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* CMMによるボールプレートの値付け校正 ** ** 和合健 米倉勇雄 座標測定機 ( 以下 CMM と略 ) の高精度測定を確立するために 計測分科会形状計測研究会の共同研究として 16 機関によるボールプレートの値付けを目的とする持ち回り測定行った CMM を使用した反転法によりボールプレートに値付けを行った結果 参照機関との差は平均値でX 軸が0.4μm Y 軸が 0.2μm となり 1μm 以下の値付けができる 測定の不確かさは測定長さ 332mm の場合で U(k=2)=1.03μm を算出した キーワード :CMM ボールプレート 校正 値付け 不確かさ Calibration to Indicate Reference Values for Ball Plate Using CMM WAGO Takeshi and YONEKURA Isao Round robin test was performed to purpose of calibration to indicate reference values for Ball Plate. Joint experiment was to participate among member of Form Measurement Working-group located under Measurement Division Party as 16 institutions in order to develop high precision measurement by CMM (Coordinate measuring machine). Calibration was performed reversed method using CMM as a result, ball plate values on mean were difference from between reference organization and IIRI (Iwate Industrial Recearch Institute) that as 0.4µm and as 0.2µm, therefore difference values were less than 1µm and able to suit calibration on IIRI. Measurement uncertainty was calculated U(k=2)=1.03µm in case of measurement length as 332mm. key words : CMM, Ball Plate, calibration, indication of reference values, uncertainty 1 緒言 CMM に関する測定の不確かさ算出方法が現在 ISO のワーキンググループで検討されており 特に ISO15530-3 及び-4 は校正されたアーティファクトを使用して CMM の測定の不確かさを求める方法である 世界的な標準器としてのアーティファクトは PTB( ドイツ物理工学研究所 ) が考案したボールプレートが認められている ボールプレートはアーティファクト ( 人工物 ) であり上位測定機器により値付け校正を行う必要がある ボールプレートの値付け校正では CMM の測定での不確かさを含めた値付け校正に関わる不確かさを求めることが必要になる 今回 CMM による高精度測定の実現のために 産業技術連携推進会議知的基盤部会計測分科会形状計測研究会の共同研究として表 1 に示す地方公設試及び民間企業等の 16 機関によるボールプレートの値付けを目的とする持ち回り測定を行った ボールプレートの値付けは CMM を使用した反転法により行い 値付けでの不確かさを算出して参照機関に対する測定技能の一致度を評価した 表 1 参加機関 国立研究所 9. 鳥取県産業技術センター 1. NMIJ/AIST 10. 広島県立東部工業技術センター 公設試及び財団法人 11. 山口県産業技術センター 2. 岩手県工業技術センター 12. ( 財 ) 機械振興協会 3. 福島県ハイテクプラザ 企業 4. 群馬県立群馬産業技術センター 13. ( 株 ) ミツトヨ 5. 埼玉県産業技術総合センター 14. ( 株 ) 東京精密 6. 東京都立産業技術研究所 15. 日本電産トーソク ( 株 ) 7. 静岡県浜松工業技術センター 16. ( 株 ) 浅沼技研 8. 石川県工業試験場 表 2 CMM の主な仕様 型式 UPMC550-CARAT メーカ Carl Zeiss モデルタイプ 門移動型 操作方式 CNC プローブ方式 平行バネ差動トランス 測定範囲 550 500 450mm 最大許容指示誤差 MPE E =0.8+L/600μm 2 実験装置及び測定技法 持ち回り測定には 図 1 に示すレッター社製のボール プレートを使用した * 地域新生コンソーシアム研究開発事業 ** 電子機械技術部

岩手県工業技術センター研究報告第 12 号 (2005) ドライバ 制御 PC れ球の中心座標値のみが抽出できる 図 1 ボールプレート 図 2 CMM の全景 ボールプレートの大きさは 420 420 24mmで 球径 22mmの鋼球が均等に 83mmピッチで 25 個配置されている ボールプレートの線膨張係数は 11.5 10-6 / である CMMのスケール補正ではボールステップゲージを使用した ボールステップゲージは NMIJ/AISTが考案した長さ標準器であり 球径 20mmのセラミック球が均等 83mmピッチで 7 個が一直線上に配置されている ボールステップゲージは NMIJ/AISTを参照機関として 参照機関から提示された値によりCMMのスケール誤差を補正するために使用する 当所では 表 2 及び図 2 に仕様と形状を示すZeiss 製 UPMC550-CARATを使用した 当 CMMは平成 6 年 3 月に導入した装置で Zeiss 製 3 軸フリープローブが装備され 制御 PCがDOSからUNIXに切り替わった最初のCMMである この実験の 3 ヶ月前に JCSS 認定事業者の ( 株 ) 東精エンジニアリングによりメンテナンス及び国家標準にトレーサブルなブロックゲージを使用した感度補正校正が行われている 実験で使用した CMM について この機種の現行機との大きな違いはマクロ機能が無く基本的には CNC 機ではあるが CNC ティーチングは作業者が行う Motorized manual 方式という点である そのため CNC プログラム作成において 45 方向プロービングを手動で行うためプロービング誤差が生じる恐れがある 3 実験方法ボールプレートの測定物座標系は図 3 に示すとおり ball1 ball5 ball21 で平面基準 ball1 ball5 で軸基準 ball1 で XYZ 軸のゼロ点とした 測定方法は ball1 から ball25 までの 25 個の球に対して球の赤道を均等 90 分割で 4 点 球の極を 1 点の測定点数が合計 5 点の球測定を行い 各球の球中心座標を求める 各球の測定順番は予め決められており 図 4のとおり最初に ball1 から ball5 の方向 次に ball5 から ball25 の方向 次に ball25 から ball21 の方向の順で反時計回り方向へ渦巻き状に測定し ボールプレートの中心に位置する ball13 まで測定する 続けて ball13 から測定軌跡を逆にたどり ball1 まで同様に 25 球を測定し 全体で 25 球 2 回の 50 個の測定値が得られる 渦巻き状に測定することで広範囲かつ時間を与えた測定が効率的に実施され 温度や幾何学的誤差など多くの誤差が測定に付与される ボールプレートの球の真球度や CMM の幾何学的誤差を除くために反転法を用いる 反転法を用いることでこれらの誤差が平均化さ 図 3 測定物座標系 Forward measurement Backward measurement 図 4 球の測定順序 Position D0 Position DY Position DZ Position DX 図 5 反転法による測定物座標系の変化 ボールプレートは反転法を用いるために図 5 に示す 4 形態の設置方法で測定する 通常位置となるポジション D0 ポジション D0 から Z 軸を中心軸に 180 回転したポ ジション DZ ポジション D0 から Y 軸を中心軸に 180 回 転したポジション DY ポジション D0 から X 軸を中心に 180 回転したポジション DX の 4 形態で測定を行いテー ブル状の設置位置を図 6 図 7 に示す

CMM によるボールプレートの値付け校正 表 3 テーブル上の温度変化 (unit: ) Max 21.5 Min 21.1 Range 0.4 Mean 21.3 図 6 測定状況 ( 正面 ) 図 7 測定状況 ( 側面 ) 5 実験結果及び考察 図 11 図 12 により行ったボールステップゲージによ るスケール補正値を表 4 に示す 図 8 使用したスタイラス図 9 クランプによる固定 使用するスタイラスや定義した測定方法を実現するためのプログラミングは作業者の判断に任せる 当機関で使用したスタイラス長さは図 8 に示す 85mm チップ径は φ8mm である ボールプレートの固定方法は図 9 のとおり補助プレートをクランプにより CMM テーブルに固定する ボールプレートは 3 個の治具球による三点支持で補助プレート上に自重で位置決めされ 十分に固定される ボールステップゲージによる CMM のスケール誤差の補正を行うタイミングは ボールプレート測定後にボールステップゲージを測定し 反転法により平均化したボールプレートの座標値に対して補正した 4 環境温度 CMM によるすべての測定では CMM に付属する温度補正機能を使用した 温度測定は横河電機製 DA100 を使用し CMM 周辺の 3 点を測定し その結果を表 3 に示す CMM が設置されている測定室の温度は JIS に基づき 20± 0.5 湿度制御は 50±10%RH の設定である 測定室の大きさは 7 12 高さ 4m で CMM は測定室の角に壁を背にして設置されている CMM の真上に空調の吹き出し口 CMM の背側の壁に吸い込み口がある 温度は全体的に 1 の幅で変動している CMM 上部と CMM 下部で変動幅が大きく CMM 上部では変動幅は 1.2 CMM 下部では変動幅は 0.7 となった 表 3 に示すテーブル付近では変動幅は 0.4 で安定しており 温度の平均値は 21.3 となり JIS で規定する 20 から 1.3 の偏りがある 20 からの 1.3 の偏りは CMM の温度補正機能で補正する CMM 上部と CMM 下部で温度変動が大きい原因は CMM の背側と壁の間が風の通り道となっており 直接送風の影響を受けるためと思われる 図 11 ボールステップ 図 12 ボールステップ ゲージによるスケール ゲージによるスケール 校正 (X 軸 ) 校正 (Y 軸 ) 表 4 ボールステップゲージによるスケール校正結果 Member Sphere of CMM of CMM No. X Y Z X Y Z 2 82.9989-0.0020-0.0050 82.9986-0.0019-0.0047 IIRI 3 165.9985-0.0012-0.0134 165.9979-0.0009-0.0133 4 248.9964-0.0008-0.0133 248.9958-0.0003-0.0132 5 331.9954 0.0000 0.0000 331.9946 0.0000 0.0000 2 82.9990-0.0041-0.0059 82.9990-0.0041-0.0059 AIST-std 3 165.9984-0.0052-0.0136 165.9984-0.0052-0.0136 4 248.9964-0.0011-0.0131 248.9964-0.0011-0.0131 5 331.9952 0.0000 0.0000 331.9952 0.0000 0.0000 2-0.0001 0.0021 0.0009-0.0004 0.0022 0.0012 Difference 3 0.0001 0.0040 0.0002-0.0005 0.0043 0.0003 4 0.0000 0.0003-0.0002-0.0006 0.0008-0.0001 5 0.0002 0.0000 0.0000-0.0006 0.0000 0.0000 当機関の CMM による反転法を用いたボールプレートの 25 個の球中心座標は表 5 のとおりである Z 座標値はスケール校正を行っていないため参考値と 見なす 他機関の値と比較したところ各軸の差は 1μm 以内であり良好な結果となり 当機関の CMM が 1μm 未満 の座標値を示すボールプレートの値付け校正に使用でき ることを確認した 図 13 に X 軸におけるボールステップゲージのスケール 補正値によるボールプレートの補正結果を示す X 軸の スケール補正量は最大で 0.2μm でありボールプレート の X 座標値に対して大きな補正は行われていない ボールプレートの ball2 ball7 ball12 で参照機関と の差が大きい この 3 球はスケールが 83mm の同じ位置で あり 何らかの繰り返し誤差が働いているものと考えら れるが正確な原因は不明である Y 軸のスケール補正値 によるボールプレートの Y 座標値の補正は 図 14 のとお り感度補正が良好に行われ参照機関との差が小さくなる 方向に補正が働いた

岩手県工業技術センター研究報告第 12 号 (2005) Ball plate coordinate after reverse method calculation and measured by 表 5 ボールプレートの値付け結果 Compensation values is Ball step gauge measured by IIRI-CMM Final result of Ball plate coordinate is compensated by Ball step gauge measured using IIRI-CMM IIRI-CMM No. X Y Z X of CMM Y of CMM Z of CMM X Y Z 0.0000 0.0000 0.0000 2 82.9978-0.0026 0.0042-0.0001 0.0000 0.0000 82.9979-0.0026 0.0042 3 165.9995-0.0019 0.0145 0.0001 0.0000 0.0000 165.9994-0.0019 0.0145 4 249.0021-0.0028 0.0110 0.0000 0.0000 0.0000 249.0021-0.0028 0.0110 5 332.0037 0.0001-0.0002 0.0002 0.0000 0.0000 332.0035 0.0001-0.0002 6 0.0078 82.9992-0.0087 0.0000-0.0004 0.0000 0.0078 82.9996-0.0087 7 83.0053 83.0021 0.0072-0.0001-0.0004 0.0000 83.0054 83.0025 0.0072 8 166.0037 83.0032 0.0181 0.0001-0.0004 0.0000 166.0036 83.0036 0.0181 9 249.0031 83.0006 0.0203 0.0000-0.0004 0.0000 249.0032 83.0010 0.0203 10 332.0035 83.0033 0.0266 0.0002-0.0004 0.0000 332.0033 83.0037 0.0266 11 0.0175 166.0031-0.0067 0.0000-0.0005 0.0000 0.0175 166.0036-0.0067 12 83.0118 165.9992-0.0031-0.0001-0.0005 0.0000 83.0119 165.9997-0.0031 13 166.0039 166.0030 0.0211 0.0001-0.0005 0.0000 166.0038 166.0035 0.0211 14 249.0076 165.9985 0.0225 0.0000-0.0005 0.0000 249.0077 165.9990 0.0225 15 332.0110 166.0020 0.0328 0.0002-0.0005 0.0000 332.0108 166.0025 0.0328 16 0.0216 248.9965 0.0152 0.0000-0.0006 0.0000 0.0216 248.9971 0.0152 17 83.0094 248.9918 0.0110-0.0001-0.0006 0.0000 83.0095 248.9924 0.0110 18 166.0133 249.0003 0.0163 0.0001-0.0006 0.0000 166.0132 249.0009 0.0163 19 249.0149 248.9935 0.0392 0.0000-0.0006 0.0000 249.0149 248.9941 0.0392 20 332.0107 248.9990 0.0425 0.0002-0.0006 0.0000 332.0106 248.9996 0.0425 21 0.0450 331.9703-0.0002 0.0000-0.0006 0.0000 0.0450 331.9709-0.0002 22 83.0109 331.9897 0.0285-0.0001-0.0006 0.0000 83.0110 331.9903 0.0285 23 166.0086 331.9846 0.0389 0.0001-0.0006 0.0000 166.0085 331.9852 0.0389 24 249.0129 331.9782 0.0222 0.0000-0.0006 0.0000 249.0129 331.9789 0.0222 25 332.0168 331.9849 0.0415 0.0002-0.0006 0.0000 332.0167 331.9855 0.0415 6 測定の不確かさの算出 6-1 長さに依存しない項プロービング誤差や CMM の幾何誤差が長さに依存しない誤差であり これらの誤差はすでに CMM 測定での不確かさに含まれると考えた ボールプレートの値付けを目的とすれば 各機関における不確かさの数値比較が重要であり ボールプレートの最大測定長さ 332mm での不確かさを算出することが必要と思われる ここでは CMM 測定での不確かさからプロービング誤差と CMM の幾何誤差は分離せずに長さに依存する誤差に含める 他の長さに依存しない項では ボールプレートの球形状を含めた安定性が特に重要な因子になると思われる 安定性評価では温度 湿度等の環境からの影響と経時変化があげられる 安定性評価は 継続的なボールプレートの座標測定と温度 湿度変化の環境影響を与えた実験を行い求める必要がある 6-2 長さに依存する項 6-2-1 各因子の標準不確かさの算出 要因 1 温度環境の標準不確かさ CMM の度補正機能を使用しているので 20 からの温度のかたよりは補正されている 温度変動の分布幅の ± 0.2 を限界とする矩形分布とする σ(θ)=δ θ / 3=0.2/ 3=0.1154 要因 2 ボールプレートとブロックゲージの線膨張係数の差による不確かさボールプレートの線膨張係数は 11.5 10-6 / でありブロックゲージの線膨張係数 11.5 10-6 / の差にブロ ックゲージの線膨張係数の不確かさ 1 10-6 / を加えた値を最大幅とする矩形分布を標準不確かさとする σ(δ αbp )=[11.5 10-6 -11.5 10-6 )/2 + 1 10-6 ]/ 3 =5.773 10-7 測定長さを L[mm] とすると σ(bp α ) =(L 10-3 ) σ(θ) σ(δ αbp ) =(L 10-3 ) 0.1154 5.773 10-7 =6.66 10-11 L [m] 要因 3 CMM 測定における標準不確かさ測定長さ毎に座標測定での標準偏差を求め標準不確かさとする 測定長さと標準不確かさの散布図から線形式を求める σ(ecmm)=f(l 球 1 の標準偏差 球 2 の標準偏差 球 25 の標準偏差 ) =4.38 10-10 L+3.79 10-7 [m] 6-2-2 合成標準不確かさの算出合成標準不確かさσ c (L) を求める ( 各項の 2 乗和 )= (6.66 10-11 L) 2 +(4.38 10-10 L) 2 +(3.79 10-7 ) 2 [m] σ c (L)= 4.43 10-4 L + 0.37 [μm] 拡張不確かさはゲージの最大長さ 332mm を測定長さ L とすると U(k=2)=1.03μm と算出された

CMM によるボールプレートの値付け校正 標準値からの差 (μm) 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 0 5 10 15 20 25 30-0.5-1.0 +0.8+L/600 AIST-std MPE E-upper スケール補正前 MPE E-lower スケール補正後 -1.5-0.8+L/600-2.0 ボール番号図 13 スケール校正後のボールプレート校正値の変化 (X 軸 ) 標準値からの差 (μm) 2.0 1.5 +0.8+L/600 1.0 0.5 0.0 0 5 10 15 20 25 30-0.5-1.0-1.5-2.0 AIST-std MPE E-upper スケール補正前 MPE E-lower スケール補正後 -0.8+L/600 ボール番号 図 14 スケール校正後のボールプレート校正値の変化 (Y 軸 ) 7 En 数の算出参照機関との測定技能水準の一致度を評価するために ISO/IEC GUIDE 43-1 で規定する En 数を式 (1) から求める En = x-x U 2 lab +U 2 ref (1) 8 結言当機関の CMM によりボールプレートの値付け校正を行い以下の点が明らかとなった (1) ボールステップゲージによりスケール誤差を求めた結果 スケール誤差の最大値は X 軸で 0.2μm Y 軸で-0.6μm となり当機関の CMM は良好な測定状態である (2) ボールプレートの値付けをした結果 参照機関との差は平均値で X 軸が 0.4μm Y 軸が 0.2μm となり 当機関の CMM が 1μm 以下の座標値が要求されるボールプレートの値付けに使用できることを確認した (3) ボールプレートの値付けに関する測定の不確かさは測定長さ 332mm の場合で U(k=2)=1.03μm を算出した (4) 参照機関との測定技能水準の一致度を En 数により評価した結果 すべての球番号で En 数が 1 以下となり参照機関と測定技能が一致した この実験を行ったことにより 岩手県工業技術センターはボールプレートの値付けが行える技能水準を有することが確認出来た 今後は この実験で得られたサブミクロン台の測定誤差の抽出技術を依頼試験や研究開発において活用し 信頼性の高い測定実施に役立てる 文献 1) BIPM IEC IFCC ISO IUPAC IUPAP OIML Guide to the expression of uncertainty in measurement ISO(1993) 2) JIS Z 7440-2:2003 製品の幾何特性仕様 (GPS)- 座標測定機 (CMM) の受入検査及び定期検査 - 第 2 部 : 寸法測定 日本規格協会 3) ISO 15530-3: 座標測定機の不確かさ算出 ( 比較測定による方法 ) 4) ISO 15530-4: 座標測定機の不確かさ算出 ( 計算機シミュレーションによる方法 ) X U ref は参照機関が提示する値 と不確かさ x U lab は各機関が示す値と不確かさである 判定基準は En 1 を一致 En >1 を不一致とした その結果 すべての球番号で En 数が 1 以下であり参照機関と測定技能が一致した