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今後の気象の見通し ( 別紙 1) 渡島地方を中心に これから 2 月 5 日にかけて大雪による車両の立往生などの交通障害の発生するおそれがあります 湿った重い雪により除雪作業が困難になるおそれもあります 大雪による交通障害に警戒し なだれにも注意が必要です 外出される際は 事前に気象情報や道路情報

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津地方気象台 対象地域 : 三重県 平成 30 年台風第 24 号に関する三重県気象速報 目 次 1 概要 2 気象の状況 3 観測記録 4 特別警報 警報 注意報 府県気象情報等の発表状況 5 土砂災害警戒情報の発表状況 6 指定河川洪水予報の発表状況 7 被害状況 8 防災関係機関への説明会等

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73,800 円 / m2 幹線道路背後の住宅地域 については 77,600 円 / m2 という結論を得たものであり 幹線道路背後の住宅地域 の土地価格が 幹線道路沿線の商業地域 の土地価格よりも高いという内容であった 既述のとおり 土地価格の算定は 近傍類似の一般の取引事例をもとに算定しているこ

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1 吾妻町 平成18年3月27日に東村と合併し東吾妻町になりました 2 六合村 平成22年3月28日に中之条町に編入しました 5.2-2

されており 日本国内の低気圧に伴う降雪を扱った本研究でも整合的な結果が 得られました 3 月 27 日の大雪においても閉塞段階の南岸低気圧とその西側で発達した低気圧が関東の南東海上を通過しており これら二つの低気圧に伴う雲が一体化し 閉塞段階の低気圧の特徴を持つ雲システムが那須に大雪をもたらしていま

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2 気象 地震 10 概 況 平 均 気 温 降 水 量 横浜地方気象台主要気象状況 横浜地方気象台月別降水量 日照時間変化図 平均気温 降水量分布図 平成 21 年 (2009 年 ) の月別累年順位更新表 ( 横浜 ) 23

スライド 1

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Transcription:

平成 28 年度 支笏湖特有の気象特性に対する 維持管理の検討 札幌開発建設部千歳道路事務所 新保貴広 札幌開発建設部千歳道路事務所 吉田昭幸 札幌開発建設部千歳道路事務所 樋口侯太郎 一般国道 453 号を管理する千歳道路事務所では 支笏湖の越波発生により 度々通行規制を実施している 淡水湖における越波の発生事例は国内でも珍しいうえに 国立公園内に位置するため対策工の実施にも制約が課せられている 本稿は 支笏湖における越波の観測結果や気象条件から 越波発生の要因を分析することにより 事前の通行規制等 国道の維持管理体制について考察するものである キーワード : 自然災害 防災 気象情報 越波 維持管理体制 1. はじめに 支笏湖畔を通る一般国道 453 号 ( 以下 : 国道 453 号 ) では 支笏湖の越波発生により度々通行に支障をきたし 通行規制を実施している ( 写真 -1) これまで越波に関する通行規制の基準値等がないため 年間維持工事による道路パトロールまたは CCTV カメラの情報により 越波が路面を覆うような状況で通行に支障をきたすような場合には 直ちに通行規制を実施してきた 図 -1 に示すとおり 国道 453 号は支笏湖北東側湖畔に面しており 道路の標高は約 251m で湖面から約 3m 程度の高さにある 支笏湖の標高は約 248m 最大水深が約 350m で 北東から南西方向で距離が最も長く約 12km 北西から南東方向で約 5km である 周辺の地形は北西側に恵庭岳 南東側に風不死岳 北東側に紋別岳と 1,000 m 級の山々がある このように支笏湖周辺の地形は複雑であり湖面上からの風と水位により国道 453 号に影響を及ぼす波浪となる 本稿では 支笏湖における越波発生の観測結果や気象条件から 越波発生の要因を分析し 事前の通行規制準備などの維持管理体制についての考察を行った 写真 -1 国道 453 号に打ち寄せる越波 恵庭岳 テレメーター 支笏湖 越波発生区間 12 km 5 km支笏湖 紋別岳 KP=46.70 アメタ ス 支笏湖畔 風不死岳 図 -1 支笏湖における越波発生区間

2. 越波による通行規制および発生時の状況 国道 453 号支笏湖畔では 越波の発生に伴い車両走行中の 視界の遮断 ( 写真 -2) 波飛沫による 路面の凍結 ( 写真 -3) 湖床礫の散乱 ( 写真 -4) 車両等への影響 ( 写真 -5) 等 通行車両へ支障をきたすケースが確認されている 直近 5 年間においても計 8 回の通行規制を実施している ( 表 -1) 表 -1 越波発生による通行規制履歴 越波発生による規制規制方法 11 月 29 日 10:30 ~ 11 月 29 日 16:00 R 側 ( 湖側 ) 車線規制平成 24 年 12 月 6 日 15:30 ~ 12 月 7 日 9:00 全面通行止め 写真 -2 越波による影響 ( 視界の遮断 ) 平成 25 年 11 月 26 日 11:30 ~ 11 月 27 日 7:00 R 側 ( 湖側 ) 車線規制 11 月 4 日 13:00 ~ 11 月 4 日 19:10 R 側 ( 湖側 ) 車線規制 平成 26 年 11 月 13 日 15:00 ~ 11 月 14 日 3:00 R 側 ( 湖側 ) 車線規制 11 月 14 日 9:30 ~ 11 月 14 日 12:50 R 側 ( 湖側 ) 車線規制 平成 27 年 12 月 3 日 14:00 ~ 12 月 3 日 18:00 R 側 ( 湖側 ) 車線規制 平成 28 年 10 月 4 日 12:00 ~ 10 月 4 日 17:00 全面通行止め 以下に 越波発生時の気象状況や支笏湖水位の状況 発生箇所について整理する 写真 -3 越波による影響 ( 路面の凍結 ) (1) 越波発生時の気象状況過去の越波発生時の気象状況は いずれのケースも日本海側を発達しながら北上する低気圧が存在し 西寄りの強風が吹きやすい気圧配置であった 道路気象テレメータ 支笏湖 の風向は 南 ~ 南東寄りの風から 越波発生時には徐々に西寄りの風に変わり 支笏湖の湖面側から国道 453 号に吹き付ける風となったものの 風速は概ね 5m/s 以下で 強風は観測されていない状況であった 支笏湖畔における局所的な気象特性を把握するため 平成 26 年 9 月より国道 453 号 KP=46.70km に簡易気象観測装置 ( 風向 風速計 雨量計 ) を暫定的に設置し観測を行っている 図 -2 に越波発生時の気象状況として 平成 26 年 11 月 4 日のデータを例として挙げる 観測の結果 越波の発生時には 風速 10m/s 以上の西寄りの強風が長時間観測されていることが確認された 写真 -4 越波による影響 ( 湖床礫の散乱 ) 写真 -5 越波による影響 ( 車両等の影響 )

(2) 越波発生時の支笏湖の水位状況図 -3 に過去 5 年間 ( 平成 24 年 ~ 平成 28 年 ) の支笏湖の水位を示す 支笏湖は降雨に伴いオコタンペ川と美笛川などの周辺河川からの流入量と千歳川への流出量の収支によって水位変動しているほか 年間での季節変動の傾向があり 冬から春にかけて低下し 融雪が始まる 5 月頃から上昇し 台風や 秋雨等によって夏から秋冬にかけて再度上昇する傾向がみられる 年間の変動差は概ね 1m 程度である 越波発生時の支笏湖の水位は 249m 前後 (248.45~ 249.3m) となっており 支笏湖の水位は季節変動はあるものの通常時よりもやや高い時期であった 支笏湖テレメータ 支笏湖畔アメダス KP=46.70km 札幌管区気象台 苫小牧測候所 日時 平成 26 年 11 月 4 日 降水量 気温 風 (m/s) 降水量 気温 風 (m/s) 降水量 風 (m/s) 気圧 (mm) ( ) (mm) ( ) (mm) (hpa) 風速風向風速風向風速風向西7 1.0 0.8 1.5 西 0.5 0.1 2.0 西南西 0.5 9.0 西寄1003.2 1006.7 8 0.0 1.7 2.1 西 0.0 1.3 4.0 西 1.0 11.1 西り1004.1 1007.6 9 0.0 3.0 3.5 西南西 0.5 2.7 4.8 西 0.0 12.3 西の1005.0 1009.0 強10 0.0 4.2 3.8 西南西 0.0 4.2 6.2 西 0.0 17.2 西 1006.1 1009.8 風11 0.0 4.6 3.5 西南西 0.0 4.8 7.3 西 0.0 18.8 西が1006.2 1009.8 12 0.0 6.1 4.1 西 0.0 5.6 7.2 西 0.0 18.1 西長1006.4 1010.1 13 0.0 6.4 5.9 西 0.0 6.3 6.6 西北西 0.0 18.1 西時1006.9 1010.3 間14 0.0 6.5 5.8 西 0.0 6.5 7.7 西北西 0.0 20.1 西 1007.5 1011.2 続15 0.0 6.2 6.1 西南西 0.0 6.1 7.4 西 0.0 14.8 西く1008.4 1012.4 16 0.0 6.1 6.4 西南西 0.0 6.0 5.2 西北西 0.0 12.7 西北西 1009.3 1013.4 17 0.0 6.2 4.0 西南西 0.0 6.1 4.2 西 0.0 6.6 西北西 1010.3 1014.3 18 0.0 6.5 1.5 南東 0.0 6.5 3.7 西 0.0 9.1 西 1011.2 1014.9 19 0.0 6.2 1.8 東南東 0.0 6.3 1.4 南西 0.0 6.0 西 1012.4 1015.7 20 0.0 6.9 0.7 北東 0.0 6.7 0.8 南南西 0.0 2.7 南西 1013.0 1016.5 21 0.0 6.6 1.2 東北東 0.0 6.4 0.6 南東 0.0 0.8 南西 1014.1 1017.6 図 -2 越波発生時の気象状況 ( 平成 26 年 11 月 4 日 ) 1), 2) 通行規制実施 水位 (m) 249.6 249.4 249.2 249 248.8 248.6 248.4 248.2 平成 24 年平成 25 年平成 26 年平成 27 年平成 28 年 : 越波発生時 ( 通行規制実施 ) の湖面水位 249.19 248.93 249.24 249.31 248.96 248.91 248.88 248.45 248 1/1 1/11 1/21 1/31 2/10 2/20 3/1 3/11 3/21 3/31 4/10 4/20 4/30 5/10 5/20 5/30 6/9 6/19 6/29 7/9 7/19 7/29 8/8 8/18 8/28 9/7 9/17 9/27 10/7 10/17 10/27 11/6 11/16 11/26 12/6 12/16 12/26 図 -3 過去 5 年間の支笏湖の湖面水位 ( 平成 24 年 ~ 平成 28 年 ) 3) (3) 越波の発生が顕著な箇所越波発生区間のうち越波の発生が顕著な箇所は下記の 5 箇所であることが調査結果から得られた KP=43.6~43.7km ( 写真 -6) KP=44.5~44.6km ( 写真 -7) KP=45.4~45.5km ( 写真 -8) KP=46.0~46.1km ( 写真 -9) KP=46.4~46.5km ( 写真 -10) 図 -4 に越波の発生が顕著な箇所を示す 越波の発生箇所は概ね現況の岸壁消波ブロック高さが路面より低い箇所で発生する傾向がある ただし覆道箇所 (KP=43.6~43.7km) では 例外的に消波ブロックが路面より高くても越波が確認されているが これは覆道部は沢地形であり それに伴い湖底が深く大きな波長のまま消波ブロックに衝突するためと考えられる

越波の発生が顕著な箇所 KP=46.70 図 -4 越波の発生が顕著な箇所 写真 -6 KP43.7 付近岸壁に打ち付ける波が強く越波を確認できる 写真 -9 KP46.0 付近岸壁に打ち付ける波が強く越波を確認できるが頻度はやや低い 写真 -7 KP44.5 付近頻度はやや低いが越波を確認できる 写真 -10 KP46.4 付近岸壁に打ち付ける波が強く越波を確認できる 写真 -8 KP45.4 付近岸壁に打ち付ける波が強く規模の大きな越波を確認できる 飛沫が走行車線に到達するケースもある

3. 越波の発生予測 気象条件や水位の状況分析で述べたように 当該区間は支笏湖特有の気象条件が揃うと水位上昇および波浪が発達しやすい条件となる 季節変動による水位の上昇が起こり 卓越した風向 風速が伴った場合に通行止めに至るような越波が発生するものと考える これらより越波の発生しやすい条件は以下のとおりである テレメーター 支笏湖 湖畔に向かって西寄りの強風が吹き続けると水位上昇および波浪が発達しやすい 西寄りの風により湖水が吹き寄せられたことによる水位上昇 豪雨や長雨による湖面水位の上昇 このような気象条件になりそうかどうか情報を収集 確認しながら対応を行う必要がある また 日本気象協会と提携した気象情報提供サービス (MICOS) による支笏湖の 波浪越波予測 も事前の維持管理体制構築の判断材料として有用である ( 図 -6) これら支笏湖の水位 気象データおよび 波浪越波予測 等をもとに 越波発生時の初動体制構築時期の目安とする 支笏湖 KP=46.70 アメタ ス 支笏湖畔 図 -5 越波発生時の風向と道路の位置関係 (1) 西寄りの強風に伴う波浪の発達図 -5 に示すとおり 越波発生区間は西寄りの風では 湖面延長 ( 吹送距離 ) が長くなるため 強い風が継続した場合 波浪が発達しやすい状況となる 支笏湖テレメータおよび支笏湖畔アメダスでは吹送距離が長い西寄りの強風の傾向が掴みにくいが KP=46.70 に設置した簡易気象観測装置では 西寄りで 10m/s 前後の強風が長時間続くことが確認されている 特に冬型の気圧配置のような日本海側に低気圧が発達した場合 その傾向は強まる 図 -6 MICOS による波浪情報の入手 4) ここで いつ どのような情報 が有用であるかを ( 表 -2) にまとめた 事前の準備として 週間予想天気図 を確認し 気圧配置への該当の有無を確認する 前日には 体制構築の判断をするため 気象庁の気象情報や気象情報提供サービスの 道路災害事前予測情報 や 波浪越波予測 から 予想される災害 波浪や風速などの把握を行う また 波浪や風向 風速の実況は 支笏湖テレメータ ( 図 -7) 支笏湖畔アメダス や CCTV ( 写真 -11) により把握を行う (2) 湖面の水位台風や秋雨の影響により夏から秋 冬にかけ水位が上昇する傾向にあり ここに西寄りの強風により湖水が吹き寄せられたことが誘因となり 湖面の水位が更に上昇し 標高 249m 前後と高い状態となった場合に越波が発生している 4. 維持管理体制 ( 初動体制 ) の構築 (1) 維持管理体制を整える際に必要な気象情報越波発生時の通行への影響を極力抑え 迅速に通行規制を実施するためには 計画的な気象情報の収集が重要であり 前述のとおり越波発生時には以下の特徴がある 表 -2 維持管理体制の構築に有用な情報と取得時期 時期確認事項情報入手先 1 週間前気圧配置 週間天気予報予想天気図 3 日前予測風向 予測風速波浪越波予測 気象庁 気象情報提供サーヒ ス (MICOS) ~ 波浪予想 ( 風向 風速 ) 波浪予測 GPV 気象予測 1 日前支笏湖の水位リアルタイム水位 当日 実況 風向 風速 越波状況 気象テレメータ アメダスデータ CCTV 画像 道路ハ トロール 国土交通省 水文水質データベース 北海道開発道路テレメーターシステム 気象庁 北海道地区道路情報サイト 職員巡回 年間維持工事

支笏湖畔では 湖面上を風速 10m/s を越えるような西寄りの強風が長時間続き かつ湖面の水位が 249m 前後と通常より高い条件が揃った場合に 通行車両に支障がでるような越波が発生する傾向が確認できた また 今後ともこの特性を踏まえた維持管理を行うことは重要であり そのために必要な体制を確保するために引き続き 気象情報等を収集 確認することが求められる 一方で 消波ブロックや 波返し といった越波に対するハード対策の検討も行っているが 当面のハード対策完了までの期間は 湖面水位と風向 風速予報を参考に通行規制などのソフト対策を実施していく方針である 図 -7 支笏湖テレメータ による風向風速情報の入手 謝辞 本論文の作成にあたり 支笏湖畔の気象特性について分析して頂いた株式会社ドーコン防災保全部の山本茂夫氏 日頃より支笏湖畔の異常気象時における現場対応を行って頂いている北海道ロードメンテナンス株式会社深尾徳司氏 関係者の皆さまに謝意を表します 参考文献 写真 -11 CCTV による越波状況の確認 (2) 維持管理体制構築に向けての課題前述のとおり維持管理体制構築には気象データの収集が重要であり 風速データについては KP=46.7 に設置した簡易気象観測装置が精度の高い観測結果を得られることを確認できたが あくまで暫定的な観測装置であり リアルタイムの確認ができないことと 永続的に使用できないことから 既存のテレメータやアメダス 気象協会波浪越波予測における風速予測値との相関性について更なる検証をする必要がある また 支笏湖畔は大雨による土砂災害や強風による倒木 冬期には雪崩といった異常気象時に災害が発生する恐れのある地域として 度々通行規制を実施している区間である 現時点では越波での通行規制基準を設けていないため 維持管理体制構築のためには 今後規制実施に向けた基準値の設定 ( 湖畔の風向 風速と湖面の水位 ) の検討も必要となる 1) 国土交通省北海道地区道路情報ホームページ 2) 気象庁ホームページ 3) 国土交通省 水文水質データベース 4) 気象情報提供サービス ( 日本気象協会 ) 5. まとめ 本稿は 国道 453 号支笏湖畔で発生する越波の特性を整理し 維持管理体制を整える際に いつ どのような 情報が得られると有用かを考察したものである