説明文書 間質性肺炎を合併している化学療法未治療非小細胞肺癌非扁平上皮癌に 対するペメトレキセド + カルボプラチン併用療法の臨床 II 相試験 1. はじめに当院では最新の治療を患者さんに提供するとともに 病気の原因や診断方法 治療方法および予防方法の改善に努力しています この中には より良い治療効果を示す新しい薬を選び出すことやすでに発売されている薬を他の薬剤とうまく組み合わせて使用する方法を検討することなどがあります このように 治療成績の向上をめざしてあらかじめ定めた計画 ( プロトコール ) に従って行われる試験を 臨床試験 といいます これから説明いたします治療法は 医学的根拠に基づいて考案され より良い成績をめざして行われる臨床試験です この臨床試験は 中日本呼吸器臨床研究機構の共同研究として行われ 当院の倫理審査委員会でこの研究の科学性 倫理性 妥当性を審議され承認を得ています 病名及び病状あなたの病気は間質性肺炎に合併した非小細胞肺癌の中で非扁平上皮癌に分類され 病気の広がりとしてはⅢB/Ⅳ 期 または術後再発にあたります 治療方法としては 抗がん剤による治療が最も有効と考えられます 従来の治療法とその問題点について間質性肺炎合併非小細胞肺癌における一度目の抗がん剤治療として カルボプラチンとパクリタキセルを併用することが標準治療の1つと考えられていましたが 関節炎や末梢神経障害が合併症として問題となっていました 間質性肺炎のない非小細胞肺癌 非扁平上皮癌においては プラチナ製剤と新規抗癌剤であるペメトレキセドの併用療法が標準治療の 1 つとなっています しかしながら間質性肺炎のある非小細胞非扁平上皮肺癌の患者さんに限って その安全性と有効性を検証した試験はまだありません 試験薬についてこの臨床試験で使用する薬剤は一般名をペメトレキセド ( 商品名 : アリムタ ) といい 2007 年 1 月に悪性胸膜中皮腫に対する唯一の抗がん剤として新しく発売されました 非小細胞肺癌に対しては 2009 年 5 月に承認された薬剤です
ペメトレキセドはがん細胞の活動 ( 代謝 ) を妨げる 代謝拮抗剤 と呼ばれる抗がん剤の 1 つであり デオキシリボ核酸 (DNA) 合成に必要な葉酸とよく似た薬剤です 葉酸やビタミン B 12 を投与することによって がん細胞に対する効果は変わらず 副作用が軽くなることがわかっています ペメトレキセドは 非小細胞肺癌のうち 主に扁平上皮癌以外のタイプに用いられます 従来の抗癌剤と比べて 腺癌や大細胞癌といった非扁平上皮癌のタイプに高い効果を示します 通常はシスプラチンやカルボプラチンとの併用や 単剤で使用します 海外の研究ではカルボプラチンとの併用で治療を受けた人のうち 腫瘍が 50% 以下に縮小する人の割合は 24~31.6% と報告されています 2. 試験の目的今回説明する臨床試験は 間質性肺炎を合併している化学療法未治療非小細胞肺癌非扁平上皮癌に対するペメトレキセド+カルボプラチン併用療法の臨床 II 相試験 で ペメトレキセドとカルボプラチン併用療法の間質性肺炎合併非小細胞肺癌治療での安全性および有効性を検討するのが目的です 3. 試験の方法まず あなたの身体の状態を調べて 薬剤投与に不適当でないことを確認してから 葉酸とビタミン B 12 を組み合わせて始めます これは治療による副作用を軽減させるためです 7 日以上過ぎてから抗がん剤の投与を開始します 抗がん剤はペメトレキセドとカルボプラチンを 3 週間に 1 回 静脈内に点滴投与します 病気が進行せず副作用が耐容範囲内である限り4 回継続して治療して頂きます もし この治療方法で効果がみられず病気が進行してしまう場合には本試験を中止して 他の治療法を検討します あなたの身体の状態を調べる為 カルボプラチンとペメトレキセドを投与中は血液検査 胸のレントゲン撮影 CT 撮影を定期的に行います これらの検査は通常診療で行う検査であり その結果によって担当医が必要と判断した場合にはさらに追加して他の検査を行うこともあります 4. 予測される試験の利益 ( 効果など ) および予測される不利益 ( 副作用など ) (1) 利益 ( 効果など ) についてペメトレキセドは未治療の非小細胞肺癌の患者さんを対象として臨床試験が行われました この臨床試験には 進行非小細胞肺癌の外国人の患者さん1725 名が参加し 862 名の患者さんがペメトレキセドとシスプラチンの併用治療をうけました この結果 ペメトレキセドとシスプラチンの治療をうけた患者さ
んのうち78.2% の患者さんで癌の進行が止まるなどの効果がみられ また約 30.3% の患者さんではがんの大きさが最大径で30% 以上小さくなりました さらに腺癌や大細胞癌といった非扁平上皮癌の患者さんにおいては 従来の抗がん剤治療よりも有意に生存期間を延長することが証明され 米国における非小細胞肺癌のガイドラインでは ペメトレキセドとシスプラチンの併用療法が 非扁平上皮癌患者さんに対して最も強く推奨されております またシスプラチンとの併用のみならず カルボプラチンとの併用療法についても効果が期待されており 海外の臨床試験では24~31.6% の患者さんでがんの大きさが小さくなったと報告されています また ペメトレキセドは葉酸とビタミンB 12 を併用することで 従来の抗がん剤と比べて副作用の発現頻度が少なくなることが知られております 点滴時間も短いことから 通院が可能で副作用の心配が少ない場合は 外来で治療を続けることも可能です このようにペメトレキセドとカルボプラチンの併用治療は 腫瘍に対する確かな有用性が認められています ただしこれらの結果は外国の患者さんを対象にしたもので 日本人の患者さんに対しての効果ではありません (2) 不利益 ( 副作用など ) についてペメトレキセドは 葉酸とビタミンB 12 を併用することにより 比較的副作用が軽い抗がん剤となりましたが 次のような副作用が現れることがあります 発疹 (20% 以上 ) 吐き気(20% 以上 ) 疲労感(20% 以上 ) 粘膜炎(5-20%) 食欲不振 (20% 以上 ) 下痢(5-20%) 脱毛 ( 5% 未満 ) 便秘(5-20%) かゆみ (5-20%) 味覚異常(5% 未満 ) 脱水(1.3%) 消化不良 むねやけ (5-20%) しゃっくり(5% 未満 ) 骨髄抑制( 白血球減少 :71.6% 好中球減少 :64.4% ヘモグロビン減少:54.2% 血小板減少:46.2% など ) 腎機能や肝機能の低下 発熱 (20% 以上 ) 薬剤性肺障害(3.6%) 重度の下痢(1.3%) 腎不全などです 副作用の中でも薬剤性肺障害は最も危険なものと考えています 間質性肺炎は年間 5% ほどの患者さんで 何もしなくても自然に急速な悪化が起こります 抗癌剤治療は5~30% の方の間質性肺炎を悪化させる危険があります 間質性肺炎の急速な悪化は約半数の方が亡くなるとされていて 今回の抗がん剤治療により生命に危険が及ぶこともありえます ペメトレキセドの市販後調査によると 間質性肺炎のある方では19.4%(6 名 ) に肺障害が生じています 幸いこれらの方々の中で肺障害のために亡くなられた方はみえませんでしたが 1 名の方に後遺障害が残りました 副作用に対しては早期に発見して対応することが重要です このために入院
または外来で胸部レントゲン検査 血液検査 酸素飽和度検査を内服開始後 1ヶ月間は少なくとも1~2 週に1 回 その後は2~4 週ごとに行います また 併せて用いる他の抗がん剤等による副作用も現れることがあります もしご自身で咳 息切れ 発熱など何か体調の変化を感じられましたら すぐに担当医へ御連絡下さい 5. 試験への参加予定期間ペメトレキセドとカルボプラチンは病気が進行せず副作用が重くない限り 4 回継続して投与します 予定参加期間は ペメトレキセド+カルボプラチン初回治療開始日よりペメトレキセド+カルボプラチン最終投与日の 4 週間後までになります 6. 試験に参加する予定人数 他の病院も含め 30 人の患者さんに参加していただく予定です 7. この試験に参加しない場合の 他の治療法あなたの病気に対する治療方法は他にもいくつかあります 通常はプラチナ製剤と新規抗がん剤の併用療法が選択できます 詳細については担当医とよくご相談下さい 8. 試験への参加の自由と同意撤回の自由についてこの試験に参加されるかどうかについては よく考えていただき あなた自身の自由な意思でお決めください また 試験に参加することに同意された後 もしくは試験が始まった後でもいつでも同意を取り下げることができます もし お断りになっても その後も責任をもって治療を行いますので あなたが不利益を受けることは一切ありません 9. プライバシーの保護について今回得られた情報は厳重に管理され 決して他に漏れることはありません また 試験の結果は学会や医学雑誌等に発表することがありますが あなたの個人情報などのプライバシーに関するものが公表されることは一切ありません この臨床研究では この試験が適正に安全に実施されているかどうか また 患者さんの人権擁護が十分か データが正確などのチェックの目的で施設外の専門家が病院長の許可を得てあなたの診療録 レントゲン CT などの直接閲覧をする可能性があります この場合もあなたの個人情報は厳重にお守りします また 本試験で得られたデータは貴重なものとなる可能性がありますので
本試験で得られたデータを二次利用する可能性があります この場合ももちろ んあなたの個人情報は厳重にお守りします 10. 健康被害が発生した場合に必要な治療が行われることについてこの試験に参加している間に あなたに副作用などの健康被害が生じることがあります 特に薬剤性肺障害は あなたの生命に関わる重大な合併症となりえます 健康被害が生じた場合は 必要な検査 治療を含めた適切かつ最善の処置を行います その治療は保険診療により行われます 11. この試験に関する新たな情報が得られた場合について試験に参加されている期間中 新たにあなたの試験継続の意思に影響を与えるような情報を入手した場合は 直ちにあなたにお知らせします 試験継続についてあなたの意思に基づき中止することができます 12. 試験への参加を中止する場合の条件又は理由あなたに試験参加の同意をいただいた後でも 次のような場合には試験へ参加していただけなかったり 試験を中止することがありますのでご了承ください 1) あなたが試験の中止を申し出た場合 2) 検査などの結果 あなたの症状が試験への参加条件に合わないことがわかった場合 3) 参加いただいている途中で あなたの体の状態やその他の理由により試験をやめたほうがよいと担当医師が判断した場合 13. 費用負担についてこの試験は保険診療内で行われますので あなたの負担は通常の診療と変わりありません この臨床試験に用いられるお薬や臨床試験参加中の治療や検査は すべて保険で認められております このため治療にかかる一切の費用は 保険診療制度に則って請求と支払いがなされます この臨床試験だからという特別な検査はなく あなたの病気に対して一般的に行われる範囲内で行います この試験に参加している期間中の治療に必要なお薬代 検査の費用などはあなたの加入している医療保険 ( 国民健康保険など ) が用いられ 通常の治療と同様の費用負担があります また これらの治療によって健康被害が生じた場合にも この臨床試験に関しての特別な金銭的補償はなく 一般診療としての対処に準じて行われ 保険診療制度に則って請求と支払いがなされます また 治験 とは異なり 入院費 生活費 あるいは交通費などの特別な金銭的な援助もありませ
ん 14. 試験担当医師の連絡先この試験に参加することはあくまでも自発的なものですので あなたの意思を大切にして行われます したがって わからないことや不安な点があればいつでも担当医に申し出てください この試験に関する責任医師およびあなたの担当医の名前および連絡先は次の通りです またわからないことや不安な点について この臨床試験の研究事務局に質問 問い合わせをすることもできます 本試験に関するご質問 お問い合わせは下記のいずれかに御連絡ください 病院 電話番号 : FAX: 試験責任医師 : 試験分担医師 : 研究事務局大垣市民病院呼吸器内科 503-8502 岐阜県大垣市南頬町 4 丁目 86 番地 TEL:0584-81-3341 FAX:0584-75-5715 担当 : 白木晶研究代表者 : 谷口博之 ( 公立陶生病院呼吸器 アレルギー内科 ) 以上の説明を十分に納得された上で試験参加に同意していただけるのであれ ば 署名欄にご署名をお願い致します 署名された後 担当医よりこの同意文 書の写しを受け取り 大切に保管してください
同意文書 殿 私はこのたび 間質性肺炎を合併している化学療法未治療非小細胞肺癌非扁平上皮癌に対するペメトレキセド+カルボプラチン併用療法の臨床 II 相試験 の研究に参加して治療を受けるに当たり 担当医師から十分に説明を受け 内容を理解しましたので この治療を受けることに同意致します なお 今回の治療を受けることはあくまでも自分の意思に基づくものであり いつでも私の意思によって中止できること 中止後も必要かつ可能な治療行為が行われ 病院および担当医師からなんら不利益を受けることがないことを担当医師に確認したため ここに同意し署名致します 1. 病気および病状 2. 試験の目的と方法 3. 予想される効果と副作用 4. 他の治療法の有無 5. 治療にかかる費用 6. 試験参加に同意しないでも不利益を受けないこと 7. 随時これを撤回できること 8. 人権 プライバシー 9. 病歴などの直接検閲 データの二次利用 10. 文書による同意 同意年月日平成年月日 ご本人氏名 ( 署名 ) 印 説明年月日平成年月日 説明者 所属 医師名 ( 署名 ) 印