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東京都港区の小 大規模樹林地間の距離と越冬期の鳥類の種組成との関係について 河野明日香上田智翔 Relationship between Birds Composition in Winter and Distances among Small and Large Scales of Woodlots on the Minato Ward in Tokyo Asuka Kohno Chisho Ueda Abstract I investigated the number of species and the total number of birds living in 35 small scale of woodlots in the Minato ward, Tokyo, in order to clarify how distances among small and large scales of woodlots affect on birds composition in winter. As the results, 21 species and 1,228 individuals of birds have been confirmed. Next, although area sizes of woodlots and distances between small and large scales of woodlots were calculated using ArcGIS, there was no meaningful relationship between the distance and the birds composition. However, there was a little correlation between the individual number of Parus minor and the area size of their living woodlots. Moreover, since spatial autocorrelation of the individual numbers of Passer montanus, Parus minor and Corvus macrorhynchos among small woodlots has been observed, the features of these birds clumping together may be suggested. Keywords : 鳥類 (birds), 都市 (urban), 樹林地 (woodslots), 距離 (distance),gis(geographic Information System) 1. 研究の背景と目的近年, 都市および都市近郊の樹林地は生物の生息空間として注目を浴びている. 一般的に生物の保全には生息地が大きく一塊となっているほど良い (R.B ブリマックほか,1997) と言われているが, 都市部の開発が進む中で大規模な樹林地の確保は難しい. 一方, 都市部の小規模な樹林地は残された大規模な樹林地間を繋ぐ飛び石コリドーとしての役割を持つとされ ( 鵜川 加藤 2007), 樹林地間の種の供給 移入において重要な役割を果たす可能性が示唆されている,( 一ノ瀬 加藤,2003). 開発の進む都市部および都市近郊において生物の種多様性をはかるためには, 有効な生物生息空間となりうる樹林地環境について明らかにする必要があるといえる. 都市域や都市近郊に位置する樹林地における鳥類の種多様性に影響を与える要因としては緑地の構造, 特に生息地の面積 ( 一ノ瀬 加藤, 2003,1994 ; 鵜川 加藤,2006) や植生構造 ( 一ノ瀬 加藤, 2003, ; 鵜川 加藤,2007 ; 加藤 1996) に関する研究や, 緑地周辺の土地利用 ( 一ノ瀬 加藤, 2003) に関する議論が多くの既往研究でされている. 東京の多摩ニュータウンの都市公園を対象とした研究 ( 香川,1987) で, 大面積からの距離と林緑性の植生の発達の程度, および林床の管理状況が鳥類群集の種組成に影響を及ぼす要因とした研究や, 大規模な樹林地は周辺に位置する孤立樹林地に種の供給をおこなう ( 一ノ瀬 加藤,1994) ことを明らかにしたものがある. また, 都市における街路樹に着目した研究 ( 一ノ瀬,2006 ; 岡崎ほか,2006) では 2ha 以上の緑地から 300-400mの範囲までは個体数が集中することが明らかにされている. 一方, これらの研究において都心を対象地としたものは少なく, 種の供給, 移入に関して言及されているものは少ない. また, 鳥類の種の供給, 移入に影響を与える要因であると考えられる大規模樹林地との距離について明確な距離 1

はあまり言及されていない. そこで, 本研究では都心部において, 大規模樹林地から小規模な樹林地までの距離が, 小規模樹林地の鳥類の種組成に与える影響を明らかにすることを目的とする. 2. 調査法および調査方法 2.1. 対象地本研究では, 国立科学博物館付属自然教育園 ( 以下, 自然教育園 ) を大規模樹林地と設定し, その周辺約 800m を対象地とする. 自然教育園は港区の南西部に位置し, 渋谷区, 目黒区, 品川区の境目に位置する面積約 20ha の樹林地を中心とした緑地である. 園内はコナラ ケヤキ ミズキなどの落葉樹, スダジイ カシ類 マツ類などの常緑樹に広く覆われているほか, ススキやヨシの草原, 池や小川などがある ( 国立科学博物館 http://www.ins.kahaku.go.jp/). 対象地の選定理由としては, 自然教育園の面積が生息場所の分断化の影響を受けないために必要な樹林地の最小面積 10-35ha の範囲にあることや園内において鳥類の種の供給をし得る程度の種数がみられる ( 千羽,1969) ことから決定した. 対象とする小規模樹林地は自然教育園周辺約 800m から高木の連続した樹冠に覆われた部分の面積が 0.2ha-2ha の小規模樹林地, 計 35 地点を対象とする. 面積の上限の設定は, 面積が 1-2ha を下回る樹林地では鳥類の種組成が貧弱になる ( 鵜川 加藤,2006) とされるため, それ以上の面積であると鳥類の種数に対する面積の影響が出てしまうことが考えられ, 面積による影響を軽減させるためこの範囲に選定した. また, 2ha 以下の樹林地においても大規模な樹林地 ( 平均 8.59ha) からの種の供給を受けている ( 一ノ瀬 加藤,1994) と報告されていることから,2ha 以下の小規模な樹林地を対象とする意味があると考えられる. 面積の下限の設定方法は, 都市域の小規模樹林地を対象とした一ノ瀬 加藤 (2003) の研究において一番小さい面積で 0.12ha 植被が連続している場所を調査対象としていることから調査可能規模を推定し, 半径 20mの調査ポイントが最低 1 つ取れる範囲を考慮し,0.2ha と決定した. 図 1 対象地樹林地 2.2. 鳥類調査鳥類調査は鳥類の越冬期にあたる 3 月から 7 月の天気の良好な日に 35 地点, 計 3 回ずつ調査を行った. 時間は鳥類の活動がもっとも活発になる日の出から朝 9 時の間に行った. 調査方法はポイントセンサス法を用い, 半径 20m の円内に出現した鳥類の種数, 個体数を目視と鳴き声により識別し, 記録した. ポイントの設定方法は樹林地内の同一植生部分に 1 つずつとし, 同一の樹林地であっても異なる植生が複数ある場合は, それに応じてポイントを取ることとした. 3. 調査結果 3.1. 個体数当調査において, 調査全地点で調査期間中を通して記録された出現個体数の総計は 1228 個体であった. 3.2. 種数今回の調査では, 計 21 種の鳥類が確認された. 出現が確認された種は, 以下の通りである. スズメ目(Passeriformesz) スズメ科(Passeridae): スズメ (Passer montanus) ホオジロ科(Emberiza): ホオジロ (Emberiza cioides) シジュウカラ科(Paridae): シジュウカラ (Parus minor): ヤマガラ (Parus varius) エナガ科(Aegithalidae): エナガ (Aegithalos caudatus) 2

カラス科(Corvidae): ハシブトガラス (Corvus macrorhynchos): ハシボソガラス (Corvus corone): オナガ (Cyanopica cyana): カケス (Garrulus glandarius) ヒヨドリ科(Pycnonotidae): ヒヨドリ (Hypsipetes amaurotis) メジロ科(Zosteropidae): メジロ (Zosterops japonicus) ムクドリ科(Sturnidae): ムクドリ (Sturnus cineraceus) ツバメ科(Hirundinidae): ツバメ (Hirundo rustica): イワツバメ (Delichon urbica) ウグイス科(Sylviidae): ウグイス (Cettia diphone) ツグミ科(Turdidae): ツグミ (Turdus naumanni): シロハラ (Turdus pallidus) モズ科(Laniidae) モズ (Lanius bucephalus) ハト目(Columbiformes) ハト科 (Columbidae): ドバト (Columba livia): キジバト (Streptopelia orientalis) キツツキ目(Piciformes) キツツキ科(Picidae): コゲラ (Dendrocopos kizuki) ポイント 面積 (m²) ポイントと重心距離 (m) 近接距離 (m) P1 2470.644369 605.6858273 221.6589081 P10 7937.997776 548.2337491 247.9972434 P11-1 111.4958643 488.8794472 281.4876898 P'11-1 4224.933752 555.4612172 152.5692453 P11-2 914.3133784 477.9269011 205.0239651 P'11-2 4224.933752 479.2350677 152.5692453 P11-3 2179.601892 485.5397683 204.6666979 P12 154.8766674 880.8850955 535.3295702 P14 9693.584855 850.5744195 347.9611982 P15 2163.611423 679.3640515 259.548369 P16 2163.611423 624.9033292 259.548369 P17 609.5431755 564.401236 218.6347178 P18 1743.720251 356.893838 40.91936203 P19 1342.439945 346.1539472 58.64029268 P20 1330.840278 946.0805004 587.2142431 P22 1593.583159 758.4490729 384.8441119 P23 3946.862212 647.093918 328.4688693 P24 576.8614 318.9887432 30.42075965 P25' 1708.649968 487.6354796 71.05828339 P25 1762.300575 374.4250151 197.5060884 P26 7937.997776 596.9600695 247.9972434 P27 15434.4888 1011.848556 650.8098793 P28 4622.906234 640.4903763 308.2558969 P29 5013.129846 920.7446614 524.2788813 P3-1 18870.50413 994.2060073 536.6226107 P32 3946.862212 582.7663983 328.4688693 P3-2 18870.50413 974.7579014 536.6226107 P33 153.5867209 726.5365239 482.1781616 P4 366.5419293 712.9557803 365.5890598 P5' 579.2239001 280.641819 0 P5-1 9693.584855 770.3176384 347.9611982 P5-2 9693.584855 791.1571984 347.9611982 P5-3 9693.584855 750.7064778 347.9611982 P6 2109.112115 728.5835137 373.5930517 P8' 844.1675469 705.28348 465.3635335 4. 分析 4.1. 樹林地面積と距離の算出 ArcGIS 上で樹林地の距離と面積をもとめた. 樹林地の面積においては国土交通省発行東京都南西部の緑被地区分データを用いて, 算出しようと試みたが, 緑被地区分データは 2.5m グリッドでつくられており, 実際には樹幹が連続していない部分においても同一のポリゴンで表わされている部分がいくつか見られた. また, 建物の影になっている樹林地は認識されていない部分が見られたため,GoogleEath の kml データを shp ファイルに変換し ArcGIS 上で各対象樹林地においてポリゴンを作成し, 面積を算出した. また, 大規模樹林地からの距離は 1. 各ポイントから大規模樹林地の重心までの距離と 2. 小規模樹林地の境界から大規模樹林地の境界までの近接距離の 2 種類を算出した. その結果をまとめたものが表 1である. 4.2 単回帰分析と重回帰分析鳥類の種数または個体数と, 樹林地間の距離または樹林地の面積との関係を明らかにするため, 種数 個体数それぞれについて距離 面積とで単回帰分析を行った. この際に使用した樹林地間距離は, 大規模樹林地と対象樹林地の近傍距離であり, 同一樹林地に 2 つ以上ポイントが存在する場合, 同じ値として扱うものとする. 面積についても同様に扱う. 図 2~ 図 5 はその結果である. 図 2 種数と面積の二変量の関係 表 1 樹林地面積と距離 3

+ 0.576799 ( 重相関係数 :0.376843068) 図 3 種数と距離の二変量の関係 4.3 空間的自己相関分析空間と種組成の関係を明らかにするため, 空間的自己相関分析を行った. 空間的自己相関分析とは, フィーチャの集合と関連付けられた属性に対して, 明示的なパターンがクラスタ化するか, 分散するか, 不規則かを評価する分析である. 近くに位置するもの同士の属性は似通っているのかどうか, まったく違うのか, ランダムなのかを評価することで, 鳥類種組成の空間的な要素を明らかにする. 分析は ArcGIS の空間的自己相関分析 (Spatial Autocorrelation(Morans I)) ツールを用いて行う. 分析の結果, 主にクラスタ化しているか, あるいはランダムかという 2つの傾向に分かれた. スズメ, シジュウカラ, ハシブトガラスについてはクラスタ化していたものの, ヒヨドリなどほかの種に関してはランダムという結果を示した. 以下分析の代表的な例を2つ示す. 図 4 個体数と面積の二変量の関係 図 6 スズメの空間的自己相関分析 図 5 個体数と距離の二変量の関係 また, 単回帰分析以外に, 種数 個体数について距離と面積のどちらがより影響しているのかを明らかにするため, それぞれ距離と面積とで重回帰分析を行った. この結果, 求まったのが以下 2つの重回帰式である. 種数と距離 面積標準化種数 = 0.979818036674868* 標準化面積 - 0.0129526660151597* 標準化距離 + 2.2337699265472E-07 ( 重相関係数 :0.151688599) 個体数と距離 面積標準化個体数 = - 0.10963* 標準化面積 + 0.130237* 標準化距離 5. 考察 図 7 ヒヨドリの空間的自己相関分析 表 2はポイントについて個体数の多い順に上から下へ, 出現個体数の多い順に左から右へ並べた表である. 色は 100m で区切られており, 下に行くほど距離が短い. それぞれ種別の個体数と距離または面積との関係の分析を試みたところ, 種数と距離の間に若干の相関がみられた. 4

また種別にみたところ, シジュウカラの個体数と面積の間で相関関係が見られた. しかしほかの種にはこれといった特徴などは見当たらなかった. 単回帰分析において, 種数 個体数と距離 面積それぞれの間に特別な相関関係は見られなかった. また, 重回帰分析においては種数と面積が関係しているように思える重回帰式は求まったものの, 式の正確性を示す重回帰係数が 0.151 と極端に低いことから, あまり正確な相関関係があるとは言えないように思われる. 単回帰分析 重回帰分析を通して, 種数 個体数と距離 面積について相関関係がみられなかったということは, 別の要因が鳥類の種数 個体数に強く関係するということが考えられる. また空間的自己相関分析では, スズメ, シジュウカラ, ハシブトガラスについてのみ相関関係がみられ, ほかの種についてはランダムという結果が出た. このような結果が出た仮説としては, スズメ, シジュウカラ, ハシブトガラスの 3 種に共通して群生で生息するという特徴に焦点を当て, 群生の鳥類に関して空間的自己相関がみられるのではないか, というものがあげられる. 6. 結論種数と距離には多少の相関はあったものの, これといって強い相関は見られず,100m 以下の区分では種組成と距離に相関はないように思われる. 個体数についてもシジュウカラ以外の鳥類では距離 面積と相関が見られなかった. したがって, 500m 圏内では大型樹林地と距離が近いほど種組成が豊かである, と先行研究で言われているが,100m 間隔に細分化すると, その優位さがみられない 表 2 調査データのまとめ 考えられる. 他方, 空間的自己相関分析から, 群れで生息している鳥類についてはクラスタ化されている傾向が明らかになった. この結果は, 都市計画における種の輸入, 供給に対し, 新たな知見として議論に一石を投じることができるように思われる. 7. 参考文献 1) 一ノ瀬友博 (2006): 大阪市中心部の街路樹と越冬期の鳥類の出現状況の関係ランドスケープ 69(5), 537-540,20060327 2) 一ノ瀬友博 加藤和弘 (1994): 埼玉県所沢市の孤立樹林地における鳥類群集の分布に影響を及ぼす諸要因について造園雑誌 57(5), 235-240 3) 一ノ瀬友博 加藤和弘 (1996): 埼玉県所沢市の孤立樹林地における越冬期の鳥類分布と植生構造との関係についてランドスケープ研究 59(5) 73-76 4) 一ノ瀬友博 加藤和弘 (2003): 都市域の小規模樹林地と都市公園における越冬期の鳥類の分布に影響する要因ランドスケープ研究 (5), 631-634 5) 鵜川健也 加藤和弘 (2006): 都市域の中 大規模樹林地における鳥類の種多様性と立地環境との関係ランドスケープ研究 69(5) 533-536 6) 鵜川健也 加藤和弘 (2007): 都市域の樹林地および樹林地を取り巻く空間の環境条件と鳥類群集との関係ランドスケープ研究 70(5), 487-490 7) 鵜川健也 加藤和弘 (2007): 都市の鳥類群集に影響する要因に関する研究の現状と課題ランドスケープ研究 面積 (ha) 距離 (m) スズメ シジュウカラハシブトガラスヒヨドリ メジロ ハシボソガラスムクドリ コゲラ ツバメ ホオジロ オナガ キジバト カケス イワツバメ個体数 種数 P27 1.543449 650.80988 13 5 3 5 3 1 4 34 7 P3-1 1.88705 536.62261 2 15 7 1 1 1 2 29 6 P3-2 1.88705 536.62261 11 10 7 2 1 2 2 1 36 7 P29 0.501313 524.27888 21 5 4 7 6 1 3 1 48 7 P6 0.210911 373.59305 13 5 6 3 3 1 6 1 1 39 8 P14 0.969358 347.9612 13 2 5 4 3 1 28 6 P5-1 0.969358 347.9612 8 12 5 4 8 2 2 2 43 8 P5-2 0.969358 347.9612 12 1 3 1 1 3 21 6 P5-3 0.969358 347.9612 12 9 2 6 4 2 2 37 6 P23 0.394686 328.46887 18 3 3 3 2 1 1 31 6 P32 0.394686 328.46887 25 5 1 1 2 1 35 6 P28 0.462291 308.2559 18 7 6 4 1 5 1 2 44 7 P15 0.216361 259.54837 6 3 7 5 1 1 1 24 7 P16 0.216361 259.54837 17 3 5 5 4 1 35 6 P1 0.247064 221.65891 14 5 4 7 3 33 5 P11-3 0.21796 204.6667 15 2 3 7 5 1 2 35 6 P'11-1 0.422493 152.56925 17 3 12 3 3 2 40 6 P'11-2 0.422493 152.56925 9 2 4 7 2 1 25 6 距離相関係数 (r) -0.13259 0.50802228-0.137627016-0.22953-0.01484 #DIV/0! -0.80637 0.073249 0.656595 0.934712-0.82113-0.5753 #DIV/0! #DIV/0! 0.18071 0.397221 面積相関係数 (r) -0.48255 0.75238043 0.02277784-0.32555-0.1642 #DIV/0! -0.83116 0.443289 0.92318 0.9944-0.6039 0.469505 #DIV/0! #DIV/0! -0.10731 0.131862 ことが明らかになった. そのため, 鳥類の種組成に強く関係しているのは土地利用, 植生, その他環境要因であると 71(3) 299 308 8) 岡崎樹里 秋山幸也 加藤和弘 (2006): 都市緑地におけ 5

る樹林地の構造と鳥類の利用についてランドスケープ研究 69(5) 519-522 9) 香川淳 (1987): 都市近郊造成地の鳥相多様性と公園緑地の関連について造園雑誌 50(5) 10) 加藤和弘 (1996): 都市緑地内の樹林地における越冬期の鳥類と植生の構造の関係ランドスケープ研究 59(5) 77-80 11) 国立科学博物館 HP:http://www.ins.kahaku.go.jp/ 12) 千羽晋示 (1969): 自然教育園の鳥類群集について自然教育園報告 1 1-13 13) 森本豪 加藤和弘 (2005): 緑道による都市公園の連結が越冬期の鳥類分布に与える影響ランドスケープ研究 68(5), 589-592 14) R B ブリマックら (1997) 保全生態学のすすめ文 総合出版 399p 最終レポート担当部分 (abstract,1, 2.1, 2.2, 3.1, 3.2, 4.1, 7) Arc GIS 作業 港区緑地データ収集 kml から shp ファイルへの変換 ポリゴン作成 近接距離算出 調査 鳥類調査 分析 単回帰分析 重回帰分析上田智翔 パワーポイント担当部分 (14-21/21) 最終レポート担当部分 (4.2, 4.3, 5,6) ArcGIS 作業 ポリゴン作成 重心距離算出 分析 単回帰分析 重回帰分析 空間的自己相関 8. 役割分担河野明日香 パワーポイント担当部分 (1-13/21) 6