平成 25 年度 修士論文 大型輸送車両の空気抵抗低減装置の実験及び開発 指導教員 筒井康賢教授 高知工科大学 知能機械システム工学科 筒井研究室 学生番号 1165045 矢野佑樹
目次 第 1 章序論 1.1 研究背景 1.1.1 走行抵抗 1.1.2 境界層とレイノルズ数 Re 1.2 研究目的 第 2 章従来の研究 第 3 章実験装置 3.1 風洞 3.2 計測機器 3.2.1 差圧計 DSA3217/16Px 3.2.2 トラバース装置 3.2.3 主流 後流計測用ピトー管 3.3 風洞模型 3.4 空気抵抗低減装置 3.4.1 エアディフレクター 3.4.2 空気抵抗低減装置 第 4 章風洞実験 4.1 実験環境 4.2 実験手順 4.3 実験内容 4.3.1 計側部 4.3.2 実験
第 5 章実験結果及び考察 5.1 空気抵抗係数 5.2 考察 第 6 章結論 謝辞 参考文献
第 1 章序論 1.1 研究背景日本における貨物輸送は図 1 (1) に示すように現在大きな問題を抱えている トラック類 ( 営業用トラック 自家用トラック ) が日本の物流サービスの約 9 割を占めており 一般的な生活必需品から 工業用製品 材料の供給には欠かせない存在となっている ( 参考文献 8 より輸送機関別輸送量を参考としている ) また 近年のネットショッピングの増加により今後の利用拡大なども考えられる しかし トラック運送事業は 図 2 に示すように近年の軽油価格高騰で 2004 年 ~2013 年の期間に軽油価格が全国平均で約 50 円の値上がりとなっており 経営状況は悪化している ここで燃料消費量の抑制を実現し トラック運送事業者の経営状況改善に貢献したいと考えた 図 1 トラック業界の現状 (1) 図 2 近年の軽油価格の推移 1
1.1.1 走行抵抗 走行時の車両に働く抵抗には大別して次の 4 種類がある 走行抵抗 = 転がり抵抗 + 空気抵抗 + 勾配抵抗 + 加速抵抗 転がり抵抗とは走行時におけるタイヤの変形や 地面との摩擦などにより生じる抵抗であり 一般的に以下の式で求められる R r = μ r Mg 式 (1.1) R r : 転がり抵抗 [N] μ r : 転がり抵抗係数 [-] M : 車両質量 [N] g : 重力加速度 空気抵抗とは車両が走行する際に周囲の空気の作用によって生じる抵抗のことで 大別して圧力抵抗と摩擦抵抗に分類される 特に圧力抵抗が空気抵抗の大部分を占めており その中でも車両形状を起因とする形状抵抗が空気抵抗の主要素である 以下に空気抵抗を求める際の一般的な式を示す D = 1 2 ρav2 C D 式 (1.2) D : 空気抵抗 [N] ρ : 空気密度 [kg/m 3 ] A : 車両前面投影面積 [m 2 ] V : 車両走行速度 [m/s] C D : 空気抵抗係数 [-] 勾配抵抗とは図 3 のように 坂道など傾斜がある道路を走行するときに生じる抵抗のことである 以下に勾配抵抗を求める際の一般的な式を示す R s = Mg sin θ 式 (1.3) R s : 転がり抵抗 [N] θ : 路面傾角 2
図 3 傾斜面における勾配抵抗 加速抵抗とは 運転手によって車両が加速される際に生じる抵抗のことである 車両の 特性というよりも 運転手の個人差によるところが大きい 1.1.2 境界層とレイノルズ数 R e 1.1.2.1 境界層主流速度 U の流体中に設置された物体の表面では 流体の粘性によって流体が付着し 速度が 0 となる 他方 物体表面から十分離れた地点では 粘性の影響はほとんどみられなくなり 主流速度 U となる 以上から 物体表面の地点から 物体表面から十分離れた地点までの間に速度勾配が生じるのは容易に理解できる この速度勾配が顕著に現れる物体表面近傍を境界層と呼ぶ 境界層には層流境界層と乱流境界層が存在する 例として一様な主流速度 U の流体中に設置された平行平板を考える 図 4 に示す様に 層流境界層では速度勾配が大きく 乱流境界層では速度勾配が小さい 乱流境界層内部では流れの撹拌作用が大きく 主流速度 U を有する流体を境界層内部に引き込むからである また 物体表面から境界層が剥がれる剥離と呼ばれる現象が生じることがある 剥離は境界層内部の流体の速度が 0 となり生じる この点を剥離点と呼び 剥離点後方の剥離領域では流れが逆流し それを起因とする渦が生じ 非常に複雑な流れとなる この領域のことを死水領域とも呼ぶ 死水領域では主流圧力に比べ 圧力が低下していることが知られている この圧力差が物体に作用する空気抵抗となって現れてくる 層流境界層で剥離することを層流剥離 乱流境界層で剥離することを乱流剥離と呼ぶ 3
1.1.2.2 レイノルズ数 Re 流れが層流 ( 一様 ) であるか乱流 ( 乱れている ) であるかを評価する際に 無次元量であるレ イノルズ数 Re を使用する Re は以下の式で表される R e = UL ν 式 (1.4) R e : レイノルズ数 [-] U : 主流相対速度 [m/s] L : 代表長さ [m] ν : 流体の動粘度 [m 2 /s] 平行平板の場合 代表長さは主流方向の平板の長さである 流れが層流から乱流に遷移する Re を臨界レイノルズ数 Rec と呼び 実際の車両周りの流 れは乱流であるので 風洞試験を行うときは Rec を超える様に注意する必要がある 図 4 平行平板における境界層内の流速分布 ( 速度勾配 ) のイメージ 4
1.2 研究目的 1.1.1 で示した走行抵抗の各成分は 車両重量と走行速度に大きく依存しているのがわかる 本研究では 走行速度に大きく依存している空気抵抗に注目する 走行抵抗は約 80 km/h 未満の低速走行時では 走行抵抗の中では転がり抵抗の影響が大きいが 約 80 km/h を超える高速走行時においては 空気抵抗が車速の 2 乗に比例するので影響が大きくなる 研究対象となる大型輸送車両の多くは 高速道路など高速走行が必要とされる場所を走行する場合が多い 以上のことを踏まえ 本研究の目的は既存の大型トラックに対して空気抵抗低減装置を取り付け 装置の導入コストを限りなく抑制し 燃費向上を目指すことである また車両制限令 (2) により原則として 車両の幅 2.5 m 高さ 3.8 m 長さ 12 m 以内に取り付けることを考慮する 5
第 2 章従来の研究 従来の研究としては図 5 6 (3) に示すように トラック荷台の後端にフラップや巨大な流線型の空気抵抗低減装置を取り付けるなどその形状で空気の流れを変化させるような受動的な空気抵抗低減装置が多い この例としては 2011 年にメルセデス ベンツがコンセプトモデルとして示した "Mercedes Benz Aero Trailer Concept" などがあげられると考えられる この "Mercedes Benz Aero Trailer Concept" に関しては 空気抵抗を約 18% 改善し 燃費を約 5% 低減することが可能である ( 図 7 (4) に "Mercedes Benz Aero Trailer Concept" を示す ) 図 5 Transtex Composites folding rear trailer deflector (3) 図 6 Aerovolution inflatable boattail (3) 6
図 7 "Mercedes Benz Aero Trailer Concept" (4) 7
また 現在使用されている空気抵抗低減装置としては 運転台 ( キャブ ) 上部に設置されるエアディフレクタ 運転台 ( キャブ ) と貨物部の間に設置されるギャップシールド シャーシ側面に設置されるサイドスカートといったものがあげられる 設置位置及び外観を図 8 にて示す 図 8 空気抵抗低減装置の設置位置及び外観 (5) 8
第 3 章実験装置 3.1 風洞実験にて使用した風洞の仕様 特性を表 1 に 外観を図 9 に示す 本実験に使用した風洞は 2012 年に高知工科大学に設置されたものである 表 1 研究にて使用した風洞の仕様 特性主要仕様 特性全長 mm 10232 吸い込み口断面積 mm 2 7680000 吹き出し口断面積 mm 2 1000000 図 9 研究に使用した風洞の外観 9
3.2 計測機器 実験にて使用した差圧計 トラバース装置 ピトー管の主要仕様 特性を以下に示す 3.2.1 差圧計 DSA3217/16Px 差圧計 DSA3217/16Px( 以下 DSA) の主要仕様 特性を表 2 に 外観を図 10 (5) に示す 表 2 差圧計 DSA3217/16Px の主要仕様 特性 主要仕様 特性 ピエゾ抵抗式圧力センサ [Ch] 16 圧力レンジ 差圧 [kpa] ± 2.5 7.0 17 35 100 200 350 700 1725 3500 5200 絶対圧 [kpa] 100 200 350 700 精度 センサ圧力レンジ [kpa] 精度 [% F.S.] ±2.5 ±0.20 ±7 ±17 ±0.12 ±35~3500 ±0.05 ~±5200 ±0.08 分解能 [bit] 16 スキャンレート [Hz/Ch] 500 接続 Ethernet 10baseT 接続プロトコル TCP/IP UDP コネクタタイプ 入出力 RJ-45 電源 Bendix PTO6A-8-3S-SR 3 ピンメス トリガ Bendix PTO6A-8-6S-SR 6 ピンメス 電源 28Vdc nominal @ 400mA(20-36Vdc) 外部トリガ 6.5mA @ 9Vdc minimum edge sensing 許容圧力 2.5[kPa] = 13.79[kPa] 7[kPa] = 35[kPa] 1379[kPa] = 200[%] 3447[kPa] = 150[%] 4137[kPa] = 125[%] 5171[kPa] = 100[%] 最大リファレンス圧 [kpa] 1724 動作温度 [ ] 0~60 温度補正レンジ [ ] 0~60( 標準 ) 温度補正レンジ内の温度影響 [% F.S./ ] ±0.001 重量 [kg] 2.9 10
図 10 A3217/16Px の外観 (5) 3.2.1.1 差圧計測概要 DSA の差圧計測の概要を説明する 図 11 (5) に DSA 上面を示す リファレンス孔に基準圧力を与え 16Ch( チャンネル ) ある計測孔に任意の圧力を与える 各チャンネルに入力される圧力と基準圧の差が計測値となる ピトー管を例に挙げると ピトー管の静圧孔をリファレンス孔に接続し 全圧孔を計測孔に接続すると 計測値として動圧が得られる 図 81 A3217/16Px の上面 (5) 11
3.2.1.2 データの送受信概要 DSA は Ethernet いわゆる LAN ケーブル接続でパソコンとデータの送受信を行う 接続プロトコルは TCP/IP UDP の 2 種類あるが 本研究では TCP/IP を使用した 送受信されるデータの形式は ASCII とバイナリの 2 種類あるが ASCII 形式を使用した 12
3.2.2 トラバース装置トラバース装置の主要仕様 特性を表 3 に 外観を図 12 に示す 使用したトラバース装置は 計測機器を取り付け 上下 左右の 2 次元方向に任意に移動させること目的としたものである 表 3 トラバース装置の主要仕様 特性 主要仕様 特性 横軸 縦軸 ステッピングモータ AR46AA AR69MA モータ回転分解能 [ / パルス ] 0.36 0.36 軸送り分解能 [mm] 0.01 0.01 ローター慣性モーメント [kg m 2 ] 58 10-7 870 10-7 励磁最大静止トルク [N m] 0.3 2.0 許容スラスト荷重 [N] 4.6 16.7 図 12 トラバース装置の外観 13
3.2.3 主流 後流計測用ピトー管 主流計測用ピトー管及び後流計測用ピトー管の主要仕様 特性を表 4 に 外観を図 13 14 に示す 表 4 ピトー管の主要仕様 特性主流計測用ピトー管主要仕様 特性ツクバリカセイキ ( 株 ) 製 F-202 JIS 型ピトー管管外径 [mm] 6 全圧孔径 [mm] 3 静圧孔径 [mm] 1 後流計測用ピトー管主要使用 特性ツクバリカセイキ ( 株 ) 製管外形 [mm] 3 全圧孔径 [mm] 2 静圧孔径 [mm] 1 図 13 主流計測用ピトー管の外観 図 14 後流計測用ピトー管の外観 14
3.3 風洞模型本研究では風洞模型の形状決定のため トラック製造会社が掲示する大型トラックの外観寸法を参考にした また模型のスケールに関してはトラック長手方向を代表長さとおき 球や平板の臨界レイノルズ数 Rec = 3.0 10 5 5.0 10 5 を十分超えるようにレイノルズ数 Re 1.0 10 6 を目標とした 本研究に使用した風洞模型に関しては 1.1.2 の境界層とレイノルズ数で示している式 1.4 より計算した結果 Re=1.1 10 5 となっている 表 5 に主要外観寸法を 図 15 に風洞モデルの外観を示す 表 5 風洞模型の主要外観寸法主要仕様 特性全長 [mm] 795 全幅 [mm] 166 全高 [mm] 252 図 15 風洞模型の外観 15
3.4 空気抵抗低減装置 ここでは本研究に使用した空気抵抗低減装置について説明する 3.4.1 エアディフレクター 本研究では空気抵抗低減装置として ギャップシールド付きのエアディフレクタを図 16 に示す 図 16 上 : エアディフレクタ外観中 : 装着時側面下 : 装着時外観 16
3.4.2 空気抵抗低減装置空気抵抗低減装置として 今回は NACA0024 翼型をベースとして前縁をなだらかにしたものを使用している トラック後方部では周辺に比べ圧力が低下していると考えられるので トラック後方部分に流れを意図的に流すことにより 圧力を向上させることを目的とする 本研究で使用した空気抵抗低減装置として 以下の図 17 に示す 図 17 空気抵抗低減装置 17
第 4 章風洞実験 4.1 実験環境第 3 章で説明した実験機器を風洞計測部にて設置した概略図を図 18 に 表 6 に概略図内の対応記号を示す 図 18 風洞計測部概略図 表 6 風洞計測部概略図対応記号 風洞計測部番号 1 風洞吹出口 5 テストベッド 2 主流計測用ピトー管 6 後流計測用ピトー管 3 主流計測用ピトー管用固定フレーム 7 トラバース装置 4 風洞モデル 18
4.2 実験手順本実験ではトラック後端と後流計測用ピトー管との間隔を 100 mm とり 主流計測用ピトー管の静圧 Pa を基準圧力として 主流総圧 Pall 後流総圧 Pwall および後流静圧 Pwa との差圧を差圧計 (ScanivalveDSA3217) で計測した 実験手順を図 19 に示す 図 19 実験手順概要 19
4.3 実験内容 4.3.1 計側部本実験ではトラック後方での圧力変化を計測し考察を行っている 後流計測用ピトー管をトラバース装置にマウントし 横軸に 600 mm 縦軸に 300 mm を 10 mm 間隔で稼働させることにより 稼働範囲内の計 1800 点を計測している また 本実験に関しては後流計測用ピトー管を 6 本使用しており 1 回の計測時間としては約 25 分となっている 後流計測用ピトー管マウント及びマウント後の状態に関して図 20 にて示す 図 20 後流計測用ピトー管マウント部及びマウント後の状態 20
4.3.2 実験本実験では 3.4.2 で示した空気抵抗低減装置を使用して実験を行った 本実験に関しては 1トラックのみ 2 貨物部後方上面に設置した状態 32の状態に翼端板を装着した状態 4 貨物部後方上面及び側面に設置した状態 54の状態の角を丸めた状態の計 5つの実験を行った 以上の実験に使用したモデル及び空気抵抗低減装置に関して以下に示す 図 21 トラックのみ 図 22 貨物部後方上面に設置した状態及び空気抵抗低減装置 21
図 23 貨物部後方上面に空気抵抗低減装置及び翼端板設置 図 24 貨物部後方上面及び側面に設置 22
図 25 貨物部後方上面及び側面に設置し角を丸めたもの 23
第 5 章実験結果及び考察 5.1 空気抵抗係数実験結果を評価する際に空気抵抗係数 CD を使用する 式 (1.2) を CD について式変形したものを以下に示す 抗力係数は C D = D 1 2 ρsu 2 式 (5.1) ここですべての圧力を風洞出口の静圧を基準に計測しているので 1 2 ρu2 = P 1, C D = 1 S {2 ( P 2 P P 1 1 2 ρu2 =P 2 P 3 となり P 2 P P 1 ) P P 1 } ds 2 式 (5.2) ρ : 空気密度 [kg/m 3 ] S : 車両前方投影面積 [m 2 ] U a : 主流速度 [m/s] P 1 : 主流動圧 [Pa] P 2 : 後流計測点動圧 [m/s] p 3 : 後流計測点静圧 [Pa] ds 2 : 計測点代表面積 [m 2 ] であり 実験結果から得られたトラック後流の圧力分布を積分して空気抵抗 D を求める 以上の計算より実際に求めた CD を表 7 に示す また 同じ条件で解析を行った場合の CD を表 8 に示す 表 7 空気抵抗低減装置の空気抵抗係数 Cd への影響 比較 状態 Cd[-] 改善 [%] トラックのみ 0.580 貨物部後方上面に設置 0.518 10 貨物部後方上面に空気抵抗低減装置及び翼端板設置 0.524 9 貨物部後方上面及び側面に設置 0.470 18 貨物部後方上面及び側面に設置し角を丸めたものを設置 0.469 19 24
表 8 空気抵抗低減装置の空気抵抗係数 C D への影響 ( 解析 ) 状態 Cd[-] 改善 [%] トラックのみ 0.370 貨物部後方上面に設置 0.346 6.5 貨物部後方上面に空気抵抗低減装置及び翼端板設置 0.318 14 貨物部後方上面及び側面に設置 0.311 16 貨物部後方上面及び側面に設置し角を丸めたものを設置 0.322 13 次に計測面であるトラック後流の差圧 (Pwall-Pa) を主流動圧 (Pall-Pa) で無次元化し コンター図表記したものを以下の図に示す 横軸は計測開始点からのトラック幅方向の距離 X mm 縦軸はトラック高さ方向の距離 Y mm である 主流動圧に対して後流圧力の変動が大きいと その計測点において圧力が低いことを意味する また 比較として同じ実験条件で解析を行ったものを以下の図に示す 実験結果 図 269 トラックのみでの後方圧力 25
図 27 貨物部後方上面に設置時の後方圧力 図 28 貨物部後方上面に空気抵抗低減装置及び翼端板設置 26
図 29 貨物部後方上面及び側面に設置 図 30 貨物部後方上面及び側面に設置し角を丸めたものを設置 27
解析結果 図 31 トラックのみでの解析結果 図 32 貨物部後方上面に設置時の解析結果 28
図 33 貨物部後方上面に空気抵抗低減装置及び翼端板の解析結果 図 34 貨物部後方上面及び側面に設置し角を丸めた時の解析結果 29
5.2 考察本実験の結果において空気抵抗低減装置非装着時のトラック後方での圧力分布に比べ空気抵抗低減装置を装着したすべての結果において 圧力分布の高さ方向 y=20~25 横方向 x=25~35 の範囲で圧力上昇が確認できた また これは図 35 に示すように 空気抵抗低減装置の作用によりトラック後方での負圧となっている領域に流れができたために 圧力向上が図られた結果だと考えられる ( 図 36: 実際に実験を行った際の流れをタフト法で確認した結果 ) 実験結果より求めた空気抵抗係数 CD に関してはトラックのみの場合に比べすべての結果で向上していることが確認できた ( 表 7) この結果 空気抵抗低減装置を使用することにより 空気抵抗を改善できていることが確認できた 実験での空気抵抗低減装置を上面のみ 上面及び翼端版を設置した 2 つに関して 空気抵抗低減装置のみを使用した際に翼端渦の影響が懸念されたため 翼端板を使用した結果 空気抵抗係数 CD 値が翼端板を使用したもののほうが大きくなってしまった しかし解析結果での CD 値は翼端板を使用したほうが改善されていた この結果より 空気抵抗低減装置自体に翼端渦が発生しているため 翼端板を使用したほうが良いと考えられるが 本実験では翼端板に厚紙を使用していたため解析結果との違いが出たと考えられる 図 35 空気抵抗低減装置によるトラック後方への風の流れイメージ上 : 非装着時下 : 装着時 30
図 36 タフト法 本実験に関しては 空気抵抗低減装置を貨物部後方上面に設置したトラック後方の圧力分布は高さ方向 y=20~25 のみに変動が見て取れた それに比べ 貨物部後方上面及び側面に設置したものは 高さ方向 y=20~25 での変動並びに多少ではあるが高さ方向 y=100~ 200 mm の範囲で左右にも変動を確認することができた ただし 各圧力分布の結果で分布図高さ方向 y=20~25 の左右に角のようなものが残った これに関しては設置した空気抵抗低減装置に対して翼端渦が発生しているためだと考えられた ( 図 38: 赤で囲っている部分 ) そこで 空気抵抗低減装置及び翼端板を設置することで他の結果に比べ翼端渦の影響が小さくなっていることが確認できた また 翼端板を設置したうえで残っている影響に関しては 翼端板自体の影響だと考えられる 上面及び側面に空気抵抗低減装置を設置した場合 その角を埋めることにより翼端渦の発生を抑えられるような結果が出た ( 図 37 青で囲っている結果 ) しかし 上面及び側面に空気抵抗低減装置を設置した実験では 高さ方向 y=0~10 横方向 x=20~25 35~40 の範囲で圧力が低下しており 側面に設置した空気抵抗低減装置の地面側 ( 図 38: 青で囲っている部分 ) に翼端渦が発生している可能性があると考えられた そのためにこの部分にも翼端板を設置するか 丸めるといった改善が必要だと考えられる 比較部分を図 37 に示す ( 赤で囲っているものが翼端板を使用した結果となっている ) 31
図 37 上部の圧力分布の比較 図 38 翼端渦発生場所 32
第 6 章結論 本研究では空気抵抗低減装置として NACA0024 をベースとしたものを使用し 5 パターンの実験を行った トラックに対して空気抵抗低減装置を使用した結果 圧力向上を確認することができた また 実験結果より求めた CD 値ではトラックのみに比べ空気抵抗低減装置を装着したもので最大 19% 向上していることが分かった ( 表 7) この結果より空気抵抗低減装置の優位性を見いだせたと考えられる 空気抵抗低減装置自体の抵抗として翼端渦が発生して影響していることがわかった そこで 翼端板を使用したが 翼端渦による抵抗を改善することができなかった また トラック前方などの角にも翼端渦が発生している可能性があると考えられるので 今後の問題であると考えられる 結果として 本実験において空気抵抗低減装置を使用することにより圧力が向上する結果が得られた また 空気抵抗係数 CD 値に関しても大きな改善を図ることができた ここで 本研究より考えられた今後の問題及び対策を以下に示す 1 空気抵抗低減装置の寸法を改善する ( 本研究では効果を確認したかったので寸法を考慮していない そのため 車両制限令に収まっていないので 今後この寸法内に収める必要がある ) 2 空気抵抗低減装置に働く抵抗への対策を行う ( 翼端板以外にも対策を考える ) 3 空気抵抗低減装置の最適な取付け位置を把握するためにトラック上面の流れを確認する 4 空気抵抗低減装置の最適形状を CFD( 数値流体力学 ) の解析ソフトなどを使用して検討を行う 5 風洞試験と解析の結果を比較し 1 2 3 4の妥当性を評価する 33
謝辞 本研究を行うに当たり 本研究全体にわたって指導していただきました高知工科大学 筒井康賢先生にこころより深く御礼申しあげます 本研究を行うにあたり 共に研究活動を行った小笠原慧さん 廣江綾斗さん 野口秀幸 さんに深く感謝すると共に 実験設備の設置などに協力してくださった筒井研究室のメン バーに深く感謝します 34
参考文献 (1) 公益社団法人全日本トラック協会 http://www.jta.or.jp/coho/kigyobutsuryu/kigyobutsuryu.html (2012) (2) e-gov 車両制限令 第 3 条 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/s36/s36se265.html (2011) (3) Jason Leuschen Kevin R. Cooper,Full-Scale Wind Tunnel Tests of Production and Prototype, Second-Generation Aerodynamic Drag-Reducing Devices for Tractor-Trailers,http://www.jta.or.jp/coho/kigyobutsuryu/img12/kigyobutsuryu12.pdf (2006) (4) "Mercedes Benz Aero Trailer Concept" http://blog.livedoor.jp/motersound/archives/51680826.html (5) ISUZU http://blog.livedoor.jp/motersound/archives/51680826.html (6) R. Spivey,R. Hewitt,H. Othman and T. Corke, Flow Separation Control on Trailing Edge Radiiusing Single Dielectric Barrier Discharge Plasma Actuators: An Application to VehicleDrag Control, Lecture Notes in Applied and Computational Mechanics Vol 41,pp.136-149 (2009) (7) Scanivalve Inc.,DSA3217 Hardware Manual http://www.scanivalve.com/products/pressure-measurement/ethernet-intelligent-pr essure-scanners/dsa3217-pressure-scanner-gas-measurement/ (2010) (8) 日本内航海運組合総連合会 http://www.naiko-kaiun.or.jp/about/about_cargo.html 35