析を行った 本移動相でも分離やピーク形状は良好であったが トラルコキシジムに関してはピークが 2 本溶出したため 2 つのピーク面積の和により定量を行った 1 回の分析時間は 30 分としたが 機器を安定させる為に A 液の割合を 85% にして 10 分間安定化した後 次のサンプルの分析を行った (2) 質量分析計の条件の検討化合物ごとの条件については Table1 に示した イオン化はESIによるポジティブイオン化とネガティブイオン化によって行い イオンスプレー電圧やイオン源温度等のイオンソースのパラメーターは 感度の低いミルベメクチンの感度が最大になるようフローインジェクションアナリシス (FIA) により最適な条件を決定した また化合物ごとの最適条件については インフュージョンポンプを用いた MRM 法により決定した ポジティブイオン化ではアバメクチン B1a ブタフェナシル ミルベメクチン類 ラクトフェンについてはアンモニア付加体 [M+NH 4 ] + を親イオンとして選択し それ以外はプロトン付加体 [M+H] + を親イオンとした オリザリン クロチアニジン及びトラルコキシジムはネガティブイオン化の方が高感度であったため これら3 種についてはプロトン脱離体 [M-H] - を親イオンとした 今回の検討により ポジティブモードで 34 成分 ネガティブモードで 3 成分の一斉分析が可能になり その検出下限値 (LOD, S/N=3) は 0.1pg~15pg と高感度であった また 0.01ppm における繰り返し測定においても再現性が確認され キャリーオーバーなどの問題もなかった クロマトグラム上に一部のサンプルからピークが確認されたが 定量を阻害するような妨害ピークはみられなかった 2. 回収試験回収試験の結果について Table2 に示す ほとんどの農薬で回収率は 70%~120% と良好であった また 変動係数 (CV) もほとんどにおいて 10% 以下であり 再現性も確認された LC/MS/MS で分析を行なう際 試料由来のマトリックス成分がイオン化を促進または抑制し 定量を阻害することが知られている そこで 本法により調製したブランク溶液に 0.05ppm になるように標準を添加した時のイオン強度と 同濃度での標準溶液のみのイオン強度について比較した サンプル毎に注目すると バレイショにおいてアジンホスメチル ピラゾレート フェンメディファムで 120% を超えたが これらのサンプルはイオン化が促進されていることが確認された 標準添加法による定量結果においてはアジンホスメチル 97.2% ピラゾレート 78.7% フェンメディファム 94.3% と良好であった ほうれん草においてはアバメクチン B1a69.4% クロチアニジン 69.7% ミルベメクチン A3 で 54.5% ミルベメクチン A4 で 69.2% と 70% を下回る結果であった トマトにおいては回収率こそ 70%~120% であったが 多くの農薬でイオンサプレッションが確認された ほうれん草の最終サンプルは完全に色素の除去が出来ていなかったため これらのマトリックスがイオンサプレッションを引き起こしている可能性が考えられる 標準添加法による定量結果ではアバメクチン B1a78.9% クロチアニジン 94.0% ミルベメクチン A3 で 85.1% ミルベメクチン A4 で 89.6% であった 一方で青ネギにおいては大きなマトリックス効果は見られなかった 以上より 回収率が 70%~120% にならない農薬を定量する際にはサンプルの希釈や精製の追加などのマトリックス効果を減らす方法の検討が必要である また青ネギのジメチリモールにおいては回収率 58% と低かったが特にマトリックス効果はみられなかった しかしながら CV 値が 6.1% とそれほどばらついていないこと ジメチリモールの検出下限値は 1ppb よりも低いことからスクリーニングとしては適用可能と考えられる 82

Table 2. The recovery rates of pesticide from each agricultural products. Compound Recovery (%) ハ レイショ CV トマト CV ネキ CV ホウレン草 CV アザメチホス Azamethiphos 91.8 3.3 71.3 10.7 93.0 8.8 68.9 4.0 アジンホスメチル Azinphos-methyl 93.0 7.2 102.3 2.5 88.2 3.2 84.7 5.0 アニロホス Anilofos 89.5 2.8 92.4 1.7 86.0 4.0 87.9 2.6 アバメクチン B1a AbamectinB1a 111.7 1.0 80.5 15.6 92.2 10.1 69.4 8.3 イソキサフルトール Isoxaflutole 97.4 4.5 109.0 6.4 86.6 0.7 86.8 2.7 イプロバリカルブ Iprobalicarb 88.7 6.6 93.1 0.8 87.4 1.6 87.1 0.9 イミダクロプリド Imidacloprid 75.4 6.9 83.5 1.9 83.9 5.5 80.9 1.5 インドキサカルブ Indoxacarb 105.3 3.3 116.3 13.2 84.4 2.2 74.1 0.8 オキシカルボキシン Oxycarboxin 87.1 2.0 74.2 7.0 80.1 6.9 80.2 5.8 オリザリン Oryzalin 84.0 2.9 96.0 1.5 80.6 3.0 77.2 4.2 キサ ロホッフ エチル Quizalofop-ethyl 82.4 2.5 92.0 0.7 86.1 2.4 87.0 3.2 Cloquintocet-1-methyl-hexyl ester 100.2 4.6 102.0 2.0 86.8 2.0 83.4 2.0 クロチアニジン Clothianidin 84.8 2.4 88.0 7.4 72.1 1.8 69.7 1.1 クロマフェノジド Chromafenozide 89.5 7.4 90.4 1.3 94.1 2.0 86.3 1.9 クロメプロップ Clomeprop 95.4 2.5 74.0 8.3 94.3 8.1 70.9 4.2 クロリダゾン Chloridazon 94.9 4.6 88.0 7.4 89.0 0.7 83.3 2.4 シフルフェナミド Cyflufenamid 102.9 2.8 98.3 1.0 90.2 4.1 87.0 6.8 シメコナゾール Simeconazole 89.4 3.6 90.7 0.8 88.1 6.1 83.3 0.1 ジメチリモール Dimethirimol 68.9 10.6 85.0 0.6 58.1 6.1 76.8 2.7 チアクロプリド Thiacloprid 94.9 4.3 88.9 4.6 89.3 0.3 81.3 2.8 チアベンダゾール Thiabendazole 85.8 4.9 91.1 1.3 68.9 16.8 79.5 7.5 チアメトキサム Thiamethoxam 93.0 5.1 101.2 9.9 76.1 2.4 75.8 4.1 トラルコキシジム Tralkoxydime 78.6 7.9 79.3 9.8 73.5 1.3 74.8 3.6 ナプロアニリド Naproanilide 90.4 1.1 90.0 0.5 86.3 2.6 86.1 1.8 ピラゾレート Pyrazolate 133.0 3.4 74.0 9.6 77.3 12.7 65.8 6.0 ピリフタリド Pyriftalid 94.3 3.1 96.2 2.1 85.7 5.1 82.1 3.6 フェノキシカルブ Fenoxycarb 86.9 7.2 94.0 2.0 86.4 9.4 87.7 2.7 フェリムゾン (E) Ferimzone 72.4 0.8 82.4 1.1 82.7 5.2 81.4 2.3 フェリムゾン (Z) Ferimzone 74.1 0.9 84.8 5.7 82.2 3.9 83.4 2.8 フェンメディファム Phenmedipham 126.3 5.2 95.4 4.4 87.9 1.6 85.8 9.9 ブタフェナシル Butafenacil 89.6 5.4 84.5 1.4 86.8 1.7 86.7 1.9 フラチオカルブ Furathiocarb 95.1 2.0 97.5 2.2 85.3 0.8 83.6 2.0 ベンゾフェナップ Benzofenap 93.8 4.2 94.3 2.5 84.3 3.6 83.7 0.4 ミルベメクチン A3 MilbemectinA3 94.5 4.4 114.3 8.3 77.5 1.6 54.5 2.3 ミルベメクチン A4 MilbemectinA4 101.4 5.3 66.2 7.4 82.7 3.0 69.2 2.0 メトキシフェノジド Methoxyfenozide 94.1 2.7 87.1 1.9 80.3 2.5 89.3 3.1 ラクトフェン Lactofen 111.7 1.4 79.5 9.4 84.7 2.4 94.5 1.2 83

まとめ厚生労働省通知法に準じた方法により LC- MS/MS において 37 農薬の分析を検討したところ ポジティブモードとネガティブモードの両方において全てにおいて 0.01ppm よりも高感度で検出することが可能であった バレイショ トマト 青ネギ ほうれん草における添加回収試験についても一農薬を除き ほとんどの農薬で回収率 70%~120% であり これにあてはまらなかった一部の農薬についても標準添加法を用いた定量結果では回収率は良好であった 今後検査対象農薬を随時追加し 行政における残留農薬検査や危機管理対策に役立てていきたい 参考文献 1) 本村秀章, 他 : 農産物中の残留農薬 ( 第 2 報 ), 長崎県衛生公害研究所報,52,24~31(2006) 2) 厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知 食品に残留する農薬 飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について ( 一部改正 ) 平成 17 年 11 月 29 日, 食安発第 1129002 号 84