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非ニュートン標準物質 の開発について 菜嶋健司産総研計測標準研究部門 ( 共同研究者 : 山本泰之 藤田佳孝 )

非ニュートン標準の供給 ニュートン流体標準 非ニュートン標準 シリンダバランス粘度計 細管法 落球法 並進円筒法 高精度回転粘度計 校正サービス 校正事業者による JCSS 化 絶対測定 値付け 高精度回転法 不確かさ 1.0%~ 校正サービス 非ニュートン標準液 精密レオメータ ( 粘弾性標準 ) ここでは 非ニュートン標準液の開発状況について報告する 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 2

標準物質に求められる特性 標準物質の視点で粘性液体を評価 安定性 : 変質しない 温度 不純物等の影響が少ない 応答性 : 履歴現象 或いは長時間緩和が無い 再現性 : 試料 ( 同一物質の調製 ) 高分子 : モルフォロジー制御が困難 劣化 低分子会合体 : 破壊に強い 明確な分子構成 会合度等 環境に左右される 高分子より優れた測定値の再現性? 超分子系 ひも状ミセル系 可用性の観点から 食品添加物を検討 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 3

非ニュートン標準物質の候補 非ニュートン性は溶液系で発現しやすいので 以下の溶液を候補とした 1. 有機溶液系超分子 2. 紐状ミセル系水溶液 (ATAB 混合溶液 ) 3.HPC 水 - アルコール混合溶液 4. 増粘多糖類水溶液 ( キサンタンガム ) 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 4

超分子 R 1 = C 2 H 4 -CH(CH 3 )-C 3 H 6 -CH(CH 3 ) 2 : DO3B アミド基の水素と酸素が分子間水素結合し 分子が数珠状につながる超分子を構成する 超分子間でつなぎ換えが起こるので 応力が残留しない流体としての振る舞いが期待できる 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 5

超分子の流動特性 / mpas 10000 1000 100 10 DO3B conc./mwm 10.04 5.02 3.05 2.0 1.49 1.0 0.68 0 (dodecane) viscosity / mpas 10000 1000 100 (prev. Temp.) 10mwM 1st (10 o C) 2nd (60 o C) 5mwM 10 0.1 1 10 100 1000 shear rate / s -1 1 0.01 0.1 1 10 100 1000 shear rate / s -1 DO3B/dodecane 直線的で広いshear-thinning 領域 長時間の緩和は観測されない ( 低濃度で一部 shear-thickening) 水素結合を阻害する物質の混入が安定性の不安要因である 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 6

超分子の動的粘弾性 G', G" / mpa 10000 1000 100 10 DO3B conc/mwm G' G" 10.04 3.05 1.49 0.01 0.1 1 10 frequency / Hz DO3B/dodecane の剛性率 マクスウェルモデル 単純なモデルで記述可能 複雑な挙動がない 剛性率の濃度依存性が比較的小さい ( 濃度の約 2 乗に比例 ) 直線的な超分子ネットワーク構造 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 7

超分子のまとめ アミノベンゼン系超分子 - ノルマル炭化水素 (C12~C13) 溶液 1. 良好なずり速度 - 粘度特性 2. 粘度の温度依存性は大きくない 3. 有機酸 アルコールの混入が 大きく粘度に影響する 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 8

ひも状ミセル CTAB (cetyltrimethylammonium bromide) とサリチル酸の混合系は ほぼ 1:1 のモル比でひも状のミセルを形成する レオロジー的特徴は マックスウェルモデルで表される ( 比較的単純な挙動 ) shear- thickening を起こす ミセルは 低分子量の物質のみで構成され 破壊されても 再び元の状態に戻ることができる 再現性が期待できる!? 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 9

CTAB 溶液の流動特性 viscosity / mpas 10 1 T = 30 (up) (dn) 0.2 mm 0.4 0.6 測定手順 低ずり速度開始 最高回転数 最初の回転数 1 10 100 shear rate / s -1 問題点 1 shear-thinning と shear-thickening を起こす shear-thickening の領域では 往復で大きな粘度差 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 10

3 種混合と非ニュートン粘度のフィッティング クラフト点の低い MTAB(C14) LTAB(C12) を混合することで shear thickning を解消させる 100 y=y 0 exp(m exp(-(x/x 0 ) n )) y 0 3.39 ±0.44 x 0 258 ±68 m 1.37 ±0.17 n 0.57 ±0.07 viscosity / mpas 10 CTAB 25%, MTAB 50%, LTAB 25% 20 o C 25 o C 問題点 : 温度依存性が大きい 0.1 1 10 100 1000 shear rate / s -1 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 11

HPC HPC( ヒドロキシプロピルセルロース ) は セルロースの誘導体で 水 エタノールに可溶 日本では特に 医薬品グレードの製造が盛んで高品質なものが手に入り易い 製剤の結合剤に使われる 各種分子量分画の内 低分子量のものは非ニュートン性が殆ど無いので 高分子量の製品 (HPC-H) が候補物質となる 水溶液はLCST(lower critical solution temperature) を持ち 約 50 以上に温度を上げると不溶になる 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 12

HPC 水 - アルコール混合溶液 LCSTを避けるため 水 -アルコール混合溶液とする アルコール濃度は33% 以上 50% 辺りが最適か HPC-L (2 w/v %) viscosity - temperature ethanol content 0%; 17%; 33%; 50%; 67%; 83%; 100% viscosity / mpas 10 1 20 30 40 50 60 70 temperature / o C 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 13

HPC-H 1% 溶液の流動特性 HPC-H 1% viscosity / mpas 10000 1000 100 10 water 20 ethanol 20 mix 20 ethanol 10 ethnol 30 0.1 1 10 100 1000 shear rate / s-1 mix 10 mix 30 ずり速度依存性は 比較的緩やか 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 14

キサンタンガム キサントモナスの培養液から得られた 多糖類を主成分とするもの 近年使用が拡大している増粘多糖類 安定性は 増粘多糖類の中では高いとされている 酸性での粘度低下や 高温での構造変化が報告されている 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 15

キサンタンガムの流動特性 1000 viscosity / Pas 100 10 1 0.1 temperature 20 o C 20 ( 再現性 ) 30 40 0.01 1E-3 0.01 0.1 1 10 100 1000 shear rate / s -1 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 16

応力緩和試験 0.0 Fit results ln / 0 = - (t/b)^p log( / 0 ) = ((t t 0 )/B) P log e -0.5-1.0-1.5 0 1.933 B 0.018 P 0.174 使用した関数は 時間 で σ=0となる この関数にフィットできれば 残留応力のない流体である -2.0-2.5 0 10 20 30 40 50 60 70 time / s 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 17

Rigidity moduli / mpa 10000 キサンタンガムの動的粘弾性 Dynamic visco-elasticity of xanthan gum (20 ) 1000 100 10 G' (ref) G" (ref) G' (acid) G" (acid) G' (neutr) G" (neutr) 1 0.01 0.1 1 10 100 frequency / Hz 酸を加えると 柔らかく なるが 中和すると元に戻る 低周波数側では 粘性が弾性より強くなる傾向が確かめられる 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 18

候補物質の流動特性 ( まとめ ) viscosity / Pa s 1000 100 10 1 0.1 0.01 xanthan gum DO3B HPC ATAB-NaSal 1E-3 1E-3 0.01 0.1 1 10 100 1000 shear rate / s -1 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 19

結語 1. 会合体を作ることによって増粘する物質 2 種 セルロース系の粘調溶液 2 種の内 キサンタンガムが最も非ニュートン性が広範囲に大きく現れている 但し 若干濁って おり 流体としての美しさに欠けているところがある 2. それぞれ得失は有るが 非ニュートン性標準物質に必要な最低限の特性は保たせることが可能 3. 今後 可用性の有るものとするため 必要性に即した開発を進め 4. 長期安定性等の必要な試験を行う 是非 皆様のご意見を賜りたいと思います 流体標準研究室 -NMIJ 非ニュートン粘度標準物質の開発 - 流体物性クラブ 20