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Pyruvate Dehydrogenase 複合体 Pyruvate Dehydrogenase Dihydro lipoamido acetyl transferase Dihydro lipoamido dehydrogenase 1,Citrate synthase( クエン酸合成酵素 ) この酵素は Acetyl-CoA が Oxalo Acetate と反応して TCA サイクルに入る反応を触媒する. 反応は Acetyl-CoA のメチル基がカルボアニオンと Oxalo acetate のアルドール縮合である. 2, アコニット酸ヒドラターゼ この酵素は,Citrate,cis- アコニット酸,Isocitrate の間の可逆平衡を触媒する.cis - アコニット酸が中間体である. 3,NAD 依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼイソクエン酸デヒドロゲナーゼは, イソクエン酸の酸化的脱炭酸で 2-オキソグルタル酸を生成し,CO2 と NADH を生成する. 哺乳類には 2 種のイソクエン酸デヒドロゲナーゼがあり,1 つはクエン酸サイクルに関与する酵素でミトコンドリアだけに存在し NAD を補酵素とする. もう 1 つは, ミトコンドリアと細胞質ソルに存在し,NADH を補酵素とする.

4,2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体この酵素は 2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼの酸化的脱炭酸を触媒し,CO2 と NADH が生成する. 反応はピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の反応と似ており, 生成物もスクシニル基と CoA の高エネルギーチオエステル化合物である. 2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ ジヒドロリポアミドスクシニルトランスフェラーゼ ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ 5, スクシニル -CoA シンテターゼ この酵素は, 高エネルギー化合物スクシニル -CoA の加水分解とヌクレオチド三リン 酸の合成を共役させる酵素である. 6, コハク酸デヒドロゲナーゼ この酵素はコハク酸を立体特異的に脱水素してフマル酸を生じる. また, この酵素は ミトコンドリアの内膜に存在しており,FAD は電子伝達系へ入っていく.

7, フマル酸ヒドラターゼ この酵素は, フマル酸の二重結合を水和して (L)- リンゴ酸を生成する. 8, リンゴ酸デヒドロゲナーゼ この酵素はクエン酸サイクルの最終酵素で,(L)- リンゴ酸の OH は NAD で酸化され てケトンになる. TCA cycle 概略図

葉緑体葉緑体は包膜に包まれており 二重の生体膜 ( 内包膜と外包膜 ) からなる また 包膜上には 様々なイオンのトランスポーターが存在する 葉緑体内部にはチラコイド膜と呼ばれる膜構造があり チラコイド膜は袋状に閉じていて 内部と外部はそれぞれ隔離されている チラコイド膜の外側をストロマ 内側をルーメンと呼ぶ ストロマにはカルビンサイクルがある チラコイド膜には4つの大きなタンパク質複合体が存在する ( 光化学系 I II チトクロム b/f ATPase) これらの複合体の膜状の分布は均一ではなく 光化学系 II のほとんど (LHCII の多い部分 ) は グラナ中のチラコイド膜とチラコイド膜が接している部分に分布する 光化学系 II の一部 (LHCII が少ない部分 ) 光化学系 I ATPase はストロマと接している側にのみ分布する チトクロム b/f 複合体のみはどちらの領域にも分布する 内包膜と外包膜葉緑体の生体膜には内包膜と外包膜があり 組成を考えると内包膜はほとんどが糖脂質 外包膜は糖脂質 リン脂質がそれぞれ半分ずつを占めている つまり 内包膜はチラコイド膜と同じ組成をし 外包膜は細胞膜とチラコイド膜との中間の組成をしている ラン藻が真核生物と共生する過程においてラン藻外膜と宿主由来の膜とが融合した膜が外包膜であり ラン藻由来の細胞膜が内包膜である また 進化の過程において ラン藻ペプチドグリカン層は消滅した 糖脂質とリン脂質糖脂質はスフィンゴ糖脂質 グリセロ糖脂質 リン脂質はスフィンゴリン脂質 グリセロリン脂質に分類される 糖脂質は SQDG を除き電荷を持たず葉緑体膜に存在する 対して リン脂質は電荷を持った脂質であり 葉緑体膜を除く全ての膜に存在する 光合成 光合成とは光のエネルギーを使って CO₂ を固定する反応のことである つまり 電

子伝達反応を介した光エネルギーの化学エネルギーへの変換反応である 光合成は 光の有無によって明反応 暗反応に区分され 反応の行われる場所によって チラコイド反応 ( 電子伝達系 ATP 合成系 ) ストロマ反応(CO₂ 固定 ) に区分される チラコイド反応チラコイド反応の役割は 化学エネルギーと還元力の生産である チラコイド反応は大きく電子伝達系と ATP 合成系に分けることができ チラコイド膜上には 4つの大きなタンパク質複合体がある それは 光化学系 I 複合体 光化学系 II 複合体 チトクロム b/f 複合体 H + -ATP 合成酵素複合体である このうち光化学系 I 光化学系 II チトクロム b/f 複合体が電子伝達系の主要経路となる 電子伝達系の二つの光化学系にはクロロフィルという色素が結合してる この色素が光を吸収し 励起される この励起エネルギーは それぞれの光化学系の反応中心に送られ 光化学系の反応中心は励起エネルギーを受け取ると励起され 電子を放出する ( 光化学反応 ) この放出された電子が電子伝達系内で伝達される 光化学系 II の反応中心から電子が放出されると 電子を失った反応中心に電子が供給される この電子は水を分解することによって得られる 水 2 分子 (2H₂O) を分解すると 二つの電子 (e-) 四つのプロトン (H+) 一つの酸素分子(O₂) が発生し 光合成で発生する酸素はこれに由来する 光化学系 II の反応中心から放出された電子は 光化学系 II 内部で伝達されたのち プラストキノンという小分子に伝達され プラストキノンは電子を受け取ると同時にストロマ側にあるプロトンと結合し チトクロム b/f 複合体へと移動します そしてチトクロム b₆/f 複合体に電子を渡すと同時にルーメン内にプロトンを放出する 電子はチトクロム b₆/f 複合体からプラストシアニンを経て光化学系 I へ伝達される 光化学系 I では光化学系 II 同様に光化学反応が起こり 電子は光化学系 I からフェレドキシンという小さなタンパク質に伝達される この電子は最終的に NAPD+( ニコチンアミドジヌクレオチドリン酸 ) に渡され NADPH が生産される この NADPH が還元力 ( 電子供与体 ) としてカルビンサイクルで利用される ATP 合成系では 電子伝達系で発生したストロマ ルーメン間のプロトン濃度勾配 ( プ

ラストキノンによるプロトンのストロマからルーメンへ運搬 光化学系 Ⅱ における水 分解におけるプロトンの発生 ) に従って プロトンがルーメン側からストロマ側へとプ ロトンが駆動されるときのエネルギーを利用することで ATP が合成される 光化学系 ⅠとⅡ 光化学系 ⅠとⅡは 光エネルギーを化学エネルギーに変換する場であり このエネルギーの変換反応を駆動する光の波長が異なる 光化学系 Ⅰは長波長の光によって駆動され 光化学系 Ⅱは短波長の光によって駆動される この 2 つの系は直列な関係にあり 長波長の光と短波長の光を重ねることによって量子収量 ( 光合成効率 ) が大きく上昇する (Emerson 効果 ) また 量子収量の最大値は 0.125 である (8 量子で炭酸固定が 1 回行われる ) 光化学系 Ⅱ 反応中心の複合体内電子伝達経路光の吸収によりクロロフィル二量体 (P680) から D1 タンパク質に結合しているフィオフェチン単量体 (Phe) に電子が移る初期電荷分離が起こる Phe から D2 タンパク質 に結合しているプラストキノン Q を経由して D1 タンパク質に結合しているプラスト A キノンQ に電子が移動する 酸化された P680(P680+) は D1 タンパク質中の Tyr 残基 B から電子を受け取り元に戻る Tyr+ は D1 に結合している Mn クラスターから電子を奪う 光化学系 Ⅰ 反応中心の複合体内電子伝達経路光の吸収によりクロロフィル二量体 (P700) からクロロフィル単量体 A₀に電子が移る初期電荷分離が起こる A₀から フィロキノンを経て Fe-S クラスター (2 回回転軸上 ) に電子が移動する その後 膜外にある PSⅠ-C タンパク質へ電子が移動する また 電子は対称などちらの経路も通る可能性がある また 還元された PSⅠ-C はフェレドキシン (Fd) のフェレドキシン-NADP+ 酸化還元酵素 (FNR) を介して NADP+ を NADPH に還元する 集光性クロロフィルタンパク質複合体光を集める集光アンテナの役割を果たすアンテナクロロフィルの集合体である 反応中心クロロフィルよりも励起状態エネルギーが高く 励起エネルギー移動で色素分子間を移動してきた光エネルギーは反応中心クロロフィルにトラップされるので 効率よく光エネルギーを反応中心に集めることができる アンテナクロロフィル 300 個あたり 1 個の割合で反応中心クロロフィルがある 光化学系 Ⅰ と Ⅱ の似ている点 異なる点

似ている点 反応中心が 2 回回転軸を持つ 初期電子供与体がクロロフィル二量体 初期電子受容体がクロロフィル単量体 二次電子受容体がキノン 集光性タンパク質を持つ 異なる点 Chl a/b の比率が光化学系 Ⅰで 5.2 光化学系 Ⅱで 2.1 全体では 3.1 になる 初期電子供与体 初期電子受容体 キノン受容体の電荷移動について光化学系 Ⅰ 反応中心からの電子は左右のどちらを通る可能性があるが光化学系 Ⅱ 反応中心からの電子は決まった方しか通らない 反応中心の補欠分子族は光化学系 Ⅰでは 4Fe-4S クラスター 光化学系 Ⅱでは Fe 原子 光化学系 Ⅰの方が電子の移動速度が大きい チトクロム b₆/f 複合体の機能 2 電子伝達から 1 電子伝達への変換を行う ( 複合体間電子伝達 ) PQH₂の酸化に伴いプロトンをルーメン側に放出する チトクロムb6 / f + PQH 2 + 2PCox PQ + 2H 2 PC red Z-scheme 光合成電子伝達系 P.Mitchel の化学浸透圧説 + 膜の内外に発生するギブスエネルギー差 ( H の濃度差項と電荷項 ) によって H + がエネルギーの高いほうから低いほうへと移動するときのエネルギーを利用して ATP を合成する 炭酸同化反応電子伝達系で作られた還元力 (NADPH) と化学エネルギー (ATP) を使って CO₂を還元して糖にする反応で 糖とは還元末端または 2 位にケト基を持つ炭素数 3 個以上の多価アルコール

カルビン ベンソンサイクル 反応経路は 3 種類に大別される 1 CO₂の固定 :RuBP のカルボキシル化による PGA の産生 2 糖の生成:PGA の還元 ATP と NADH の消費 ( 解糖系逆反応 ) 3 RuBP の再生 :ATP の消費 ( 解糖系逆反応とペントースリン酸経路 ) カルビンサイクルは別名還元的ペントースリン酸経路と呼ばれる RuBisCO の性質炭酸固定系の key enzyme で 地球上で最も多いタンパク質 カルビンサイクルの 1の反応の触媒をする また RuBisCO の反応基質は CO₂である Cooper の実験で証明 気質は CO₂であるが光合成中のストロマの ph は 8 であるので 無機炭素のうち CO₂は 0.9% しか存在しないので 反応の効率が悪い RuBisCO の細胞内量を増やす ( 全光合成生物 ) RuBisCO の活性をあげる ( 緑藻 陸上植物 ) RuBisCO の周りの CO₂ 濃度を上昇させる (C₄ 植物 )

デンプンとショ糖 デンプンとはグルコースが直鎖状 α(1 4) 結合したアミロースと直鎖状 α(1 4) に加 えて α(1 6) 分枝構造を持つアミロペクチンが重合した分子 昼間に右側の経路を通って葉緑体内でデンプンが合成され 夜間に左側の経路を通って細胞質でショ糖が合成される 葉緑体内から細胞質への DHAP の輸送はリン酸転送体による DHAP とリン酸の対方輸送によって行われる なぜショ糖なのか? 還元末端を持たず 化学的に不活性である 高濃度に溶かすことができ 師管での輸送に有利である 光呼吸 (photorespiration) 明所で O₂ が吸収され CO₂ の放出が高くなる現象のこと 原因は?

RuBisCO が CO₂だけでなく O₂とも反応すること (O₂に対する親和性) CO₂ 濃度が低く O₂ 濃度が高いとき ( 光合成が盛んに起こっているとき ) オキシゲナーゼ反応により RuBP から1 分子の PGA と1 分子のホスホグリコール酸ができる グリコール酸は そのままでは扱えないので葉緑体 ペルオキシゾーム ミトコンドリアの3つの細胞小器官を使って PGA に戻す RuBisCO の O₂ に対する親和性に対する対策として C4,CAM 植物は RuBisCO 周辺の CO₂ 濃度を上げるということをし 陸上植物は CO₂ に対する親和性を上げるという対策

をとっている なるべく O₂と反応しないようにしている 光呼吸の意義は葉緑体の過還元状態の解消である ( 光合成活性が高いと葉緑体内の NADPH と ATP の濃度が高くなり過還元状態になり 同時に O₂が多くなることで障害が起こりやすくなる C4 型光合成最初に合成される炭酸同化物が炭素数 4の化合物であり RuBisCO の問題点 ( 反応が遅い 基質が CO₂) を回避しており C4 型光合成の基質は HCO₃ である (PEPCase の触媒を受けて PEP と反応することで OAA を産生する ) また PEPCase は HCO₃ に対する親和性が高く光呼吸がほとんど起こらないという特徴も持つ 炭酸固定を葉緑体で行う C3 とは異なり 葉肉細胞で炭酸固定を行う C-B サイクルは 維管束鞘細胞 (BSC) で行われ この際の CO₂は C4 化合物の脱炭酸によって得ることができる したがって 2 種類の細胞で光合成を分業することにより C3 光合成よりも RuBisCO 周りの CO₂ 濃度を上昇させることができ 反応が効率よく進む 一方で BSC で C4 化合物の脱炭酸で発生する C3 化合物は葉肉細胞に戻り pyruvate になり 2 個の ATP を消費することで PEP にもどる したがって C3 光合成に比べて 2 個の ATP を消費する事に関しては C4 光合成の不利な点である では 不利なことがあるにも関わらず生き残っているのか? C4 植物は 高温 強光下である中低緯度に育つ草木に多く ATP が C3 光合成に比べて多く産生されるから 余分な消費をしても問題がない また 光合成効率が高いのならば気孔を開いている時間が短くてすみ 水分の蒸発を防ぐことができる CAM 植物型光合成 C4 光合成の変形型の光合成である これらの光合成を行う植物は極度に乾燥した地域に生息しているため昼間は気孔を開かず夜間に気孔を開き PEPCase による OAA への CO₂の取り込みを行い できた OAA を液胞へと蓄積する そのようして合成された OAA を昼間に脱炭酸することで得られた CO₂を C-B サイクルで固定し デンプン合成を行っている しかし この光合成系では PEP をリサイクルできないため予め大量に PEP を用意する必要があり 夜間に ATP を消費することでデンプンから PEP が合成される したがって C4 光合成よりもエネルギー効率が悪く これがこの光合成の不利な点である 葉緑体の機能 硝酸同化 硫酸同化 アミノ酸合成 塩基合成 タンパク質合成 核酸合成 色素合 成 脂質合成

硝酸同化 硝酸同化の主な反応は右に示すとおりである また この硝酸同化における還元力は光合成系 Ⅰの還元力 (NADPH,Fd) を利用することで行われる 硝酸はまず細胞質で亜硝酸に還元され 次に葉緑体の中でアンモニアにまで還元される 細胞質での還元では NaR が homodimer 酵素として働き細胞質内に入ってきた NO₃ を NO₂ へと還元する この際の還元力は NADPH が用いられる 葉緑体内での還元では NiR が monomer 酵素として働き 葉緑体内へ入ってきた NO₂ を NH₄+へと還元する この際の還元力は Fd が用いられる また NiR の補欠分子族にはシロヘムと 4Fe-4S クラスターがある 活性中心のシロヘムの鉄と 4Fe-4S クラスターの鉄原子は Cys の S を通じて結合している 亜硝酸の還元に関しては 2 電子伝達を 3 回行うことでアンモニアに還元する また この 2 電子は 4Fe-4S クラスターとシロヘムから一度に渡ると考えられている このようにして 生成したアンモニアは毒性が強いために GS の触媒の下で ATP の加水分解エネルギーを使って グルタミン酸のカルボキシル基に結合し グルタミンになる 次にグルタミンのアミド基は GOGAT によりオキソグルタル酸のケト基に移り2 分子のグルタミン酸ができる この反応には Fd の還元力が利用される GOGAT には3 種類のタイプがあり Fd を還元力にする葉緑体タイプ NADH を還元力にする根タイプ NADPH を還元力にする大腸菌タイプに分類され 後ろの 2 つのタイプは光合成を行わないために還元型の Fd が存在しない このようにしてアミノ酸に取り込まれた窒素 ( アンモニア ) はプリン ピリミジン合成などに利用される

硝酸同化 硫酸同化の主な反応は右に示すとおりである この反応の還元力には光化学系 Ⅰの Fd が使われる 硫酸同化は硝酸同化とは異なり 最初から葉緑体内で還元が始まる まずは 硫酸イオンは活性化のために ATP と反応する (S の酸化度が高いために 還元するのは難しい ) また この反応は発生した PPi の加水分解エネルギーを使うことでようやく反応が正方向に進む 次に GSH と反応することで亜硝酸イオンへの還元が起こる 亜硝酸イオンは SiR による反応の触媒を受け 6 個の Fd からの還元力を使うことで S² まで一気に還元される また SiR は NiR に似ていて homodimer で機能しシロヘムと 4Fe-4S クラスターを持っている このようにして還元された硫黄は システインやメチオニンといって含硫アミノ酸の合成に利用される NiR と SiR 共に 3 つのドメインからなる分子構造をしており 活性中心にはシロヘムの鉄と 4Fe-4S クラスターが Cys の S を通してつながっている メチオニン ( 左 ) システイン ( 右 )

葉緑体の分子生物学葉緑体 DNA は細菌型 DNA と共通の性質 ( 環状 DNA ヒストンを持たない) を持ち 核とは別のタンパク質合成系を持つ 葉緑体のタンパク質合成系はシクロヘキサミドには阻害されずクロランフェにコールに阻害されることから 細菌型の 70sリボソームをもつと推定される 葉緑体の遺伝子発現系はバクテリア型であり 原核生物型のプロモーター領域がある リボソームの 30sサブユニット中の 16srRNA が認識して水素結合する SD 配列を持ち タンパク質の合成開始点はフェニルメチオニンである また DNA 中には基本的にイントロンがなく オペロンを形成する遺伝子群が存在する 葉緑体の環状 DNA の中には Inverted repeat( 逆位反復配列 ) と呼ばれる配列を持ち全く同じ DNA 配列が逆向きに入っている ribosomal RNA 遺伝子はこの Inverted repeat のなかに含まれている また DNA に占める遺伝子の割合において光合成遺伝子が大部分を占めるわけではなく 大部分を House Keeping 遺伝子が占めており 葉緑体を維持するための遺伝子のうちのほとんどが核ゲノムへ移動している したがって 葉緑体単独での培養をすることは不可能である 上で示したように 葉緑体を構成するタンパク質のうち遺伝子が核ゲノムへ移行しているものに関しては 細胞質でタンパク合成された後で 葉緑体に輸送されなければならない ( 遺伝子が核ゲノムにあるものは細胞質 80s リボソームで 葉緑体内にあるものはストロマ 70s リボソームでタンパク合成される ) 細胞質で合成されたタンパク質の N 末端に葉緑体移行シグナルと呼ばれる配列が付加しており これは包膜を通過するときにストロマプロセシングペプチターゼによって切断される もしも 合成されたタンパク質がチラコイド内局在性のタンパク質ならば 包膜透過用シグナルの他にチラコイド透過用シグナルが付加している 葉緑体移行タンパク質を移行させるためにの膜タンパク質として translocon があり 内外両包膜が共同して葉緑体内にペプチドを移行させる また この translocon はラン藻由来のタンパク質である