円筒面で利用可能なARマーカ

Similar documents
2008 年度下期未踏 IT 人材発掘 育成事業採択案件評価書 1. 担当 PM 田中二郎 PM ( 筑波大学大学院システム情報工学研究科教授 ) 2. 採択者氏名チーフクリエータ : 矢口裕明 ( 東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻博士課程三年次学生 ) コクリエータ : なし 3.

0 21 カラー反射率 slope aspect 図 2.9: 復元結果例 2.4 画像生成技術としての計算フォトグラフィ 3 次元情報を復元することにより, 画像生成 ( レンダリング ) に応用することが可能である. 近年, コンピュータにより, カメラで直接得られない画像を生成する技術分野が生

vecrot

人間の視野と同等の広視野画像を取得・提示する簡易な装置

コンピュータグラフィックス第8回

5104-toku3.indd

コンピュータグラフィックス第6回

Microsoft PowerPoint - pr_12_template-bs.pptx

Microsoft Word - 6_D_秋本.docx

Microsoft PowerPoint - 9.pptx

Microsoft PowerPoint - 9.pptx

ドライビングシミュレータ用実写映像再生ソフトウェア Real Video Drive Player


Microsoft PowerPoint - H24全国大会_発表資料.ppt [互換モード]

例題1 転がり摩擦

Microsoft PowerPoint - 三次元座標測定 ppt


問題-1.indd

27 AR

Microsoft Word - thesis.doc

tc15_tutorial02

連続講座 断層映像法の基礎第 34 回 : 篠原 広行 他 放射状に 線を照射し 対面に検出器の列を置いておき 一度に 1 つの角度データを取得する 後は全体を 1 回転しながら次々と角度データを取得することで計測を終了する この計測で得られる投影はとなる ここで l はファンビームのファンに沿った

補足 中学で学習したフレミング左手の法則 ( 電 磁 力 ) と関連付けると覚えやすい 電磁力は電流と磁界の外積で表される 力 F 磁 電磁力 F li 右ねじの回転の向き電 li ( l は導線の長さ ) 補足 有向線分とベクトル有向線分 : 矢印の位

代数 幾何 < ベクトル > 1 ベクトルの演算 和 差 実数倍については 文字の計算と同様 2 ベクトルの成分表示 平面ベクトル : a x e y e x, ) ( 1 y1 空間ベクトル : a x e y e z e x, y, ) ( 1 1 z1

Raspberry Pi BF BF BF Raspberry Pi PC USB HDMI OS SD SD OS Raspberry Pi Model B MicroUSB MicroSD OS SD GPIO HDMI USB LAN Raspberry Pi MicroUSB MicroSD

Coding theorems for correlated sources with cooperative information

木村の物理小ネタ ケプラーの第 2 法則と角運動量保存則 A. 面積速度面積速度とは平面内に定点 O と動点 P があるとき, 定点 O と動点 P を結ぶ線分 OP( 動径 OP という) が単位時間に描く面積を 動点 P の定点 O に

機構学 平面機構の運動学

EnSightのご紹介

Microsoft Word - 201hyouka-tangen-1.doc

Microsoft PowerPoint - zairiki_3

画像類似度測定の初歩的な手法の検証

Release Note for Media File Player v1.6.3 (Japanese)


ARToolKit プログラムの仕組み 1: ヘッダファイルのインクルード 2: Main 関数 3: Main Loop 関数 4: マウス入力処理関数 5: キーボード入力処理関数 6: 終了処理関数 3: Main Loop 関数 1カメラ画像の取得 2カメラ画像の描画 3マーカの検出と認識

数学 ⅡB < 公理 > 公理を論拠に定義を用いて定理を証明する 1 大小関係の公理 順序 (a > b, a = b, a > b 1 つ成立 a > b, b > c a > c 成立 ) 順序と演算 (a > b a + c > b + c (a > b, c > 0 ac > bc) 2 図

クイックマニュアル(SV)_PVCXC-M011-D

断面の諸量

[課題案]

ARCHITREND ZERO 汎用コマンド一覧

2015-2017年度 2次数学セレクション(複素数)解答解説


自由落下と非慣性系における運動方程式 目次無重力... 2 加速度計は重力加速度を測れない... 3 重量は質量と同じ数値で kg が使える... 3 慣性系における運動方程式... 4 非慣性系における運動方程式... 6 見かけの力... 7 慣性系には実在する慣

25 AR 3 Property of three-dimensional perception in the wearable AR environment

基礎輪講2週目 Kinectの話

(1) (2) (3) (4) (5) 2.1 ( ) 2

情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report Vol.2015-CVIM-195 No /1/22 AR マーカ除去のための実時間背景画像変形 *1 1 1 Abstract 本稿では, 拡張現実感で用いられる AR マーカの違和感のない視覚的除去を実現するた

Microsoft Word - 断面諸量

学習指導要領

idoperation SC のコンセプト idoperation SC は パソコンやサーバにインストールする 防犯カメラ ソリューションです パソコンやサーバのデスクトップ内でのユーザ操作をビデオで記録し 証跡として残します 録画 保管 再生 2

untitled

Microsoft Word - kojima.doc

PoincareDisk-3.doc

2 Hermite-Gaussian モード 2-1 Hermite-Gaussian モード 自由空間を伝搬するレーザ光は次のような Hermite-gaussian Modes を持つ光波として扱う ことができる ここで U lm (x, y, z) U l (x, z)u m (y, z) e

Mate J & VersaPro J インテル第5、第4世代CPU搭載モデルカタログ 2016年5月

isai300413web.indd

PowerPoint プレゼンテーション

小型移動ロボット

PowerPoint Presentation

Release Note for Media File Player v1.6.5 (Japanese)

CADdoctor 製品構成 / 動作環境 製品バージョン : Ver 発行日 : 2019/7/26 製品構成 CADdoctor は 標準パッケージと追加オプションで構成されます 標準パッケージ (IGES 入出力 STL 出力 ) に入出力オプションを追加することにより 高精度の

Vectorworks 投影シミュレーションプラグイン

この演習について Autoware 演習 1: データの記録 再生 Autoware 演習 2: センサーキャリブレーション Autoware 演習 3:3 次元地図の作成 Autoware 演習 4: 自己位置推定 Autoware 演習 5: パラメータ調整 Autoware 演習 6: 物体検

θ T [N] φ T os φ mg T sin φ mg tn φ T sin φ mg tn φ θ 0 sin θ tn θ θ sin φ tn φ φ θ φ mg θ f J mg f π J mg π J J 4π f mg 4π f () () /8

AR技術を用いたグリーティングカード作成ソフトの開発

問 1 図 1 の図形を作るプログラムを作成せよ 但し ウィンドウの大きさは と し 座標の関係は図 2 に示すものとする 図 1 作成する図形 原点 (0,0) (280,0) (80,0) (180,0) (260,0) (380,0) (0,160) 図 2 座標関係 問 2

2011年度 東京工大・数学

情報工学実験 Ⅱ グラフィックプログラミング基礎 担当教員名 : 赤嶺有平 提出日 :2010 年 12 月 9 日 学籍番号 : B 氏名 : 大城佳明 - 1 -

スライド 1

idoperation SC のコンセプト idoperation SC は パソコンやサーバにインストールする 防犯カメラ ソリューションです パソコンやサーバのデスクトップ内でのユーザ操作をビデオで記録し 証跡として残します 録画 保管 再生 2017 NTT TechnoCross Corpo

Touch Panel Settings Tool

パソコンシミュレータの現状

NITAS Ver.2.4 システムの概要 利用上の注意等 1.NITAS の概要 動作環境 利用対象者 (1)NITAS の概要総合交通分析システム (NITAS:National Integrated Transport Analysis System) は 道路 鉄道 航空 船舶の各交通機関を

User’s Manual

1. 研究背景 目的 2. 使用機器 3. 橋梁点検システム 4. 選定橋梁 5. 安全対策 橋梁点検フロー 6. 計測結果 計測条件 7. まとめ - 2 -

また おすすめはしませんが C: Program Files Adobe Adobe After Effects [version] Support Files Plug-ins に配置することによって After Effects からのみ使用できます macos の場合 /Library/Appl

Microsoft Word - 01.docx

(Microsoft PowerPoint -

1/10 平成 29 年 3 月 24 日午後 1 時 37 分第 5 章ローレンツ変換と回転 第 5 章ローレンツ変換と回転 Ⅰ. 回転 第 3 章光速度不変の原理とローレンツ変換 では 時間の遅れをローレンツ変換 ct 移動 v相対 v相対 ct - x x - ct = c, x c 2 移動

直樹卒業論文

ムーアの法則に関するレポート

manual_ezcap_edit

Microsoft PowerPoint - [150421] CMP実習Ⅰ(2015) 橋本 CG編 第1回 幾何変換.pptx

Chap3.key


Microsoft PowerPoint - 第9回電磁気学

する距離を一定に保ち温度を変化させた場合のセンサーのカウント ( センサーが計測した距離 ) の変化を調べた ( 図 4) 実験で得られたセンサーの温度変化とカウント変化の一例をグラフ 1 に載せる グラフにおいて赤いデータ点がセンサーのカウント値である 計測距離一定で実験を行ったので理想的にはカウ

Empower3 Feature Release (FR) 2 の新機能 コンピュータ要件パーソナルまたはクライアント項目 OS CPU メモリハードディスク 最低条件 Windows 7 Enterprise または Professional SP1 64 ビット Windows XP Profe

王子計測機器株式会社 LCD における PET フィルムの虹ムラに関する実験結果 はじめに最近 PETフィルムはLCD 関連の部材として バックライトユニットの構成部材 保護シート タッチセンサーの基材等に数多く使用されています 特に 液晶セルの外側にPET フィルムが設けられる状態

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - matlab10.ppt [互換モード]

29 AR

p tn tn したがって, 点 の 座標は p p tn tn tn また, 直線 l と直線 p の交点 の 座標は p p tn p tn よって, 点 の座標 (, ) は p p, tn tn と表され p 4p p 4p 4p tn tn tn より, 点 は放物線 4 p 上を動くこと

学習指導要領

高精度全方位移動ロボットの実運用のための 障害物の画像認識技術およびリアルタイム経路探索技術の開発 東京ロボティクス株式会社岡弘之 高木崇光 松尾雄希 坂本義弘 本研究は 人工知能研究振興財団の助成によって実施されたものです 1

Microsoft PowerPoint - ロボットの運動学forUpload'C5Q [互換モード]

1段階処理の予測法(One Step Model) を用いた雑音抑圧技術

21 e-learning Development of Real-time Learner Detection System for e-learning

Microsoft PowerPoint - 10.pptx

NCVIEW / NCVIEW Neo 2017 リリースノート A) 新機能概要 B) 主な改善 修正内容 (NCVIEW / NCVIEW Neo 2016 以降の改善 修正内容が記載されています ) C) 対応済みサポート受付番号一覧 D) 動作環境 以下文中の () に記載された番号はサポー

Transcription:

円筒面で利用可能な AR マーカ AR Marker for Cylindrical Surface 2014 年 11 月 14 日 ( 金 ) 眞鍋佳嗣千葉大学大学院融合科学研究科

マーカベース AR 二次元マーカはカメラ姿勢の推定, 拡張現実等広い研究分野で利用されている 現実の風景 表示される画像 デジタル情報を付加 カメラで撮影し, ディスプレイに表示 使用方法の単純性, 認識の安定性からマーカベース AR は今後も利用されるといえる

研究背景 ARToolKit や ARTag では黒い四角の縁をもったマーカを使用している ARToolKit ARTag 四角形の 4 つの角をもとに変換行列を計算 画像上でマーカが歪むと検出できない

従来手法の問題点 平 面 円 筒 面 円筒面上の場合, 歪みやオクルージョンのため, マーカ検出できない姿勢がある 歪みのため, 正しく仮想物体を表示できない

歪みに強いマーカ Deformable random dot marker フレームごとに歪みを補正し, 歪んだ面でも認識可能 1 フレーム目は平面でなくてはならない Uchiyama, Marchand:Deformable random dot markers. proce. of ISMAR, pp.237-238 (2011)

研究目的と目標 研究目的 はじめから曲面に配置されていても認識できるマーカを作成する この研究では比較的に人工物に多い円筒面に注目 研究目標 円筒面上においても検出可能な AR マーカの提案 円筒面上に適切な仮想情報の提示

提案マーカ 曲率算出点群 上下にそれぞれ 5 つの点 曲率推定に用いる 間隔は一定 マーカ検出点群 左右にそれぞれ 4 つの点 マーカ検出に用いる 間隔は任意 4 点の複比を ID 情報として用いる 円筒の中心軸とマーカ検出点群が平行になるように配置 このマーカを CURV(Cylinder's Unfixed Radius Valuation) Marker とする

複比とは? 同一直線上にある 4 点の複比 cr(a,b,c,d) は 以下のように定義される 任意の直線への射影変換による 像を A',B',C',D' とすると 複比は射影変換によって不変 直線上にある 4 点の複比はカメラで撮影した 画像平面上でも一定の値になる

提案手法の流れ 曲率 法線推定

点群の検出 円筒の中心軸とマーカ検出点群が平行になるように配置されているため, マーカ検出点群の直線性は保たれる マーカ検出点群の複比も一定に保たれる 点群の直線性から検出, 複比から識別を行う

マーカ検出点群の検出, および ID 識別 抽出した楕円の中心のなかで 4 点が一直線上にある 中心点が白で点の間が黒 長径が大きく変化していない となっている点の組み合わせを探す 4 点の複比がマーカのものと一致しているか識別を行う

曲率算出点群の検出 見つけたマーカ検出点群の位置を基に 中心点が白で点の間が黒 マーカ検出点群の近傍である 2 点を結ぶとマーカ検出点群と平行になる 長径と 2 点の距離が大きく変化していない となる 2 点を探す 見つけられた 2 点の位置を基に探索を繰り返す

曲率計算の流れ 曲率算出点群から面を分割し, それぞれの変換行列を求める 変換行列から, 面同士の角度が求められる マーカの大きさは既知 角度から半径などの円筒の情報が求まる

法線推定 マーカ法線と同じ法線をもつ仮想平面 P を考える 平面 S 1 から平面 P への変換行列 T 1P は r は θで求められるので T 1P の成分は全てθによる S 1 の位置姿勢とθのみで 法線方向が推定可能

実験結果 実行速度約 15fps カメラ PC 製品名 HD Pro Webcam C910 (Logicool) 解像度 640 480 フレームレート 30 fps OS Windows 7 CPU Intel Core-i3 550 3.2GHz メモリ 4GB

複数マーカの認識 青い円錐を表示 赤い円錐を表示 マーカが複数あったとしてもきちんと識別できる

評価実験 仰角 θ, 回転角 φ を 5deg ずつ変えながら 認識できるかどうかの評価実験を行う

比較対象 ARToolKit Deformable Random Dot Marker

計測結果 ARToolKit 提案マーカ ( 曲率推定 + 位置姿勢推定 ) Deformable Random Dot Marker 提案マーカ ( 位置姿勢推定のみ ) 認識率 [%] 縦軸 : 回転角 φ[deg], 横軸 : 仰角 θ[deg]

計測結果 ARToolKit 提案マーカ ( 曲率推定 + 位置姿勢推定 ) Deformable Random Dot Marker 提案マーカ ( 位置姿勢推定のみ ) 認識率 [%] 縦軸 : 回転角 φ[deg], 横軸 : 仰角 θ[deg]

物体形状に合わせた重畳表示 マーカから取得した情報を用いて物体形状に合った仮想物体を表示が可能

物体形状に合わせた重畳表示 マーカから取得した情報を用いて物体形状に合った仮想物体を表示が可能

応用例 ~ 円筒面上に動画を表示 ~ 缶や瓶などの表面に CM 映像などを表示することができる

まとめ 研究目標 円筒面上においても検出可能な AR マーカの提案 円筒面上に適切な仮想情報の提示 結果 提案したマーカが円筒面上でも検出可能なことを示した 物体形状を取得し, その情報を用いて重畳表示を行った

想定される用途 本技術は, 身の回りにある様々な円筒形状のもの ( 例えば, ビン, 缶, 電柱 ) に仮想情報を重畳表示することが可能である. そのため, 案内表示など必要な人にだけ必要な情報を提供する事が可能となる. また, 薬のビンなどに使用することで, 必要な人にしか中身が分からなくするなど, セキュリティにも利用可能である.

実用化に向けた課題 マーカをもう少し目立たなくし, 他のデザインと調和できるような工夫が必要. このようなマーカデザインを現在検討中. 処理速度を高速化し, さらに安定した処理ができるようにアルゴリズムの改良が必要. また, 曲面だけではなく折れ曲がった面への対応を現在検討中.

企業への期待 新しい AR 技術の応用を考えている企業との共同研究を希望. 応用方法, マーカデザイン, 情報の提示方法など AR 技術は, 今後ますます様々な場面で利用され, 一般にも普及して行くと考えられる. 実証実験, 商品化も含めて連携を考えたい.

本技術に関する知的財産権 発明の名称 : マーカー マーカーが付された物体 マーカー解析方法 及び画像作成方法出願番号 : 特願 2013-111267 出願人 発明者 : 千葉大学 : 眞鍋佳嗣, 矢田紀子, 鈴木朝日

お問い合わせ先 千葉大学学術研究推進機構産業連携研究推進ステーション特任教授 / 産学官連携コーディネーター小柏猛 E-mail:ogashiwa@chiba-u.jp Tel:043-290-3565 Fax: 043-290-3519